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審決分類 審判 査定不服  意9条先願 取り消して登録 D3
管理番号 1300589 
審判番号 不服2014-15413
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-08-06 
確定日 2015-04-07 
意匠に係る物品 照明器具 
事件の表示 意願2013- 14655「照明器具」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,平成25年(2013年)6月28日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば意匠に係る物品を「照明器具」とし,形態を,願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたもので,願書の記載によれば,「本物品は,天井面に埋め込み,または直付け固定される照明器具であり,発光ダイオードを光源とするものである。各部の名称を示す参考図中,斜線部分は透光性素材である。」としたものである(別紙第1参照)。

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が最先の意匠登録出願人に係る意匠に該当しないため,意匠法第9条第1項の規定により意匠登録を受けることができないとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠は,本願出願前,平成24年(2012年)12月19日に意匠登録出願(意願2012-30920)をし,その後審査を経て意匠登録をすべき旨の査定がなされて平成25年(2013年)7月26日に意匠権の設定の登録がなされ,同年8月26日に日本国特許庁が発行した意匠公報に掲載された意匠登録第1478000号の意匠であり,その意匠(以下「引用意匠」という。)は,上記出願の願書の記載によれば意匠に係る物品を「天井直付け灯」とし,形態を,願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたもので,願書の記載によれば,「内部機構を省略したA-A拡大断面図及びB-B間の拡大図において,2重ハッチングに表れる部分は透光性を有する。」としたものである(別紙第2参照)。

第3 本願意匠と引用意匠の対比
1 意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,天井面に埋め込まれるか直付け固定される「照明器具」であり,引用意匠の意匠に係る物品も「天井直付け灯」であるから,本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は共通する。

2 両意匠の形態
両意匠の形態を対比すると,主として,以下の共通点と差異点が認められる。なお,本願意匠の向きに合わせて引用意匠の向きを認定する。すなわち,引用意匠の正面図を右に90°回転させたものを底面図とし,引用意匠の右側面図を左に90°回転させたものを背面図とし,引用意匠の平面図を右側面図として認定し,他の図もこれに倣って認定する。
(1)共通点
両意匠には,以下の共通点が認められる。
(A)全体の構成について
全体が,底面から見て,略正方形状で厚みの薄い直方体であって,ロ字状の枠体の内部に,横長の発光部が縦に複数個並んで配されたものである。
(B)枠体とその周囲の態様について
底面から見て,枠体は,四辺を囲むように配されて,外側から内側にかけて外側部-前方突出部-内側部の3つで構成され,外側部と前方突出部はそれぞれ等幅である。外側部は外縁にいくにつれて後方に傾斜して四隅には稜線が形成されており,前方突出部は平坦面状に表されている。また,正面から見ると,枠体外側部には傾斜面部分の上に縦幅のごく狭い垂直面状の縁部が形成され,その上方には,枠体の横幅よりも狭い横幅を有する横長長方形部(以下「上部長方形部」という。)が表されており,枠体外側部の左右両端が略逆庇状に左右外側に突出している。側面から見た枠体とその周囲の態様は,正面から見たそれと同様である。
(C)発光部の配列とその周囲の態様について
底面から見て,略横長帯状の発光部が縦に4つ配されており,発光部の間には略横長帯状の仕切部が1つずつ配されて,合計3つ設けられている。発光部は全て同形同大であり,仕切部も全て同形同大である。また,発光部と仕切部の間には平坦な隙間部が形成され,最上部又は最下部の発光部と枠体内側部の間にも平坦な隙間部が形成されている。
(D)発光部及び仕切部の態様について
底面から見て,発光部と仕切部は,横幅が枠体の左右内側部間の幅のほぼ一杯になるように配されており,発光部の上下方向中央は断面視略弧状に形成され,仕切部の上下方向中央には水平状の稜線(以下「仕切部中央稜線」という。)が表されている。

(2)差異点
一方,両意匠には,以下の差異点が認められる。
(ア)枠体内側部の態様と枠体の構成について
底面から見て,本願意匠では,上下左右の枠体前方突出部の内側に,断面視急傾斜(約72°)の内側部が形成されており,外側部,前方突出部及び内側部の比が約3:2:1である。これに対して,引用意匠では,上下の枠体前方突出部の内側に断面視やや急傾斜(約54°)の内側部が形成されており,上下方向の外側部,前方突出部及び内側部の比が約13:12:10であり,また,左右の枠体前方突出部の内側部は斜面ではなく,断面視垂直状に形成されている。
(イ)発光部と枠体の関係について
底面から見て,本願意匠では,発光部の両端が左右の枠体内側部に貫入するように略凸弧状に表されているのに対して,引用意匠では,発光部の両端と左右の枠体内側部の間にごく僅かな隙間が形成されて,発光部の両端が垂直状に表されている。
(ウ)発光部の形状と位置について
本願意匠の発光部の垂直断面形状は,左右に略垂直状部を有する略蒲鉾形状であって,発光部の下端面の位置が枠体前方突出部の位置よりも上方であるのに対して,引用意匠の発光部の垂直断面形状は,左右に略S状曲線部を有する略正規曲線形状であって,発光部の下端面の位置が枠体前方突出部の位置よりも僅かに上方である。
(エ)仕切部の形状について
本願意匠の仕切部は,垂直断面形状が略五角形状であってその左右下方の角度が鈍角状であり,底面から見て,仕切部中央稜線の上下に2本の水平状の稜線が表されて,さらにその上下に,仕切部とその設置面との接合境界線が表されており,縦幅が発光部の縦幅とほぼ同じであるのに対して,引用意匠の仕切部は,垂直断面形状が略鋭角三角形状であって,底面から見た縦幅が発光部の縦幅の約1/3であり,本願意匠に比べて狭く表されている。
(オ)隙間部の態様について
本願意匠の発光部と仕切部の間に形成された隙間部の縦幅は,発光部及び仕切部の縦幅の約1/4であるのに対して,引用意匠のそれはごく細幅であるから,本願意匠の方が引用意匠よりも広い。また,最上部(又は最下部)の発光部と枠体内側部の間に形成された隙間部の縦幅も,本願意匠の方が引用意匠よりも広い。
(カ)上部長方形部の態様について
正面から見て,上部長方形部の厚みは,本願意匠では全体の厚みの約1/2であるが,引用意匠では約5/8である。また,上部長方形部の横幅は,本願意匠では枠体の横幅よりもやや狭い程度であるが,引用意匠では本願意匠に比べて更に狭くなっており,略逆庇状の突出の幅が,枠体外側部の幅よりも長くなっている。

第4 類否判断
1 意匠に係る物品
前記認定したとおり,両意匠の意匠に係る物品は共通する。

2 天井直付け灯の意匠の類否判断
天井面に埋め込まれるか直付け固定される照明器具の通常の使用状態において,看者が照明器具を観察するに当たっては,その照明器具を主として底面方向又は底面斜め方向から眺めることとなり,枠体の態様や,枠体の中にある発光部及び仕切部の構成態様について特に注意を払うことになる。したがって,照明器具の意匠の類否判断においては,上記の項目を特に評価し,かつそれ以外の項目も併せて,各項目を総合して意匠全体として形態を評価する。

3 形態の共通点の評価
両意匠の共通点(A)及び(B)で指摘した,全体の構成及び枠体とその周囲の態様については,照明器具の物品分野において,本願の出願前に既に見受けられることから,看者の注意を惹くものとはいえない。したがって,共通点(A)及び(B)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
しかし,両意匠の共通点(C)及び(D)で指摘した,発光部の配列とその周囲の態様並びに発光部及び仕切部の態様については,発光部と仕切部の構成態様に関する共通点であり,特に,底面から見て横幅が枠体の左右内側部間の幅のほぼ一杯になるように配された発光部と仕切部が縦方向に交互に並び,その仕切部が断面視略三角形状に形成されている点は,一定した美的印象を醸し出していることから,看者の注意を惹くというべきであり,この共通点は両意匠の類否判断に一定程度の影響を及ぼすものである。

4 形態の差異点の評価
一方,両意匠の形態の差異点については,以下のとおり評価され,差異点を総合すると,上記共通点の影響を圧して,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。
まず,差異点(ア)については,底面から見て上下方向の枠体外側部,前方突出部及び内側部の比が約3:2:1であり,左右方向も同様である本願意匠と,上下方向のその比が約13:12:10であり,左右方向に内側部が表れず,左右方向の枠体外側部及び前方突出部の比が約13:12である引用意匠とでは,看者に与える視覚的印象を異にするというべきであり,差異点(ア)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
次に,差異点(イ)については,看者が特に注目する発光部の位置及び形状に関する差異であり,発光部の両端が,傾斜した左右の枠体内側部に貫入するように表された本願意匠の発光部の位置及び形状は,そのような貫入が見られず,ごく僅かな隙間が形成されているだけの引用意匠と比べた際に,看者が一見して気がつく差異であるというべきであるから,差異点(イ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
そして,差異点(ウ)については,断面が略蒲鉾形状である本願意匠の発光部と略正規曲線形状である引用意匠の発光部が大きく異なる形状であり,本願意匠の発光部では左右の略垂直状部も発光するので引用意匠に比べて光が左右方向にも照射されること,及び本願意匠の発光部下端面の位置が引用意匠よりも上方にあるので仕切部や枠体内側部により多くの光が当たることを踏まえると,看者はこの形状の差異に特に注目するというべきであるから,差異点(ウ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
加えて,差異点(エ)の仕切部の形状の差異については,底面から見た本願意匠の仕切部とその設置面との接合境界線はそれ程目立たず,本願意匠の仕切部の垂直断面形状は左右下方の角度が鈍角状であるために略鈍角三角形状と看取され得ることから,本願意匠と引用意匠の垂直断面形状の差異が両意匠の美感を異にする程のものとはいい難いとしても,縦幅が発光部の縦幅とほぼ同じである本願意匠の仕切部に対して,約1/3である引用意匠の仕切部は,看者に異なる美感を与えているというべきであるから,総じて差異点(エ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
他方,差異点(オ)の隙間部の態様の差異については,隙間部の縦幅の程度の差に関する差異であって,隙間部の縦幅が発光部や仕切部の縦幅を超える広さではなくそれ程目立たないこと,及び縦幅の差が発光部や仕切部が看者に与える美感を損ねるものではないことを踏まえると,看者が隙間部の縦幅の差に対して特に着目するとはいい難いので,差異点(オ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
また,差異点(カ)についても,上部長方形部が照明器具の上部にあり,照明器具の設置時においては目立たない部位に位置していることから,上部長方形部の厚みや横幅が全体に占める比の差異に対して看者が特に注意を払うとはいい難いので,差異点(カ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
そうすると,(ア)ないし(エ)の差異点は,いずれも両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものであり,差異点(オ)及び(カ)の影響が小さいものであるとしても,両意匠の差異点を総合すると,両意匠を別異のものと印象付けるものであるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きく,両意匠の共通点を凌ぐものであるということができる。

5 小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品が共通するが,両意匠の形態においては,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められるものの,差異点を総合すると両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きく,共通点が看者に与える美感を覆して両意匠を別異のものと印象付けるものであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。

第5 むすび
以上のとおり,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同法同条同項の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2015-03-23 
出願番号 意願2013-14655(D2013-14655) 
審決分類 D 1 8・ 4- WY (D3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐々木 朝康 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 小林 裕和
綿貫 浩一
登録日 2015-05-15 
登録番号 意匠登録第1526206号(D1526206) 
代理人 井上 学 

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