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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 M1 |
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管理番号 | 1296081 |
審判番号 | 不服2014-6902 |
総通号数 | 182 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2015-02-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-04-14 |
確定日 | 2014-12-09 |
意匠に係る物品 | 生地 |
事件の表示 | 意願2013- 13728「生地」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,平成25年(2013年)6月18日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「生地」とし,形態を,願書及び願書に添付した図面代用写真に現されたとおりとしたもので,願書の記載によれば,「「表面図」において上下左右に連続するものである。また,「裏面図」は,無模様につき省略する。」としたものである(別紙第1参照)。 第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため,同条同項の規定により意匠登録を受けることができない意匠)に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠は,本願出願前,日本国特許庁普及支援課が平成23年(2011年)9月20日に受け入れた,大韓民国特許庁が2011年8月11日に発行した大韓民国意匠公報(11-15号)に掲載された,登録番号第30-0608964号「ブラインド用織物地」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH23425392号)である(別紙第2参照)。 第3 本願意匠と引用意匠の対比 1 意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「生地」であり,引用意匠の意匠に係る物品も「ブラインド用織物地」であるから,本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は共通する。 2 両意匠の形態 両意匠の形態を対比すると,主として,以下の共通点と差異点が認められる。なお,本願意匠の向きに合わせて引用意匠の向きを認定する。 (1)共通点 (A)全体の構成態様について 全体が,長方形による略市松模様であって,やや幅の太い縦枠が長方形の左右に等間隔に配されている。 (B)略縦長長方形状部について 略市松模様は,横幅が同一である複数の略縦長長方形状部により構成されており,その略縦長長方形状部は,暗調子の明度を有するものと明調子の明度を有するものが上下左右に交互に配されている(以下,それぞれ「暗調子長方形部」,「明調子長方形部」という)。 (2)差異点 (ア)略縦長長方形状部の形状について 本願意匠の複数の略縦長長方形状部は,全て同形同大であって,縦幅が横幅の約1.5倍であるのに対して,引用意匠では,暗調子長方形部の縦幅が明調子長方形部の縦幅よりもやや大きく表されており,暗調子長方形部の縦幅が横幅の約2倍強であり,明調子長方形部のそれは約2倍弱である。そして,引用意匠では,その暗調子長方形部と明調子長方形部の縦幅の差によって,両者の境界線(横線)が左右方向に凸凹状に表されているが,本願意匠の同境界線は一直線状に表されている。 (イ)略縦長長方形状部の色彩について 本願意匠の暗調子長方形部は,焦げ茶色と栗色の2種類の色彩で表されており,焦げ茶色の暗調子長方形部が縦に並ぶ列と,栗色の暗調子長方形部が縦に並ぶ列が,左右に交互に配されているのに対して,引用意匠の暗調子長方形部は,焦げ茶色の色彩のみで表されている。また,本願意匠の明調子長方形部は薄い茶色で表されているが,引用意匠の明調子長方形部は白木色で表されている。 (ウ)縦枠の態様について 本願意匠の縦枠の横幅は略縦長長方形状部の横幅の約1/5であって,黒色で表されているのに対して,引用意匠のそれは約1/6であって,濃い栗色で表されている。 第4 類否判断 1 意匠に係る物品 前記認定したとおり,両意匠の意匠に係る物品は共通する。 2 形態の共通点の評価 「生地」や「織物地」の物品分野において,明度の異なる略縦長長方形状部を上下左右に交互に配して全体を略市松模様にした意匠は,本願の出願前に既にありふれたものであるので,看者は,略市松模様であるという両意匠の共通点にことさら注意を払うということはできない。したがって,両意匠の共通点(A)及び(B)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。 3 形態の差異点の評価 一方,両意匠の形態の差異点については,以下のとおり評価され,差異点を総合すると,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。 まず,差異点(ア)については,本願意匠の略縦長長方形状部の横幅に対する縦幅の比が引用意匠よりも小さいことから,本願意匠の略縦長長方形状部が引用意匠に比べて上下方向に詰まった印象を看者に与えることになり,差異点(ウ)の縦枠の横幅の比の差異(本願意匠の方が比が大きい)とあいまって,本願意匠では,引用意匠よりも左右方向の広がり感を看者に与えているが,引用意匠では,縦長の長方形が強調され,左右方向よりも上下方向の印象を看者に与えている。 また,暗調子長方形部と明調子長方形部の境界線(横線)が左右方向に凸凹状に表されて不連続状に配されている引用意匠と,同境界線が一直線状に表されて連続状に配されている本願意匠とでは,看者に与える印象が大きく異なり,同境界線が左右に不連続である引用意匠においては,上述の上下方向の印象が更に強調されるので,左右方向の広がり感を呈する本願意匠とは別異の美感を看者に抱かせることになる。 したがって,差異点(ア)及び(ウ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。 次に,差異点(イ)については,本願意匠の暗調子長方形部が焦げ茶色と栗色の2種類の色彩で表され,明調子長方形部の薄い茶色と併せると,3種類の色彩が表れていることから,本願意匠は,2色しかない引用意匠に比べて,看者に対して豊かな彩り感を与えることになる。そして,本願意匠では,焦げ茶色,栗色及び薄い茶色の3種の茶系色により,看者に暖かみのある印象を与えているのに対して,引用意匠では,焦げ茶色と白木色の2色であるので,本願意匠に比べてやや無機的な印象を看者に与えているということができる。したがって,差異点(イ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。 そうすると,(ア)ないし(ウ)の差異点は,いずれも両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものであることから,両意匠の差異点は共通点を凌ぐものであるということができる。 4 小括 したがって,両意匠は,意匠に係る物品が同一であるが,両意匠の形態においては,差異点を総合すると両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きく,共通点が看者に与える美感を覆して両意匠を別異のものと印象付けるものであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。 第5 むすび 以上のとおり,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同法同条同項の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2014-11-27 |
出願番号 | 意願2013-13728(D2013-13728) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(M1)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 杉山 太一 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
小林 裕和 綿貫 浩一 |
登録日 | 2015-01-09 |
登録番号 | 意匠登録第1516898号(D1516898) |
代理人 | 杉本 勝徳 |