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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 C4 |
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管理番号 | 1290583 |
審判番号 | 不服2013-22443 |
総通号数 | 177 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2014-09-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-11-15 |
確定日 | 2014-07-14 |
意匠に係る物品 | 歯ブラシ |
事件の表示 | 意願2013- 3825「歯ブラシ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする平成25年(2013年)2月25日付けの意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「歯ブラシ」とし,形態を,願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたもので,「実線であらわされている部分が意匠登録を受けようとする部分(当審注:以下「本願実線部分」という。)である。」としたものである(別紙第1参照)。 第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため,同法同条同項柱書の規定により意匠登録を受けることができない意匠)に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠は,本願出願前,日本国特許庁発行の公開実用新案公報(公開日:平成2年(1990年)11月27日)に記載された平成2年実用新案出願公開第141213号(考案の名称,凸曲面型歯ブラシ)の第1図,第3図及び第5図に表された「歯ブラシ」の意匠(以下「引用意匠」という。)であって,引用意匠の本願実線部分に相当する部分(以下「引用相当部分」という。)について類否判断の対象としたものであり,引用意匠の形態は,同公報に記載されたとおりのものである(別紙第2参照)。 第3 本願意匠と引用意匠の対比 1 意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「歯ブラシ」であり,引用意匠の意匠に係る物品も「歯ブラシ」であって,本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は同一である。 2 本願実線部分と引用相当部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲 本願実線部分は「歯ブラシ」の先端付近の毛束群であり,引用相当部分も「歯ブラシ」の先端付近の毛束群であるから,本願実線部分と引用相当部分(以下「両部分」という。)の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲は共通する。 3 両部分の形態 両部分の形態を対比すると,主として,以下の共通点と差異点が認められる。なお,本願実線部分の向きに合わせて引用相当部分の向きを認定する。 (1)共通点 両部分には,基本的構成態様として,以下の共通点が認められる。 (A)基本的構成態様について 両部分は正面形状と背面形状が対称に表され,平面から見て,横方向複数列,縦方向複数列の毛束から成るもので,正面から見ると,中央付近の毛束が高くなって毛束群全体として緩やかな略凸形状に表されており,また,側面から見ても,中央付近の毛束が高くなって毛束群全体として略凸形状に表されたものである。 また,具体的態様として,以下の共通点が認められる。 (B)正面から見た毛束の態様について 左右両端の毛束を除いた最前列の毛束の高さは,後方の毛束(側面視中央付近の毛束)の高さよりも低く形成されて,最前列の毛束の上方に後方の毛束の上端付近が見えている。 (C)正面から見た各毛束上辺の態様について 正面から見て,歯ブラシの持ち手側(左側)の各毛束の上辺が,下向きに傾斜しており,その傾斜の程度は,持ち手側の毛束になるにつれて大きくなっている。また,歯ブラシの先端側(右側)の各毛束の上辺が,下向きに傾斜しており,その傾斜の程度も,先端側の毛束になるにつれて大きくなっている。 (D)各毛束の太さについて 各毛束の太さは,全て同じである。 (2)差異点 一方,両部分には,具体的態様として,以下の差異点が認められる。 (ア)毛束の数,構成について 本願実線部分では,平面から見て,歯ブラシの最先端寄りに毛束が縦に二つ配され,それ以外は,毛束が縦に3列,横に7列格子状に並んでいるのに対して,引用相当部分では,最先端寄りの二つの毛束はなく,毛束が縦に4列,横に10列格子状に並んでいる。 (イ)正面から見た毛束の構成態様について 本願実線部分では,後方の毛束(側面視中央列の毛束)のうち,左右両端の毛束の高さが最前列の毛束の高さと同じであり,左右両端以外の六つの毛束が最前列の毛束よりも高く表されているのに対して,引用相当部分では,後方の毛束(側面視中央2列の毛束)の全てが,最前列の毛束よりも高く表されている。 (ウ)側面から見た毛束の構成態様について 本願実線部分では,中央の上記六つの毛束の高さがその左右の毛束の高さよりも高く,各毛束の上辺が水平状に形成されて,左-中央-右の毛束の上部形状が略階段状に表されているのに対して,引用相当部分では,中央二つの毛束の高さは両端の毛束の高さよりも高いものの,左端の毛束の上辺が左側に傾斜し,右端の毛束の上辺が右側に傾斜して,中央二つの毛束の上辺もごく僅かに左側又は右側に傾斜しているので,左端-中央左-中央右-右端の毛束の上辺が略凸弧状に表されている。 (エ)毛束の太さについて 本願実線部分の毛束の太さは,引用相当部分の毛束の太さに比べて太い。 第4 類否判断 1 意匠に係る物品 両意匠は,共に「歯ブラシ」であるから,意匠に係る物品は共通する。 2 両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲 前記認定したとおり,両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲は共通する。 3 形態の共通点の評価 両部分の形態の共通点のうち,正面視,側面視共に毛束群全体として略凸形状に表されて,最前列よりも後方の毛束(側面視中央付近の毛束)が高く,正面視各毛束上辺が傾斜している点は,歯ブラシの物品分野においては他にも見られる形態であり,また各毛束の太さを全て同じにすることもありふれているので,両部分の形態の共通点は,看者の注意を強く惹くものではない。したがって,両部分の形態の共通点が両部分の類否判断に決定的な影響を及ぼすということはできない。 4 形態の差異点の評価 一方,両部分の形態の差異点については,以下のとおり,両部分の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。 先ず,差異点(ア)については,本願実線部分の毛束の構成が引用相当部分とは明らかに異なっており,特に,本願実線部分の歯ブラシの最先端に配された平面視縦二つの毛束に対しては,最先端の箇所に位置していることによって看者の注意を惹くものであり,この二つの毛束の有無の差異が両部分の類否判断に及ぼす影響は大きい。 次に,差異点(イ)については,歯ブラシを手に持ったときに看者が最も観察しやすい正面形状に関する差異であって,本願実線部分の後方の毛束(側面視中央列の毛束)のうち,左右両端を除く六つの毛束が最前列の毛束よりも高く飛び出ている態様は,左右に段差部が顕現するのみならず,この六つの毛束が独立したまとまりとして上方に突出しているという視覚的印象を呈することとなり,後方の毛束(側面視中央2列の毛束)の全てが最前列の毛束よりも高く表された引用相当部分に比べて看者の注意を強く惹くものであるから,両部分の類否判断に及ぼす影響は大きい。 そして,差異点(ウ)については,その差異が側面方向からはっきりと看取されるものであって両部分の視覚的印象に変化を与えているというべきであり,また,差異点(エ)についても,外観から容易に把握できる形状の差異であるから,いずれも両部分の類否判断に及ぼす影響は大きい。 そうすると,(ア)ないし(エ)の差異点は,いずれも両部分の類否判断に大きな影響を及ぼすものであり,両部分の差異点は共通点を凌ぐものであるということができる。 5 小括 したがって,両意匠は,意匠に係る物品が同一であり,両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲も共通するが,両部分の形態においては,共通点が未だ両部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,差異点が両部分の類否判断に及ぼす影響は大きく,共通点が看者に与える美感を覆して両部分を別異のものと印象付けるものであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。 第5 むすび 以上のとおり,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同法同条同項の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2014-06-30 |
出願番号 | 意願2013-3825(D2013-3825) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(C4)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 杉山 太一 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
小林 裕和 綿貫 浩一 |
登録日 | 2014-08-29 |
登録番号 | 意匠登録第1507898号(D1507898) |
代理人 | 綿貫 隆夫 |