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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 G2
管理番号 1293641 
審判番号 不服2014-4107
総通号数 180 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2014-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-03-03 
確定日 2014-10-14 
意匠に係る物品 自動車用ホイール 
事件の表示 意願2012- 31007「自動車用ホイール」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,平成24年(2012年)12月19日付けの意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「自動車用ホイール」とし,その形態を願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠

原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとするものであり,本願意匠が類似するとして引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,2001年(平成13年)1月15日発行の日本国特許庁意匠公報に掲載された,意匠登録第1096679号の意匠であって,意匠に係る物品を「自動車用ホイール」とし,その形態は,同公報に記載されたとおりのものである。(別紙第2参照)

第3 当審の判断

1.本願意匠と引用意匠の対比
本願意匠と引用意匠(以下,「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,いずれも「自動車用ホイール」であるから,両意匠の意匠に係る物品は,一致する。

次に,両意匠の形態を対比すると,両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。
なお,ホイールのアウター側を前方側とし,インナー側を後方側とすることとする。

まず,共通点として,
(A)全体は,略短円筒状のリム部(以下,「リム部」という。)の前方側端部内側に,ディスク部(以下,「ディスク部」という。)を形成したスポークタイプのホイールの構成とし,
(B)リム部は,側面全周がくびれ,リム部前後側端部に,前方側に突縁部を持つ細幅のリムフランジ(以下,「フランジ部」という。)を形成し,リム部のディスク部やや内側部分に段差部(以下,「バンプ部」という。)を一段設けている点,
(C)ディスク部は,ディスク中央部に背面部をホイール取り付け面とした肉厚のハブ(以下,「ハブ部」という。)を設け,ハブ部前面部からリム部前方側端部に向かって5本の略V字状のスポーク(以下,「スポーク部」という。)を,放射線状に等間隔に形成している点,
(C-1)ハブ部は,中央部に円孔状のハブ穴(以下,「ハブボア部」という。)を1つ形成し,各スポーク部間の谷状の接合部(以下,「スポーク部間接合部」という。)を外縁へ向かって緩やかな下り傾斜面とし,隣り合うスポーク部間には頂点を円弧状に形成した正面視略扇形の大きな開口部(以下,「扇状開口部」という。)が表れている点,
(C-2)スポーク部は,左右のスポークを狭角度の先端部は接しない略V字形状となるよう配設し,左右スポーク間の中心部側の接合部(以下,「スポーク間接合部」という。)に,縁部分が正面視略U字状となるように段差部を1段設け,その先端部に円孔状のホイールナット用の穴(以下,「ナットホール部」という。)を1つ配設したものであって,左右スポークで挟まれた部分の内側には略長円形状の開口部(以下,「略長円状開口部」という。)が表れている点,
が認められる。

他方,相違点として,
(ア)スポーク部の態様について,本願意匠は,幅の狭い左右スポークの前端部分に帯状の平坦部を形成し,断面視を略台形状とし,左右スポークのなす角度を小さくし,略平行な配置としているのに対して,引用意匠は,やや幅広で断面視を略山形状とし,左右スポークのなす角度を本願意匠よりやや大きくしている点,
(イ)スポーク部とフランジ部との接合部の態様について,本願意匠は,スポーク部とフランジ部をバンプ部前面部分からフランジ部突縁部分の範囲で接合し,スポーク部前端面部分とフランジ部突縁部前端面部分を面一に一体的に接合して形成しているのに対して,引用意匠は,バンプ部とフランジ部の間のリム部内周にスポーク部を接合して形成している点,
(ウ)フランジ部からバンプ部までのリム部内周部分の態様について,
本願意匠は,フランジ部からバンプ部までの内周部分を円筒形状に形成しているのに対して,引用意匠は,外に広がる湾曲面で形成し,扇状開口部を配した湾曲面のほぼ中間部分に,エアバルブ用の円孔部を1つ形成している点,
(エ)スポーク間接合部の態様について,本願意匠は,左右スポーク間の接合部を,正面視略U字状に切り欠き,一段下がった平面状としているのに対し,引用意匠は,ナットホール部から略長円状開口部に向かって緩やかな下り傾斜面としている点,
(オ)スポーク部間接合部に形成した小円孔の有無について,本願意匠には,小円孔を設けていないのに対して,引用意匠は,当該接合部のハブボアとハブ部外縁の中間部分にそれぞれ小円孔を1つずつ形成している点,
が認められる。

2.両意匠の形態の評価
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価し,本願意匠と引用意匠が類似するか否か,すなわち両意匠の類似性について考察する。

まず,共通点(A)の全体の態様,共通点(B)のリム部の態様,並びに,(C-1)のハブ部の態様及び(C-2)のスポーク部の態様を含む共通点(C)のディスク部の態様は,スポークタイプの自動車用ホイールの意匠の骨格的な構成態様にあたるものであり,また,各部の態様も本願意匠の出願前に既に見られるものでもあるので,これらの共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱であると言わざるを得ない。
そして,これらの共通点は,全体としてみても,両意匠の類似性についての判断を決定付けるまでには至らないものである。

これに対し,相違点(ア)スポーク部の態様,(イ)スポーク部とフランジ部との接合部の態様,及び,(ウ)フランジ部からバンプ部までのリム部内周部分の態様については,フランジ突縁部まで続く略平行な2本一組のスポークでスポーク部を構成した本願意匠の態様は,略長方形状のスポーク部を5本放射線状に等間隔に設けた印象を与えるため,リム部内側にV字状のスポーク部を設けた花弁のごとき印象を与える引用意匠のものとは,別異な印象を与えるものであるから,これら相違点(ア)ないし(ウ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
また,相違点(エ)スポーク間接合部の態様については,正面視略U字状の切り欠きが表れる一段下がった平担部によって,本願意匠のスポーク部の左右スポーク間の構成には引用意匠にはない強い一体感が生じている印象を与えるものであるから,この相違点(エ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響も大きい。
さらに,(オ)スポーク部間接合部に形成した小円孔の有無については,僅かな程度の差ではあるが,使用時には目に付く部位における差異であるため,これらの相違点は,上記の各相違点とともに,両意匠の類否判断に一定の影響を与える。
そして,これらの相違点(ア)ないし(オ)が相まって生じる視覚的効果は,意匠全体として見た場合,上記共通点の影響を凌ぎ,需要者に別異の美感を起こさせるものであると言うことができる。

3.両意匠の類否判断
上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品については一致するものの,形態においては,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱であるのに対して,相違点が類否判断に及ぼす影響はそれぞれ大きく,相違点が相まって生じる視覚的効果は,共通点のそれを凌駕して,類否判断を支配しているものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。

第4 むすび

以上のとおりであるから,原査定の引用意匠をもって,本願意匠を意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,本願については,原査定の拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2014-09-30 
出願番号 意願2012-31007(D2012-31007) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (G2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 前畑 さおり 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 江塚 尚弘
斉藤 孝恵
登録日 2014-11-21 
登録番号 意匠登録第1514202号(D1514202) 
代理人 杉村 憲司 

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