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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 D4
管理番号 1302952 
審判番号 不服2015-3887
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-02-27 
確定日 2015-06-26 
意匠に係る物品 エアーコンディショナー 
事件の表示 意願2014- 101「エアーコンディショナー」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,平成26年(2014年)1月7日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば意匠に係る物品を「エアーコンディショナー」とし,形態を,願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため,同条同項の規定により意匠登録を受けることができない意匠)に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠は,本願出願前,日本国特許庁が平成8年(1996年)9月20日に発行した意匠公報に記載された,意匠登録第963916号(意匠に係る物品「エアーコンディショナー」)の意匠である(別紙第2参照)。

第3 本願意匠と引用意匠の対比
1 意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「エアーコンディショナー」であって,鍔状に張り出されたパネル面上に吸い込みグリルと吹き出しルーバーが設けられ,4つの吹き出しルーバーが四方に配されていることから,本願意匠は,エアーコンディショナーの物品分野における通常の知識に照らせば,室内の天井面に埋め込まれるものと推認される。一方,引用意匠の意匠に係る物品も「エアーコンディショナー」であって,鍔状に張り出されたパネル面上に吸い込みグリルと吹き出しルーバーが設けられ,4つの吹き出しルーバーが四方に配されていることから,本願意匠と同様に,引用意匠は室内の天井面に埋め込まれるものと推認される。したがって,本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の用途及び機能は共通しており,両意匠の意匠に係る物品は同一であると認められる。

2 両意匠の形態
両意匠の形態を対比すると,主として,以下の共通点と差異点が認められる。
(1)共通点
両意匠には,以下の共通点が認められる。
(A)全体が,略正方形板状の前面パネルの後面に,略柱状の本体を設けて一体としたものであり,前面パネルは本体よりも一回り大きくフランジ状に形成され,本体は前後がやや扁平なものであって,前面パネルの正面中央には,吸い込みグリルを配した略正方形状のグリルパネル部が形成され,その周囲四方に,細幅長方形板状の吹き出しルーバーが配されて,前面パネルの正面四隅には,同形同大のコーナーパネルが形成されている。
(B)グリルパネル部について
(B-1)グリルパネル部の構成
グリルパネル部は,1辺の長さが前面パネル全幅の約10/13であり,隅部がコーナーパネルに囲われるように,コーナーパネルに接して配されている。
(B-2)吸い込みグリル
吸い込みグリルは,グリルパネルの全面に配されており,列状に並んだ多数の小円形孔(パンチング孔)から成る。
(C)コーナーパネルの構成態様について
(C-1)コーナーパネルの態様
コーナーパネルは,正面から見て中央寄りの隅が切り欠かれた略鈎型形状である。
(C-2)コーナーパネルの構成
コーナーパネルは,最大縦幅と最大横幅が同じであって,その長さは,前面パネル全幅の約1/5である。
(D)吹き出し口の態様について
吹き出し口は正面視細幅長方形状であって,その長辺方向の幅は前面パネル全幅の約3/5である。
(E)吹き出し口周囲の態様について
吹き出し口の外側には,正面視細幅長方形状のパネル(以下「吹き出し口外側パネル」という。)がコーナーパネルの間に嵌合されるように設けられており,その長辺の幅は吹き出し口の長辺方向の幅と同じであり,短辺の幅は吹き出し口の短辺方向の幅よりも小さい。
(F)吹き出しルーバーの態様について
吹き出しルーバーは,細幅長方形板状であって,吹き出し口の内側に配されている。
(G)前面パネルの外周各面の構成について
平面,底面及び側面から見て,前面パネルにはコーナーパネルと吹き出し口外側パネルの境界線が表されており,各面のコーナーパネル:吹き出し口外側パネル:コーナーパネルの長さの比は,約1:3:1である。

(2)差異点
一方,両意匠には,以下の差異点が認められる。
(a)本体の態様について
本願意匠の本体は背面視隅切り正方形状の略直方体状であるが,引用意匠の本体は正方形状の角柱状である。
(b)前面パネルの態様について
本願意匠の前面パネルの外周面はやや厚みがあり,外周面のうち平面と底面が垂直な平坦面状に表され,側面が水平な平坦面状に表されているのに対して,引用意匠では,前面パネルの外周面は薄く,前面パネル正面外側寄りが緩やかに後退して,平面,底面及び側面から見て略弧状に傾斜している。
(c)グリルパネル部の構成態様について
(c-1)吸い込みグリルの態様
本願意匠の小円形孔は,縦が74列,横が128列で略千鳥状に並んでいるのに対して,引用意匠の小円形孔は,縦横が共に41列で略格子状に並んでおり,引用意匠に比べて本願意匠の小円形孔は小さく,密に配列されている。
(c-2)グリルパネル部隅部の態様
拡大して見ると,引用意匠のグリルパネル部の四隅では,コーナーパネルの稜線の一部が小円形孔の中に表れているのに対して,本願意匠では,その稜線は表れていない。
(c-3)グリルパネル部の端部形状
本願意匠のグリルパネル部は,前方に僅かに突出して,平面,底面及び側面から見た突出部が垂直又は水平な平坦面状に表されているが,引用意匠では,そのような突出はない。
(d)コーナーパネルの切り欠きの程度について
本願意匠のコーナーパネルの切り欠きの幅は,コーナーパネルの最大幅の約2/5であるのに対して,引用意匠のそれは約1/3である。すなわち,切り欠きの幅のコーナーパネルの最大幅に占める割合は,本願意匠が引用意匠に比べてやや大きい。
(e)吹き出し口の短辺方向の幅
吹き出し口の短辺方向の幅は,本願意匠ではコーナーパネルの最大幅の約1/3であるが,引用意匠ではその約1/4である。
(f)吹き出しルーバーとその周囲の構成態様について
(f-1)引用意匠には,グリルパネル部と吹き出し口の間に,正面視細幅長方形状のパネル(以下「吹き出し口内側パネル」という。)がコーナーパネルの間に嵌合されるように設けられており,その長辺の幅は吹き出し口の長辺方向の幅と同じであり,短辺の幅は吹き出し口の短辺方向の幅よりも小さい。これに対して,本願意匠では,そのような吹き出し口内側パネルはなく,グリルパネル部のすぐ外側に吹き出し口が配されている。
(f-2)吹き出しルーバー
本願意匠の吹き出しルーバーは,閉じた状態で吹き出し口と同形同大であって,その吹き出し口を隙間なく塞いでいるのに対して,引用意匠では,吹き出しルーバーの内側が後方に傾斜して,周囲に隙間を残して配されており,特に外側長辺側の隙間が大きく,短辺側の隙間には取付け軸が表されている。

第4 類否判断
1 意匠に係る物品
前記認定したとおり,両意匠の意匠に係る物品は同一である。

2 エアーコンディショナーの物品分野の意匠の類否判断
室内の天井面に埋め込まれるエアーコンディショナーの通常の使用状態において,看者がエアーコンディショナーを観察するに当たっては,そのエアーコンディショナーを主として正面方向又は正面斜め方向から眺めることとなり,正面の構成態様,特に,前面パネルの構成態様や,グリルパネル部,コーナーパネル及び吹き出し口などの構成態様について注意を払うことになる。したがって,エアーコンディショナーの物品分野の意匠の類否判断においては,上記の項目を特に評価し,かつそれ以外の項目も併せて,各項目を総合して意匠全体として形態を評価する。

3 形態の共通点の評価
両意匠の共通点(A)で指摘した構成態様,具体的には,略正方形板状の前面パネルの後面に略柱状の本体を設けて一体とさせ,前面パネルを本体よりも一回り大きくフランジ状に形成して,前面パネルの正面中央に,吸い込みグリルを配した略正方形状のグリルパネル部を形成し,その周囲四方に,細幅長方形板状の吹き出しルーバーを配して,前面パネルの正面四隅に同形同大のコーナーパネルを形成した構成態様については,室内の天井面に埋め込まれるエアーコンディショナーの物品分野の意匠において,本願の出願前に普通に見受けられることから,看者の注意を惹くものとはいえない。したがって,共通点(A)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
また,共通点(C)については,コーナーパネルを中央寄りの隅が切り欠かれた略鈎型形状とすることが,エアーコンディショナーの物品分野の意匠においては本願の出願前に普通に見受けられ,吹き出し口と吹き出し口外側パネルの幅を吸い込みグリルの1辺の長さとほぼ同じとする共通点(D)及び(E)についても,同じとすること自体は本願の出願前に普通に見受けられるので,共通点(C)ないし(E)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
そして,共通点(F)及び(G)についても,吹き出しルーバーを細幅長方形板状とすることはありふれており,前面パネルの外周各面のコーナーパネル:吹き出し口外側パネル:コーナーパネルの長さの比を約1:3:1とした共通点も,差異点(a)で指摘したとおり,引用意匠の前面パネルの外周面が薄いことから,それほど目立つものではないので,共通点(F)及び(G)は看者の注意を惹くものではなく,両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい
他方,共通点(B)で指摘した,グリルパネル部の1辺の長さを前面パネル全幅の約10/13として,その全面に,列状に並んだ多数の小円形孔から成る吸い込みグリルを配した態様については,一定した美的印象を醸し出していることから,看者の注意を惹くというべきであり,共通点(B)は両意匠の類否判断に一定程度の影響を及ぼしているということができる。
このように,共通点(B)については一定程度評価され得るものの,両意匠の形態の共通点を総合すると,両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいといえる。

4 形態の差異点の評価
一方,両意匠の形態の差異点については,以下のとおり評価され,差異点を総合すると,上記共通点の影響を圧して,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。
まず,差異点(b)については,前面パネルの外周面をやや厚みがあるものとして,前面パネルの平面と底面を垂直な平坦面状に表し,側面を水平な平坦面状に表した本願意匠の前面パネルの態様は,前面パネル全体があたかも大きな平板であるかのような印象を看者に与えるものであるのに対して,前面パネルの外周面を薄くし,前面パネル正面外側寄りを緩やかに後退させて,平面,底面及び側面から見て略弧状に傾斜させた引用意匠の前面パネルの態様は,天井に設置された際に天井面に溶け込む印象を看者に与えることから,両者は看者に与える視覚的印象を大きく異にするというべきであり,差異点(b)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
次に,差異点(c)については,看者が特に注目するグリルパネル部の態様に関する差異であり,本願意匠の小円形孔が引用意匠に比べて小さい点は看者が一見して気が付く差異であり,略千鳥状である配列の相違とあいまって,看者に異なる美感を与えているというべきであるから,差異点(c)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
そして,差異点(f-2)については,吹き出し口と同形同大であって,その吹き出し口を隙間なく塞いでいる本願意匠の吹き出しルーバーと,内側が後方に傾斜して,周囲に隙間を残して配された引用意匠の吹き出しルーバーが,その配置と隙間の有無の点で異なっており,看者はこの形状の差異に注目するというべきであるから,差異点(f-2)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
さらに,(a)で指摘した,本体の態様が背面視隅切り正方形状の略直方体状であるか,正方形状の角柱状であるかの差異も,一見して気が付く差異であって,両意匠の美感を異にしているというべきであるから,たとえ本体が設置時に天井の奥に隠れるものであるとしても,差異点(a)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められる。
他方,差異点(c-2)で指摘した,グリルパネル部四隅の小円形孔の中に表れるコーナーパネルの稜線の有無の差異については,グリルパネル部四隅の小円形孔が限られた部位であること,及び引用意匠に見られる小円形孔自体が小さく,拡大して見たときにコーナーパネルの稜線に気が付くことから,看者の注意を惹くとはいい難く,(c-3)のグリルパネル部の突出の有無の差異についても,本願意匠に見られる突出が僅かであって,突出部の形状も平坦面状であるから,目立たない差異であって看者はそれほど注目することはないので,差異点(c-2)及び(c-3)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
また,差異点(d)及び(e)についても,コーナーパネルの切り欠きの幅がコーナーパネルの最大幅の約2/5であるか約1/3であるかの差異は微差にとどまり,両意匠を意匠全体として見たときに両意匠の美感を異にするほどの差異であるとはいい難く,吹き出し口の短辺方向の幅がコーナーパネルの最大幅の約1/3であるか約1/4であるかの差異も,仔細に観察して認識できる差異であって,看者が特に注目するものではないので,差異点(d)及び(e)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
そして,(f-1)で指摘した,吹き出し口内側パネルの有無の差異については,引用意匠に見られる吹き出し口内側パネルが,長辺の幅が吹き出し口の長辺方向の幅と同じであり,短辺の幅が吹き出し口の短辺方向の幅よりも小さいことから,吹き出し口よりも注目されるとはいい難く,また,吹き出し口内側パネルの存在が両意匠の共通点である(E)吹き出し口,(F)吹き出し口周囲及び(G)吹き出しルーバーの態様に影響を与えることはないので,両意匠を意匠全体で比較した際には,吹き出し口内側パネルの有無が両意匠の共通点を圧して類否判断に大きな影響を及ぼすということはできない。
そうすると,(b),(c)及び(f-2)の差異点は,いずれも両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものであり,その余の差異点の影響が小さいものであるとしても,両意匠の差異点を総合すると,両意匠を別異のものと印象付けるものであるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きく,両意匠の共通点を凌ぐものであるということができる。

5 小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品が共通するが,両意匠の形態においては,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められるものの,総じて両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さく,これに対して,両意匠の形態の差異点を総合すると,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きく,共通点が看者に与える美感を覆して両意匠を別異のものと印象付けるものであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。

第5 むすび
以上のとおり,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同法同条同項の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2015-06-16 
出願番号 意願2014-101(D2014-101) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (D4)
最終処分 成立 
前審関与審査官 上島 靖範木村 恭子 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 正田 毅
小林 裕和
登録日 2015-07-10 
登録番号 意匠登録第1530737号(D1530737) 
代理人 櫻木 信義 
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