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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H1
管理番号 1300603 
審判番号 不服2014-24013
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-11-26 
確定日 2015-05-19 
意匠に係る物品 コモンモードフィルタ 
事件の表示 意願2013- 23823「コモンモードフィルタ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1.本願意匠
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成25年(2013年)10月11日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「コモンモードフィルタ」とし,その形態を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。・・・・・なお,部分意匠の対象となる部分以外のその他の部分は,破線で示してある。」としたものである(以下,本願について意匠登録を受けようとする部分の意匠を「本願実線部分」という。)。(別紙第1参照)

第2.原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとしたものである。そして,拒絶の理由に引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,本願出願前,日本国特許庁発行の公開特許公報 特開2008-34777号の【図2】(B)に記載された「コモンモードチョークコイル」の意匠であって,引用意匠において「T4」として示されている部分が,本願実線部分に相当する部分(以下,「引用相当部分」という。)であり,引用意匠及び引用相当部分の形態は,同公報に記載されたとおりのものである。(別紙第2参照)

第3.当審の判断
1.本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,「コモンモードフィルタ」であり,引用意匠の意匠に係る物品は,「コモンモードチョークコイル」であるところ,いずれも,電子機器等に生じるコモンモードノイズを抑制させるためのコイル状の素子であるから,本願意匠及び引用意匠(以下,「両意匠」という。)の意匠に係る物品は共通する。

(2)部分意匠としての用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲
本願実線部分と引用相当部分(以下,「両意匠部分」という。)は,共にコモンモードノイズを抑制させるためのコイル状の素子の一部分であるから,両意匠部分の用途及び機能は一致する。
また,両意匠部分は,コイル状の素子を構成する巻き線のうちの,隣接する2本の巻き線を含む範囲であるから,両意匠部分の大きさ及び範囲は一致するが,その位置については,本願実線部分が,コイル状の素子の長手方向の中央位置であるのに対して,引用相当部分は,中央よりも長手方向に偏った位置である点で相違する。

(3)両意匠部分の形態
両意匠部分の形態を対比すると,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。
なお,以下,対比のため,本願実線部分の図面における正面,平面等の向きを,引用相当部分にもあてはめることとする。

<共通点>
両意匠部分は,正面視での基本的構成態様として,
(A)隣接する2本の巻き線について,コイルの上縁(以下,単に「上縁」という。)において左側に位置する巻き線が,コイルの下縁(以下,単に「下縁」という。)において右側に位置するように交差している点,
において共通する。

<相違点>
両意匠部分は,正面視での具体的構成態様として,
(ア)本願実線部分では,交差の前後において2本の巻き線が積層状態を保つように配置,すなわち上縁(交差の前)において左側に位置する巻き線がコイルの外径側にあり,右側に位置する巻き線が内径側にあり,同様に,下縁(交差の後)において右側に位置する巻き線が外径側にあり,左側に位置する巻き線が内径側にあるように配置されているのに対して,引用相当部分では,2本の巻き線が積層状に配置されておらず,上縁及び下縁のいずれにおいても,2本の巻き線の径方向の位置が同じとなるように配置されている点,
(イ)本願実線部分では,隣接する2本の巻き線が,いずれも左上から右下に傾斜しているのに対して,引用相当部分では,上縁において左側に位置する巻き線については,左上から右下に傾斜しているものの,右側に位置する巻き線については,傾斜はなく,ほぼ短手方向に巻かれている点,
において相違する。

2.両意匠部分の類否判断
以上の共通点及び相違点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響を評価及び総合して,両意匠部分の類否を意匠全体として検討し,判断する。

(1)両意匠の意匠に係る物品,部分意匠としての用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲
両意匠は,意匠に係る物品が共通し,また,部分意匠としての用途及び機能並びに大きさ及び範囲についても一致するが,位置については相違し,当該相違は,需要者に異なった印象を与えるものであって,両意匠の類否判断に影響を及ぼすものである。

(2)形態についての共通点の評価
コモンモードフィルタのコイルの巻き線,特にその巻き方といった形態は,コモンモードフィルタの性能に影響する重要な要素であるから,需要者は,その細部にわたるまで関心をもって観察するものといえる。
共通点(A)は,コイルの巻き線が交差しているというものであるところ,そのような形態は,この種の物品において,ほかにも見られるもの(例えば,日本国特許庁発行の公開特許公報 特開2011-253888号の【図6】,別紙第3参照。)であって,両意匠部分のみに見られる形態とまではいえないから,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を大きいということはできず,両意匠部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。

(3)形態についての相違点の評価
これに対して,両意匠部分の具体的構成態様に係る相違点(ア),すなわちコイルの巻き線が交差の前後において積層状態を保つように配置されている点は,本願実線部分のみに見られる形態であるし,本願実線部分の全領域に及ぶものであり,非常に目に付きやすいものであるから,両意匠部分の類否判断に非常に大きな影響を与えるといえる。
また,相違点(イ),すなわち2本の巻き線が,いずれも左上から右下に傾斜している点も,相違点(ア)と同様に,目に付きやすいものであるから,両意匠部分の類否判断に非常に大きな影響を与えるといえる。
そして,相違点(ア)及び(イ)が相乗することによる視覚的効果を考慮すると,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕して,両意匠部分は,意匠全体として視覚的印象を異にするというべきである。

(4)小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品について共通し,両意匠部分は,部分意匠としての用途及び機能並びに大きさ及び範囲について一致するものの,部分意匠としての位置について相違する上に,形態においては,共通点が両意匠部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており,意匠全体として見た場合,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕し,両意匠は,意匠全体として視覚的印象を異にするというべきであるから,本願意匠が,引用意匠に類似するということはできない。

第4.むすび
以上のとおりであって,原査定の引用意匠をもって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,原査定の拒絶の理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2015-05-01 
出願番号 意願2013-23823(D2013-23823) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鐸木 芳実木村 智加 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 江塚 尚弘
刈間 宏信
登録日 2015-05-29 
登録番号 意匠登録第1527694号(D1527694) 
代理人 前田・鈴木国際特許業務法人 

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