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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 M1
管理番号 1292727 
審判番号 不服2014-6906
総通号数 179 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2014-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-04-14 
確定日 2014-10-14 
意匠に係る物品 合成樹脂板材 
事件の表示 意願2013- 5213「合成樹脂板材」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,平成25年(2013年)3月8日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「合成樹脂板材」とし,形態を,願書の記載及び願書に添付した図面代用写真に現されたとおりとしたもので,「この意匠は,平面図において四方に連続する。底面図は,平面図と同一に表れるため省略する。本物品は,透明又は半透明の合成樹脂で形成された板材である。平面図に表した部分の大きさは,縦44mm,横66mmである。」としたものである(別紙第1参照)。

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため,同条同項の規定により意匠登録を受けることができない意匠)に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠は,本願出願前,日本国特許庁発行の公開特許公報(公開日:平成12年(2000年)6月6日)に記載された2000年特許出願公開第153507号(発明の名称,交互に表裏方向に押し出した形状の板)の【図10】に表されている板材の意匠である(別紙第2参照)。

第3 本願意匠と引用意匠の対比
1 意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「合成樹脂板材」であり,上記公開特許公報の記載によれば引用意匠の意匠に係る物品は板状構造物であって,本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は共通する。

2 両意匠の形態
両意匠の形態を対比すると,主として,以下の共通点と差異点が認められる。なお,本願意匠の向きに合わせて引用意匠の向きを認定する。
(1)共通点
両意匠には,基本的構成態様として,以下の共通点が認められる。
(A)基本的構成態様について
両意匠は,三角錐台状の凹凸が平面視上下方向及び左右方向に交互に表れている薄板(以下「凹凸板」という。)の上下に,平板状の薄板を結合させたものである。
また,具体的態様として,以下の共通点が認められる。
(B)凹凸板の頂面及び底面の態様について
凸部の頂面は全て上向きの正三角形であり,凹部の底面は全て下向きの正三角形であって,頂面正三角形の底辺と底面正三角形の底辺が向き合い,頂面正三角形の頂点と底面正三角形の頂点が向き合うように配列されている。
なお,上記公開特許公報の【図10】によれば,凹凸板の右端部に下向き三角形の一部が表れている底面があるので,底面にも頂面と同様の形状が表れることは明らかである。
(2)差異点
一方,両意匠には,具体的態様として,以下の差異点が認められる。
(ア)凹凸板の頂面正三角形と底面正三角形の相対的大きさについて
本願意匠では,頂面正三角形と底面正三角形の部分全体に占める面積が大きく,三角形の間に形成される斜面の幅が三角形の一辺の長さよりも小さい。これに対して,引用意匠では,頂面正三角形と底面正三角形の部分全体に占める面積は小さく,三角形の間に形成される斜面の幅が三角形の一辺の長さよりも大きい。
(イ)頂面正三角形間の逆正三角形部の有無について
本願意匠では,平面から見て,横に並ぶ2つの頂面正三角形と,その中間の下方にある頂面正三角形の,互いに近接する頂点を結んで成る,頂面正三角形の約1/2の大きさの逆正三角形部が透けて見えているのに対して,引用意匠にはそのような小さい逆正三角形部はない。
(ウ)本願意匠は,全体が透明又は半透明であり,平面から見て凹凸板が透けて見えるのに対して,引用意匠は透明又は半透明ではなく,凹凸板が透けて見えない。
(エ)連続の有無について
本願意匠は平面図において四方に連続するのに対して,引用意匠は連続しない。

第4 類否判断
1 意匠に係る物品
前記認定したとおり,両意匠の意匠に係る物品は共通する。

2 形態の共通点の評価
両意匠の形態の共通点,すなわち,凹凸板の上下に,平板状の薄板を結合させたものであって,凹凸板は三角錐台状の凹凸が平面視上下方向及び左右方向に交互に表れている薄板である点,及び凹凸板の頂面正三角形の底辺と底面正三角形の底辺が向き合い,頂面正三角形の頂点と底面正三角形の頂点が向き合うように配列されている点は,円錐台形状の凹凸が平面視上下方向及び左右方向に交互に表れている中間部を有する意匠が本願の出願前に既に見受けられる(意匠登録第1259579号。別紙第3参照。)ものの,三角錐台状の凹凸という共通点が顕著であって,看者に一定の視覚的印象を与えるというべきであるから,両意匠の形態の共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められる。

3 形態の差異点の評価
一方,両意匠の形態の差異点については,以下のとおり,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。
先ず,差異点(ア)については,頂面正三角形と底面正三角形の相対的大きさの差異は一見して分かる差異であるから,看者に異なる視覚的印象を与えるというべきである。したがって,差異点(ア)は,両意匠の類否判断に一定の影響を及ぼす。
次に,差異点(イ)については,本願意匠に見られる逆正三角形部が,頂面正三角形の約1/2の大きさであって目立つものであり,それが複数並んでいることによって看者の注意を惹くこととなり,両意匠の美感を異にするものであるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
他方,差異点(ウ)については,合成樹脂板材の分野において,全体を透明又は半透明にしたものが既に見受けられる(意匠登録第1259579号。別紙第3参照。)ことから,透明又は半透明であるか否かの差異が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。また,差異点(エ)についても,上記公開特許公報の記載によれば,引用意匠の凹凸板が,連続的に凹凸を繰り返す形状となることを特徴としたものであることを勘案すると,特定の大きさに板を区切ることに特徴を有するものとはいい難く,【図10】に表されている意匠が特定の大きさであるとしても,繰り返しが連続して大きな凹凸材(及び上下の平板状薄板)になることもあり得ることから,連続の有無の差異が両意匠の類否判断を左右するものということはできない。
そうすると,(ア)及び(イ)の差異点は,いずれも両意匠の類否判断に影響を及ぼすものであり,特に,差異点(イ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいことから,両意匠の差異点は共通点を凌ぐものであるということができる。

4 小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品が同一であるが,両意匠の形態においては,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められるものの,差異点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きく,共通点が看者に与える美感を覆して両意匠を別異のものと印象付けるものであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。

第5 むすび
以上のとおり,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同法同条同項の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2014-09-30 
出願番号 意願2013-5213(D2013-5213) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (M1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 杉山 太一 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 小林 裕和
綿貫 浩一
登録日 2014-10-24 
登録番号 意匠登録第1512465号(D1512465) 
代理人 特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所 

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