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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 F4
管理番号 1285478 
審判番号 不服2013-19617
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-10-09 
確定日 2014-03-18 
意匠に係る物品 包装用缶 
事件の表示 意願2011-27446「包装用缶」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は,2011年5月27日の世界知的所有権機関への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う,平成23年(2011年)11月28日付けの意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「包装用缶」とし,その形態を願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって,形状及び模様が無彩色の濃淡で表されているものである。(別紙第1参照)

2.原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたもので,拒絶の理由に引用された意匠は,世界知的所有権機関国際事務局が発行した「国際事務局意匠公報 2011年7月31日」に掲載の「包装用缶(登録第DM/076 230号)」の意匠(以下,「引用意匠」という。)(特許庁意匠課公知資料番号第HH23505828号)であって,その形態は,同公報に掲載されたとおりのもので,カラー写真によって形状,模様,及び色彩が現されている。(別紙第2参照)

3.優先権証明書意匠
本願は,パリ条約による優先権主張がなされているが,優先権主張の基礎となる意匠(以下,「優先権主張意匠」という。)は,優先権証明書に記載されたとおりであって,カラー写真によって形状,模様,及び色彩が現されており,「9.説明」の欄において「色彩,記載された表示,及び蓋は,説明の目的だけに含まれたものであり,意匠請求される部分ではない。」と記載されたものである。(別紙第3参照)

4.請求人の主張
本願の基礎出願は色彩が施されて出願されていますが,これは原出願国・機関における意匠登録制度に合致させた出願を行ったものにすぎません。すなわち,原出願においては,色彩を施した写真であっても,色彩を要素としない旨の記載を行ったり,関連する意匠を同時に多数記載することが許容されています。
一方,貴庁の審査基準(意匠審査基準12頁)によれば,「4.意匠が抽象的に説明されている場合 願書又は図面中に文字,符号などを用いて,形状,模様及び色彩に関して抽象的に説明した場合」は意匠が具体的なものと認められないと例示されており,色彩を付した写真を出願しながら,色彩は任意に変更可能とする記載は認められないものと思料します。

基礎出願では,色彩は意匠の要素ではないと明記されており,色彩を変更しても基礎出願の権利範囲に含まれるものです。一方,我が国では色彩を付したまま出願すれば,出願された色彩によって権利範囲が限定的に解釈されることになり,基礎出願の権利範囲を維持することができないのは明らかです。

ところで,パリ条約による優先権の主張の制度は,「パリ条約第4条Bで,同盟国の一国への最初の出願の日から他の同盟国への優先権の主張を伴う後の出願の日までの期間内にされた他の出願又は公知の事実等によって,後の出願が不利な取扱いを受けない旨規定」(貴庁意匠審査基準101.1)されています。同審査基準101.3「パリ条約による優先権主張の認否における「意匠の同一」の基本的な考え方」では,「意匠の表現形式にかかわらず優先権証明書の中に我が国への意匠登録出願の意匠と実質的に同一の意匠が示されていればよい。」「優先権証明書に記載された意匠の認定(意匠に係る物品,物品の形状,模様,色彩,意匠登録を受けようとする部分の意匠全体に対する位置・大きさ・範囲等)は,第一国(最初に出願した国)の法令等も考慮して行う。」と記載されています。

従って,一般論として「色彩の有無について相違する」ことを理由に優先権主張の認否が判断されることは別としても,少なくとも本願については「色彩を要素としない」と明記されているのですから,この基礎出願により不利な取り扱いを受けることがないように色彩を無くして出願したとしても,優先権の主張が認められるべきであると思料します。

5.当審の判断
本願意匠は,図面によって表されたものであって,形状及び模様が無彩色の濃淡で表されており,優先権主張意匠は,カラー写真によって形状,模様,及び色彩が現されており,かつ,「色彩,記載された表示,及び蓋は,説明の目的だけに含まれたものであり,意匠請求される部分ではない」との付記がなされていることより,本願意匠と優先権主張意匠とは,意匠を構成する要素である形状,模様,及び色彩を変更したものとは言えず,実質同一の意匠と認められ,本願は,パリ条約による優先権の認否については,認めることができる。
したがって,本願は,パリ条約による優先権主張を基礎とした出願であって,この主張を認め,本願の登録要件に関する判断の基準となる日を第一国出願の日である2011年5月27日とすることから,本願意匠と引用意匠の類否判断をするまでもなく,第一国出願の日より後の2011年7月31日に発行された国際事務局意匠公報に掲載の意匠によって,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当する,とした原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2014-03-03 
出願番号 意願2011-27446(D2011-27446) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (F4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 神谷 由紀 
特許庁審判長 原田 雅美
特許庁審判官 江塚 尚弘
橘 崇生
登録日 2014-03-28 
登録番号 意匠登録第1495969号(D1495969) 
代理人 新保 斉 

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