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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 D7
管理番号 1276353 
審判番号 不服2012-22409
総通号数 164 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2013-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-11-13 
確定日 2013-06-18 
意匠に係る物品 ソファー 
事件の表示 意願2011- 20384「ソファー」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本件審判の請求に係る意匠登録出願の意匠は,物品の部分について意匠登録を受けようとし,意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする,平成23年(2011年)9月7日の意匠登録出願であり,その意匠は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「ソファー」とし,その形態を願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって,「実線で表した部分が部分意匠として登録を受けようとする部分である。」とするものである(以下,本願の意匠登録を受けようとする部分についての意匠を「本願意匠」という。)。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠

原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当する(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)とするものであり,拒絶の理由に引用した意匠は,本願出願前,日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠,すなわち,特許庁意匠課が2010年(平成22年)2月26日に受け入れ,その掲載確認日(公知日)を2010年(平成22年)2月22日と確認したところの,designboomがインターネットに掲載した,表題を『nina tolstrup:pallet furniture projects』とするページ(掲載ページのアドレス http://www.designboom.com/weblog/cat/8/view/8806/nina-tolstrup-pallet-furniture-projects.html)に所載の「いす」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HJ21066318号)の本願意匠に相当する部分の意匠であって,その形態は,同サイト掲載ページの写真に現されたとおりのものである(以下,本願意匠に相当する部分の意匠を「引用意匠」という。)。(別紙第2参照)

第3 当審の判断

1.本願意匠と引用意匠の対比

(1)意匠に係る物品

本願意匠の意匠に係る物品は「ソファー」であり,引用意匠の意匠に係る物品は「いす」であって,具体的表記は異なるが,本願意匠の願書及び添付図面の記載並びに引用意匠に係る文献の記載等を総合して判断すると,いずれも背もたれがある腰掛けであるから,両意匠の意匠に係る物品は,共通する。

(2)意匠登録を受けようとする部分及び本願意匠に相当する部分の用途及び機能

本願意匠の意匠登録を受けようとする部分は,一人用のソファーを支えるために,ソファーの底面部に配設した「椅子全体を支える基台部を構成する左右の脚部分」であり,引用意匠の本願意匠に相当する部分(以下,「引用意匠相当部分」という。)は,座面及び背もたれを保持し,荷重を支えるために,椅子の側面部に配設した「椅子自体を構成する左右の脚部分」であるから,本願意匠の意匠登録を受けようとする部分と引用意匠相当部分の用途及び機能は,大きく異なるものである。

(3)意匠登録を受けようとする部分及び本願意匠に相当する部分の形態,位置,大きさ,範囲

本願意匠と引用意匠の形態を対比すると,両意匠の形態には,物品全体の形態に占める部分意匠としての位置,大きさ,範囲の点を含め,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。(以下,対比のため,本願意匠の図面における正面,平面等の向きを,引用意匠にもあてはめることとする。)

まず,共通点であるが,本願意匠の意匠登録を受けようとする部分と引用意匠相当部分の具体的態様として,同じ幅をもつ長短2つの長さの横長矩形状板体同士を,長板の長手方向の端部を短板の長手方向端部側面部分に直角をなす角度で接合し,その直角部分を上部となるように横に倒したL字状の形状のフレーム部を並設した点,及び,短板の横長矩形状板体(以下,「垂直短フレーム部」という。)の接地部分を水平状にカットした点が共通するものであり,長板の横長矩形状板体(以下,「水平長フレーム部」という。)の長さが,ソファー及び椅子の座面の約1.5倍であることから,本願意匠の意匠登録を受けようとする部分と引用意匠相当部分の大きさ,範囲についてもほぼ共通するものであると認められる。

一方,相違点としては,水平長フレーム部の接地部分の態様において,本願意匠は端部近傍を水平にカットし水平面で接地しているのに対し,引用意匠は水平面ではなく水平長フレーム端部の角部で接地している点が相違するものである。また,本願意匠においては,一人用ソファー全体を支えるために,その下部にL字状フレーム部を配設するものであるから,ソファーの下部であるならば,ある程度の範囲で任意に位置を変えることも可能であるが,引用意匠においては,水平長フレーム部に座面及び背もたれを固着し,椅子の脚部のみならず椅子自体の構成部材の役割をL字状フレーム部に持たせているため,その取付位置は座面の左右端部下部に限定されるものであって,本願意匠の意匠登録を受けようとする部分と引用意匠相当部分の位置についても相違するものと認められる。

2.本願意匠と引用意匠の類否判断

以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価,総合して,両意匠の意匠全体としての類否を判断すると,共通点における両意匠の具体的態様については,同じ幅をもつ長短2つの長さの横長矩形状板体同士を,直角をなす角度で接合し,その直角部分が上部となるように横に倒したL字状の形状をもつフレーム部を,椅子全体を支える脚部とすることは,本願出願前より既に見受けられる態様(例えば,独立行政法人工業所有権情報・研修館が2010年5月11日に受け入れた外国雑誌「Ottagono」第228巻111頁所載の「寝いす」の意匠(参考意匠1:特許庁意匠課公知資料番号第HB22004211号,別紙第3参照))であるから,両意匠のみに共通する特徴的な態様とは言えず,この共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱なものであると言うほかない。
また,本願意匠の大きさ,範囲については,破線で表された一人用ソファーの形態と実線部分の形態との対比から導いたものであり,破線部の態様次第で大きく変動するものであるから,本願意匠の意匠登録を受けようとする部分と引用意匠相当部分の大きさ,範囲についての共通点が,両意匠の類否判断に及ぼす影響は限定的であると言わざるを得ない。

これに対し,水平長フレーム部の接地部分の態様における相違点については,上記参考意匠1で示したとおり,この種物品間においては格別特徴のある態様であるとはいい難いが,接地面という需要者の注意を惹く機能上重要な部位における差異であることから,この相違点が,両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えていると言うことができる。
また,本願意匠の意匠登録を受けようとする部分と引用意匠相当部分の位置における相違点については,椅子全体を支える基台部の脚部と椅子自体を構成している脚部とは,全く異なる部位であって,この差異は当該意匠の属する分野においてありふれた範囲内のものであると言うことはできず,看者に両意匠が別異であるとの印象を与えるものであるので,この相違点が,両意匠の類否判断に与える影響は大きいものと言える。

3.小括

したがって,本願意匠と引用意匠は,意匠に係る物品,本願意匠の意匠登録を受けようとする部分と引用意匠相当部分の大きさ,範囲が共通する。
また,本願意匠と引用意匠の形態についても,水平長フレーム部の接地面の形状に違いはあるものの,いずれも横に倒したL字状の形状をもつフレーム部であるから基本的な構成は共通するものと認められる。
しかしながら,本願意匠の意匠登録を受けようとする部分と引用意匠相当部分の用途及び機能は,大きく異なるものであり,かつ,本願意匠の意匠登録を受けようとする部分と引用意匠相当部分の位置の相違も,当該意匠の属する分野において,ありふれた範囲内のものであるとはいえず,具体的形態に係る相違点が相まって生じる視覚効果は,共通点のそれを凌駕し,両意匠の類否判断に支配的な影響を及ぼして,看者に両意匠を意匠全体として別異の意匠と印象付けているというべきであるから,両意匠の形態が共通するとしても,意匠全体としてみた場合,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。

第4 結び

以上のとおりであって,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものということはできないから,同条同項柱書によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2013-06-04 
出願番号 意願2011-20384(D2011-20384) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (D7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 兼安 あい越河 香苗 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 江塚 尚弘
中田 博康
登録日 2013-07-05 
登録番号 意匠登録第1476016号(D1476016) 
代理人 特許業務法人レガート知財事務所 

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