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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 G2 |
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管理番号 | 1291575 |
審判番号 | 不服2014-954 |
総通号数 | 178 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2014-10-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-01-20 |
確定日 | 2014-08-18 |
意匠に係る物品 | 自動車用タイヤ |
事件の表示 | 意願2012- 23296「自動車用タイヤ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,2012年4月2日のアメリカ合衆国への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成24年(2012年)9月26日付けの意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「自動車用タイヤ」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりとし,「実線で表された部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。各図面のタイヤ表面に見られる梨地状の複数の点は,タイヤを立体的に表現するためのものであって,権利を要求する意匠の構成要素ではない。」としたもの(以下,本願において,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願実線部分」という。)である。(別紙第1参照) 第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであり,拒絶の理由に引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,欧州共同体商標意匠庁が発行した欧州共同体意匠公報2012年2月28日の「タイヤ(登録番号001991373-0007)」(http://oami.europa.eu//bulletin/rcd/2012/2012_042/001991373_0007.htm)の意匠(以下,本願実線部分に相当する引用意匠の実線部分を「引用実線部分」という。)であって,その形態は,同公報に掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照) 第3 当審の判断 1.本願意匠と引用意匠の対比 (1)意匠に係る物品 本願意匠と引用意匠(以下,「両意匠」という。)は,いずれもタイヤに係るものであるから,両意匠の意匠に係る物品は,共通する。 (2)本願実線部分と引用実線部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲 本願実線部分と引用実線部分(以下,「両意匠の実線部分」という。)は,いずれも全体が環状体をなすタイヤの,サイドウォール部を除いたトレッド部及びショルダー部の表面の部分であるから,両意匠の部分意匠としての用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲は,共通する。 (3)両意匠の実線部分の形態 両意匠の実線部分の形態を対比するにあたり,本願実線部分のトレッド部及びショルダー部を,周方向に施した3本の同じ幅の凹状縦溝で4つの区画に分割し,この左右両端の区画を「左右ショルダー区画」,その内側の区画を「左右内側区画」とし,引用実線部分についても4本の同じ幅の凹状縦溝で5つの区画に分割し,この左右両端の区画を「左右ショルダー区画」,その内側の区画を「左右内側区画」,中央の区画を「中央区画」として表記する。 また,引用意匠の図面について図の表示を本願意匠の図面に合わせることとし,引用意匠の「FIG-1」を「斜視図」とし,引用意匠の「FIG-2」を「正面図」とし,その他の図面もこれに準じて表されているものとする。 以上を踏まえ,両意匠の実線部分の形態を対比すると,両意匠の実線部分の形態には,主として以下の共通点及び相違点が認められる。 まず,共通点として, (A)両意匠の実線部分全体は,ショルダー部を丸く形成した環状体とし,周方向に施した同じ幅の凹状縦溝でトレッド部を複数の区画に分割した構成としたものであって, (B)左ショルダー区画は,浅い縦溝によって内側の細幅帯状体と外側の太幅帯状体に分けられ,細幅帯状体には,その左右辺に僅かな切り欠き部を等間隔に半ピッチずらした配置で形成し,右辺切り欠き部からは左辺に向かって小サイピングを形成し,太幅帯状体には,左右の縦溝間に左端部が上方に曲がったやや右下がりの横溝を細幅帯状体の左辺切り欠き部と対向する位置に形成し,この横溝の間に,太幅帯状体の約3/5の長さの大サイピングとそれを挟んだ2つの小サイピングを等間隔になるよう右辺に形成している点, (C)右ショルダー区画は,左ショルダー区画と点対称となるよう形成している点, (D)左内側区画は,左ショルダー区画より幅の狭い帯状体とし,左辺に僅かな切り欠き部を細幅帯状体の右辺切り欠き部と略半ピッチずらせて等間隔に形成し,左辺の切り欠き部から右辺まで右上がりの傾斜で略弓形状の溝部を形成し,右辺の略弓形状の溝部のやや下側の位置から,略弓形状の溝部と平行の小サイピングを形成し,左辺の略弓形状の溝部の中間の位置から,まず右上がりに傾斜し,この区画の約3/4の位置で略直角に折れ曲がり,略弓形状の溝部まで右下がりに傾斜するサイピングを形成している点, (E)右中間区画は,左中間区画と点対称となるよう形成している点, が認められる。 他方,相違点として, (ア)中央区画の有無について,本願実線部分には,トレッド部の中央部分に中央区画を設けていないのに対して,引用実線部分は,トレッド部の中央部分に左右内側区画とほぼ同じ幅の中央区画を設け,その左右辺に,僅かな切り欠き部を半ピッチずらした配置で等間隔に配設し,各切り欠き部の内側先端部から右下がりの傾斜の小サイピングを形成している点, (イ)左右内側区画の略弓形状の溝部の構成態様について,本願実線部分は,溝の幅がほぼ一定の細溝のみで構成した溝部としているのに対して,引用実線部分は,左右内側区画の外側から約3/4の位置までを細溝とし,その位置から内側の辺までをサイピングとした構成の溝部としている点, が認められる。 2.両意匠の実線部分の形態の評価 両意匠の実線部分の形態における上記共通点は,トレッド部及びショルダー部分における各区画の態様を個別に捉えたに過ぎないものであるから,この共通性のみをもって両意匠の実線部分の類否判断を決定することはできないものである。 これに対し,相違点(ア)中央区画の有無については,正面視における縦溝で区切られた細溝またはサイピングの配置態様が,左から順にやや右下がり,右上がり,右上がり,やや右下がりの構成となる本願実線部分と,左から順にやや右下がり,右上がり,右下がり,右上がり,やや右下がりの構成となり,中央区画の部分で切り返しが生じる構成となる引用実線部分とは,看者に与える印象が全く異なるものであるから,この相違点(ア)が両意匠の実線部分の類否判断に及ぼす影響は大きい。 次に,相違点(イ)左右内側区画の略弓形状の溝部の構成態様については,部分的な相違ではあるものの,一定の幅の細溝によって構成されたことで本願実線部分の当該区画が右上がりの構成であるとの強い印象を与えており,この相違点(イ)が両意匠の実線部分の類否判断に一定程度の影響を与えている。 そして,これらの相違点(ア)及び相違点(イ)が相まって生じる視覚的効果は,両意匠の実線部分を全体として見た場合,上記共通点の影響を凌ぎ,需要者に別異の美感を起こさせるものであると言うことができる。 3.両意匠の類否判断 上記のとおり,両意匠の意匠に係る物品については,共通し,両意匠の実線部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲についても,共通しているが,両意匠の実線部分の形態については,上記のとおり,相違点が類否判断に及ぼす影響が,共通点のそれを上回っており,全体として別異の印象を与えるものである。 したがって,本願意匠と引用意匠とは類似しないものと認められる。 第4 結び 以上のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものであるから,本願については,原査定における拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2014-07-25 |
出願番号 | 意願2012-23296(D2012-23296) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(G2)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 玉虫 伸聡 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
江塚 尚弘 斉藤 孝恵 |
登録日 | 2014-09-12 |
登録番号 | 意匠登録第1508802号(D1508802) |
代理人 | 特許業務法人深見特許事務所 |