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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 D4
管理番号 1272502 
審判番号 不服2012-19437
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-10-03 
確定日 2013-03-05 
意匠に係る物品 空調機器の室外機置台用型枠 
事件の表示 意願2011- 26167「空調機器の室外機置台用型枠」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は,2011年(平成23年)11月14日の,意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「空調機器の室外機置台用型枠」とし,その形態を願書及び願書に添付した図面に表されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

2.原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)に該当するとするものであって,拒絶の理由に引用した意匠は,本願出願前2008年(平成20年)1月15日,日本国特許庁発行の意匠公報記載の意匠登録第1318969号(意匠に係る物品 空調室外機等据付け用ブロック)の意匠(以下,「引用意匠」という。)であって,その形態は,同公報に記載されたとおりのものである。(別紙第2参照)

3.本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,「空調機器の室外機置台用型枠」で,願書の「意匠に係る物品の説明」によれば,内部にコンクリートが充填される樹脂製の型枠で,内部のコンクリートが乾燥固化した後に,空調機器の室外機置台としてコンクリートと一体的に屋外に設置されるものであり,引用意匠の意匠に係る物品は,「空調室外機等据付け用ブロック」であって,両意匠は,共に,空調機器の室外機を据え付けるための置台に使用するものであるから,両意匠の意匠に係る物品は共通している。
(2)形態
両意匠の形態については,主として以下のとおりの共通点及び相違点がある。
まず,共通点として,
(A)全体は,平面視が略横長長方形状,正面視がごく僅かに下拡がりの略等脚台形状,側面視がやや下拡がりの略等脚台形状の略枕木形状をなす点,
(B)上面中央長手方向に,左右両側端まで全長に及ぶ溝を設け(以下「上面溝部」という。),この上面溝部は,断面形状を略縦長十字形状とするものである点,
(C)左右両側面下方部の幅中央に,側面視が略横長長方形状の凹陥部を設け(以下,「側面凹陥部」という。),この側面凹陥部の横の長さは,側面下辺の半分程度である点,等がある。
一方相違点として,
(あ)全体の態様について,
本願意匠は,上部と四周側壁部が肉薄の樹脂により一体成形され下方が開放された中空の殻体であるのに対して,
引用意匠は,コンクリートによる中実の塊体である点,
(い)側面凹陥部の態様について,
本願意匠は,下辺に接する位置に,しゃくり面状に形成されているのに対して,
引用意匠は,側面の中程やや下方位置に,陥没孔状に形成されている点,
(う)高さ:奥行き:幅の比率について
本願意匠は,1:1強:5であるのに対して,
引用意匠は,1:1:2弱である点,
(え)両側端角部(両側面と正面・上面・背面との境界部)の切り欠き態様について,
本願意匠は,丸面状であるのに対して,
引用意匠は,切り面状である点,
(お)下端部の態様について,
本願意匠は,水平方向のごく短い鍔部を,側面凹陥部のやや外側から対向側面凹陥部のやや外側まで設けているのに対して,
引用意匠は,左右側面下端が切り面状をなし,正,背面は,面取りはされていない点,等がある。

4.両意匠の類否
これらの共通点と相違点が,両意匠の類否判断に及ぼす影響を意匠全体として比較すると,共通点(A)は,全体の基本構成に関する共通点であるが,設置後に観察した場合のみでの概括的な共通点であり,類否判断に及ぼす影響は一定程度に止まる。
共通点(B)は,設置状態において目に付く上面の中央に位置する部位での共通点であり,またこの溝は,空調機器の室外機を固定するため固定具を挿入するためのものとして,機能上看者の注意を惹く箇所でもあるから,類否判断において一定程度の影響を及ぼす。
共通点(C)は,側面凹陥部についての共通点であるが,この側面凹陥部は,運搬・設置時における手掛け部であると認められるところ,両意匠は設置時において共に重量物となるため,その手掛け部の位置を両側面下方部の幅中央に設けること,また,手を入れるために側面視で略横長長方形状の凹陥部とすることは,ともにごく普通であり,さらに側面凹陥部の横の長さが側面下辺の半分程度である点も,側面下辺の長さ自体が,設置する空調機器の一般的な幅等に伴って決められるものであることに鑑みると,一般的な側面幅に一般的な大きさの手掛け部を設けた場合に,側面下辺に占める手掛け部の横の長さの比率も同程度となるにすぎないから,共通点(C)が類否判断に及ぼす影響は微弱である。
一方,相違点(あ)は,全体の態様についての相違点であり,本願意匠に係る物品は,ひっくり返して天地を逆にした状態でコンクリートを内部に流し込む物品であって,下面も観察対象となることを考慮すると,本願意匠の底が無く中空の殻体と,引用意匠の中実の塊体とでは,視覚的印象が全く異なるから,相違点(あ)は,類否判断に,非常に大きな影響を及ぼす。
相違点(い)は,側面凹陥部についての相違点であり,設置作業の容易さに直結する部位として,この種物品の需要者が注意を払って観察する部位であるところ,本願意匠の下辺に接する位置にしゃくり面状に形成されたものと,引用意匠の側面中程やや下方位置に陥没孔状に形成されたものとは,使い勝手に影響を及ぼし,視覚的効果も異にするから,相違点(い)が類否判断に及ぼす影響は大きい。
相違点(う)は,この種物品において,ごく普通に行われる比率変更の範囲内の相違にすぎないから,類否判断に及ぼす影響は微弱である。
相違点(え)は,本願意匠のような樹脂による一体成形,及び引用意匠のようなコンクリートによる成形において,共にありふれた角部の形態処理ではあるものの,目に付く部位であり,その視覚的効果は異なるから,類否判断において一定程度の影響を及ぼす。
相違点(お)は,本願意匠のような樹脂による一体成形,及び引用意匠のようなコンクリートによる成形において,共にありふれた端部処理にすぎず,また本願意匠の鍔部はごく細幅であるため,天地を逆にしたときもそれほど目に付かず,また,設置された状態では下端という目に付きにくい部位であるから,類否判断に及ぼす影響は微弱である。
そして,共通点と相違点を意匠全体として比較すると,両意匠は,意匠に係る物品は共通するものの,形態において,共通点全体が類否判断に及ぼす影響は一定程度であるのに対して,相違点全体が及ぼす影響は非常に大きく,相違点全体が相まって生みだす視覚的効果は,共通点全体が生む視覚的効果を凌駕しており,相違点全体として類否判断を支配していると言えるから,意匠全体として,本願意匠は引用意匠に類似するということはできない。

5.むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同条同項柱書によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審においてさらに審理した結果,本願について,他に拒絶すべきものとする理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2013-02-19 
出願番号 意願2011-26167(D2011-26167) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (D4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 越河 香苗兼安 あい加藤 真珠 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 樫本 光司
早川 治子
登録日 2013-04-12 
登録番号 意匠登録第1469217号(D1469217) 
代理人 特許業務法人 楓国際特許事務所 

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