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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 G2
管理番号 1293642 
審判番号 不服2014-4108
総通号数 180 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2014-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-03-03 
確定日 2014-10-21 
意匠に係る物品 自動車用ホイール 
事件の表示 意願2012- 31459「自動車用ホイール」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,平成24年(2012年)12月25日付けの意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「自動車用ホイール」とし,その形態を願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠

原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであり,本願意匠が類似するとして引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,本願出願前,特許庁普及支援課が2010年11月18日に受け入れた,中華人民共和国意匠公報 2010年9月22日10-38号に記載の「自動車用ホイール(公開番号CN301352170S)」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH22009604号)であって,その形態は,同公報に掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照)

第3 当審の判断

1.本願意匠と引用意匠の対比
本願意匠と引用意匠(以下,「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,いずれも「自動車用ホイール」であるから,両意匠の意匠に係る物品は,一致する。

次に,両意匠の形態を対比すると,両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。
なお,対比のため,本願意匠の図面における正面,背面等の向きを,引用意匠にもあてはめ,ホイールのアウター側を前側とし,インナー側を後ろ側とすることとする。

まず,共通点として,
(A)全体は,略短円筒状のリム部(以下,「リム部」という。)の前側端部内側に,ディスク部(以下,「ディスク部」という。)を形成したスポークタイプのホイールの構成とし,
(B)リム部は,側面全周がくびれ,リム部前後側端部に,リムフランジ(以下,「フランジ部」という。)を形成し,ディスク部形成部分の後方側に段差部(以下,「バンプ部」という。)を一段設けている点,
(C)ディスク部は,ディスク中央部に背面部をホイール取り付け面とした肉厚のハブ(以下,「ハブ部」という。)を設け,ハブ部側面部からリム部前側端部に向かって,10本のスポーク(以下,「スポーク部」という。)を,隣り合うスポークがなす角度を狭角度の略V字形状となるように放射線状に等間隔に形成し,各スポーク部の間に正面視略扇形状の開口部(以下,「略扇形開口部」という。)が表れている点,
(D)ハブ部は,前面中央部分を略鍋状に窪ませて凹部(以下,「中央凹部」という。)を形成し,その中央凹部中心部分に円孔状のハブ穴(以下,「ハブボア部」という。)を1つ設け,中央凹部外周部分からややはみ出るように円孔状のホイールナット用の穴(以下,「ナットホール部」という。)を等間隔に5つ設けている点,
(E)スポーク部は,スポークの側面部分に段差を1段設け,段差部を含めたスポーク部の正面視形状若しくは背面視形状が,先細りとなるよう形成している点,
が認められる。

他方,相違点として,
(ア)フランジ部の態様について,本願意匠は,幅の狭いフランジ部を断面視円弧状のラッパの口状になるよう形成し,フランジ部外周部分前方側に突縁部を設けているのに対して,引用意匠は,幅広のフランジ部を断面視略L字状のやや角張った段差状となるよう形成している点,
(イ)スポーク部とフランジ部との接合部の態様について,本願意匠は,バンプ部前方側のリム部内周面部分からフランジ部突縁部内周面部分の範囲に,スポーク部先端部とフランジ部突縁部内周面との左右接合部分をなだらかに円弧状に接合して形成しているのに対して,引用意匠は,バンプ部前面部分から平板なフランジ部内周面部分の範囲に,スポーク部先端部前端面部分とフランジ部前面部分を面一に一体的に接合して形成している点,
(ウ)スポーク部の態様について,本願意匠は,ハブ部側接合部寄りのスポーク部前面部分を括れた形状に形成し,フランジ部突縁部内周面部分からスポーク側面部を通り,ハブ部側面部下部に渡り形成された,背面側に傾斜した段差部を1段形成しているのに対して,引用意匠は,ハブ部側が幅広なスポーク部を先細に形成し,バンプ部前面部分から立ち上がり,側面部中央部分を通り,ハブ部側面部に渡り形成された段差部を1段形成している点,
(エ)略扇形開口部の態様について,本願意匠は,底を円弧状とした略放物線状に形成しているのに対して,引用意匠は,上底部分を略逆台形状とし,下底部分を円弧状とした略等脚台形状となるよう形成している点,
(オ)中央凹部の態様について,本願意匠は,中央凹部を,中心部に円孔のある,僅かに前方に盛り上がった略頭切円錐状に形成しているのに対して,引用意匠は,中心部に段差が2段ある円孔を設けた円板状に形成している点,
が認められる。

2.両意匠の形態の評価
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価し,本願意匠と引用意匠が類似するか否か,すなわち両意匠の類似性について考察する。

まず,共通点(A)の全体の態様,及び共通点(B)ないし(E)の各部の態様は,スポークタイプの自動車用ホイールの意匠の骨格的な構成態様にあたるものであり,また,各部の態様も本願意匠の出願前に既に見られるものでもあるので,これらの共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱であると言わざるを得ない。
そして,これらの共通点は,全体としてみても,両意匠の類似性についての判断を決定付けるまでには至らないものである。

これに対し,相違点(ア)フランジ部の態様,及び,相違点(イ)スポーク部とフランジ部との接合部の態様については,放射線状に形成されたスポーク部が幅の狭いフランジ部を覆う印象を与える本願意匠の態様と,幅広のフランジ部の内側に放射線状に形成されたスポーク部を嵌め込んだ印象を与える引用意匠のものとは,看者に別異な印象を与えるものであるから,これら相違点(ア)及び相違点(イ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
次に,相違点(ウ)スポーク部の態様については,スポーク部前面部分を括れた形状としたもの及び段差部を背面側に傾斜させて形成した態様は,本願意匠のみに見られるものであって,単に先細のスポーク部とし,段差部を側面中央部のありふれた位置に形成した引用意匠のものとは,別異な印象を与えるものであるから,この相違点(ウ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響も大きい。
また,相違点(エ)略扇形開口部の態様については,略扇形開口部の中心角部分が略円弧状に表れ,曲線で構成された印象を与える本願意匠の態様と,略逆台形状に表れ,角張った印象を与える引用意匠のものとは,看者に別異な印象を与えるものであるから,相違点(ウ)と相まって,この相違点(エ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響も一定程度ある。
さらに,相違点(オ)中央凹部の態様についても,僅かな程度の差ではあるが,使用時には目に付く部位における差異であるため,これらの相違点は,上記の各相違点とともに,両意匠の類否判断に一定の影響を及ぼす。
そして,これらの相違点(ア)ないし(オ)が相まって生じる視覚的効果は,意匠全体として見た場合,上記共通点の影響を凌ぎ,需要者に別異の美感を起こさせるものであると言うことができる。

3.両意匠の類否判断
上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品については一致するものの,形態においては,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱であるのに対して,相違点が類否判断に及ぼす影響はそれぞれ大きく,相違点が相まって生じる視覚的効果は,共通点のそれを凌駕して,類否判断を支配しているものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。

第4 むすび

以上のとおりであるから,原査定の引用意匠をもって,本願意匠を意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,本願については,原査定の拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2014-10-07 
出願番号 意願2012-31459(D2012-31459) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (G2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 前畑 さおり 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 江塚 尚弘
斉藤 孝恵
登録日 2014-11-28 
登録番号 意匠登録第1514634号(D1514634) 
代理人 杉村 憲司 

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