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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 M2
管理番号 1296099 
審判番号 不服2014-5694
総通号数 182 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2015-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-03-27 
確定日 2015-01-20 
意匠に係る物品 配線・配管材保持具 
事件の表示 意願2013- 10438「配線・配管材保持具」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は,本意匠を意願2013-10437号とする関連意匠の意匠登録出願としたもので,平成25年(2013年)年5月13日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「配線・配管材保持具」とし,その形態を願書及び願書に添付された図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

2.原査定における拒絶の理由および引用意匠
原査定において,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとして,拒絶の理由に引用された意匠は,2013年4月に未来工業株式会社から発行された内国カタログ 「2013-14 ミライ管材総合カタログ VOL.15」 第193頁所載の該当頁上から2つ目の写真と,その右横に表された寸法図及び関連する記載により表された「サヤ管連サドル(樹脂製)」の意匠であって,その形態は,同ページに掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照)

3.両意匠の対比
両意匠を対比すると,まず,意匠に係る物品については,本願意匠は,「配線・配管材保持具」で,引用意匠は,「サヤ管連サドル」であるが,両意匠は,流体の保護管を複数並べて保持するものであり,両意匠の意匠に係る物品は共通する。
両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び差異点がある。
なお,両意匠を同じ方向から対比するため,引用意匠を本願意匠の向きに揃えたものとして,以下,それぞれ形態を認定・対比する。
(1)共通点
(A)全体を正面視すると細帯板状を偏平な略Ω(オーム)形状に形成したもので,左右に取り付け部(以下,「取り付け部」という。)を水平状に設け,管を押さえる略偏平アーチ状部分(以下,「押さえ部」という。)の下面の正面側及び背面側の縁部の左右中央から下方に向かって薄い板状の突出片(以下,「突出片」という。)を設けている点,
(B)押さえ部から取り付け部までの上面側を,その周縁部を一段低くして中央部を帯状に高く形成している点,
(C)取り付け部に略円形状のビス留め用の孔部を一つずつ設けている点,
において主に共通する。

(2)差異点
(ア)正面視した全体の縦横比について,本願意匠は,約1:5.4であるのに対して,引用意匠は,約1:3.3である点,
(イ)突出片の形状と数について,本願意匠は隅丸逆三角形状が二つであるのに対して,引用意匠は,略逆富士山形状が一つである点,
(ウ)押さえ部の内側の態様について,本願意匠は,内側全体が平坦面状で,取り付け部近くの垂直面に横長の略三角柱形状の凸状部があり,押さえ部のアーチ状部の底面の前後中央に,突出片によって隠れる辺りに2箇所隙間を空けて細い突条を配しているのに対して,引用意匠は,内側の周縁部に外側と反対の段差部を設けた態様で,取り付け部近くの前後の周縁部の垂直面に正面視円弧状の凸状部を形成し,押さえ部のアーチ状部の底面の正面視左右寄りの入り隅部付近に細い突条を配している点,
(エ)平面視した取っ手部と押さえ部との長さ比について,本願意匠は,約1:8.3で押さえ部が長めであるのに対して,引用意匠は,約1:3.2で押さえ部が短めである点,
(オ)本願意匠の取っ手部の孔部は,周囲から内側に向けて等間隔に4つの小さな三角形状の突起部を有しているのに対して,引用意匠の孔部には,そのような突起部がなく円孔である点,
において主な差異が認められる。

4.類否判断
そこで検討するに,共通点(A)については,全体の基本構成であるが,全体を正面視すると細帯板状を偏平な略Ω形状に形成したもので,左右に取り付け部を水平状に設け,略偏平アーチ状の押さえ部の下面の正面側及び背面側の縁部の左右中央から下方に向かって薄い板状の突出片を設けた態様は,この種の物品分野においては両意匠以外にも見られるもので,両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度に留まるものである。
次に,共通点(B)についても,押さえ部から取り付け部までの上面側を,その周縁部を一段低くして中央部を帯状に高く形成している態様が共通しているが,他の意匠にも見られる,さほど特徴のない,ありふれた態様であり,両意匠のみに共通する態様とはいえず,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
また,共通点(C)についても,取り付け部に略円形状のビス留め用の孔部を設けている態様が共通しているが,この種の物品分野においては両意匠以外にも普通に見られるありふれたもので,目立つ部分ともいえず,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱なものに過ぎない。
そして,共通点全体として両意匠の類否判断に与える影響を考慮しても,両意匠の類否判断を決定付けるに至るということはできない。

これに対して,差異点に係る態様が相俟って生じる意匠的な効果は,両意匠の類否判断を決定付けるものである。
すなわち,差異点(ア)については,正面視した全体の構成比に係る差異であり,使用時に需要者の注意を強く惹く全体の基本的な構成に係るものであって,全体形状が偏平で横長形状である本願意匠と全体形状がさほど偏平ではない引用意匠とでは,明らかに需要者に与える全体の印象を異ならせるものであり,その差異は,両意匠の類否判断に影響を与えるものといえる。
次に,差異点(イ)についても,突出片の形状と数については,使用時に需要者が大きな関心を持つもので,引用意匠は,円形状の管を二つ並列できるような形状であるのに対して,本願意匠は,楕円形状の管を三つ並列できるような形状であって,突出片の形状と数の差異によって需要者に別異な印象を与えるものであり,その差異は,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものといえる。
そして,差異点(ウ)については,押さえ部の内側の態様については,内側という,使用時には目に付きにくい部位についての差異ではあるが,管を押さえる部分の態様については,押さえ部の内側の態様の差異がその押さえの強度などに影響を及ぼす部位であるため,需要者の注意を強く惹く部分といえ,内側であってもその差異は無視することができず,また,平坦な本願意匠と段差を設けた引用意匠の態様とは,底面側から見た全体の印象が異なるものであり,凸状部の形状や細い突条の位置の差異と相俟って,その差異は,両意匠の類否判断に影響を与えるものといえる。
そして,差異点(エ)についても,押さえ部を長く設けた本願意匠の態様は,それが楕円形状の管を三つ並列できるようにしたものであって,そのような保護管の保持具は今までに見られなかったのであるから,その比率の違いについても,使用時には需要者が注意を払う部位における差異であるといえることから,全体の印象に影響を与えるものといえ,その差異は,両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものといえる。
さらに,差異点(オ)については,孔部の周囲から内側に向かう突起部の有無という部分的で微細な差異であるが,差異点(エ)の態様と相俟って平面視した印象に影響を与えるものといえ,この点における差異は,両意匠の類否判断に僅かではあるが影響を与えるものといえる。

以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通するが,その形態において,差異点が共通点を凌駕し,それが両意匠の意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。

5.むすび
したがって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当せず,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2015-01-07 
出願番号 意願2013-10438(D2013-10438) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (M2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 住 康平 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 江塚 尚弘
斉藤 孝恵
登録日 2015-01-30 
登録番号 意匠登録第1518592号(D1518592) 
代理人 特許業務法人 Vesta国際特許事務所 

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