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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 J7 |
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管理番号 | 1278866 |
審判番号 | 不服2010-6611 |
総通号数 | 166 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2013-10-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-03-30 |
確定日 | 2010-09-06 |
意匠に係る物品 | 錠剤 |
事件の表示 | 意願2008- 12600「錠剤」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
1.本願意匠 本願は、平成20年5月20日の意匠登録出願であって、その意匠(以下、「本願意匠」という。)は、願書の記載によれば、意匠に係る物品を「錠剤」とし、その形態を願書及び願書添付の図面に記載されたとおりとするものである(別紙第1参照)。 2.引用意匠 原審において、意匠法第3条第1項第3号の規定に該当するとして、拒絶の理由に引用した意匠(以下、「引用意匠」という。)は、特許庁総合情報館が1995年12月5日に受け入れた、1995年8月29日発行のアメリカ意匠公報、オフィシャルガゼット1995年8月29日5号、第3607頁所載、錠剤の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH08045933号)であって、その形態は、同公報に表されたとおりのものである(別紙第2参照)。 3.両意匠の対比 両意匠を対比すると、いずれも「錠剤」に係るものであり、意匠に係る物品が一致し、形態については主として以下の共通点及び差異点が認められる。 なお、両意匠を対比するため、引用意匠のFIG.3を正面図として、以下それぞれ形態を認定する。 (1)共通点 (A)全体について、正面視における外形を、底面側を水平直線状とし、左右を垂直に立ち上げ、底辺長に対して略3分の1の高さの直線状とし、上辺を弧状曲線とし、各角部を緩やかな隅丸状としたもので、正面側及び背面側表面に略球面状膨出部と平坦部を有し、それらを底辺に対して垂直状に区画し、正背面で同形となるよう、左右方向同じ位置に配し、その平坦部には長さの異なる正面視略棒状の凸部を2本形成し、これらを挟む一定幅の平坦な周側壁により、扁平な立体形状とするもので、(B)略球面状膨出部について、その膨出頂部を、正面視における、上辺を成す弧状曲線の頂部から底辺までの高さの半分より下方とし、その頂部から平坦部との境界へ向けて斜面状部を有する点、(C)平坦部について、略球面状膨出部との境界位置は、上辺を成す弧状曲線の頂部を超えるものでなく、正面視形状を、底辺側を直角とする略倒台形状とした点、(D)平坦部の略棒状凸部について、上辺側を短い凸部、下辺側を長い凸部とする高さの等しい正面視細長トラック形状とした点、において共通する。 (2)差異点 (a)全体の構成について、本願意匠は、正面視左側に平坦部、右側に略球面状膨出部を有し、背面視においても同様としているのに対し、引用意匠は、その構成を逆さとし、左側を略球面状膨出部、右側を平坦部とし、背面視においても同様としている点、(b)略球面状膨出部について、本願意匠は、正面及び背面側の略3分の2の領域を占め、平面視で正面側と背面側の膨出部が一体となって略N字状を構成しているのに対し、引用意匠は、正面側も背面側も略2分の1とし、両膨出部による一体性はなく、正面側と背面側にずれて向き合う構成とし、平坦部との境界に、V字状の浅い溝部を設けた点、(c)平坦部の、長さの異なる略細長トラック形状の凸部について、本願意匠は、平坦部の中央に均等に配され、左右にもゆとりがあるのに対し、引用意匠は、全体的に上辺側に寄せられ、左右は平坦面いっぱいまで伸びた態様となっている点、(d)平面、底面及び左右側面の平坦な側壁と、正面及び背面の接合部について、本願意匠は、角張った態様であるのに対し、引用意匠は、角を丸くした態様としている点、(e)全体の構成比率について、本願意匠は、正面視における上辺頂部の高さ、横幅、及び側面視における膨出部頂部間となる厚みの比率を約1.8:3.8:1としているのに対し、引用意匠は、それぞれ、約1.5:3:1としている点、において差異が認められる。 4.類否判断 そこで検討するに、(A)乃至(C)における共通点の態様は、両意匠が有する共通の特徴として、一定の評価をすることができる。 しかしながら、差異点について見ると、両者の構成の差異から生じる効果は、視覚的効果のみに留まるものではなく、機能的にも大きくかかわり、看者の注意を強く惹くものであるから、両意匠の共通点を評価した上においてもなお、両意匠の類否判断を左右するものというべきである。 すなわち、(b)における、略球面状膨出部の全体に占める位置における差異は、本願意匠を平面視略N字状とするもので、中央部が太く、一見して割れにくい構造としている一方、正面及び背面視中央縦にV字状の溝部を構成している引用意匠は、左右をつまんで中央から容易に2分可能な構造とするものであり、このような機能的差異が、視覚的効果として強く表れている点は、看者にとって、両者の違いを大きく印象付けるものということができる。また、その他の差異点については、それらのみではいずれも両意匠の類否判断に与える影響は小さいが、上記差異点(b)に係る態様と相俟って、意匠の類否判断に影響を与えるものであるから、これらの差異点に係る態様が相乗して生じる視覚的な効果は、両意匠の共通の特徴による視覚的効果を圧するものであり、両意匠の類否判断に重大な影響を与えるものといえる。 以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が共通するものであるが、その形態において、差異点が共通点を凌駕し、意匠全体として看者に異なる美感を起こさせるものであるから、類似しないものである。 5.むすび したがって、本願意匠は、意匠法第3条第1項第3号の規定に該当するものではないから、原審の拒絶理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2010-08-25 |
出願番号 | 意願2008-12600(D2008-12600) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(J7)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 太田 茂雄 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
北代 真一 樋田 敏恵 |
登録日 | 2010-10-08 |
登録番号 | 意匠登録第1400661号(D1400661) |
代理人 | 杉本 博司 |
代理人 | 星 公弘 |
代理人 | 山崎 和香子 |
代理人 | 久野 琢也 |
代理人 | 矢野 敏雄 |
代理人 | 山崎 利臣 |
代理人 | 二宮 浩康 |
代理人 | アインゼル・フェリックス=ラインハルト |