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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 M2
管理番号 1276360 
審判番号 不服2013-1718
総通号数 164 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2013-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-01-30 
確定日 2013-07-16 
意匠に係る物品 配線・配管材挿通部用遮音材 
事件の表示 意願2012- 3172「配線・配管材挿通部用遮音材」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,平成24年(2012年)2月16日の意匠登録出願であって,その意匠は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「配線・配管材挿通部用遮音材」とし,その形態は,願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりのものであって,「実線で示した部分が部分意匠として登録を受けようとする部分(当審注:以下,「本願請求部分」という。)である。一点鎖線は部分意匠として登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」としたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであり,具体的には,この種物品分野において,ケーブルや電線管等の配線・配管材が挿通される挿通部における,配線・配管材と挿通部の内壁との間に,制振・防音等を目的に,配線・配管材に各種保護材を巻回することはこの出願前より広く行われているところ(例示態様),本願意匠は,配線・配管材挿通部用遮音材として,周知形状である長方形板状の保護材を横方向に半折したものについて,その上下端部を除いた部分を部分意匠として意匠登録を受けようとしたものに過ぎず,容易に創作をすることができたものであるというものであり,各種制振防音部材に発泡性材料を用いることも,本願出願前より広く行われている,というものである。

[例示態様](別紙第2参照)
特許庁発行の公開特許公報記載
特開2001-141120 【図4】における巻回態様

第3 請求人の主張の要点
これに対し,請求人は,審判を請求し,要旨以下のとおり主張した。
本願意匠に係る物品と例示態様に係る物品とは,物品が異なる。また,本願意匠の形態が例示態様に係る物品の意匠には開示されていないから,本願意匠の出願前に,その意匠の属する分野における通常の知識を有する者が公然知られた形態に基づいて容易に意匠の創作をすることができたと認定される論拠を欠くものである。

第4 当審の判断
1.本願意匠
本願意匠の意匠に係る物品は,「配線・配管材挿通部用遮音材」であり,願書の「意匠に係る物品の説明」及び添付図面の使用状態参考図1,2によれば,ケーブルや電線管等の配線・配管材を,配線ボックスの挿通部(通線口)に挿通する際,配線・配管材を本物品のスリットに挟み込み,管材の外周に本物品を折り畳むように巻回し,巻回したまま挿通部(通線口)内に外面を押し潰しながら挿し込み,挿通部(通線口)内で復元することで,挿通部(通線口)の内面と管材との隙間を塞ぎ,遮音性を向上させるもので,発泡性材料からなるものである。

2.本願請求部分の「用途及び機能」並びに「位置,大きさ,範囲」
本願請求部分は,意匠登録を受けようとしない部分を含む全体を,略直方体形状のブロックとし,その一側面を半円柱形状とし,この半円柱形状部を除く大部分には,ブロックの厚みを2分するスリットを形成して,スリットの最奥部,すなわち半円柱の中心には,ブロックを上下に貫通する小円柱形状孔(以下「小円柱形貫通孔」という。)を設けて,半円柱形状部をヒンジに類するものとして(以下,「半円柱形部」という。)ブロック全体を開閉自在の構成とした中での,ブロック周面の上下の細幅部を除いた部分及び小円柱形貫通孔を除いたスリットの内面部分である。

3.形態
ブロックの周面につき,正背及び左右側面視すると,上下境界部を水平な平行状とする太幅帯状を呈し,左側面部は,半円柱形状を呈し,右側面部は,平坦な縦長長方形状を呈している。
また,スリット内側の相対する2つの内面は,同形同大の略正方形状を呈しており,通常の状態においては,視認することができない。

4.本願意匠の創作容易性について
本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性,すなわち,本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて,以下検討する。

(A)ブロック周面の形態について,
本願意匠の材質を,発泡性材質とした点については,発泡性材は,本願意匠に係る遮音材の材質として本願出願前より広く用いられている材質のうちのひとつであるから(例えば,特開2005-221076図1(別紙第2参照))これを選択するにあたり格別の困難は伴わないと言うべきであるが,本願意匠のブロックの周面につき,正背及び左右側面視すると,上下境界部を水平な平行状とする太幅帯状を呈し,左側面部は,半円柱形状を呈し,右側面部は,平坦な縦長長方形状を呈した態様は,本願意匠の属する分野において,本願出願前に公然知られていた事実は,認められない。
(B)スリット内側の相対する2つの内面について,
この種物品,すなわちケーブル等の配線・配管材を,挿通部(通線口)に通す際,管材を中心にして挿通部(通線口)の内面と管材との隙間を塞ぐとともに遮音する器具において,管材を該器具中心まで導入し保持するため,スリットを設け,スリットの最奥部には円孔を設けて,管材を保持すると同時に器具が裂けるのを防ぐことは,本願出願前よりごく普通に行われていることであるが(例えば,実用新案出願公開平成1-159513図1ないし図3(別紙第3参照)),本願意匠のスリットの態様であるところの,ブロックの厚みを2分する位置に形成した態様について,公然知られていたとは認められない。
そして,本願意匠についての前記認定のうち,(A)について基礎となる形態は公然知られておらず,(B)についても,スリットをブロックの厚みを2分する位置に入れた態様について公然知られておらず,本願意匠のスリットの深さを半円柱形部中心の小円柱形貫通孔手前までとすることについても,その深さは,様々な深さのものとすることが可能で,そこに選択の幅がある中から,本願意匠の深さとしたものであり,本願意匠は,基礎となる具体的態様が存在せず,スリットの深さについては,本願意匠の特徴的な着想によるものというべきである。
したがって,本願意匠の形態は,本願出願前に公然知られた形態に基づいて,容易に導き出せるものではないから,本願意匠は,当業者であれば,容易に創作することができたということはできない。

第5.むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第3条第2項が規定する,意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形態に基づいて容易に創作をすることができたとは言えず,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2013-07-02 
出願番号 意願2012-3172(D2012-3172) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (M2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木村 恭子 
特許庁審判長 川崎 芳孝
特許庁審判官 樫本 光司
原田 雅美
登録日 2013-07-26 
登録番号 意匠登録第1477652号(D1477652) 
代理人 特許業務法人 Vesta国際特許事務所 

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