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審決分類 審判 補正却下不服   取り消さない B5
管理番号 1289632 
審判番号 補正2013-500001
総通号数 176 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2014-08-29 
種別 補正却下不服の審決 
審判請求日 2013-01-25 
確定日 2014-02-04 
意匠に係る物品 短靴 
事件の表示 意願2011- 21742「短靴」において、平成24年10月11日付けでした手続補正に対してされた補正却下決定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続の経緯
(1)意匠登録出願
本願は,2011年3月24日のアメリカ合衆国への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う,平成23年(2011年)9月22日付けの意匠登録出願である。その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「履物」とし,【意匠の説明】の欄には,「各図の表面部全面に表された濃淡は,いずれも立体表面の形状を特定するためのものである。図中にある『Crocs(TM)』のマークおよびクロコダイルのロゴは意匠の模様を構成するものではない。履物の特有の着色も意匠の色彩を構成するものではない。履物の底の接地面模様は意匠の模様を構成するものではない。フットベッドおよび底の材質の模様も意匠の模様を構成するものではない。内表面の模様も意匠の模様を構成するものではない。第2実施例の履物は,第1実施例の履物から縫い紐を取った状態を示すものである。」と記載され,願書に添付した図面代用写真には,白黒写真による6面図及び斜視図並びにカラー写真による第2実施例の6面図及び斜視図が現されていた。(別紙第1参照)
(2)1回目の拒絶の理由の通知
原審は,本願について,(ア)「この意匠登録出願の意匠は,願書及び添付図面の記載によると,第1実施例および第2実施例として表された二つの意匠に係るものと認められます。」(イ)「この意匠登録出願の願書の意匠に係る物品の欄によると『履物』と記載されていますが,本願の意匠に係る物品は,その他の願書の記載及び添付図面等を総合して判断すると,経済産業省令で定められている物品の区分である『短靴』と認められます。」として,意匠法第7条に規定する要件を満たしていない旨の,以上の点について記した拒絶の理由を平成23年12月1日付けで通知した。
(3)1回目の補正
これに対して出願人(本件審判請求人に同じ。以下,「請求人」という。)は,平成24年3月29日付けで手続補正書を提出し,願書の【意匠に係る物品】の欄の記載を「短靴」と変更し,第2実施例の写真を全図削除する補正をした。(別紙第2参照)
(4)2回目の拒絶の理由の通知
さらに,原審は,本願について,「この意匠登録出願の意匠は,願書の【意匠の説明】中に『図中にある『Crocs(TM)』のマークおよびクロコダイルのロゴは意匠の模様を構成するものではない。履物の特有の着色も意匠の色彩を構成するものではない。履物の底の接地面模様は意匠の模様を構成するものではない。フットベッドおよび底の材質の模様も意匠の模様を構成するものではない。内表面の模様も意匠の模様を構成するものではない。』との記載があるため,添付写真に表された意匠と一致せず,形状,模様,色彩及びそれらの組み合わせが不明確です。したがって,一の意匠を特定することができず,未だ具体的でないものと認められます。」として,意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当しない旨の,以上の点について記した拒絶の理由を平成24年7月10日付けで通知した。
(5)2回目の補正
これに対して出願人(本件審判請求人に同じ。以下,「請求人」という。)は,平成24年10月11日付けで意見書と共に手続補正書を提出し,願書に【部分意匠】の欄を追加し,【意匠の説明】の欄の記載を「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。各図中に表された細線はいずれも立体表面の形状を表す線であり,意匠の模様を構成するものではない。」と変更し,写真を全図削除し,図面を全図追加する補正をした。(別紙第3参照)
(6)2回目の補正に対する却下の決定
これに対して審査官は,「上記手続補正書により,願書に部分意匠の項目を追加し,意匠の説明を部分意匠としてのものに変更されました。また,添付図面も出願当初は濃淡を有する白黒写真で短靴全体を表したものを,当該補正によって濃淡及び色彩のない,破線と実線の描き分けのある線図に変更されました。
しかし,当該補正は,この意匠の属する分野における通常の知識に基づいて出願当初の願書の記載及び添付図面から総合的に判断しても導き出すことができず,また,本願意匠の要旨の認定に大きく影響を及ぼす部分であることから,上記手続補正書による補正は,出願当初の願書に添付した願書および図面の要旨を変更するものと認められます。」との理由により,意匠法第17条の2第1項の規定に基づき,平成24年10月23日付けで,この平成24年10月11日付け手続補正書によりした補正を却下すべきものと決定した。
(7)本件審判の請求
請求人は,平成24年10月11日付けの手続補正書によりした2回目の補正(以下,「本件補正」という。)に対する平成24年10月23日付けの却下の決定を不服として,本件審判を請求した。

2.当審の判断
本件補正は,手続補正1ないし5の補正が,同時になされたものであることから,それぞれの補正につき,本願の願書の記載及び願書に添付した写真の要旨を変更するものであるか否かについて,以下検討する。

(1)本件補正前の本願意匠について
(ア)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,「短靴」である。
(イ)形態
(a)形状及び模様
願書の【意匠の説明】の欄には,「各図の表面部全面に表された濃淡は,いずれも立体表面の形状を特定するためのものである。図中にある『Crocs(TM)』のマークおよびクロコダイルのロゴは意匠の模様を構成するものではない。」,「履物の特有の着色も意匠の色彩を構成するものではない。」,「履物の底の接地面模様は意匠の模様を構成するものではない。」「フットベッドおよび底の材質の模様も意匠の模様を構成するものではない。内表面の模様も意匠の模様を構成するものではない。」「第2実施例の履物は,第1実施例の履物から紐を取った状態を示すものである。」との記載がある。
この記載の文言の趣旨を,願書に添付した写真の内容と総合して判断するに,当該「履物」の全体形状のうち,「『Crocs(TM)』のマークおよびクロコダイルのロゴ」及び「底の接地面」に係る表面模様が一体的に結合した部分以外の部分について意匠登録を受けようとする,請求人の意思表示がなされていたものと解することができる。
また,「フットベッドおよび底の材質の模様」及び「内表面の模様」についても,係る表面模様が一体的に結合した部分以外の部分について意匠登録を受けようとする,請求人の意思表示がなされていたものと解することができる。
(b)色彩
願書の【意匠の説明】の欄には,「各図の表面部全面に表された濃淡は,いずれも立体表面の形状を特定するためのものである。」及び「履物の特有の着色も意匠の色彩を構成するものではない。」の記載がある。
この記載の文言の趣旨を,願書に添付した写真の内容と総合して判断するに,前者の記載は,各図の表面部全面に表された濃淡は,いずれも立体表面の形状を特定するための陰を表すものであって,本願において意匠登録を受けようとする意匠の構成要素ではないとしたものであり,後者の記載については,意匠法及び同法施行規則所定の形式には準じていないものの,白黒写真により現された意匠の表面の,甲皮部に見られる明調子と,周側面の紐に見られる暗調子の明度差については,本願において意匠登録を受けようとする意匠の構成要素として含めないようにしようとする,請求人の意思表示がなされていたものと解することができる。

(2)本件補正における各補正について
(ア)手続補正1及び手続補正2
手続補正1は,願書に【部分意匠】の欄を追加し,手続補正2は,【意匠の説明】の欄を変更し,意匠登録を受けようとする部分を特定する方法を追加したものであって,本願を物品の部分について意匠登録を受けようとする,いわゆる部分意匠の出願の形式とするものである。
そこで,本件補正前の願書の記載及び願書に添付した写真の内容を総合して判断するに,本件補正前の願書には,意匠法施行規則様式第2備考8に規定する【部分意匠】の欄は設けられておらず,願書に添付した写真には,同法同規則様式第7備考4で準用する,同法同規則様式第6備考11に則した,意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との塗り分け等もなされていない。
しかしながら,前述のとおり,本件補正前の願書の記載及び願書に添付した写真を総合して判断すれば,本願は,意匠1については,出願時から「『Crocs(TM)』のマークおよびクロコダイルのロゴ」及び「底の接地面」や「フットベッドおよび底の材質の模様」及び「内表面の模様」に係る表面模様が一体的に結合した部分以外の部分について意匠登録を受けようとする出願であったと認められる。
したがって,これらの補正は,本件補正前から物品の部分について意匠登録を受けようとしていたものを,適法な部分意匠の出願形式に改めたまでのものであるから,本願の願書の記載の要旨を変更するものではない。
(イ)手続補正3について
手続補正3については,意匠法第6条第2項の規定により意匠法施行規則様式第2備考31に基づき記載した願書の【提出物件の目録】の欄の【物件名】の欄の記載内容を変更するものであり,この記載は,意匠法第9条の2括弧書により,意匠法第17条の2第1項の規定にいう「願書の記載」からは除外されている記載事項であるから,当審における本願の願書の記載の要旨を変更するか否かの判断の対象とはしない。
(ウ)手続補正4及び手続補正5
次に,意匠1について,本件補正前の願書に添付した写真を,手続補正4により全図削除し,手続補正5により全図を線図として追加し,物品の部分について,意匠登録を受けようとする部分とその他の部分とを実線と破線とで描き分けた点について検討する。
(a)甲皮部に見られる明調子と,周側面の紐に見られる暗調子との明度差について
手続補正4及び5により,願書に添付した写真全図を削除し,全図を線図として追加したことで,本件補正前の願書に添付した写真に現わされていた甲皮部に見られる明調子と,周側面の紐に見られる暗調子の明度差が図面上に表されなくなっているが,前述のとおり,意匠1については,本件補正前から,甲皮部に見られる明調子と,周側面の紐に見られる暗調子との明度差を,意匠の構成要素として含めないものとして意匠登録を受けようとしていたものであるから,これを整合させたこの補正は,本願の願書に添付した写真の要旨を変更するものとは言えない。
(b)立体表面の形状を特定するための陰について
手続補正5により,全図を線図として追加した際に,各図中に細線による陰を描いた点については,本件補正前の願書に添付した写真において,濃淡で表していた立体表面の形状を特定するための陰を細線に置き換えただけであり,具体的な形状に変更は認められないことから,この点についても,本願の願書に添付した写真の要旨を変更するものとは言えない。
(c)意匠登録を受けようとする部分とその他の部分の具体的態様について
前記(1)(イ)(a)で述べたとおり,本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする出願であり,その意匠登録を受けようとする部分は,全体から「Crocs(TM)」のマーク,クロコダイルのロゴ及び底の接地面及びフットベッドおよび底の材質の模様及び内表面の模様に係る部分を除いた部分であると認められる。
そうすると,当該意匠登録を受けようとする部分以外の部分を破線により表した点については,適法な部分意匠の図面表現に改めたまでのものであるから,本願の願書に添付した写真の要旨を変更するものとは言えない。
しかしながら,甲皮部履き口の周側面に見られる暗調子の紐の態様について,本件補正前の願書に添付した写真に現された意匠には,横方向に筋状の凹凸模様が施され,甲皮部との対比が明確となっていたのに対して,手続補正5によって追加された図面には,この筋状の凹凸模様が全く表されていない。
この点について,本件補正前の願書の【意匠の説明】の欄には,甲皮部履き口の周側面に見られる暗調子の紐の筋状の凹凸模様を本願意匠の構成要素から除外しようとする旨の意思表示に係る記載は一切なされていない。
本願意匠の甲皮部履き口の周側面は,外方から明確に視認できる,需要者の注意を強く惹く重要な部位であって,意匠の認定に大きな影響を及ぼす部分であるから,手続補正5によって,甲皮部履き口の周側面に見られる紐の筋状の凹凸模様が表されていない図面を追加した補正は,この意匠の属する分野における通常の知識に基づいて判断しても,本件補正前の願書の記載及び願書に添付した写真から当然に導き出すことができない,同一の範囲を超えるものであるから,この補正は,本願の願書に添付した写真の要旨を変更するものと言わざるを得ない。

(3)小括
以上によれば,平成24年10月11日付けの手続補正書でなされた本件補正において,手続補正1及び手続補正2,並びに手続補正4による補正については,本願の願書の記載又は願書に添付した写真の要旨を変更するものではないが,手続補正5による補正は,本願の願書に添付した写真の要旨を変更するものである。

3.むすび
したがって,一の意匠についてした願書の記載又は願書に添付した図面,写真,ひな形若しくは見本について同時になされた補正は,これを一体として取り扱うべきものであるから,その一部に本願の願書に添付した写真の要旨を変更する補正を含む本件補正は,本願の願書の記載又は願書に添付した写真の要旨を変更するものと認められ,意匠法第17条の2第1項の規定により却下すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2013-09-10 
結審通知日 2013-09-11 
審決日 2013-09-25 
出願番号 意願2011-21742(D2011-21742) 
審決分類 D 1 7・ 7- Z (B5)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神谷 由紀 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 中田 博康
江塚 尚弘
登録日 2014-04-11 
登録番号 意匠登録第1497191号(D1497191) 
代理人 森下 夏樹 
代理人 山本 秀策 

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