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審決分類 審判 査定不服  意10条1号類似意匠 取り消して登録 H7
管理番号 1290585 
審判番号 不服2013-23747
総通号数 177 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2014-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-12-03 
確定日 2014-07-29 
意匠に係る物品 携帯情報端末 
事件の表示 意願2013- 1017「携帯情報端末」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとし,本意匠を意願2013-1015号(意匠登録第1478622号)とする,平成25年(2013年)1月22日の関連意匠の意匠登録出願であって,その意匠(以下,本願意匠」という。)は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「携帯情報端末」とし,その形態は,願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりとするもので,「実線で表された部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」としたものである。(以下,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願意匠部分」という。)(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び本意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠は,願書に記載した本意匠に類似する意匠と認められないから,意匠法第10条第1項の規定に該当しないとしたものであって,本願の願書に記載した本意匠の意願2013-1015号(意匠登録第1478622号)は,物品の部分について意匠登録を受けようとして,平成25年(2013年)1月22日に意匠登録出願し,その後,平成25年(2013年)8月9日に意匠権の設定登録がされ,同年9月9日に意匠公報が発行されたものであって,その意匠(以下,「本意匠」という。)は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「電子計算機」とし,その形態を願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとするもので,「実線で表された部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」としたものである。(以下,本意匠が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本意匠実線部分」という。)(別紙第2参照)

第3 当審の判断
そこで当審において本願意匠の意匠法第10条第1項適用の可否,とりわけ,本願意匠が本意匠と類似するか否かについて検討する。

1.意匠に係る物品について
本願意匠に係る物品は「携帯情報端末」であり,本意匠に係る物品は「電子計算機」であり,両意匠に係る物品は,共に電子回路を備え,情報の入出力,計算等を行う情報処理機であって,共通する。
2.両意匠の部分の用途・機能,及び位置・大きさ・範囲について
まず,両意匠の部分(以下,本願意匠部分と本意匠実線部分とを「両部分」という。)を含む全体の形態について見てみると,全体は,両意匠とも,本体とスライド式に跳ね上げて開閉する蓋体から成り,本体は,平面視略横長長方形板体の,正面側,左右両側面側の三方について,その上方部をごく細幅の略垂直面として残し,残余の下方部を大きく斜めに切り欠いて,側壁から底面にかけて略切り面状の傾斜面とし,背面側は,上方大部分を垂直面として,最下方部をごく小さく斜めに切り欠いて,側壁から底面にかけて略切り面状のごく細幅の傾斜面とした形態であり,蓋体は,本体上面全面をぴったりと覆う薄板形状の形態であり,閉蓋状態では上面に表示部があり,蓋体を後方にスライドさせ跳ね上げると,蓋体が傾斜状に立ち上がって,表示部が前面に位置し,この表示部のある面は,外周に細幅の縁を設けて,その内側領域を透明とした態様である。

そこで,両部分について見てみると,その位置・大きさ・範囲は,両部分とも,蓋体については,後方細帯状部を除く前方寄り大部分の上面,正面,及び両側面部であり,本体については,蓋体の前記部分の下方に位置する前方寄り部分の,正面,両側面のごく細幅の略垂直面部である。
(なお,願書添付図面の本意匠実線部分には,蓋体に略U字状の破線が含まれているが,願書の意匠の説明には「実線で表された部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」と記載されているから,本意匠実線部分も,本願実線部分と同様に,実線と一点鎖線で囲まれた領域すべてが,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分であると解するのが最も合理的である。)

両部分の用途・機能は,共に,本体の筐体,蓋体の筐体,表示部,その枠であって,一致し,大きさは本意匠実線部分の方がやや大きいものの著しく異なる大きさではないから,位置・大きさ・範囲は,共通する。

3.両部分の形態について
主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。

共通点として,
(A)蓋体部は,平面視横長長方形下方(正面側)の両角に丸みを設けた,上面全面が平坦なごく薄い板状体であり,薄板状の厚みの略3分の2程度を略垂直面とし,下方略3分の1程度を内側に切り面状に面取りをしており,上面は外周の細幅の縁を除き,その内側全領域を透明部とした点,
(B)本体部は,平面視の形状が蓋体部と同形で,正面側及び両側面側上方の極細幅の略垂直面の厚み(高さ)が蓋体部の厚みより薄い点,がある。

相違点として,
(ア)平面視下方(正面側)左右角部の丸みの程度について,本願実線部分は,大きな角丸としているのに対して,本意匠実線部分は,ごく小さな角丸としている点,
(イ) 蓋体上面外周縁の幅について,本願実線部分は,やや細幅であるのに対して,本意匠実線部分は,極細幅である点,
(ウ)蓋体側面部下方の小凹陥部の有無について,本願実線部分には,凹陥部は無いのに対して,本意匠実線部分には,しゃくり面状の小凹陥部が,正面側両角及び正面中程2カ所の計4カ所に,略等間隔に設けられている点,がある。

4.本願実線部分と本意匠実線部分の類否判断
以上の一致点,共通点及び相違点が両部分の類否判断に及ぼす影響を評価・総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討するに,両意匠は,意匠に係る物品が共通し,両部分の用途・機能が一致し,位置・大きさ・範囲が共通している。

両部分の形態についての,共通点(A)及び同(B)は,いずれも部分全体の基本的構成態様に関するものであり,共通点(A)及び同(B)からなる部分全体の形態,すなわち,薄い板状体である本体上部とやはり薄板状の蓋体とが,ぴったり重ね合わされた形態であり,蓋体の薄板の下方略3分の1程度に設けられた切り面状の面取り部が,蓋と本体からなる全体の外側面周囲において,細溝を形成しており,薄板状の蓋体は,上面に表示部があり,全面が平坦で,外周縁を除いた内側全領域が透明部であるという態様は,この種物品,なかんずく蓋体を本体からスライドさせて開閉する意匠において従来見られなかった両部分特有の態様であり,共通点全体として,両部分に共通する強い視覚的効果を生み出して,看る者に強い共通の印象を与えているから,共通点(A)及び(B)が類否判断に及ぼす影響は非常に大きく,両部分の類否判断に支配的な影響を及ぼしている。

これに対して,平面視下方(正面側)左右角部の丸みの程度についての相違点(ア)については,本願実線部分の丸みの程度は,本意匠実線部分の丸みの程度より大きいものではあるが,この種物品においては,四隅を角張らせた形態も,四隅を丸くした形態も,略横長長方形板状体の機器の四隅の形態としては,共にごく普通の形態であり,また,本願実線部分に係る「携帯情報端末」についてみれば,携帯して使用するため,その四隅の丸みを大きくすることはごく普通であるから,角部の丸みの程度の差という相違点(ア)が,両部分の類否判断に及ぼす影響を大きいということはできない。

蓋体上面外周縁の幅についての相違点(イ)については,縁幅において相違はあるものの,意匠全体として見ると,いずれの縁も細い縁として認識される範囲の幅であり,また,両部分は,ともに縁の内側全領域を透明部とした態様が共通していて,一般的な観察方向である斜め上から観察するときにおいて,外周全体を細い縁で囲み,その内側全領域が透明部であるということから受ける共通の視覚的効果の中に,縁幅の僅かな相違は,埋没してしまう程度のものにすぎないから,相違点(イ)が類否判断に及ぼす影響は微弱である。

蓋体側面部下方の小凹陥部の有無についての相違点(ウ)については,小凹陥部自体,両部分全体の中では,ごく微細な面積しか占めず,またこの種の蓋を開閉して用いる機器において,蓋開閉の際の指掛け部として設けられるごく普通の形態にすぎないから,相違点(ウ)が類否判断に及ぼす影響は微弱である。

上記のとおり,共通点(A)及び同(B)は,類否判断に及ぼす影響が非常に大きく,両部分の類否判断に支配的な影響を及ぼしているのに対し,相違点(ア)ないし同(ウ)が両部分の類否判断に及ぼす影響はいずれも軽微なものであって,共通点(A)及び同(B)が看者に与える強い共通の印象を覆すほどのものではない。

本願は,出願日に関して,意匠法第10条第1項の要件を充足し,本願意匠と本意匠は,意匠に係る物品が共通し,両部分の用途・機能が一致し,位置・大きさ・範囲が共通している。そして,形態においても,両部分の共通点は類否判断に及ぼす影響が大きく,類否判断に支配的影響を及ぼしているのに対し,相違点が類否判断に及ぼす影響は軽微であり,共通点の印象は相違点の印象を凌駕しており,両部分は,部分全体として視覚的印象を共通にするというべきであり,本願意匠は,本意匠である意願2013-1015号(意匠登録第1478622号)の意匠に類似する。

第4 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第10条第1項に規定する意匠に該当するから,原審の拒絶理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2014-07-15 
出願番号 意願2013-1017(D2013-1017) 
審決分類 D 1 8・ 3- WY (H7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 濱本 文子 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 綿貫 浩一
江塚 尚弘
登録日 2014-08-22 
登録番号 意匠登録第1507715号(D1507715) 
代理人 西川 孝 
代理人 稲本 義雄 

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