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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 D3
管理番号 1302945 
審判番号 不服2014-21076
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-17 
確定日 2015-06-12 
意匠に係る物品 ペンダントランプ 
事件の表示 意願2013- 23020「ペンダントランプ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,平成25年(2013年)4月8日のイタリアへの出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う,平成25年(2013年)10月1日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を,願書の記載によれば「ペンダントランプ」とし,形態を,願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため,同条同項の規定により意匠登録を受けることができない意匠)に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠(以下「引用意匠」という。)は,以下の意匠である(別紙第2参照)。
独立行政法人工業所有権情報・研修館が2006年9月25日に
受け入れた,
『domus』 第A-21頁所載の
天井取付照明器具の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HB18021053号)

第3 本願意匠と引用意匠の対比
1 意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,吊り下げ型の「ペンダントランプ」であり,引用意匠の意匠に係る物品も,吊り下げ型の「天井取付照明器具」であるから,本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は共通する。

2 両意匠の形態
両意匠の形態を対比すると,主として,以下の共通点と差異点が認められる。なお,本願意匠の向きに合わせて引用意匠の向きを認定する。
(1)共通点
両意匠には,基本的構成態様として,以下の共通点が認められる。
(A)基本的構成態様について
本体が略球形状であって,その上部中央に縦長の吊り具が設けられたものである。
また,具体的態様として,以下の共通点が認められる。
(B)本体について
(B-1)水平分割部
本体は,上下方向略中央に水平分割部があり,それによって上下に略二分されている。
(B-2)透光性
引用意匠の本体の下半部は透光性を有しており,本願意匠についても,吊り下げ型のペンダントランプとして下方向を照らすものであるから,少なくとも本体下半部が透光性を有するものであると推認できる。
(C)吊り具について
吊り具は,細い円柱状である。
(2)差異点
一方,両意匠には,具体的態様として,以下の差異点が認められる。
(a)本体の態様について
(a-1)突出部の有無
引用意匠の本体の左右端部寄りに,縦長でやや厚みのある突出部が形成されているが,本願意匠には,そのような突出部はない。
(a-2)水平分割部の態様について
本願意匠の本体の水平分割部は単一の区分線として表されているが,引用意匠では,水平分割部が複数の筋状帯で表されており,一定の縦幅を有している。
(a-3)吊り具周囲の態様
本願意匠の吊り具周囲には,二重の同心円状分割線が表されているが,引用意匠では,略角丸三角形状の区画部が六つ形成されている。
(b)吊り具の態様について
本願意匠の吊り具はごく細い略紐状のものであるが,引用意匠の吊り具は本願意匠に比べて太く,略管状である。

第4 類否判断
1 意匠に係る物品
前記認定したとおり,両意匠の意匠に係る物品は共通する。

2 ペンダントランプの物品分野の意匠の類否判断
天井から吊り下げられるペンダントランプを看者が観察するに当たっては,看者は全方向からペンダントランプの態様を観察することになる。それ故,吊り具や本体の吊り具周囲の態様に対しても,看者は注意を払うことになる。したがって,ペンダントランプの物品分野の意匠の類否判断においては,全方向から看取される各態様を評価し,その上で各態様を総合して意匠全体として形態を評価する。

3 形態の共通点の評価
両意匠の共通点(A)ないし(C)及びで指摘した,本体を略球形状として,その上部中央に縦長で細い円柱状の吊り具を設けて,本体の上下方向略中央に水平分割部を形成して本体を上下に略二分し,本体下半部を透光性を有するものとした態様については,ペンダントランプの物品分野の意匠において,本願の出願前に普通に見受けられることから,看者の注意を惹くものとはいえない。したがって,共通点(A)ないし(C)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。

4 形態の差異点の評価
一方,両意匠の形態の差異点については,以下のとおり評価され,差異点を総合すると,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。
まず,差異点(a-1)で指摘した,突出部の有無については,引用意匠に見られる突出部が縦長で大きいものであるから,看者がその存在をはっきりと認識できるというべきであり,そのような突出部がない本願意匠と比べた際に,突出部の有無について看者は容易に気が付くことから,差異点(a-1)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
次に,差異点(a-2)については,単一の区分線として表されている本願意匠の水平分割部の態様と,複数の筋状帯で表されて一定の縦幅を有する引用意匠の水平分割部の態様の相違は明白であり,本体の中央部という目立つ部位に係る差異でもあるので,看者が注視する差異であるというべきであるから,差異点(a-2)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
さらに,差異点(a-3)で指摘した,吊り具周囲の態様の差異についても,両意匠には笠部がなく,看者が側面方向から両意匠の上部の態様を観察し得ることを踏まえると,吊り具周囲の二重の同心円状分割線と,略角丸三角形状の六つの区画部が看者に異なる美感を与えているというべきであるから,差異点(a-3)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
他方,差異点(b)で指摘した,吊り具がごく細い略紐状のものであるか,太い略管状であるかの差異は,ペンダントランプの物品分野の意匠においては,様々な太さの吊り具があることを踏まえると,看者が特段注視する差異であるとはいい難いので,差異点(b)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
そうすると,(a)で指摘した各差異点は,いずれも両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものであり,差異点(b)の影響が小さいものであるとしても,両意匠の差異点を総合すると,両意匠を別異のものと印象付けるものであるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいということができる。

5 小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品が共通するが,両意匠の形態においては,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響が小さいのに対して,差異点は総じて両意匠の類否判断に及ぼす影響が大きいので,本願意匠は引用意匠に類似するということはできない。

第5 むすび
以上のとおり,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同法同条同項の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2015-06-02 
出願番号 意願2013-23020(D2013-23020) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (D3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐々木 朝康 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 正田 毅
小林 裕和
登録日 2015-07-17 
登録番号 意匠登録第1531205号(D1531205) 
代理人 江口 昭彦 
代理人 内藤 和彦 
代理人 大貫 敏史 
代理人 稲葉 良幸 

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