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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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不服201320823 | 審決 | 意匠 |
不服201319175 | 審決 | 意匠 |
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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 C4 |
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管理番号 | 1287488 |
審判番号 | 不服2013-15398 |
総通号数 | 174 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2014-06-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-08-08 |
確定日 | 2014-05-12 |
意匠に係る物品 | 毛抜き |
事件の表示 | 意願2012- 24566「毛抜き」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,平成24年(2012年)10月9日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,本願の願書の記載によれば,意匠に係る物品を「毛抜き」とし,形態を,願書及び願書添付図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照) 第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠は,本願出願前,日本国特許庁発行の意匠公報(発行日:平成14年(2002年)9月17日)に記載された意匠登録第1153048号(意匠に係る物品,毛抜き用ピンセット)の意匠(以下「引用意匠」という。)であり,引用意匠の形態は,同公報に記載されたとおりのものである。(別紙第2参照) 第3 本願意匠と引用意匠の対比 1 意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「毛抜き」であり,引用意匠の意匠に係る物品は「毛抜き用ピンセット」であるので,両意匠の意匠に係る物品は共通する。 2 形態 両意匠の形態には,主として,以下の共通点と差異点が認められる。 (1)共通点 基本的構成態様として,以下の共通点が認められる。 (A)基本的構成態様について 全体が,前後二枚の略横長板状体の右端付近を接合させて一体としたものであり,背面視形状は正面視形状と左右対称であり,平面視形状及び底面視形状は,それぞれ上下で線対称に表れている。 また,具体的態様として,以下の共通点が認められる。 (B)平面視の構成態様について 平面から見て,上下の板が,右端寄りの位置から上下に開いて,その開きの角度が約10度を成し,左端付近では,上下の板の内側に厚みが形成され,上下の板の外側には傾斜面が形成されて先尖り状に表れている。 (C)正面視の構成態様について 正面から見て,左半部に上下幅の大きい指を当てる部分(以下「指当て部」という。)があり,その左方に,先細り状で下向きに傾斜した毛を挟む部分(以下「挟み部」という。)が形成されている。指当て部の右方には,上下幅の小さい部分(以下「括れ部」という。)があり,括れ部から右方にいくにつれて上下幅が漸次大きくなって,右端付近の接合部(以下「右端接合部」という。)に至っている。 (D)指当て部から挟み部までの態様について 正面から見て,指当て部から挟み部までの上辺は緩やかな凸弧状であり,指当て部から挟み部までの下辺は,指当て部の位置で凸弧状に,挟み部寄りで凹弧状に形成されて,倒逆S字状に表れている。 (E)挟み部の態様について 正面から見て,挟み部に前記の傾斜面が表れており,傾斜面の右側の面境界と,左端部は,共に直線状に表れて,後者の長さが前者の長さよりも小さい。 (F)右端接合部の態様について 正面から見て,右端接合部では,その略中央位置の上下幅が大きく表れて正面右半部の最大幅となり,最右端に向かって上下幅は縮小している。 (2)差異点 一方,具体的態様として,以下の差異点が認められる。 (ア)指当て部と右端接合部の上下幅の関係について 本願意匠では,指当て部の最大上下幅と,右端接合部の最大上下幅の比が,約6:5であるのに対して,引用意匠では,その比が約5:6である。 (イ)括れ部の位置及び括れ部から右端接合部までの形状について 本願意匠の括れ部は,正面中央右寄りに位置しており,左端から括れ部の最小上下幅部分までの距離と,その部分から右端までの距離の比は,約5:3である。これに対して,引用意匠の括れ部は,正面中央左寄りに位置しており,上記の比は,約5:7である。また,本願意匠の括れ部から右端接合部までの形状は,正面上辺と下辺が略上下対称になっているが,引用意匠では,上下対称ではなく,上辺は緩やかな凸弧状に表れて,下辺は右下がり状に傾いて表れている。 (ウ)指当て部の位置及び倒逆S字状下辺の形状について 本願意匠の指当て部は,挟み部を除く正面左半部のほぼ全域を占めており,指当て部の凸弧状下辺の最も膨らんだ部分の位置が,正面左半部中央の右側であるのに対して,引用意匠の指当て部は,正面左半部を横方向1:2:1で区分した場合の中央2の範囲を占めており,指当て部の凸弧状下辺の最も膨らんだ部分の位置が,正面左半部中央のやや左側である。また,指当て部から挟み部までの倒逆S字状下辺の形状について,本願意匠では緩やかであるのに対して,引用意匠では曲率が大きい。 (エ)挟み部の形状について 本願意匠の挟み部では,正面視において傾斜面の右側の面境界線と,左端形状線が左側に大きく傾斜しているのに対して,引用意匠では,面境界線の傾きは小さく,左端形状線の傾きも本願意匠ほどではない。また,本願意匠の傾斜面の横幅は面境界線の長さとほぼ同じであるが,引用意匠の傾斜面の横幅は面境界線の約3倍となっており,傾斜面が本願意匠に比べて細幅状に形成されている。 (オ)右端接合部の形状について 本願意匠の右端接合部の形状は,正面視上下対称であり,頂角が丸い倒略二等辺三角形状であるのに対して,引用意匠では,上下対称ではなく,やや下向きの半円形状である。 (カ)平面視の形状について 平面から見て,右端接合部の横幅の全幅に占める比は,本願意匠が約1/6であるのに対して,引用意匠は約1/4である。また,本願意匠では,指当て部の中央やや前寄りの位置で,上下の板がそれぞれ内側に少し屈曲しているのに対して,引用意匠では,そのような屈曲はない。 第4 類否判断 1 意匠に係る物品 前記のとおり,両意匠の意匠に係る物品は共通する。 2 形態の共通点の評価 両意匠の形態の共通点(A)ないし(F)は,両意匠の形状を概括的に捉えた場合の共通点であり,「毛抜き」の物品分野においては,他の意匠にも見られる形状であるので,この共通点が両意匠の類否判断に決定的な影響を及ぼすということはできない。 具体的には,(A)の基本的構成態様を有し,(B)の平面視の構成態様と(E)の挟み部の態様を持つ意匠は,例えば,参考意匠1,意匠登録第1352128号(意匠に係る物品「毛抜き」。別紙第3参照。)のように本願出願前に見受けられ,また,(C)の正面視の構成態様と(F)の右端接合部の態様を持つ意匠は,例えば,参考意匠2,米国意匠特許「USD551389(意匠に係る物品「毛抜き」。別紙第4参照。)」として,(D)指当て部から挟み部までの態様を持つ意匠も,例えば,参考意匠3,世界知的所有権機関国際事務局が登録した「DM/071988(意匠に係る物品「毛抜き」。別紙第5参照。)」として,既に見受けられる。 3 形態の差異点の評価 一方,両意匠の差異点については,以下のとおり,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。 先ず,差異点(ア)及び(イ)の比率についての差異,すなわち,指当て部と右端接合部の最大上下幅の比についての差異,及び左端から括れ部の最小上下幅部分までの距離とその部分から右端までの距離の比の差異は,両意匠の全体形状に影響を与える差異であって,引用意匠が細密な作業に適する形状であると想起させるのに対して,本願意匠ではそうではない形状と想起されるので,看者に異なる印象を与えることとなり,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。そして,略上下対称である本願意匠の括れ部から右端接合部までの形状も,本願意匠の引用意匠に対する差異として,看者の目を惹くものであるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。 次に,差異点(ウ)で指摘した,指当て部の位置及び下辺の形状についての差異は,両意匠において一見して気がつく差異であって,特に,挟み部を除く正面左半部のほぼ全域を占める本願意匠の指当て部の位置は,引用意匠の指当て部の位置と著しく異なっており,また,指当て部から挟み部までの倒逆S字状下辺の形状についての差異も,形態の差が顕著であり,使用時に指を当てる箇所であって注目される部位でもあるから,これらの差異は,看者の視覚的注意を強く惹くというべきであり,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。 さらに,差異点(エ)の挟み部の形状についての差異は,この種物品が毛を挟んで抜くことを目的としていることから,使用者が挟み部の形状に特に着目することになるところ,両意匠の挟み部の形状は形態として大きく異なっているので,看者に異なる印象を与えることとなり,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすといえる。 そして,差異点(オ)及び(カ)の形状の差異についても,この種物品が,使用者によって直接手に触れ,全方位的に観察されるものであることを踏まえると,目に付きやすい部位に関する差異であって,両意匠の視覚的印象に変化を与える差異であるというべきであるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。 そうすると,(ア)ないし(カ)の差異点は,いずれも両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものであり,両意匠の差異点は共通点を凌ぐものであるということができる。 4 小括 したがって,両意匠は,意匠に係る物品は共通するが,形態においては,共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,差異点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており,意匠全体として見た場合,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。 第5 むすび 以上のとおり,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同条同項の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2014-04-30 |
出願番号 | 意願2012-24566(D2012-24566) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(C4)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 杉山 太一 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
小林 裕和 橘 崇生 |
登録日 | 2014-05-23 |
登録番号 | 意匠登録第1500855号(D1500855) |
代理人 | 伊藤 浩平 |