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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 G1
管理番号 1272508 
審判番号 不服2012-20895
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-10-24 
確定日 2013-03-26 
意匠に係る物品 車椅子用傾斜板 
事件の表示 意願2012- 1355「車椅子用傾斜板」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 本願は,2012年(平成24年)1月25日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「車椅子用傾斜板」とし,その形態を願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,本願出願前,電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠,すなわち,特許庁意匠課が2011年(平成23年)11月18日に受け入れ,その掲載確認日(公知日)を2011年(平成23年)11月14日とする,ケアメディックス株式会社がインターネットに掲載した,表題を『ケアスロープ』とするページ(掲載ページのアドレス http://www.caremed.co.jp/goods/g-img/c-slope/careslope.pdf)に記載された「車いす用段差解消スロープ」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HJ23047003号)であって,その形態は,同サイト掲載ページの写真版に現されたとおりのものである。(別紙第2参照)

両意匠を対比すると,意匠に係る物品について,両意匠は,共に階段,段差又は間隙のある部分に設置し,車椅子が走行できるようにするためのものであるから,一致している。
形態については,主として以下のとおりの共通点及び相違点がある。
まず,共通点として,
(A)全体を,上下左右四辺に枠状の縁を設けた略長方形板を左右一対として蝶着し,二つに折り畳める構成とした点,
(B)車椅子走行時に高い位置となる上端と,同低い位置となる下端の両端付近の車椅子走行面を,いずれも端部に向かって次第に厚みを減らした傾斜面(以下,上端付近の傾斜面を「上端傾斜面」,下端付近の傾斜面を「下端傾斜面」という。)とし,中間は,走行面と裏面とが平行面をなす,同厚の平坦面とした点,
(C)車椅子の車輪の脱輪防止のため,走行面の左右両側縁中間の全長の半分以上の長さ部位には,立ち上がりの極低い,側面視略倒扁平台形状の側壁(以下,「側壁部」という。)を突設し,左右両側縁の残余の部位は,開放状態としている(以下,「開放側縁部」という。)点,がある。
一方,相違点として,
(あ)走行面の傾斜態様について,
本願意匠は,中間の平坦面と上下端傾斜面が,上下非対称に配分されており,平坦面が走行面全長の5割強,上端傾斜面が同3割弱,下端傾斜面が同2割弱の長さをそれぞれ占めるのに対して,
引用意匠は,中間の平坦面と上下端傾斜面が,上下略対称に配分されており,平坦面が走行面全長の8割程度,上下端傾斜面が残余の長さを略等分する点,
(い)上下端付近の態様について,
本願意匠は,下端付近は,走行面裏面に収束するように端部に向かって厚みを減らし,上端付近は,途中で裏面方向に断面略への字形状に屈曲させたのち,端部に向かって先窄まり状に厚みを減らしているのに対して,
引用意匠は,下端付近は,走行面裏面に収束するように端部に向かって厚みを減らし,上端付近は,走行面裏面の上端やや手前付近をごく緩やかな湾曲凹面部とした点,
(う)両側縁における側壁部及び開放側縁部の配置態様について,
本願意匠は,走行面全長の5割強の長さの中間の同厚平坦面には全長にわたり側壁部を設け,走行面全長の3割弱の長さの上端傾斜面及び2割弱の長さの下端傾斜面の両側縁部位を開放側縁部としており,開放側縁部は上端寄りを長くしているのに対して,
引用意匠は,中間の同厚平坦面には全長にわたる側壁部は設けておらず,同厚平坦面上方寄りに位置する,走行面全長の6割程度の長さの部位に側壁部を設け,走行面全長の1割程度の長さの上端傾斜面の両側縁部位と,同厚平坦面の下端寄りから下端傾斜面にかけての,全長の3割程度の長さの両側縁部位を開放側縁部としており,開放側縁部は下端寄りを長くしている点,
(え)走行面の幅について,
本願意匠は,広幅であるのに対して,
引用意匠は,細幅である点,がある。

共通点と相違点が,両意匠の類否判断に及ぼす影響を検討すると,共通点(A)は,意匠の基本的構成に関する共通点であるものの,二枚の同形長方形板を左右に蝶着し,二つに折り畳める構成とすること自体は,可搬型の傾斜板の構成としてごくありふれた構成であり,二枚の板それぞれ,上下左右四辺に枠状の縁を設けた点も,端部補強等を目的として一般的に行われる造形処理のひとつであり,共通点(B)は,段差のあるところに斜めに設置することが多い物品であること,この物品を構成する板材自体に厚みがあることを考慮すれば,上下両端付近を傾斜面とすることは機能上必然とも言える造形であるから,共通点(A)及び同(B)が類否判断に及ぼす影響は,一定程度に止まるものである。また,共通点(C)の,側壁部の形態は,この種物品の該部の形態として,引用意匠以外にも公然知られており(例えば,意匠登録第1388777号(意匠に係る物品「車両乗降用携帯スロープ」の意匠参照),また,側壁の立ち上がりは極低いものであるから,共通点(C)が類否判断に及ぼす影響も一定程度に止まるものである。
他方,相違点が,類否判断に及ぼす影響は大きく,類否判断を支配していると言える。
すなわち,この種の車椅子用傾斜板は,安全を第一とし,同時に,車椅子に乗る者と介助者双方にとって楽に使用できることも重要であるところ,走行面の傾斜態様は,安全走行に大きな影響を及ぼし,上下端部付近の部位は,車椅子が乗った場合の荷重を支え,また,車椅子が傾斜板上に乗り入れる際,また傾斜板から降りる際の滑らかさに影響を与える部位であり,側壁部は,脱輪を防止するとともに,その設置位置は,乗り降りの際の車輪の方向転換の容易さなどに影響を与えるため,これらの各部位の具体的な態様は,看者の注意を強く惹くものと認められる。相違点(あ)ないし(う)は,いずれもこれら看者の注意を強く惹く部位の具体的態様における相違点であるため,相違点(あ)ないし(う)が類否判断に及ぼす影響は大きい。相違点(え)は,この種物品において,走行面の幅は細いものも広いものも,様々な幅のものが本願出願前からあったことを考慮すると,これ自体が類否判断に及ぼす影響は大きいものではないが,相違点(あ)ないし(う)と一体となって,看者に与える相違した印象をより強くするものとなっている。
両意匠の類否判断に相違点全体が及ぼす影響は,共通点全体のそれを凌駕しており,相違点全体が相まった視覚的効果として,本願意匠は,上端傾斜面の方が下端傾斜面より長く,上端付近のみが走行面裏面に屈曲し,中間の平坦面の側縁部には全長に側壁部を設け,側縁開放領域は上端寄り部が長くなっており,上端寄り部に造形上の特徴を有する,広幅の,上下で変化のある意匠という印象を与えるのに対して,引用意匠は, 上端傾斜面と下端傾斜面の長さが略同長で,上端付近の走行面裏面の湾曲はごく緩やかで,中間の平坦面の側縁部には,全長に側壁部を設けておらず,側縁部は平坦面の上方寄りに位置し,平坦面の下方部と下端傾斜面にまたがる長い部位が,側縁を設けない開放側縁であり,全体として,傾斜面と平坦面の態様については上下略対称で,側縁開放部は下方部を長くした,細幅の,上下の変化に乏しい意匠という印象を与えるものであり,両意匠が看者に与える視覚的効果は異なるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。

したがって,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同条同項柱書によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審においてさらに審理した結果,本願意匠について,他に拒絶すべきものとする理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2013-03-08 
出願番号 意願2012-1355(D2012-1355) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (G1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 神谷 由紀 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 樫本 光司
早川 治子
登録日 2013-04-12 
登録番号 意匠登録第1469356号(D1469356) 
代理人 小林 義孝 

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