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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 G2
管理番号 1277769 
審判番号 不服2013-1936
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-02-01 
確定日 2013-08-05 
意匠に係る物品 自動車用タイヤ 
事件の表示 意願2012- 2028「自動車用タイヤ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本件審判の請求に係る意匠登録出願の意匠(以下,「本願意匠」という。)は,平成24年(2012年)2月1日に出願されたものであって,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「自動車用タイヤ」とし,その形態を願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠

原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)に該当するとしたものであり,拒絶の理由に引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,本願出願前,日本国特許庁発行の意匠公報(発行日:平成22年(2010年)2月1日)に記載された意匠登録第1373114号(意匠に係る物品,自動車用タイヤ)の意匠であって,その形態は,同公報に記載されたとおりのものである。(別紙第2参照)

第3 当審の判断

1.本願意匠と引用意匠の対比

(1)意匠に係る物品について
本願意匠及び引用意匠(以下,「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,いずれも自動車用タイヤである。

(2)形態について
次に,両意匠の形態を対比すると,主として,以下のとおりの共通点及び相違点が認められる。

まず,共通点については,基本的構成態様として,(A)全体は,左右角部を丸く落とした正面視略隅丸矩形状タイヤとし,そのトレッド部を,周方向に施した4本の縦溝で5つの区画に分割している点,(B)トレッド部の形態は,点対称である点,が認められる。
次に,トレッド部のそれぞれの区画について,タイヤ中央部の区画を「中央区画」とし,その両側の区画を「左右中間区画」とし,外側の区画を「左右ショルダー区画」とすると,具体的態様として,(C)中央区画の左辺及び右辺に,斜め方向の短い細溝を一定間隔で形成している点,(D)左右中間区画の外側の辺から,斜め方向の細溝,斜め方向の短いサイピング及び中間区画を横断する斜め方向のサイピングを一定間隔で繰り返して形成している点,(E)左右ショルダー区画の内側の辺から,同じ長さの2本のサイピングとサイピングから途中で細溝となる溝部を一定間隔で繰り返して形成している点,が認められる。

他方,相違点として,(ア)トレッド部の各区画の態様について,本願意匠は,タイヤの周方向に施した4本の縦溝が直線状に形成しているのに対し,引用意匠は,左右中間区画の外側の辺のみが直線状をなし,この辺以外は直線状ではなく凸凹状に形成している点,(イ)中央区画に形成された細溝の態様について,本願意匠は,右上がりの斜め方向の細溝を,中央区画の右辺及び左辺の同じ位置に配設しているのに対し,引用意匠は,右下がりの斜め方向の細溝を,左辺と右辺の位置をずらして配設している点,(ウ)ショルダー区画の構成態様について,本願意匠は,サイピングから途中で細溝となる線と線の間を1ブロックとして,このブロックが周方向に連続する態様とし,このブロックのサイドウォール側に側面視円状の細溝部を1条形成しているのに対し,引用意匠は,サイピングから途中で細溝となる線と線の間を2つ合わせたものを1ブロックとして,このブロックが周方向に連続する態様とし,このブロックのサイドウォール側に形成された細溝とサイピングから途中で細溝となる溝とを繋ぎ,1ブロック毎に略L字状の細溝部を形成している点,(エ)ショルダー区画のサイドウォール側の辺に形成された細溝について,本願意匠は,ショルダー区画の内側の辺から形成された2本のサイピングの中間の位置に対応するサイドウォール側の位置に,短い細溝を一定の間隔で形成しているのに対し,引用意匠は,そのような細溝を形成していない点,(オ)中間区画を横断する右上がり斜め方向のサイピングの態様について,本願意匠は,サイピングのみで形成しているのに対し,引用意匠は,中間区画の内側の辺部分においてサイピングから細溝に変更して形成している点,が認められる。

2.本願意匠と引用意匠の類否判断

以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価・総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。

(1)両意匠の意匠に係る物品について
両意匠は,いずれも自動車用タイヤに係るものであるから,両意匠の意匠に係る物品は,一致する。

(2)両意匠の形態について
まず,共通点(A)及び共通点(B)は,両意匠のトレッド部の態様を概括したにすぎないものであるから,この共通性のみをもって両意匠の類否判断を決定するものとすることはできない。
次に,共通点(C)ないし(E)の細溝及びサイピングの態様については,各区画の細溝及びサイピングの態様は共通しているものの,トレッド部を全体として見ると,本願意匠の細溝及びサイピングの構成は,略S字状の溝部として表れているのに対し,引用意匠の細溝及びサイピングの構成は,中央区画において屈曲し,略N字状の溝部として表れており,これらの細溝及びサイピングを乗じて生じる視覚的な効果は,全体観察においては需要者に共通の美感を起こさせるものではないため,これらの共通点は,両意匠の類似性についての判断を左右するものとは言うことはできない。
そして,上記の共通点は,全体としてみても,両意匠の類似性についての判断を決定付けるまでには至らないものである。

これに対して,相違点(ア)については,本願意匠は,タイヤのトレッド部を4本の直線状の縦溝で5つの区画に分割したとの視覚的印象を与える点が,同じ形態の小ブロック部を縦方向に連続させて各区画を構成している視覚的印象を与える引用意匠とは大きく異なる点であって,両意匠に別異の印象を与えるものであるから,この相違点は,両意匠の類似性についての判断に大きな影響を及ぼすものである。
次に,相違点(イ)についても,トレッド部を全体として見ると,本願意匠の細溝及びサイピングの構成が略S字状の溝部であるとの視覚的印象を与える点が,略N字状の溝部であるとの印象を与える引用意匠とは大きく異なる点であって,この別異の印象の違いを生じさせている相違点(イ)が,両意匠の類似性についての判断に与える影響も大きいものと言える。
また,相違点(ウ)及び相違点(エ)については,使用時によく見えるサイドウォール側の形態である上,本願意匠は,直線状に区切られたショルダー区画内に,同一の小ブロックを連続して配設したとの視覚的印象を与える点が,本願意匠の2倍の大きさで略L字状の細溝部をもつブロック部を縦方向に連続させて,ショルダー区画を構成しているとの印象を与える引用意匠とは大きく異なる点であるから,この別異の印象の違いを生じさせている相違点(ウ)及び相違点(エ)が,両意匠の類似性についての判断に与える影響も大きいものと言える。
そして,相違点(オ)についても,小さな部分の違いであるが,本願意匠にはない引用意匠の中間区画内側の細溝は,中央区画の細溝の延長線上に形成され,両細溝間に視覚的なつながりが生じている印象を与えており,本願意匠とは大きく異なる点であるから,この別異の印象の違いを生じさせている相違点(オ)も,両意匠の類似性の判断に一定の影響を及ぼすものと言える。
したがって,これらの各相違点に係る態様が相まって生じる視覚的効果は,意匠全体として見た場合,上記共通点を凌ぎ,需要者に別異の美感を起こさせるものであるから,本願意匠は,引用意匠に類似しないものと言うことができる。

3.小括

したがって,両意匠は,意匠に係る物品については一致するものであるが,形態については,両意匠の間には,その基本的な形状を含めて複数の共通点が存在するものの,相違点の印象が共通点の印象を凌駕しており,意匠全体としては視覚的印象を異にするものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。

第4 結び

以上のとおりであって,原査定の引用意匠をもって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2013-07-24 
出願番号 意願2012-2028(D2012-2028) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (G2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 上島 靖範 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 江塚 尚弘
中田 博康
登録日 2013-08-16 
登録番号 意匠登録第1479752号(D1479752) 
代理人 特許業務法人深見特許事務所 

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