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審決分類 審判 査定不服  意10条1号類似意匠 取り消して登録 F4
管理番号 1302950 
審判番号 不服2015-2872
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-02-16 
確定日 2015-06-26 
意匠に係る物品 包装用箱 
事件の表示 意願2013- 27111「包装用箱」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとし,本意匠を意願2013-027110号(意匠登録第1507916号)(以下,「本意匠」という。)とする関連意匠の意匠登録出願として,本意匠の出願人と同一の出願人により,本意匠の出願日と同日の平成25年11月19日に出願されたものであって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「包装用箱」とし,その形態は,願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりのもので,「実線であらわした部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分の境界のみを示す線である。」としたものである。(別紙第1参照)
第2 原査定における拒絶の理由及び本意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,願書に記載した本意匠に類似する意匠と認められず,意匠法第10条第1項の規定に該当しない,としたものである。
本意匠は,物品の部分について意匠登録を受けようとして,平成25年11月19日に出願されたものであって,平成26年(2014年)8月29日に意匠権の設定の登録がなされ,平成26年9月29日に意匠公報が発行された意願2013-027110号(意匠登録第1507916号)の意匠であり,意匠に係る物品を「包装用箱」とし,その形態は,願書及び願書に添付された図面に記載されたとおりのもので,「実線であらわした部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分の境界のみを示す線である。」としたものである。(別紙第2参照)

第3 当審の判断
以下,本願意匠と本意匠(以下,「両意匠」という。)を対比することにより,両意匠の共通点及び相違点の認定,評価を行い,本願意匠が,本意匠に類似するか否かについて検討する。

1.両意匠の共通点及び相違点の認定
(1)両意匠の共通点の認定
両意匠の意匠に係る物品は,「包装用箱」であるから,一致し,両意匠の意匠登録を受けようとする部分(以下,「実線部分」という。)の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲についても,商品を収納した状態で店頭等で陳列販売される場合等において,需用者の目を惹くように視覚的な工夫がなされる文字等を含む模様を主たる要素とした部分に係るものであり,全体が扁平な略直方体形状の箱体の正面側表面部分のうち,その上端寄りの領域を除く,実線と一点鎖線で囲まれた縦横比が約2対1の長方形領域(以下,「長方形領域」という。)について意匠登録を受けようとする部分としたものであるから,一致する。
そして,両意匠の実線部分の形態については,主に,以下の(A)ないし(C)の点が共通する。
(A)長方形領域に,文字と数字の2段書きからなる部分(以下,「文字部」という。)と,四角形部と傍線部の組合せを5段並べた部分(以下,「箇条書き部」という。)を,縦並びに配置し,文字部は左右方向の中央,箇条書き部は上下方向の中央の位置とし,文字部については,長方形領域に対して占める大きさが,上下方向において約4分の1,左右方向において約4分の3であって,縦横比が約2対3の横長の範囲に収まる程度のものとし,箇条書き部については,長方形領域に対して占める大きさが,上下方向において約5分の1,左右方向において約2分の1であって,縦横比が約3対4の横長の範囲に収まる程度のものとした,全体の基本的な態様が共通する。
(B)文字部は,文字及び数字自体の形状は意匠の構成要素として評価しないが,その具体的な態様について,上段左に数字を大きく(文字部領域に対して占める大きさが,上下方向において約3分の2,左右方向において約2分の1の大きさで)表し,その右脇に漢字2文字を数字よりも小さく(数字に対する漢字1つの縦及び横の長さが数字のそれのいずれも約2分の1の大きさで)表し,下段には,漢字よりも少し小さめのカタカナ6文字を上段の左右幅と合うように均等割り付けにして配置した点が共通し,更に,数字は,ハイライト及び陰を施すことにより立体的で光沢感のある態様とした点が共通する。
(C)箇条書き部は,その具体的な態様について,四角形部の右下端部から右方向水平に延びる傍線部が,四角形部の底辺から延出したように表れている点が共通し,更に,四角形部はハイライト及び陰を施すことにより立体的に表し,傍線部は右方向へ行くにしたがって薄くなるグラデーション調に表した点が共通する。

(2)両意匠の相違点の認定
両意匠の実線部分の形態について,主に,以下の(ア)ないし(ウ)の点が相違する。
(ア)文字部の位置について,本願意匠は,長方形領域の下方に表れているのに対して,本意匠は,長方形領域の上方に表れている点が相違する。
(イ)箇条書き部の位置について,本願意匠は,右端に寄せて表れているのに対して,本意匠は左端に寄せて表れている点が相違する。
(ウ)箇条書き部の大きさについて,本願意匠は引用意匠よりも大きく表れている点が相違する。

2.両意匠の共通点及び相違点の評価
以下,相違点が存在する実線部分の形態について,その共通点及び相違点の評価を行う。
(1)両意匠の実線部分の形態における共通点の評価
共通点(A)は,実線部分を概括したものであるが,実線部分全体の骨格を基礎付けるものであるので,共通点(A)が両意匠の実線部分の形態に関する類否判断に及ぼす影響は一定程度認められる。
共通点(B)は,文字部に関するものであるが,数字を目立たせるように文字よりも大きく表すことや,2段書きの文字を均等割り付けにして表すことが,包装用箱に付す模様において,ごく普通におこなわれていることからすると,この点に特段の形態的特徴を認めることはできないが,数字については,その立体的で光沢感を出した態様に一定程度の特徴が認められ,その大きさも相俟って目立つものと言えることから,共通点(B)が両意匠の実線部分の形態に関する類否判断に及ぼす影響を軽視することはできない。
共通点(C)は箇条書き部に関するものであるが,包装用箱に付す模様の一部として箇条書きの態様を表すことは従来から行われているところであり,また,一般的な箇条書きの態様として,頭に付けるマーカーの形状を四角形とすることがありふれていることからすると,両意匠においてその形状を四角形とした点に特段の形態的特徴を認めることはできないが,傍線部が四角形部の底辺から延出したように表れている態様と,傍線部をグラデーション調とした態様が相俟って,一定程度の特徴が認められることから,共通点(C)が両意匠の実線部分の形態に関する類否判断に及ぼす影響を軽視することはできない。

そうすると,共通点(A)によって基礎付けられた両意匠の骨格は,共通点(B)及び(C)によって強固なものとなり,両意匠の共通性を強く看者に印象づけるものであるから,共通点が両意匠の実線部分の形態に関する類否判断に及ぼす影響は大きい。

(2)両意匠の実線部分の形態における相違点の評価
相違点(ア)は,文字部の位置に関すものであり,目に着く相違と言えるものであるが,文字部の位置を上下変更することは,包装用箱に付す模様において有り触れた改変であって,両意匠の実線部分の形態に関する類否判断に及ぼす影響が大きいとは言えない。
相違点(イ)は,箇条書き部の位置に関するものであるが,箇条書き部の位置を左右にずらして変更することは,包装用箱に付す模様において有り触れた改変であり,また,両意匠の横幅が狭い範囲における相違であるからさほど目立たず,共通点(C)に埋没する程度のものと認められ,相違点(イ)が両意匠の実線部分の形態に関する類否判断に及ぼす影響は小さい。
相違点(ウ)は,箇条書き部の大きさに関するものであるが,大きさの相違が極端ではないことから,共通点(C)に埋没する程度のものと認められ,相違点(ウ)が両意匠の実線部分の形態に関する類否判断に及ぼす影響は極めて小さい。

そうすると,唯一目に着く相違と言える相違点(ア)に,相違点(イ)及び(ウ)が加わったとしても,相違点(イ)及び(ウ)は軽微な相違であるから相乗効果はほとんど生じず,これらの相違点が両意匠の実線部分の形態に関する類否判断に及ぼす影響を大きく評価することはできない。

3.両意匠の類否判断
上記のとおり,両意匠を対比した場合,意匠に係る物品はもとより,実線部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲が一致するとともに,実線部分の形態においても,その共通点の類否判断に及ぼす影響が相違点のそれを凌駕するものであり,看者に共通の美感を起こさせるものであるから,本願意匠は,本意匠に類似するものと認められる。

第4 むすび
以上のとおり,本願意匠は,本意匠に類似するものであり,かつ,本願は,その本意匠に係る出願と同日に同一人が出願したものであり,また,本意匠の意匠権について専用実施権が設定されていないから,本願意匠は,意匠法第10条第1項に規定する関連意匠として意匠登録を受けることができるものである。
したがって,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2015-06-15 
出願番号 意願2013-27111(D2013-27111) 
審決分類 D 1 8・ 3- WY (F4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木本 直美 
特許庁審判長 本多 誠一
特許庁審判官 江塚 尚弘
正田 毅
登録日 2015-07-31 
登録番号 意匠登録第1532584号(D1532584) 
代理人 野村 慎一 
代理人 藤本 昇 

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