• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 D3
管理番号 1297212 
審判番号 不服2014-17329
総通号数 183 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2015-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-09-01 
確定日 2015-02-06 
意匠に係る物品 天井直付け灯 
事件の表示 意願2013- 25426「天井直付け灯」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,平成25年(2013年)10月31日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を,願書の記載によれば「天井直付け灯」とし,形態を,願書の記載及び願書に添付した図面代用写真に現されたとおりとしたもので,願書の記載によれば,「透光性を有する部分を示す参考底面図において,緑色に着色された部分は透光性を有する。」としたものである(別紙第1参照)。

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため,同条同項の規定により意匠登録を受けることができない意匠)に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠(以下「引用意匠」という。)は,以下の意匠である(別紙第2参照)。
特許庁意匠課が1991年 9月26日に受け入れた
yamagiwa 1991年 4月 1日
第256頁所載
天井じか付け灯の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HC03036880号)

第3 本願意匠と引用意匠の対比
1 意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「天井直付け灯」であり,引用意匠の意匠に係る物品も「天井じか付け灯」であるから,本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は同一である。

2 両意匠の形態
両意匠の形態を対比すると,主として,以下の共通点と差異点が認められる。なお,本願意匠の向きに合わせて引用意匠の向きを認定する。
(1)共通点
両意匠には,基本的構成態様として,以下の共通点が認められる。
(A)基本的構成態様について
全体が,略円盤形状であって,略円筒形状の基台部の下面に,発光部を覆う透光性を有するグローブ部を嵌合させて一体としたものである。
また,具体的態様として,以下の共通点が認められる。
(B)基台部の態様について
基台部は直径よりも高さが低い短円筒の形状であり,底面から見て,グローブ部を除く周囲が2重線状に表れている。
(C)グローブ部の態様について
グローブ部は,底面視円形状であり,下方に向けて略凸曲面状に膨らんでいる。

(2)差異点
一方,両意匠には,具体的態様として,以下の差異点が認められる。
(ア)基台部の構成比率について
本願意匠の基台部の直径:高さの比は約3:1であるが,引用意匠のそれは約7:1である。
(イ)基台部の形状
本願意匠の基台部の上面中央には,右側部前方寄りに略縦長直方体状の解除ボタンを有する略直方体状のシーリングキャップが上方にやや突出するように埋設され,基台部上面の右下部が平面視略1/4扇状に浅く切り欠かれていることから,その解除ボタンを含むシーリングキャップの右側部前方付近が正面右斜め方向から見えるように現されている。これに対して,引用意匠の基台部上面の形状は不明である。
(ウ)グローブ部の構成態様について
本願意匠のグローブ部の膨らみは,正面から見て,中央にいくにつれて膨らみの曲率が低減されて,中央付近が略フラット状に形成されているのに対して,引用意匠のグローブ部の膨らみの態様は不明である。また,正面から見た本願意匠のグローブ部の膨らみの高さ:基台部の高さの比は約1:3であるが,引用意匠のそれは不明である。

第4 類否判断
1 意匠に係る物品
前記認定したとおり,両意匠の意匠に係る物品は同一である。

2 天井直付け灯の意匠の類否判断
天井直付け灯を看者が観察するに当たっては,主として底面及び底面斜め方向からその天井直付け灯を眺めるので,看者は底面と側面の態様を特に観察することになる。また,小型の天井直付け灯においては,看者は天井に取り付けたり取り外したりする着脱方法の簡便性についても関心を持つところ,天井直付け灯がどのように着脱できるかが形状として底面又は側面方向から看取されるならば,その形状に対しても注意を払うことになる。したがって,天井直付け灯の意匠の類否判断においては,上記の項目を特に評価し,かつそれ以外の項目も併せて,各項目を総合して意匠全体として形態を評価する。

3 形態の共通点の評価
両意匠の共通点(A)ないし(C)で指摘した,基台部とグローブ部が一体となった略円盤形状である基本的構成態様,短円筒状の基台部の態様,及び下方に膨らんだグローブ部の態様については,天井直付け灯の物品分野において,本願の出願前に既に見受けられることから,看者の注意を惹くものとはいえない。したがって,共通点(A)ないし(C)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。

4 形態の差異点の評価
一方,両意匠の形態の差異点については,以下のとおり評価され,差異点を総合すると,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。
まず,差異点(ア)で指摘した,基台部の直径:高さの比の差異については,基台部の高さに対する直径の大きさが,本願意匠では引用意匠の1/2以下であるから,看者は底面と側面からその差異をはっきりと認識できるというべきであり,差異点(ア)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
次に,差異点(イ)は,側面方向から看取される,切り欠きとその奥に見える解除ボタンを含むシーリングキャップの有無に関する差異であって,本願意匠では設置時においても切り欠きによってシーリングキャップが見えるように配慮されていること,及びその切り欠きとシーリングキャップが見えるように本願意匠の販売を行っている例(別紙第3参照)があることから,本願意匠の基台部の形状に対しては看者は高い関心を持つことになるというべきであるので,差異点(イ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
他方,差異点(ウ)で指摘した,グローブ部の膨らみについて中央付近が略フラット状であるか否かの差異,及び基台部に対するグローブ部の高さの差異は,天井直付け灯の物品分野においては膨らみの程度が異なる様々な曲率のグローブ部を有する意匠が本願の出願前に既に見受けられることを踏まえると,看者が特段注視する差異であるとはいい難いので,差異点(ウ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
そうすると,(ア)及び(イ)の差異点は,いずれも両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものであり,差異点(ウ)の影響が小さいものであるとしても,両意匠の差異点を総合すると,両意匠を別異のものと印象付けるものであるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいということができる。

5 小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品が同一であるが,両意匠の形態においては,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響が小さいのに対して,差異点は総じて両意匠の類否判断に及ぼす影響が大きいので,本願意匠は引用意匠に類似するということはできない。

第5 むすび
以上のとおり,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同法同条同項の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2015-01-26 
出願番号 意願2013-25426(D2013-25426) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (D3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐々木 朝康 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 綿貫 浩一
小林 裕和
登録日 2015-02-27 
登録番号 意匠登録第1520345号(D1520345) 
代理人 藤本 昇 
代理人 野村 慎一 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ