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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 F4 |
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管理番号 | 1302949 |
審判番号 | 不服2014-25657 |
総通号数 | 188 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2015-08-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-12-16 |
確定日 | 2015-06-23 |
意匠に係る物品 | 包装用容器 |
事件の表示 | 意願2013- 29827「包装用容器」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,平成25年(2013年)12月19日に出願されたものであり,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「包装用容器」とし,その形態を,願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。 第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条1項3号に規定する意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用された意匠は,本願の出願前に特許庁から発行された意匠公報に記載の意匠登録第1275283号(意匠に係る物品,包装用容器)の意匠(以下,「引用意匠」という。)であり,その形態は,同公報に掲載されたとおりのものである(別紙第2参照)。 第3 当審の判断 以下,本願意匠と引用意匠(以下,「両意匠」という。)を対比することにより,両意匠の共通点及び相違点の認定,評価を行い,本願意匠が,引用意匠に類似するか否かについて検討する。 1.両意匠の共通点及び相違点の認定 (1)両意匠の共通点の認定 意匠に係る物品は,ともに「包装用容器」であって,一致する。 形態については,主に,(A)口部が突出した略有底円筒状の容器であって,開口部上端から付け根までの部分(以下,「口部」という。)は略同径の円筒状,口部付け根から張り出し端部の円弧部を超えた垂直面に接するところまでの部分(以下,「肩部」という。)は傾斜状,肩部直下の垂直面の上端部から接地部までの部分(以下,「胴部」という。)は略同径の円筒状で,その下端部寄りは尻つぼまり,そして,上げ底状の底面部からなる態様とした点,(B)肩部の傾斜面に,複数の同大同形状の略等脚台形状凹部をあまり間隔を空けずに周方向等間隔で上下位置を揃えて表した点,(C)胴部に,その水平方向に4本の環状溝を略等間隔に表した点,が共通する。 (2)両意匠の相違点の認定 形態について,主に,以下の(ア)ないし(エ)の点が相違する。 (ア)口部について (ア-1)口部の径の大きさについて,本願意匠が,胴部の径の約60%であるのに対して,引用意匠が,約40%となっており,また,口部の高さについて,本願意匠が,全高の約10%であるのに対して,引用意匠が,全高の約20%となっている。つまり,本願意匠の口部は,太く,短く,引用意匠の口部は,細く,長く表れている点が相違する。 (ア-2)口部の外周について,本願意匠は,上端開口部に縁状凸部,その下方に鍔状部が一つ表れているのに対して,引用意匠は,上方に螺旋状凸部,その下方に大小2つの鍔状部が表れている点が相違する。 (イ)肩部について (イ-1)肩部(片側)の張り出しの大きさについて,本願意匠は,口部の径の約40%であるのに対して,引用意匠は,約75%となっており,また,肩部の斜面の勾配について,本願意匠は,約55度で,側面視直線状であるのに対して,引用意匠は,勾配が約35度で,側面視凸湾曲状となっている。つまり,本願意匠の肩部は,狭くて急,引用意匠の肩部は,広くて緩やかに表れている点が相違する。 (イ-2)略等脚台形状凹部の個数について,本願意匠は,10個であるのに対して,引用意匠は,6個となっており,また,当該凹部の一単位の大きさ(台形の下底の長さ)について,本願意匠は,肩部の最下端部の幅の約25%であるのに対して,引用意匠は,約40%となっている。つまり,本願意匠の略等脚台形状凹部は小さく,引用意匠の略等脚台形状凹部は大きく表れている点が相違するとともに,本願意匠には引用意匠の2倍近くの個数の略等脚台形状凹部が表れている点が相違する。 (イ-3)略等脚台形状凹部の具体的な位置について,本願意匠は,略等脚台形状凹部の開口縁の下辺(台形の下底)が,肩部斜面の直線状の領域(肩部から胴部にかけての円弧部に達する手前)で止まり,当該凹部が肩部の上下方向中央揃えで表れているのに対して,引用意匠は,略等脚台形状凹部の開口縁の下辺(台形の下底)が,肩部の下端部まで達し,当該凹部が肩部の上下方向下揃えで表れている点が相違する。 (ウ)胴部について (ウ-1)胴部の幅が,本願意匠は,胴部の全高の約55%であるのに対して,引用意匠は,約70%となっている。つまり,本願意匠の胴部は細く,引用意匠の胴部は太く表れている点が相違する。 (ウ-2)4本の環状溝によって区切られた3つの帯状凸部の上下方向の長さが,本願意匠は,胴部の径の約35%であるのに対して,引用意匠は,約25%となっている。つまり,前記帯状凸部の上下方向の長さが,本願意匠の方が引用意匠よりも長く表れている点が相違する。あるいは,見方を変えれば,4本の環状溝の間隔について,本願意匠の方が引用意匠よりも間隔を空けて表れている点が相違する,とも言える。 (ウ-3)胴部最上部(最上段の環状溝部の直上凸状部)の垂直面の長さが,本願意匠は,前記帯状凸部の垂直面の高さの約30%であるのに対して,引用意匠は,約80%となっている。つまり,本願意匠の該部の垂直面は目立たず,引用意匠のそれは前記帯状凸部と同程度に表れている点が相違する。 (ウ-4)4本の環状溝の太さが,本願意匠は,上下端部の2本が内側2本よりも太くなっているのに対して,引用意匠は,4本とも同じ太さとなっている点が相違する。 (エ)底面部について 本願意匠は,凹部内に周方向5個の略楕円状凸部が表れているのに対して,引用意匠は,凹部内に周方向8個の略矩形状凸部が表れている点が相違する。 2.両意匠の共通点及び相違点の評価 (1)両意匠の共通点の評価 共通点(A)として認定した態様,つまり,全体は,口部が突出した略有底円筒状の容器であって,口部は略同径,肩部は傾斜状,胴部は略同径の円筒状,そして,上げ底状の底面部からなる態様は,容器全体の輪郭を大まかに捉えた共通点であり,口部突出型容器の物品分野において一般的な態様であって,看者の注意を惹くものとは言えない。したがって,共通点(A)が,両意匠の類否判断に及ぼす影響を大きく評価することはできない。 共通点(B)は,目に触れやすい肩部に係るものであるから,相当の評価をすべきところではあるが,肩部に複数の同大同形状の凹部を,あまり間隔を空けずに周方向等間隔で上下位置を揃えて表したものが,両意匠の出願前から珍しいものではなく,また,当該凹部を略等脚台形状としたものも,両意匠の出願前に発行された刊行物に掲載されており(例えば,意匠登録第786506号の意匠,意匠登録第1011912号の意匠,米国特許商標公報掲載の登録番号D467,813Sの意匠(別紙第3参照)),そして,相違点(イ-2)及び(イ-3)で指摘したとおり当該凹部の具体的態様において相違する点もあることから,共通点(B)が両意匠の類否判断に及ぼす影響を単に大きく評価することはできない。 共通点(C)は,物品全体に占める割合が大きい胴部の全域に係るものであるから,相当の評価をすべきところではあるが,胴部の水平方向に4本の環状溝を略等間隔に表した態様は,口部突出型容器の物品分野においてありふれた態様と言わざるを得ないものであり,また,相違点(ウ-2)及び(ウ-4)で指摘したとおり当該部位の具体的態様において相違する点もあることから,共通点(C)が両意匠の類否判断に及ぼす影響を単に大きく評価することはできない。 そうすると,共通点については,各共通点は勿論のこと,これらの共通点(A)ないし(C)を総合したとしても,顕著な特徴のある形態と言うことはできず,両意匠の類否判断に及ぼす影響を大きく評価することはできない。 (2)両意匠の相違点の評価 相違点(ア-1),(イ-1)及び(ウ-1)は,容器全体の輪郭に関するものであって,これらを総合すると共通点(A)に対応するものである。これらの相違点は,口部突出型容器としてありふれた態様の対比における相違ではあるが,各相違は明確であり,これらの相違点を総合すると,本願意匠は肩部の段差が目立たない細長い容器,引用意匠は肩部の段差が目立ったずんぐりした容器,という異なった印象を看者に与えている。したがって,これらの相違点は,共通点(A)を圧するものであって,これらの相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。 相違点(イ-2)及び(イ-3)は,肩部に表れる略等脚台形状凹部の具体的な態様に関するものであるが,当該凹部の単なる個数の相違とは言えない程に,略等脚台形状凹部の大きさや位置の相違を目立たせており,共通点(B)に埋没するような相違とは言えず,これらの相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。 相違点(ウ-2)は,4本の環状溝によって区切られた3つの帯状凸部の具体的態様に関するものであるが,その相違は明確であり,相違点(ウ-2)が両意匠の類否判断に及ぼす影響を軽視することはできない。 相違点(ウ-3)は,胴部上端付近に関するものであり,一見細部に係る相違のようにも見えるが,当該部と下方の帯状凸部とが同様の態様として連続して表れる印象を看者に与えるか否かという相違,つまり,本願意匠においては,そのような印象をあまり与えず,引用意匠においては,強く与える効果を持っており,相違点(ウ-3)が両意匠の類否判断に及ぼす影響を軽視することはできない。 その他の相違点のうち,相違点(ア-2)は,極めて部分的であり,主に,打栓式キャップ用かスクリュー式キャップ用かという形式的な違いに伴うものであるから,軽微な相違に過ぎず,相違点(ウ-4)は,本願意匠の4本の環状溝の太さの違いが目立たず,共通点(C)に埋没する程度のものに過ぎず,相違点(エ)は,部分的であり,通常目に触れにくい箇所に係るものであるから,軽微な相違に過ぎず,これらの相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。 そうすると,容器全体の輪郭に関する相違点(ア-1),(イ-1)及び(ウ-1),目に触れやすい箇所における相違点(イ-2)及び(イ-3),物品全体に対して占める割合の大きな箇所における相違点(ウ-2),そして,相違点(ウ-3)は,両意匠の類否判断に及ぼす影響が大きい,あるいは軽視することができないものであり,その他の相違点の影響が小さいものであるとしても,これらの相違点を総合すると,両意匠に異なる視覚的印象を看者に与えるものである。 3.両意匠の類否判断 上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品については一致するものの,その形態においては,共通点は概括的なものであって,両意匠の類否判断を決するものとはならず,一方,相違点が相俟って生じる視覚的効果は,共通点のそれを凌駕するものであって,両意匠に異なる美感を起こさせるものである。 したがって,本願意匠は,引用意匠に類似しないものと認められる。 第4 むすび 以上のとおり,本願意匠は,原査定の引用意匠に類似せず,原査定の引用意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同法同条同項の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2015-06-05 |
出願番号 | 意願2013-29827(D2013-29827) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(F4)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 小柳 崇 |
特許庁審判長 |
本多 誠一 |
特許庁審判官 |
正田 毅 江塚 尚弘 |
登録日 | 2015-07-17 |
登録番号 | 意匠登録第1531207号(D1531207) |
代理人 | 伊藤 文彦 |
代理人 | 山下 浩司 |