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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 B5 |
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管理番号 | 1277759 |
審判番号 | 不服2012-20331 |
総通号数 | 165 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2013-09-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-10-16 |
確定日 | 2013-07-16 |
意匠に係る物品 | 靴 |
事件の表示 | 意願2011- 15105「靴」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
1.本願意匠 本願は,平成23年(2011年)年7月1日(パリ条約による優先権主張2011年1月5日 域内市場における調和のための官庁(商標及び意匠))の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「靴」とし,その形態を願書及び願書に添付された図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照) 2.原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定において,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとして,拒絶の理由に引用された意匠(以下,「引用意匠」という。)は,特許庁普及支援課が平成20年(2008年)10月16日に受け入れた米国特許商標公報2008年9月23日第08W39号掲載の「短靴」(登録番号US D577181S)(特許庁意匠課公知資料番号第HH20320978号)の意匠であって,その形態は,同公報に掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照) 3.両意匠の対比 両意匠を対比すると,まず,意匠に係る物品については,両意匠は,いずれも紐によって緊締される,いわゆるスニーカータイプの「靴」であり,意匠に係る物品が共通する。 両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び差異点がある。(なお,両意匠を対比するため,つま先側を正面,踵側を背面とする向きとしたものとして,以下,それぞれ形態を認定・対比する。) (1)共通点 (A)全体を甲皮部と靴底部とで構成し,甲皮部の前面側中央に左右に紐を通す鳩目を有する緊締部(以下,「緊締部」という。)を設け,その緊締部の内側に舌片を設けた内羽型の運動靴であって,緊締部を略U字状とし緊締部から踵部までの甲皮部上方の履き口周囲を帯状に囲むバンプピース(以下,「上バンプピース」という。)を設け,甲皮部の左右に緊締部と直角方向に,斜めにH字状の装飾部(以下,「H字装飾」という。)を設けた点,(B)甲皮部の底部寄りのつま先から左右にかけて保護片を設け,保護片から緊締部に向けて左右を円弧状とした帯状の立ち上がり部(以下,「帯状片」という。)を左右に設けた点(以下,保護片と帯状片を合わせて「下バンプピース」という。),(C)靴底底面に波状の凹凸を設けた点,において主に共通する。 (2)差異点 (ア)下バンプピースにおいて,本願意匠は,緊締部の左右の直線状部に向かって帯状片が設けられているのに対して,引用意匠は,緊締部の底辺寄りの円弧状部に向かって帯状片が設けられている点,(イ)H字装飾について,本願意匠は,H字装飾がステッチで描かれ,H字の横線の上下が円弧状で文字が太いのに対して,引用意匠は,文字全体が直線状で細い点,(ウ)踵部側の保護片(以下,「踵保護片」という。)について,本願意匠は,背面視した上辺が緩やかな略逆W字状で側面視すると台形状に表れ,踵側の横幅が広いのに対して,引用意匠は,背面視した上辺が凸円弧状で側面視すると倒L字状に表れ,踵側の横幅が狭い点,(エ)上バンプピースについて,本願意匠は,H字装飾付近で斜めに区切り線があり,緊締部と区切られており,背面視した上バンプピース全体が緩やかな略逆W字状であるのに対して,引用意匠は,区切り線がなく,背面視した上バンプピース全体が略半円形状である点,(オ)靴底の周側面について,本願意匠は,靴底が底面と周側面とで部材が異なり厚みがあり,周側面の踵側が側面の略中央付近から上下に分かれて上方側と下方側に膨出し,踵側には水平線が表れているのに対して,引用意匠は,底面と周側面とで部材が同一で,底面の薄い部材がつま先側と踵側にせり上がり,特に踵側は周側面から踵保護片に沿って急に大きくせり上がり,上辺が凸円弧状の靴底が踵側の略半分の高さまで達している点,(カ)靴底の底面において,本願意匠は,つま先側には円弧状の凸部を上下にずらして交互に重ねた凹凸部を略「い」の字状になるように設け,土踏まずには波模様を設け,踵側には波模様にさらに細かい凹凸模様を設けたものとしているのに対して,引用意匠は,つま先側には緩やかな波模様を設け,中央に左右を円弧状としたH字状模様を配し,土踏まずを無模様とし,踵側には緩やかな波模様を設けた点,において主な差異が認められる。 4.類否判断 そこで検討するに,共通点(A)は,両意匠の全体形状を概括的に捉えたものに過ぎず,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいというほかなく,また,共通点(B)及び同(C)は,この種の物品の分野においては,他の意匠にも見られる,ありふれた態様であり,これらの点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱であり,共通点全体としても,両意匠の類否判断を決定付けるに至るということはできない。 これに対して,差異点に係る態様が相俟って生じる意匠的な効果は,両意匠の類否判断を決定付けるものである。 すなわち,差異点(ア)は,帯状片の位置の差異であるが,その位置が異なることによって,本願意匠は,つま先側の隙間が広くなり,下バンプピースの印象を大きく異ならせるもので,この種の物品分野において,甲皮部におけるそのような特徴は,需要者の注意を強く惹く点であり,その差異は,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものといえる。 次に,差異点(イ)は,H字装飾の態様についての差異であるが,共通する文字ではあるが,この種の靴の分野において,甲皮部左右の装飾がどのような態様であるかは,需要者が深く注意を払う点であり,ステッチだけの本願意匠の態様は,引用意匠の態様とは異なり,前記差異点(ア)に係る態様と相俟って,甲皮部の印象を異ならせるものであるから,その差異は,両意匠の類否判断に影響を与えるものといえる。 また,差異点(ウ)は,踵保護片の態様についての差異であるが,本願意匠の踵保護片は,背面視及び側面視における形状が大きく異なることから,引用意匠とは,需要者に与える印象が大きく異なり,その差異は,両意匠の類否判断に影響を与えるものといえる。 そして,差異点(エ)の上バンプピースの区切り線の有無と背面視した上バンプピース全体の形状の差異については,いずれもありふれた態様といえるものであり,本願意匠のみに見られる特徴的な態様とまではいえないが,上バンプピースは履き口の周辺に設けられるもので,その差異は,使用時に需要者が目にする部位であって注意を惹く部位であることから,無視することはできず,前記差異点(ア)ないし(ウ)に係る態様と相俟って,その差異は,両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものといえる。 さらに,差異点(オ)の靴底の周側面について,本願意匠のように部材が異なり厚みを有するものも,引用意匠のように同じ部材で厚みが薄いものも,いずれもありふれた態様といえるものであるが,厚みの違いは外側から容易に視認できる違いであり,また,引用意匠の底面が踵側に大きくせり上がった態様は,特徴的なもので,その差異は踵側であっても目立つものといえ,前記差異点(ア)ないし(ウ)に係る態様と相俟って,両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものといえる。 また,差異点(カ)の靴底の底面模様の差異については,底面模様は,甲皮部の態様に比較すれば印象が薄い部分ではあるが,需要者は購入時に,その靴底の底面がどのような態様であるかは注意を払う部分であり,また面積の大きな部位であることから,無視することはできず,前記差異点(ア)ないし(ウ)に係る態様と相俟って,その差異は,両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものといえる。 以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が一致するが,その形態において,差異点が共通点を凌駕し,意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。 5.むすび したがって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当せず,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2013-07-03 |
出願番号 | 意願2011-15105(D2011-15105) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(B5)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 神谷 由紀 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
中田 博康 江塚 尚弘 |
登録日 | 2013-08-16 |
登録番号 | 意匠登録第1479511号(D1479511) |
代理人 | 田中 光雄 |
代理人 | 山崎 宏 |
代理人 | 大塚 雅晴 |