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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 D5
管理番号 1297215 
審判番号 不服2014-16935
総通号数 183 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2015-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-08-27 
確定日 2015-02-07 
意匠に係る物品 便座シート 
事件の表示 意願2013- 19267「便座シート」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとし,意願2013-19266を本意匠とする平成25年(2013年)8月23日の関連意匠の意匠登録出願であり,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「便座シート」とし,形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」ともいう。)を,願書及び願書に添付した図面の記載のとおりとしたもので,「本物品は,左右対称のもの一対のうち,左方のみを表した。実線で表された部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(当審注:以下「本願実線部分」という。)である。」としたものである。(別紙第1参照)

第2 原審の拒絶の理由
原審における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」ともいう。)が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって,具体的には以下のとおりである。
「この意匠登録出願の意匠は,『便座シート』に係る創作であり,願書及び添付図面の記載から,実線で表された部分が意匠登録を受けようとする部分であると認められます。
この種物品分野において,シート材をより強固に固定するために切り込みを施すことは,意匠1乃至意匠4に示すように本願出願前よりごく普通に見られ,各切り込みを弧状に形成することも意匠3に示すように従前から見られます。
以上から,当該意匠登録を受けようとする部分は,本願出願前から知られた手法で,便座シートの外側に切り込みを施し,その切り込みを弧状に形成した程度のものと認められ,容易に創作ができたものといわざるを得ません。

意匠1(別紙第2参照)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1420524号の意匠

意匠2(別紙第3参照)
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2007年 5月15日
受入日 特許庁意匠課受入2007年 5月18日
掲載者 株式会社セシール
表題 さわやか便座シート 通販 - セシール
(cecile)
掲載ページのアドレス http://www.cecile.co.jp/Page/CmdtyInfo/GenreSearch/Detail.aspx?a=223&f=LV&d=3&e=7b&b=8345030&c=0
に掲載された『吸着便座シート』の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HJ19012935号)

意匠3(別紙第4参照)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1392534号の意匠

意匠4(別紙第5参照)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1392622号の意匠 」

第3 請求人の主張の要点
これに対し,請求人は,審判を請求し,要旨以下のとおり主張した。

「意匠1及び2」の意匠に係る物品と「意匠3及び4」の意匠に係る物品は,使用の目的と使用の状態が著しく異なるものであり,「意匠3及び4」を「意匠1及び2」と同列に扱うべきではない。
「突出部」とシート材に従来形成された「切り込み」は,「まとまり感」か「ほころびた感」かの意匠的効果が異なり,区別されるべきものである。
本願意匠のような「便座シートの外周形状において,弧状の突出物を弧状に複数配列したことにより,全体として,こじんまりとした特有なまとまり感の意匠的効果を有する」ことは拒絶理由通知書に記載の意匠に見受けられない。
意匠登録を受けようとする部分以外の部分,つまり,本願意匠の本体は,弧状の突出部を弧状に複数配列した部分意匠の位置,大きさ,範囲の認定に大きく寄与し,しかも,本願意匠において,その幅の差自体がその評価に大きな影響を与えるものとなっている。
すなわち,本願意匠の「弧状の突出部」は,その高さ(「突出部」幅)を本体幅より小とすると共に,複数配列し,全体として,こじんまりとした特有のまとまり感の意匠的効果を発揮している。
したがって,本願意匠は,意匠1乃至4に基づいて,直ちに容易にできたものとはいえない。

第4 当審の判断
以下,本願意匠が意匠法第3条第2項の規定に該当するか否か,すなわち,本願意匠が,この意匠の属する分野における通常の知識を有する者が容易に創作することができたものであるか否かについて検討する。

1 本願意匠
本願意匠の意匠に係る物品は「便座シート」であり,本願実線部分は,正面から見て,左に凸に湾曲した略角丸縦長シートの左端のうち上端付近を除いて左方に突出した位置,大きさ及び範囲を占める帯状突出部であり,本願実線部分の横幅は,同シートの横幅の約1/3であって,その形態は,次のとおりである。
基本的構成態様として,以下の点が認められる。
(A)基本的構成態様について
本願実線部分は,正面から見て,略縦長帯状であって,複数のほぼ同形同大のブロックが縦に連なっている。
また,具体的構成態様として,以下の点が認められる。
(B)ブロックの構成態様について
ブロックは8つあり,各ブロックは,正面から見て,左に凸に湾曲した略角丸縦長シートの左端に沿うように,左に凸に湾曲して並んでいる。
(C)ブロックの形状について
1つのブロックは,略角丸縦長シートの左端から,左方に向けて略円弧状に膨らんで形成されている。

2 創作非容易性の判断
便座シートの物品分野において,左に凸に湾曲した略角丸縦長シートの左端のうち上端付近を除いて左方に突出した位置,大きさ及び範囲に帯状突出部を設けて,その横幅(突出の程度)を同シートの横幅の約1/3として,(A)の基本的構成態様並びに(B)及び(C)の構成態様を形成することは,意匠1ないし意匠4には見られない本願意匠独自の創作であり,特に,8つの同形同大のブロックを左に凸に湾曲して並べた点は,公然知られた意匠1ないし意匠4の形態に基づいて当業者が容易に創作することができたということはできない。
具体的には,意匠1において,便座シートの外周に見られる,外周線から略垂直状に内側に表れた線は,単なる切り込み線であると推認されるものであり,その切り込み線の位置はほぼ等間隔に配されていることから,意匠1の形態は,左に凸に湾曲した略角丸縦長シートの左端のうち上端付近を除いて左方に突出した位置,大きさ及び範囲に本願実線部分を設けた本願意匠の創作の根拠になったものとはいい難いので,本願意匠が,意匠1に基づいて容易に創作されたものということはできない。そして,意匠2は,便座シートの内周のみに切り込み線を設けたものであるから,便座の外周に当たる位置に本願実線部分を設けた本願意匠が,意匠2に基づいて容易に創作されたものということはできない。
次に,(C)で指摘したブロックの形状について,略円弧状に膨らんだ形状は,意匠3にも見られる形状であるところ,このような形状をブロックの形状に用いることは,便座シート又はそれに関連する物品分野においては,容易に創作することができたといえる。
しかしながら,本願意匠においては,ブロックを8つ連結させて,かつ略角丸縦長シートの左端のうち上端付近を除いた位置にそれを配したのであるから,本願意匠に見られる位置に8つのブロックを設けた創作が,当業者にとって容易であったということはできない。
なお,意匠4は,突出部の形状が略台形状であることから,略円弧状に膨らんだ本願実線部分の創作の根拠というには及ばず,本願意匠が意匠4に基づいて容易に創作されたものということはできない。

第5 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第3条第2項が規定する,意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができたとはいえないものであるから,原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2015-01-26 
出願番号 意願2013-19267(D2013-19267) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (D5)
最終処分 成立  
前審関与審査官 重坂 舞 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 綿貫 浩一
小林 裕和
登録日 2015-02-27 
登録番号 意匠登録第1520613号(D1520613) 
代理人 入江 一郎 

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