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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 C5
管理番号 1276355 
審判番号 不服2012-10077
総通号数 164 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2013-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-05-31 
確定日 2013-06-26 
意匠に係る物品 調理用容器 
事件の表示 意願2011- 18770「調理用容器」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,平成23年(2011年)8月18日に出願された意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品が「調理用容器」であり,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりのものである。(別紙第1参照)

第2 当審の拒絶の理由
当審における拒絶の理由は,本願意匠が,本願の出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が日本国内又は外国において公然知られた形態に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって,具体的には,以下のとおりである。
この種の調理用容器が属する分野において,例えば,茶わん蒸し容器やグラタン皿にみられるように,飲食用容器を,オーブンや電子レンジ等で加熱調理をするための容器として使用することは,従来より普通に行われていることであり,これらの容器を,一枚のシート体を折り曲げて成形した簡易なものとすることも,近年はごく普通に行われていることである。そして,全体を,一枚のシート体を折り曲げて,略長円形の底面と上方に拡開する周側面とで構成した容器状とし,周側面は,底面の平行部分の上方を平坦面とし,この上縁部位に略舌片状のタブを斜め向かいの位置で延設し,それ以外の周側面に細かい縦襞を設けた形状とする容器が,本願出願前より公然知られていた(意匠1参照)。また,底面形状を略楕円形とするやや浅い容器は本願出願前より極めてありふれた態様のものであり(意匠2,意匠3参照),タブの形状を略円弧状とすることは,本願出願前より広く行われていたことである(意匠4(つまみ部11)参照)。
してみると,本願意匠は,その出願前に公然知られた意匠1の食品容器に基づき,その底面の曲線部分の形状を,この種物品分野でありふれた形状である略楕円形を半割とした略半楕円形とし,タブの形状をありふれた略円弧状のものとして,容器の深さにこの種調理容器としてごく普通の深さとする変更を加えた程度に過ぎないから,当業者であれば,本願出願前に公然知られた形状に基づき容易に創作できたものと認められる。

意匠1(別紙第2参照)
特許庁発行の公開特許公報所載
特開2002-12211号(発明の名称「食品容器」)の
【図3】,【図4】に表された第2実施形態の「食品容器」の意匠。

意匠2(別紙第3参照)
特許庁発行(発行日:2008年12月15日)の意匠公報記載
意匠登録第1346592号(意匠に係る物品「食品用容器」)の意匠。

意匠3(別紙第4参照)
特許庁発行(発行日:2001年5月14日)の意匠公報記載
意匠登録第1108783号(意匠に係る物品「調理用ベーキングパン」)の意匠。

意匠4(別紙第5参照)
特許庁発行(発行日:1991年5月23日)の公開実用新案公報所載
実開平3-53476号(考案の名称「ポーション容器」)の
第2図に表された「ポーション容器」の意匠。

第3 請求人の主張
「調理用容器」は,縦襞のない直線部が比較的長いと,調味料を入れたときに容器が容易に広がってしまう。
この点,本願意匠では,直線部と曲線部との長さ比を逆転させて,直線部を短くし,それに加えて曲線部を半割りの楕円形とし,調味料を入れたときに容器が容易に広がらないように創意工夫をしている。
しかも,本願意匠は,調理する魚の形を踏まえてデザインされた容器形状となっている。具体的に説明すると,例えば,意匠1のような,底面の曲線部を半割りの正円形としたデザインでは,魚と容器周側面との間に比較的大きなデッドスペースが生じるため,容器形状そのものの占有スペースが大きくなるばかりか,調味料も多く必要となってしまう。
この点,本願意匠では,容器形状を魚の形にあわせて「半割りの楕円形」に造形している。
したがって,本願意匠は,調理用容器の物品分野における当業者が意匠1?4に基づいて容易に創作することができたものとは言えず,独自の高い創作性を有していると思料する。

第4 当審の判断
本願意匠が,当業者であれば容易に創作することができたか否か,すなわち,本願意匠が,意匠法第3条第2項の規定に該当するか否かについて,以下検討する。
1.本願意匠
本願意匠は,意匠に係る物品を「調理用容器」とする,食材等を電子レンジ等で調理する際に用いる容器に係るものであり,その形態は,一枚のシート体を折り曲げて,略長円形の底面と上方に拡開する周側面とで構成したやや浅い容器状であり,具体的には,底面は,長手方向中間部の対向辺を平行とし左右を略半楕円形とした形状で,周側面は,底面の平行部分の上方を平坦面とし,この上縁部位に略円弧状のタブを斜め向かいの位置で延設し,それ以外の周側面,すなわち,底面の半楕円形部分の周側面に,細かい縦襞を設けた形状である。

2.本願意匠の創作容易性について
本願意匠の形態について検討するに,この種の物品において,一枚のシート体を折り曲げて,略長円形の底面と上方に拡開する周側面とで構成したやや浅い容器状とし,具体的には,底面は,長手方向中間部の対向辺を平行とし左右を略半楕円形とした形状で,周側面は,底面の平行部分の上方を平坦面とし,この上縁部位に略円弧状のタブを斜め向かいの位置で延設し,それ以外の周側面,すなわち,底面の半楕円形部分の周側面に,細かい縦襞を設けた形状としたものは,本願出願前より,意匠1ないし4に既に見られるところである。
しかしながら,この種物品において,需要者の注目を特に強く惹く部分と認められる,容器底面の形状について詳細に検討すると,本願意匠の当該部分の形状は,直線部を短くし,曲線部を半割りの楕円形とした特徴的な形状を呈している。それに対して,意匠2及び意匠3の当該部分の形状を観察すれば,両意匠には,直線部は存在しないことから,意匠2及び意匠3をもって,本願意匠の当該部分の形状が,本願出願前より極めてありふれた態様であると言うことは到底できない。また,当業者であっても,意匠2及び意匠3に基づいて,本願意匠の当該部分の形状に容易に想到し得たと言うこともできない。
そうすると,本願意匠は,少なくとも,この種物品において,需要者の注目を特に強く惹く部分と認められる,容器底面の形状について,本願意匠の出願前にありふれた態様であるということはできないことから,本願意匠は,意匠1ないし4に基づいて,当業者であれば容易に創作することができたものということはできない。

第5 結び
以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第3条第2項の規定に該当しないので,当審の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2013-06-14 
出願番号 意願2011-18770(D2011-18770) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (C5)
最終処分 成立  
前審関与審査官 上島 靖範 
特許庁審判長 川崎 芳孝
特許庁審判官 斉藤 孝恵
樫本 光司
登録日 2013-07-05 
登録番号 意匠登録第1476103号(D1476103) 
代理人 稲葉 良幸 

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