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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H1
管理番号 1288633 
審判番号 不服2013-22664
総通号数 175 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2014-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-11-20 
確定日 2014-05-30 
意匠に係る物品 電気コネクタ 
事件の表示 意願2013- 7864「電気コネクタ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は,平成25年(2013年)年4月8日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「電気コネクタ」とし,その形態を願書及び願書に添付された図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

2.原査定における拒絶の理由および引用意匠
原査定において,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとして,拒絶の理由に引用された意匠(以下,「引用意匠」という。)は,特許庁意匠課が平成23年(2011年)6月17日に受け入れた,電気通信回線の種類 インターネット,掲載確認日(公知日)2011年6月13日,掲載者 日本航空電子工業株式会社の「jnews-323 オンボードタイプで業界最小クラスの実装面積を実現 USB3.0対応基板対ケーブルコネクタ「PC2シリーズ」を開発」(掲載ページのアドレス http://www.jae.co.jp/new/jnew/jnews323.htmlに掲載された写真左下にある「電気コネクタ」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HJ23003480号)であって,その形態は,同ページに掲載された写真に現されたとおりのものである。(別紙第2参照)

なお,原審の拒絶理由通知では,上記ページに掲載された「写真左下及び右下にある『電気コネクタ』の意匠」を引用意匠としていたが,左下の電気コネクタと右下のものは,インシュレーターの位置や側面の具体的態様が異なるため,当審においては,左下の電気コネクタの意匠のみを引用意匠として,本願意匠と対比して類否判断する。

3.両意匠の対比
両意匠を対比すると,まず,意匠に係る物品については,両意匠は,ともに基板に取付けて使用される「電気コネクタ」であり,両意匠の意匠に係る物品は一致する。
両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び差異点がある。
なお,両意匠を同じ方向から対比するため,引用意匠を本願意匠の向きに揃えたものとして,以下,それぞれ形態を認定・対比する。

(1)共通点
(A)全体を扁平な角筒状のシェル(以下,「シェル」という。)で覆い,その内側に接続端子を装填した略板状のインシュレーター(以下,「インシュレーター」という。)を設け,シェルの側面の前後に下方に突出する略縦長短冊状の差し込み片(以下,「差し込み片」という。)を設けている点,(B)シェルの側面において,前方側にシェルの側面を延伸させて左右にそれぞれ折り返した大型の折り返し片(以下,「大型折り返し片」という。)を設け,その後方寄りに横長長方形状の窓部を有し,大型折り返し片に後端を下方に屈曲させた前方側の差し込み片(以下,「前方差し込み片」という。)を設け,大型折り返し片の重なる側面壁には,側面視細長倒台形状の凹孔部を設け,後方側の下端寄りにも背面板を折り返して嵌合させた小型長方形状の嵌合折り返し片(以下,「嵌合折り返し片」という。)を設け,そのやや前方寄りに側面板を下方に延伸させて後方側の差し込み片(以下,「後方差し込み片」という。)を設けている点,(C)シェルの上面の開口部寄りにおいて,平面視中央に略縦長台形状の凹孔部を設け,その内側の面の先端部を縦断面視略逆倒S字状に折り曲げ,その左右に中央のものよりやや大きめの逆略縦長台形状の凹孔部を設け,その内側の面の先端部を縦断面視略倒S字状に折り曲げている点,(D)シェルの前方の開口部は,正面視すると,横長隅丸長方形状で,側面視すると,上下辺を前方に延伸させ,その先端が上辺は上向きに,下辺は下向きに折り曲げられている点,(E)インシュレーターをシェルの開口部の内側に設け,先端部の周囲を面取りして先細状とし,斜めから見ると,インシュレーターの開口部寄りに,縦長長方形状の浅い凹状面の接続端子を5個一列に配している点,において主に共通する。

(2)差異点
(ア)シェルの上面の開口部寄りの平面視左右両端部において,本願意匠は,略倒J字状の凹孔部を,逆略縦長台形状の凹孔部の左右に繋げて形成し,その内側の面の奥側の先端部を縦断面視略逆倒S字状に折り曲げ,それらを左右対称に形成しているのに対して,引用意匠は,平面視左右両端部に凹孔部も先端部を折り曲げた部分も形成していない点,(イ)前方差し込み片を除いた大型折り返し片の縦の長さについて,本願意匠は,開口部の側面から延伸した部分と同じ縦の長さで,側面視の縦横比が約1:1.8で縦の長さが短めであるのに対して,引用意匠は,開口部の側面から延伸した部分より下方まで縦の長さが延び,縦横比が約1:1.1で縦の長さが本願意匠より長めである点,(ウ)前方差し込み片及び後方差し込み片の態様について,本願意匠は,前方差し込み片及び後方差し込み片ともに,それらの下端部の中央部に略キノコ形状の切り込み部(以下,「切り込み部」という。)を設けて先割れ状に形成し,前方差し込み片を大型折り返し片と面一状としているのに対して,引用意匠は,下端部に切り込み部を設けず,前方差し込み片を縦細の短冊状とし,後方差し込み片をやや幅のある短冊状とし,いずれも下端部を先細状とし,正面視した場合に前方差し込み片を大型折り返し片より僅かに内側寄りに設けている点,(エ)シェルの側面の後方寄りについて,本願意匠は,嵌合折り返し片の上部に縦長長方形状の嵌合部材(以下,「嵌合部材」という。)が側面からも視認でき,後方差し込み片の上方に横長長方形状凹部が設けられているのに対して,引用意匠は,嵌合部材は視認できず,後方差し込み片の上方に略凹字状孔部を設けている点,(オ)インシュレーターの位置について,本願意匠は,開口部の内側上方寄りに設けているのに対して,引用意匠は,高さ方向中央寄りに設けている点,(カ)背面の態様について,本願意匠は,シェルの上面の板から3箇所の細い接続部を設けて下方に折り返して背面を覆い,やや下方寄りに倒U字状の切り欠き部を左右に設け,下方寄りの左右から嵌合折り返し片を設け,下端部に偏平略台形状の切り欠き部を設けているのに対し,引用意匠は,背面が不明である点,において主な差異が認められる。

4.類否判断
そこで検討するに,共通点(A)については,全体の基本構成であるが,全体を扁平な角筒状のシェルで覆い,その内側に接続端子を装填した略板状のインシュレーターを設け,シェルの側面の前後に下方に突出する略縦長短冊状の差し込み片を設けた態様は,この種の物品分野においては既に見られるもので,両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度に留まるものである。
次に,共通点(B)は,側面部における折り返し片や差し込み片の態様が共通しているが,さほど特徴のないもので,両意匠のみに共通する態様とまではいえず,両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度に留まるものである。
また,共通点(C)は,平面視中央に凹孔部やその内側の面の先端部を折り曲げた態様は共通するが,この種の物品分野においては,比較的ありふれた態様といえるものであり,さらに,共通点(D)のシェルの開口部の上下辺の態様や共通点(E)のインシュレーターの態様も,他の意匠にも見られる,ありふれた態様であり,これらの点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,いずれも微弱である。
そして,共通点全体として両意匠の類否判断に与える影響を考慮しても,両意匠の類否判断を決定付けるに至るということはできない。

これに対して,差異点に係る態様が相俟って生じる意匠的な効果は,両意匠の類否判断を決定付けるものである。
すなわち,差異点(ア)については,使用時に需要者の注意を強く惹くシェルの上面の開口部寄りの態様に係るもので,略倒J字状の凹孔部を,逆略縦長台形状の凹孔部の左右に繋げて形成し,その内側の面の奥側の先端部を縦断面視略逆倒S字状に折り曲げ,それらを左右対称に形成している本願意匠と,平面視左右両端部に凹孔部もなく先端部を折り曲げた態様でもない引用意匠とでは,明らかに需要者に与える全体の印象を異ならせるものであり,また,本願意匠の態様は,他に見られない特徴的なものであるから,その差異は,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものといえる。
次に,差異点(イ)については,本願意匠の大型折り返し片の縦横比は,本願意匠のみの格別の特徴とはいえないもので,他にも見られる態様ではあるが,開口部寄りの目に付き易い部分であり,その比率により引用意匠とは印象が異なるものであるから,その差異は,両意匠の類否判断にある程度の影響を与えるものといえる。
差異点(ウ)については,両意匠の差し込み片の形状は,いずれもありふれた態様といえるものであるが,形状の差異によって印象が異なり,また,差異点(エ)についても,嵌合部材や凹部の態様が両意匠の側面部の印象に影響を与え,そして,差異点(オ)についても,インシュレーターの位置は,いずれもありふれた態様といえるものであるが,位置の差異によって印象が異なり,さらに,差異点(カ)についても,背面は見えにくい面ではあるが,ある程度の面積を有する部位でもあることから,これらの差異点は,両意匠の類否判断に僅かずつではあるが影響を与えるものといえる。

以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通するが,その形態において,差異点が共通点を凌駕し,それが両意匠の意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。

5.むすび
したがって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当せず,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2014-05-16 
出願番号 意願2013-7864(D2013-7864) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 宮田 莊平 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 中田 博康
江塚 尚弘
登録日 2014-06-20 
登録番号 意匠登録第1502786号(D1502786) 
代理人 海田 浩明 

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