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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 D4 |
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管理番号 | 1271064 |
審判番号 | 不服2012-16930 |
総通号数 | 160 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2013-04-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-08-31 |
確定日 | 2013-03-05 |
意匠に係る物品 | エアーコンディショナー |
事件の表示 | 意願2011- 19555「エアーコンディショナー」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
本願は,2011年(平成23年)8月30日の,本意匠を意願2011-19554号とする関連意匠の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「エアーコンディショナー」とし,その形態を願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりとしたものである。(別紙第1参照) 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)に該当するとするものであって,拒絶の理由に引用した意匠は,日本国特許庁発行(発行日:2011年(平成23年)4月18日)の意匠公報記載,意匠登録第1411476号(意匠に係る物品,エアーコンディショナー)の意匠(以下,「引用意匠」という。)であって,その形態は,同公報に記載されたとおりのものである。(別紙第2参照) 両意匠を対比すると,両意匠は意匠に係る物品が一致しているが,その形態については,主として以下のとおりの共通点及び相違点がある。 まず,共通点として, (A)全体は,正面視を横長長方形状,側面視を,略横長小判形状の下方約4分の3部分をさらに縦半分とする筺体であり,前面上方大部分を楕円弧曲面状の前面パネル部,下方を,この前面パネル部の楕円弧曲面からの延長面状に連続するルーバー部とし,上面は,その左右枠前方を下方に向かって僅かに湾曲させた面とし,中央大部分を吸入口としている点, (B)前面下方中央部をセンサー配置のための横長凹部として(以下,「センサー周辺凹部」という。),その左右中心にセンサーを突設し,このセンサーは,略半球体状をなしており,正面視では円形の下半分強,底面視では円形の上半分形状を呈する点,等がある。 一方相違点として, (あ)前面パネル部からルーバー部にかけての態様について, 本願意匠は,前面パネル部下端付近からルーバー部後端にかけての部位について,左右両端に極細幅帯状部を残して,内側大部分を横長矩形状の区画部とし,この区画内のうち,前面パネル部下端に該当する上方部位を,左右の極細幅帯状部から僅かに段落ち面とした上で,この段落ち面中央にセンサー周辺凹部を設けたのに対して, 引用意匠は,前面パネル部とルーバー部が,それぞれ独立しており,前面パネル部の下方に直接センサー周辺凹部を設けており,また,このセンサー周辺凹部の右方には,小横長長方形状区画部を設けた点, (い)センサー周辺凹部の形状について, 本願意匠は,前面の開口部が略扁平逆等脚台形状,奥を開口部より左右幅を少なくした略小扁平逆等脚台形状面とし,左右内壁面をそれぞれ内側に向かって低くした傾斜面としているのに対して, 引用意匠は,上下が扁平で,奥行きの浅い,略四角錐形状とした点, (う)透光部の領域について, 本願意匠は,前面パネル部下端の,センサーを設けた段落ち面を,透光部とし,正面視で,下方のごく狭い領域であるのに対して, 引用意匠は,前面パネル部及びルーバー部を透光部とし,正面視で,大部分の広い領域を占める点,等がある。 これらの共通点と相違点が,両意匠の類否判断に及ぼす影響を意匠全体として比較すると,共通点(A)は,全体の基本構成に関する共通点ではあるが,この種壁掛け型エアーコンディショナーの構成態様として正面視を横長長方形状とし,上面を吸入口とし,前面大部分をパネル部として下方をルーバー部とする構成はごく一般的であり,側面視の形状についても,この種物品を観察する際には,真横から側面形状のみを注視するというよりは,正面ないし,斜め下から見上げることが多いのであり,その通常の観察方向から観察した場合に,前面から下方にかけて連続した大きな湾曲面とした点が,類否判断に一定程度の影響を及ぼすものの,その他の構成態様の共通点が及ぼす影響は微弱である。 共通点(B)は,センサー周辺凹部についての態様を概括的に捉えた場合の共通点であり,またセンサー自体は目に付く中央にあるものの,ごく小さな突起にすぎないから,類否判断に及ぼす影響は微弱である。 一方,相違点(あ)は,この種物品の通常の観察方向から看る際に,非常に目立つ部位についての相違点であり,また,相違点(い)は,さらにその中央に位置する,センサー程小さくはない,ある程度の領域を有する部位についての相違点であって,相違点(あ)及び同(い)により,本願意匠は,前面から下方にかけて大きく湾曲した湾曲面に独立した略横長長方形状の領域を形成し,その上方に段落ち面を形成して,この段落ち面の中心にさらに凹部を設けたという,下方ルーバー部との一体感を形成した上で入れ子状の段落ち面としており,またセンサー周囲の凹部を逆等脚台形状の平坦面及び開口部とした点が,さらに前面パネルより奥まった印象を強くしており,前面パネル面からは,二段階奥まったところに,目立たないようにセンサーを配置した形態として落ち着いた印象を与えるものであるのに対して,引用意匠は,下方ルーバー部とは独立した前面パネル下方に直接センサー周辺凹部を設けており,またセンサー周辺凹部の形状を上下が扁平で,奥行きの浅い,略四角錐形状とした点が,センサー及びその周辺凹部を,エアーコンディショナー全体のアクセントとして目立たせることとなっており,異なる視覚的効果を生んでおり,相違点(あ)及び同(い)が類否判断に及ぼす影響は非常に大きい。相違点(う)は,主として通電時において,その視覚的効果を発揮するのであり,相違点(う)自体が類否判断に及ぼす影響を大きいということはできないものの,類否判断に大きな影響を及ぼす相違点(あ)及び同(い)にこの相違点(う)が加わった相違点全体が相まって生み出す視覚的効果は,共通点全体が生む視覚的効果を凌駕しており,相違点全体として類否判断を支配していると言える。 以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品は一致するが,形態においては,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響が一定程度に止まるのに対して,相違点が類否判断に及ぼす影響は大きく,相違点が相まって生じる視覚的効果は,共通点全体が生む視覚的効果を凌駕して,類否判断を支配しているから,意匠全体として,本願意匠は引用意匠に類似するということはできない。 したがって,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同条同項柱書によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審においてさらに審理した結果,本願について,他に拒絶すべきものとする理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2013-02-19 |
出願番号 | 意願2011-19555(D2011-19555) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(D4)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 兼安 あい、越河 香苗、加藤 真珠 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
樫本 光司 早川 治子 |
登録日 | 2013-03-15 |
登録番号 | 意匠登録第1467120号(D1467120) |
代理人 | 稲葉 忠彦 |
代理人 | 高橋 省吾 |