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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 J2 |
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管理番号 | 1292710 |
審判番号 | 不服2014-7 |
総通号数 | 179 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2014-11-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-01-06 |
確定日 | 2014-08-26 |
意匠に係る物品 | 腕時計用側 |
事件の表示 | 意願2012- 7898「腕時計用側」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,平成23年(2011年)10月5日の世界知的所有権機関への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う,平成24年(2012年)4月4日付けの意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「腕時計用側」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照) 第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,本願出願前,日本国特許庁発行の意匠公報(意匠公報発行日:平成21年(2009年)8月31日)に記載された意匠登録第1368558号(意匠に係る物品,腕時計用側)の意匠であって,その形態は,同公報に記載されたとおりのものである。(別紙第2参照) 第3 請求人の主張の要点 (1)全体を,円形のケース部とそこから連続する態様で設けられたベルト取り付け部分,すなわち正面図視で上下端部に4本の突出部とその間の3つの凹部として表れる部分からなる構成の共通性は,本願意匠と引用意匠のみに見られるものではなく,広くこの種物品の他の意匠にも見られる基本的な態様であり,その共通性を高く評価して類否判断をすべきでない。 (2)正面側の円形ケース部の縁部の形状の相違やガラス部の丸みの有無の相違,ベルト取り付け部の端部が側面視において弧状で曲線的なものであるか角を有した直線的なものであるかという点,リューズの両脇に表された操作釦の形状の相違は,全体の基本的な構成にまったく埋没してしまうものではなく,類否判断において一定の評価をされるべきである。 (3)本体背面側に態様において,ベルト取り付け部の凹部がより深くえぐられた態様が共通すると高く評価している一方で,背面全体に大きく現れている透明部によって内部ムーブメントが見える構成であるか,単なる電池蓋を設けただけであるかの相違をまったく評価していないことは適切でない。 (4)したがって,本願意匠と引用意匠は,その形態において,基本的な構成において共通性はあるものの,各部の具体的な態様において相違があり,それらを総合すると,本願意匠と引用意匠とが類似するとは言えない。 第4 当審の判断 1.本願意匠と引用意匠の対比 (1)本願意匠と引用意匠の意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は,「腕時計用側」であり,引用意匠の意匠に係る物品は,「腕時計用側」であって,両意匠の意匠に係る物品は,一致する。 (2)本願意匠と引用意匠の形態 本願意匠と引用意匠の形態を対比すると,両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。 (i)共通点 (A)全体は,正面視円形状のケース部とそこに連なる態様で設けられた4つの凸部と3つの凹部からなる略櫛形状のベルト取り付け部からなる本体に,その一側面にリューズとそれを挟む2つの操作釦を配設している態様である点, 各部の具体的な態様として, (B)ベルト取り付け部の櫛形状の3つの凹部は背面側についてより深くえぐられている点, (C)リューズを縦縞状のローレットを施した略円筒形状としている点, (D)2つの操作ボタンを上下対称の板体状としている点, において共通する。 (ii)相違点 各部の具体的な態様として, (ア)本体の円形状のケース部とベルト取り付け部との連なる部分及びガラス部の側面視及び斜視した態様について, 本願意匠は,円形状のケース部が,ベルト取り付け部の緩やかに膨出する弧状の傾斜面より上方に立ち上がるように連なり一旦正面に平行な平坦面状を形成し,その内側に緩い膨出状のガラスに連なる段のある態様であるのに対して, 引用意匠は,円形状のケース部が,ベルト取り付け部の緩やかに膨出する弧状の傾斜面がそのまま連続するように連なり縁部分を形成し,そのすぐ内側から平坦面状のガラス部分に連なる段のない態様である点, (イ)ベルト取り付け部の先端部分の態様について, 本願意匠は,正面側が凹部が浅く,3つの凹部で作られる曲線がやや直線的であり,櫛状凸部の先端部分は側面視略半円状に丸みがついているのに対して, 引用意匠は,凹部が深く,3つの凹部で作られる曲線が円形状ケースと同心円状の曲率の高い弧状であり,櫛状凸部の先端部分は側面視略角形状で直線的である点, (ウ)操作釦の態様について, 本願意匠は,側面視においてほぼ横長直方体状とし,リューズの両側にほぼ水平状(正面と並行)に配されているのに対して, 引用意匠は,側面視においてそれぞれの釦の内側の辺を外側の辺より長くして、内外側両辺下端を外方に菱形様に変形したものとし,リューズの両側に両端側がつり上がるように配されている点, (なお,本願意匠と同様に,操作釦を直方体状とした先行意匠の例としては 意匠登録1321341号(2008年2月12日公報発行)がある。) (エ)リューズの態様について, 本願意匠は,円筒状の外周面に,基端部でつながり,円筒状の頂面には至らない,等幅の凹凸状からなる櫛状のローレットを施した態様としているのに対して, 引用意匠は,円筒状の外周面に,細幅溝をやや広めの等間隔に設けてローレットを施し,その2本ずつの溝を一組とする幅で外頂面の円状の稜線部分を略凹球面状に切り欠き側面視花弁様とした態様としている点, (オ)本体背面部分の態様について, 本願意匠は,本体のやや上方寄り位置に電池交換用の小円形状の蓋(中央には太い一の字状の開閉用の溝が施されている。)を配した態様であるのに対して, 引用意匠は,本体中央に円形状ケースの縁部を少し残して,大きな円形盤状の段部を突出して設け,該円形盤状の段部を本体の内部ムーブメントが見えるように透明とした態様(ただし,引用意匠に係る登録意匠公報の記載中,「意匠の説明」として具体的に透明である旨は記されていない。)である点, において相違する。 2.本願意匠と引用意匠の類否判断 以上の一致点,共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価,総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。 両意匠は,意匠に係る物品は一致するが,形態については,以下のとおりである。 (1)共通点の評価 基本的構成態様としてあげた共通点(A)は,両意匠の形態を概括的に捉えた場合の共通点であって,ありふれたものであるから,これらの点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を大きいということはできない。また,具体的な態様としてあげた共通点(B)ないし(D)も,この種物品の先行意匠に照らすとやや概括的な共通性にとどまるもの,あるいはありふれた態様であって,両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱であり,共通点全体としても,両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。 (2)相違点の評価 これに対して,相違点(ア)は,全体の中で両意匠を印象づける中核を構成する部分であって,具体的構成態様に係る相違点(イ)と相まって「腕時計用側」という物品にあってはそのベルト取り付け部から本体ケース部,ガラス面が成すその具体的な構成を評価すべきであり,また具体的構成態様に係る相違点(ウ)は,目に付き易い部位に係るものであるから,本願意匠の操作釦の形状の方が直方体状をより大きく変形した特徴的なものであって,本願意匠のそれは比較的特徴のないものであったとしても,曲線部の有無は横長変形台形状という共通する態様の中での変形にとどまるものとはいえず,これらの相違点が相まって両意匠の類否判断に及ぼす影響はそれぞれあるというほかない。 そして,相違点(ア)ないし(ウ)が相まった視覚的効果を考慮すると,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕して,両意匠は,意匠全体として視覚的印象を異にするというべきである。 なお、相違点(エ)は操作釦の間にある小さなリューズという細部における細かな違いであって,それは全体の類否判断に極わずかな影響しか及ぼさず,また相違点(オ)については,確かに形態上の大きな違いではあるものの,本願意匠の電池蓋を設けた態様,引用意匠のような内部が透視できる態様は,従来から見られるありふれた態様であり,また腕時計の使用状態からも表(正面)側の態様を高く評価せざるを得ないものであって,裏(背面)側のその態様の相違が類否判断に及ぼす影響はわずかなものにとどまるとするのが妥当である。 (3)小括 したがって,両意匠は,意匠に係る物品は,一致するが,形態においては,共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであって,両意匠の類否判断に及ぼす影響が微弱であるのに対して,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響はそれぞれ一定程度あり,相違点が相まって生じる視覚的効果は,共通点が生じさせている共通感を凌駕しており,意匠全体として観察した場合,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。 第5 むすび 以上のとおりであって,原査定の引用意匠をもって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,同条同項柱書によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2014-08-12 |
出願番号 | 意願2012-7898(D2012-7898) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(J2)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 原田 雅美、温品 博康 |
特許庁審判長 |
本多 誠一 |
特許庁審判官 |
橘 崇生 中田 博康 |
登録日 | 2014-10-03 |
登録番号 | 意匠登録第1510444号(D1510444) |
代理人 | 吉村 仁 |