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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 C5 |
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管理番号 | 1287489 |
審判番号 | 不服2013-19970 |
総通号数 | 174 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2014-06-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-10-15 |
確定日 | 2014-05-07 |
意匠に係る物品 | 飲料容器の蓋 |
事件の表示 | 意願2012-9981「飲料容器の蓋」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,2011年11月1日の域内市場における調和のための官庁(商標及び意匠)の出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う,部分意匠として意匠登録を受けようとする,平成24年(2012年)4月27日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「飲料容器の蓋」とし,その形態を願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり,「実線で表された部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたもの(以下,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)である。(別紙第1参照) 第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたもので,拒絶の理由に引用した意匠は,欧州共同体商標意匠庁が発行した「欧州共同体意匠公報 2010年9月7日」に記載された「包装用容器のふた(登録番号001750084-0004)」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH22207213号)(以下,「引用意匠」という。)であって,その形態は,同公報に記載されたとおりのものである。(別紙第2参照) なお,上記拒絶理由通知書において,引用された意匠が「欧州共同体意匠公報 2010年9月7日」に記載された「『包装用容器のふた』の意匠」と記載されており,拒絶理由通知書中の「記」の欄の対比内容に関する記述において「本願の意匠登録を受けようとする部分と引用意匠の(略)当該部分を比較すると,」と記載されているのであるから,当該拒絶理由においては,本願意匠が部分意匠として意匠登録を受けようとする出願であることから,これとの比較において引用意匠に対しても本願部分に相当する部分(以下,「相当部分」という。)の形態等について認定し,検討した上で,両意匠の類否判断をしていることは明らかである。 第3 当審の判断 1.本願意匠と引用意匠との対比 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は,「飲料容器の蓋」であり,引用意匠に係る物品は,「包装用容器のふた」であって,表記は異なるが,共に,容器の蓋であることから,本願意匠と引用意匠(以下,「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,共通する。 (2)両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ,及び範囲 本願部分と相当部分(以下,「両部分」という。)は,共に,全体形状がややへん平な有蓋の略円筒状の蓋における下周りの帯状部を除いた蓋体部であるから,用途及び機能,並びに位置,大きさ,及び範囲は一致する。 (3)両部分の形態について 両部分の形態を対比すると,その形態には,以下に示す主な共通点と相違点が認められる。 (3-1)共通点について 基本的構成態様において,蓋体部の全体形状を,直径が高さの約2.5倍の偏平な略円筒状とし,その周側面に縦に凸条を多数一定間隔で配し,周側面下端には縁部を設けたものであり,具体的構成態様においては,周側面と上面はゆるやかな曲面でつながり,凸条部は,その上端が前記ゆるやかな曲面に沿って,その途中まで伸びて消失し,当該先端部分が爪様になっており,凸条間は,平面(その結果,周側面全体では多角柱状となっている。)で,前記ゆるやかな曲面との接線は上向き弧状になるもので,周側面下端の縁部は,略裾広がり状となっている点において主に共通している。 (3-2)相違点について それに対して,具体的構成態様において,(A)周側面下端の縁部につき,本願意匠は,引用意匠に比してやや高い位置から裾広がりが始まり,その分縦幅が広く,広がり角度が大きい傾斜面であるのに対して,引用意匠は,本願意匠に比してやや低い位置から始まり,その分縦幅が狭く,広がり角度がごく小さい傾斜面で略垂直面となっている点,(B)縁部周面の態様につき,本願意匠は,平たんな円すい台側面に側面視波形の一定幅の突出した帯を設けているのに対して,引用意匠は,凸条と凸条の間では上から下向き弧状斜面,上弦三日月形略垂直面,及び下向き弧状斜面によって段状を成し,その段状部分が,凸条部下端より下側の,上辺が側面視で波形をした連続する略垂直面につながっており,その波形の略垂直面下辺においては,凸条に対応する位置にくさび状切り込みが入っている点,において主な相違点が認められる。 2.本願意匠と引用意匠の類否判断 以上の一致点,共通点,及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価し,総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。 (1)両部分の形態について 両部分の形態については,以下のとおりである。 (1-1)共通点の評価 基本的構成態様及び具体的構成態様における共通点は,両部分の形態全体の骨格的な態様を成し,両部分の特徴として看者の注意を引くものと認められ,両部分の上側の類否判断において一定程度の影響を与えると言えるが,この共通性のみをもって両部分における形態についての類否判断を決定するものとすることはできない。 (1-2)相違点の評価 これに対して,具体的態様である相違点(A)及び相違点(B)により,本願部分が,幅広の裾広がりになった縁部の円錐台面における上下中間位置から凸条部が生えているように見えるものであるのに対して,相当部分は,縁部の上半部が凸条により分断した段状で,下半部が凸条の外周面と面一の円筒面に見えるものであるという視覚的効果の差異として表れており,この差異は,両部分の下側の類否判断に大きな影響を与えていると言える。 (1-3)まとめ よって,基本的構成態様であり,機能的要素の強い両部分の上側の共通感と,装飾的要素の強い両部分の下側の相違点を総合して判断すると,両部分の形態においては,相違点がもたらす印象は,共通点が醸し出す印象をしのいでおり,見る者に両部分が別異であると認識させるものであるから,本願部分と相当部分は類似しない。 (2)両意匠の類否 以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通し,両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ,及び範囲が一致するが,その両部分の形態においては,上記のとおり本願部分と相当部分は類似しないものであるから,本願意匠と引用意匠は,類似しないものと言える。 第4 結び したがって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,原査定の引用意匠をもって,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げた意匠に該当すると言うことはできず,同法同条同項柱書によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2014-04-21 |
出願番号 | 意願2012-9981(D2012-9981) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(C5)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 小林 裕和、温品 博康 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
江塚 尚弘 橘 崇生 |
登録日 | 2014-05-23 |
登録番号 | 意匠登録第1501051号(D1501051) |
代理人 | 原田 三十義 |
代理人 | 渡辺 昇 |