• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 G2
管理番号 1293643 
審判番号 不服2014-4101
総通号数 180 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2014-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-03-03 
確定日 2014-10-21 
意匠に係る物品 自動車用ホイール 
事件の表示 意願2012- 31005「自動車用ホイール」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,平成24年(2012年)12月19日付けの意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「自動車用ホイール」とし,その形態を願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠

原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであり,本願意匠が類似するとして引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,特許庁普及支援課が2008年3月13日に受け入れた,中華人民共和国意匠公報 2008年1月9日08-02号に記載の「自動車用ホイール(公開番号CN300729883)」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH20000284号)であって,その形態は,同公報に掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照)

第3 当審の判断

1.本願意匠と引用意匠の対比
本願意匠と引用意匠(以下,「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,いずれも「自動車用ホイール」であるから,両意匠の意匠に係る物品は,一致する。

次に,両意匠の形態を対比すると,両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。
なお,対比のため,本願意匠の図面における正面,背面等の向きを,引用意匠にもあてはめ,ホイールのアウター側を前側とし,インナー側を後ろ側とすることとする。

まず,共通点として,
(A)全体は,略短円筒状のリム部(以下,「リム部」という。)の前側端部内側に,ディスク部(以下,「ディスク部」という。)を形成したスポークタイプのホイールの構成とし,
(B)リム部は,側面全周がくびれ,リム部前後側端部に,前側に突縁部を持つ細幅のリムフランジ(以下,「フランジ部」という。)を形成し,ディスク部形成部分の後方側に段差部(以下,「バンプ部」という。)を一段設けている点,
(C)ディスク部は,ディスク中央部に背面部をホイール取り付け面とした肉厚のハブ(以下,「ハブ部」という。)を設け,ハブ部側面部からリム部前側端部に向かって,スポーク2本を狭角度となるように配して一対とした略V字状のスポーク(以下,「Vスポーク部」という。)を,放射線状に等間隔に複数形成している点,
(D)ハブ部は,中央部を略鍋状に一段窪ませて,その中心部に円孔状のハブ穴(以下,「ハブボア部」という。)を外周縁部分に突出部を設けて1つ形成し,その周囲に円孔状のホイールナット用の穴(以下,「ナットホール部」という。)を等間隔に5つ配設している点,
(E)Vスポーク部は,外周に向かって先細りとなる2つのスポークからなり,左右スポーク間には,正面視略扇形状の幅の狭い開口部(以下,「略扇形開口部」という。)が表れ,隣り合うVスポーク部間には,上辺を略円弧状に形成した正面視略等脚台形状の開口部(以下,「略台形状開口部」という。)が表れている点,が表れている点,
が認められる。

他方,相違点として,
(ア)Vスポーク部の態様について,本願意匠は,スポークの側面部を後ろ側に向かって下り急斜面状に形成した,幅広のVスポーク部を5つ形成しているのに対して,引用意匠は,スポークの左右側面部を後ろ側に向かってほぼ垂直面状に形成した,幅の狭いVスポーク部を6つ形成している点,
(イ)Vスポーク部とフランジ部との接合部の態様について,本願意匠は,バンプ部前面部からフランジ部内周面部分の範囲に,Vスポーク部接合部の左右縁部分を裾広がりの形状で接合して形成しているのに対して,引用意匠は,バンプ部前面部分からフランジ部突縁部分の範囲に,Vスポーク部前端面部分とフランジ部突縁部前端面部分を面一に一体的に接合して形成している点,
(ウ)略扇形開口部の配置態様について,本願意匠は,略角丸等脚台形状に形成しているのに対して,引用意匠は略角丸二等辺三角形状に形成している点,
(エ)略扇形開口部及び略台形状開口部の配置態様について,本願意匠は,略台形状開口部上辺が略扇形開口部頂点よりリム部中心方向に僅かに入り込んだ位置に配設しているのに対して,引用意匠は,略台形状開口部上辺と略扇形開口部の頂点のリム部中心からの距離がほぼ等しい点,
(オ)ナットホール部の配置態様について,本願意匠は,Vスポーク部中心側先端部とハブボア部のほぼ中間部分にナットホール部をそれぞれ形成しているのに対して,引用意匠は,Vスポーク部の配置態様とは関係なく等間隔に形成している点,
が認められる。

2.両意匠の形態の評価
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価し,本願意匠と引用意匠が類似するか否か,すなわち両意匠の類似性について考察する。

まず,共通点(A)の全体の態様,及び共通点(B)ないし(E)の各部の態様は,スポークタイプの自動車用ホイールの意匠の骨格的な構成態様にあたるものであり,また,各部の態様も本願意匠の出願前に既に見られるものでもあるので,これらの共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱であると言わざるを得ない。
そして,これらの共通点は,全体としてみても,両意匠の類似性についての判断を決定付けるまでには至らないものである。

これに対し,相違点(ア)Vスポーク部の態様,(イ)Vスポーク部とフランジ部との接合部の態様については,スポーク側面部の傾斜面の広がりやリム部接合部分の裾広がりも加味すると肉厚で重厚なVスポーク部を,フランジ部より内側に嵌め込んで配した印象を与える本願意匠の態様は,先端部をフランジ突縁部と一体的に形成したスリムな先細りのVスポーク部を,リム部前面部分に配した印象を与える引用意匠のものとは,別異な印象を与えるものであるから,これら相違点(ア)及び相違点(イ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
次に,相違点(ウ)略扇形開口部の態様については,ハブ部外周部分を略直線部分のみで囲む本願意匠の態様と,略直線部分と鋭い略円弧部分とで交互に囲む引用意匠の態様とは,看者に別異な印象を与えるものであるから,この相違点(ウ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
また,相違点(エ)略扇形開口部及び略台形状開口部の配置態様については,直径方向の長さが異なる大小の開口部を交互に配した本願意匠の態様は,単に大小開口部を同心円状に配しただけの引用意匠にはない躍動感を生じさせるものであり,両意匠に対し別異な印象を与えるものであるから,相違点(ウ)と相まって,この相違点(エ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響も大きい。
さらに,(オ)ナットホール部の配置態様についても,僅かな程度の差ではあるが,使用時には目に付く部位における差異であるため,これらの相違点は,上記の各相違点とともに,両意匠の類否判断に一定の影響を与える。
そして,これらの相違点(ア)ないし(オ)が相まって生じる視覚的効果は,意匠全体として見た場合,上記共通点の影響を凌ぎ,需要者に別異の美感を起こさせるものであると言うことができる。

3.両意匠の類否判断
上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品については一致するものの,形態においては,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱であるのに対して,相違点が類否判断に及ぼす影響はそれぞれ大きく,相違点が相まって生じる視覚的効果は,共通点のそれを凌駕して,類否判断を支配しているものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。

第4 むすび

以上のとおりであるから,原査定の引用意匠をもって,本願意匠を意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,本願については,原査定の拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2014-10-02 
出願番号 意願2012-31005(D2012-31005) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (G2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 前畑 さおり 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 江塚 尚弘
斉藤 孝恵
登録日 2014-11-28 
登録番号 意匠登録第1514633号(D1514633) 
代理人 杉村 憲司 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ