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審判番号(事件番号) データベース 権利
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不服20138327 審決 意匠
不服201311477 審決 意匠

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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 J7
管理番号 1284202 
審判番号 不服2013-14701
総通号数 171 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2014-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-07-31 
確定日 2014-01-21 
意匠に係る物品 保冷具 
事件の表示 意願2012- 7278「保冷具」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとし,平成24年(2012年)3月29日付けの意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「保冷具」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面代用写真に現されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)


第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,本願出願前の平成20(2008年)10月14日に日本国特許庁が発行した意匠公報,意匠登録第1341486号(意匠に係る物品,冷却パッド)の意匠(以下,「引用意匠」という。)であって,その形態は,公報に記載のとおりのものである。(別紙第2参照)


第3 両意匠の対比
1.意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「保冷具」であり,引用意匠に係る意匠の物品は意匠公報の記載によると「冷却パッド」であって,表記は異なるが,いずれも紐部を除いた全体(以下,「本体」という。)を水に浸して身体に着用し,その気化熱によって冷却効果を得るものであり,本願意匠と引用意匠(以下,「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,一致する。

2.両意匠の形態
両意匠の形態を対比すると,両意匠の形態には,主として以下の共通点及び相違点が認められる。

(1)共通点
まず,共通点として,本体を偏平な略横長帯状体としている点,1本の紐の両端部を本体の両端部に接続し,紐と本体で環状構成としている点,
が認められる。

(2)相違点
他方,両意匠には以下のような相違点がある。

(A)本体の形状について
正面から見て,本願意匠は,全体が下方に緩やかに湾曲する略長楕円形状であって,上下非対称であるのに対し,引用意匠は,全体が横方向にまっすぐに伸びる略紡錘形状であって,上下対称である。

(B)本体の縁部の態様について
本願意匠は,本体縁部内側寄りに生地と略同明度の糸でステッチを施しているのに対して,引用意匠は,正,背面の縁部を除く部分の生地の表面の明度よりも暗調子の別材によってパイピング(玉縁)を施している。

(C)本体の生地の態様について
本願意匠の表面は,正面側及び背面側ともに凹凸なく略偏平で,明度は,正面は暗調子,背面は明調子であるのに対して,引用意匠の縁部を除く部分の生地の表面は,正面側は升目状の粗めの凹凸が施され,背面側は凹凸なく略偏平で,明度は,正面側は明調子,背面側は僅かに暗調子である。

(D)紐部の態様について
本願意匠は,正面視紐部左端寄りに一つの安全具を配し,中央部に調節具を配しており,安全具は略円筒形を2つつなげた形態とし,調節具は略円筒形とするのに対して,引用意匠は,正面視紐部左右両端寄りに一つずつ安全具を配し,中央部に調節具を配しており,安全具は略紡錘形とし,調節具を略球形としている。


第4 両意匠の類否判断
以上の一致点,共通点及び相違点が両意匠の類似性の判断に与える影響を評価し,意匠全体としての両意匠の類似性について検討し,判断する。
両意匠は,意匠に係る物品が一致するが,形態については,以下のとおりである。

(1)共通点の評価
両意匠の形態における共通点は,冷却具の分野では多数見受けられ,冷却具の構成態様としては特段特徴あるものではないため,本願意匠と引用意匠のみがもつ共通点とは言えず,両意匠の類否判断に与える影響は軽微なものにとどまるものである。

(2)相違点の評価
これに対し,相違点(A)については,この物品の本体として意匠全体の中で大きな部分を占めるうえ,この物品の目的である冷却機能を持つ部分であり,看者が特に注意して観察する部分であって,特に,本願意匠は湾曲形状であることから,装着時の上下方向が定まったものであるのに対して,引用意匠には上下方向に定まりがなく,この相違点に係る態様から生じる視覚的効果が,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいものといえる。
相違点(B)及び(C)については,本体の表裏面に係る態様であり,この物品の機能を発揮するために装着時に内側に向けた面は,使用者の肌に直接密着する面になり,他方,装着時に外側に向けた面は,外観視される面でもあることから,その風合いや印象を左右する縁部態様や生地態様による視覚的効果は,両意匠の類否判断に及ぼす影響が大きいものといえる。
相違点(D)については,細部に係る部分の相違ではあるものの,使用者が直接触る部分であって,観察されやすいので,相違点(A)ないし(C)とも相まって,意匠全体として見た場合には,両意匠の類否判断に及ぼす影響が大きいものといえる。

(3)小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品は一致するが,形態においては,共通点が両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,共通点のそれを凌駕しており,意匠全体として見た場合,両意匠は視覚的印象を異にするというべきであるから,本願意匠は引用意匠に類似するということはできない。


第5 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同法同条同項柱書によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2014-01-07 
出願番号 意願2012-7278(D2012-7278) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (J7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 神谷 由紀鶴田 愛 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 橘 崇生
富永 亘
登録日 2014-02-21 
登録番号 意匠登録第1493270号(D1493270) 

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