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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H1
管理番号 1292718 
審判番号 不服2014-1198
総通号数 179 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2014-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-01-23 
確定日 2014-09-24 
意匠に係る物品 発光ダイオード 
事件の表示 意願2013- 3516「発光ダイオード」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は,部分意匠として意匠登録を受けようとする,平成17年(2005年)8月5日の特許出願2010-285016号から変更した平成25年(2013年)2月20日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「発光ダイオード」とし,その形態は,願書の記載及び願書添付の図面に記載されたとおりのもので,「実線で表わされた部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」(以下,本願において,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願実線部分」という。)としたものである。(別紙第1参照)

2.原査定における拒絶の理由および引用意匠
原査定において,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとして,拒絶の理由に引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,特許庁が平成13年(2001年)8月20日に発行された意匠公報掲載の意匠登録第1118710号「発光ダイオード」の意匠において,本願の意匠登録を受けようとする部分に相当する部分の意匠(以下,引用意匠において本願意匠の本願実線部分に相当する部分を「引用相当部分」という。)であって,その部分の形態は,同公報に掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照)

3.両意匠の対比
(1)意匠に係る物品
両意匠を対比すると,まず,意匠に係る物品については,両意匠は,いずれも発光チップを有するダイオードを封止部材で覆った「発光ダイオード」であり,両意匠の意匠に係る物品は一致する。
(2)用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲
本願実線部分と引用相当部分(以下,「両部分」という。)は,偏平な直方体状の基板に設けた発光ダイオードを覆う透光部である封止部材部分(以下,「封止部材」という。)のうち,発光チップからの光が照射される上面側の曲面部分の本願実線部分と引用相当部分に係るものであるから,両部分の意匠の用途及び機能は共通する。
位置,大きさ及び範囲については,両部分は,部分全体を発光チップからの光が照射される封止部材の上面側の曲面部分の一部に係るものとし,封止部材の同様の機能を有する曲面部分であるという点については共通するが,(2-1)両部分が封止部材に占める割合について,本願実線部分は,正面視において上面側の頂部から約2/3までの部分まで設けられているのに対して,引用相当部分は,上面側の頂部から約1/2までの部分に設けられている点,(2-2)両部分が平面視において基板に占める割合について,本願実線部分は正方形状の基板の上下の幅の約1/2まで,左右ほぼ一杯までを占めているのに対して,引用相当部分は,略横長長方形状の基板の上下左右の各幅の約3/5までを占めている点,(2-3)両部分が正面視において意匠全体に占める割合について,本願実線部分は,端子部まで含めると正面視の約1/6であるのに対して,引用相当部分は,約1/3である点,(2-4)両部分とそれ以外の封止部材の平面視の配置態様について,本願実線部分は,基板と接する封止部材の外縁と相似形状であるのに対して,引用相当部分は,平面視した上下中央の位置に,略台形柱状の低い封止部材を組み合わせたものの上方部分である点で,その位置,大きさ及び範囲に差異が認められる。
(3)形態
両部分の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び差異点がある。
なお,両部分の意匠を同じ方向から対比するため,引用意匠を本願意匠の向きに揃えたものとして,以下,それぞれ形態を認定・対比する。
(3-1)共通点
(A)部分全体を封止部材の上面側の曲面部分とし,平面視を横に倒した略雪だるま状としている点,
(B)正面視を,凸円弧状の同形のこぶ部(以下,「こぶ部」という。)を二こぶラクダの背のように左右対称に一列に配している点,
において主に共通する。
(3-2)差異点
(ア)平面視の形状について,本願実線部分は,中央付近の括れ部が緩やかな凹円弧状であるのに対して,引用相当部分は,中央付近の括れ部が2つの円形の中心を少し離して重ね合わせた形状である点,
(イ)正面視の形状について,本願実線部分は,中央の谷部が緩やかな凹円弧状であるのに対して,引用相当部分は,中央の谷部が2つの円弧をつなげた形状である点,
において主な差異が認められる。

4.類否判断
(1)意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は共通する。
(2)用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲
両部分の意匠の用途及び機能は共通する。
両部分の位置,大きさ及び範囲が異なる点については,この種の部品的な物品分野において,基板や端子部の態様との関係を全く考慮せずに部分のみについての類否判断を行うことは不可能であり,その位置,大きさ及び範囲は,使用時に需要者が大きな関心を持つ部位に係るもので,封止部材の約2/3を占める本願実線部分と,約1/2占める引用相当部分は,明らかに範囲が異なるものであって,両部分とそれ以外の封止部材の配置態様の差異と相俟って,需要者に別異な印象を与えるものであり,その差異は,両部分の類否判断に大きな影響を与えるものといえる。
(3)形態
(3-1)共通点の評価
そこで検討するに,共通点(A)については,部分全体の基本構成であるが,曲面部分の平面視を横に倒した略雪だるま状とした態様は,この種の物品分野においては他にも見られるもので,両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度に留まるものである。
また,共通点(B)は,凸円弧状の同形のこぶ部を正面視において左右対称に一列に配している態様について共通しているが,この種の物品分野においては引用意匠の出願前から既に他にも見られるもの(例えば,参考意匠1,意匠登録第863931号の類似第6号(別紙第3参照))で,両意匠のみに共通する態様とはいえず,両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度に留まるものである。
そして,共通点全体として両部分の意匠の類否判断に与える影響を考慮しても,両部分の意匠の類否判断を決定付けるに至るということはできない。
(3-2)差異点の評価
これに対して,差異点に係る態様が相俟って生じる意匠的な効果は,両部分の意匠の類否判断を決定付けるものである。
すなわち,差異点(ア)については,平面視を横に倒した略雪だるま状とした態様は,本願や引用意匠出願前より既に見られる態様であることを考慮すると,中央付近の括れ部が緩やかな凹円弧状である本願実線部分の態様は,その緩やかさが今までのものとは異なっており,括れ部の形状が異なる引用相当部分とでは,需要者に与える印象が異なり,その差異は,両部分の意匠の類否判断に影響を与えるものといえる。
また,差異点(イ)についても,正面視の上端部分の形状は,細部に係るものではあるが,使用時に需要者が注意を払う部位といえるもので,中央の谷部が緩やかな凹円弧状である本願実線部分の態様は,その凹円弧状部の緩やかさにおいて,他には見られない態様であって,中央の谷部が2つの円弧をつなげた形状である引用相当部分とは,上記差異点(ア)と相俟って,両意匠に異なる印象を与えるものであるから,その差異は,両部分の意匠の類否判断に影響を与えるものといえる。
(4)小括
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通し,両部分の意匠の用途及び機能が共通するものであるが,両部分の位置,大きさ及び範囲が異なっており,両部分の形態においても,差異点が共通点を凌駕し,それが両意匠の意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。

5.むすび
したがって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当せず,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲

審決日 2014-09-09 
出願番号 意願2013-3516(D2013-3516) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 清水 玲香 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 小林 裕和
江塚 尚弘
登録日 2014-10-10 
登録番号 意匠登録第1510979号(D1510979) 
代理人 森山 隆 

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