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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 L2
管理番号 1304019 
審判番号 不服2015-4299
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2015-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-03-04 
確定日 2015-07-09 
意匠に係る物品 排水案内板 
事件の表示 意願2014- 4485「排水案内板」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1.本願意匠
本願は,平成26年(2014年)3月3日に出願されたものであって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「排水案内板」とし,その形態を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって,「実線で表された部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」としたものである(以下,本願について意匠登録を受けようとする部分の意匠を「本願実線部分」という。)。(別紙第1参照)

第2.原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,日本国特許庁発行の意匠公報(意匠公報発行日:平成25年(2013年)11月11日)に記載された意匠登録第1483960号(意匠に係る物品,排水案内具)の意匠(以下,「引用意匠」という。)であって,引用意匠及び本願実線部分に相当する部分(以下,「引用相当部分」という。)の形態は,同公報に記載の図面に表されたとおりのものである。(別紙第2参照)

第3.当審の判断
1.本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「排水案内板」であり,引用意匠の意匠に係る物品は「排水案内具」であって,表記は異なるが,本願意匠の願書及び願書に添付した図面の記載並びに引用意匠に係る公報の記載等を総合すれば,いずれも排水溝を備えた板体であるから,本願意匠と引用意匠(以下,「両意匠」という。)の意匠に係る物品は共通する。

(2)部分意匠としての用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲
本願実線部分と引用相当部分(以下,「両意匠部分」という。)は,潜熱回収型給湯装置等から排出されるドレイン排水をベランダ等の床面に沿って排出案内するための排水溝を備えた板体に関するものであるから,その用途や機能は一致する。
また,両意匠部分は,それぞれ,両意匠の中央に位置しているから,両意匠部分の位置は一致するといえる。
また,排水溝の幅や高さは,排出するドレイン水の流量に応じて決められるべきものといえるから,同程度のドレイン水を排出するとすれば,両意匠部分の大きさはおおむね共通するといえる。
しかし,本願実線部分の面積は,本願意匠全体の1/8程度であって,小さな範囲であるのに対して,引用相当部分の面積は,引用意匠全体の2/5程度であって,大きな範囲であるから,両意匠部分の範囲は相違する。

(3)形態
両意匠部分の形態を対比すると,以下のとおりの共通点及び相違点がある。(以下,対比のため,本願意匠の図面における正面,平面等の向きを,引用意匠にもあてはめることとする。)

<共通点>
両意匠部分は,基本的構成態様として,
(A)排水溝の幅方向中央から外端部に向けて低くなるような,なだらかな傾斜底面を設け,傾斜底面の外端部から中央側に向けて折り返すような,湾曲側面を設けている点,
において共通する。

<相違点>
両意匠部分は,具体的構成態様として,
(ア)本願実線部分は,傾斜底面の頂上部に,緩やかな弧状部を介して平面部を接続し,平面部と弧状部との接続部を角部としたものであるのに対して,引用相当部分は,傾斜底面の頂上部に,弧状部や平面部を設けていない点,

(イ)本願実線部分は,湾曲側面の上方端部に,上方外側に延びる傾斜壁面を接続し,傾斜壁面と湾曲側面との接続部を角部としたものであるのに対して,引用相当部分は,湾曲側面の上方端部に,上方外側に折り返すような弧状壁面を接続し,弧状壁面と湾曲側面との接続部を滑らかとしたものである点,

(ウ)本願実線部分は,傾斜底面の頂上部よりも,湾曲側面の上方端部を高く配置したものであるのに対して,引用相当部分は,傾斜底面の頂上部よりも,湾曲側面の上方端部を低く配置したものである点,
において相違する。

2.本願意匠と引用意匠の類否判断
以上の一致点,共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価及び総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。

(1)両意匠の意匠に係る物品,部分意匠としての用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲
両意匠は,意匠に係る物品が共通し,部分意匠としての用途及び機能並びに位置及び大きさも,一致ないし共通するが,部分意匠としての範囲は,本願実線部分が小さな範囲であるのに対して,引用相当部分が大きな範囲であり,明らかに相違するから,この相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,一定程度あるものといわざるを得ない。

(2)両意匠部分の形態についての共通点の評価
排水案内板は,ドレイン排水を案内するための物品であるから,その排水溝は最も重要な機能を担う部分であって,需要者は,排水溝の形態について,その細部にわたるまで関心をもって観察するものといえる。
共通点(A)は,排水溝に傾斜底面と湾曲側面を設けているというものであるところ,そのような形態は,この種の物品において,ほかにも見られるもの(例えば,日本国特許庁発行の公開特許公報 特開2013-190142号の【図5】,別紙第3参照。)であって,両意匠部分のみに見られる形態とまではいえない。また,共通点(A)の湾曲側面は,排水案内板の施工後においては,近付いてのぞき込んだとしても,見えにくい部位である。
これらを踏まえると,共通点(A)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響を大きいということはできず,両意匠部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。

(3)両意匠部分の形態についての相違点の評価
これに対して,相違点(ア)としてあげた,傾斜底面の頂上部に,緩やかな弧状部を介して平面部を接続し,平面部と弧状部との接続部を角部とした点や,相違点(イ)としてあげた,湾曲側面の上方端部に,上方外側に延びる傾斜壁面を接続し,傾斜壁面と湾曲側面との接続部を角部とした点は,いずれも平面視において容易に看取できるものである上に,本願実線部分のみに見られる形態であるから,両意匠部分の類否判断に非常に大きな影響を与えるといえる。
また,上記相違点(ウ)としてあげた,傾斜底面の頂上部よりも,湾曲側面の上方端部を高く配置した点は,排水案内板を施工し,排水溝に沿ってドレイン排水が流れる際には,水面との対比により,際立って目に付くものといえるし,この点も,本願実線部分のみに見られる形態であるから,上記相違点(ア)及び(イ)と同様に,両意匠部分の類否判断に与える影響は非常に大きいというほかない。
そして,相違点(ア)から(ウ)までが相まった視覚的効果を考慮すると,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕して,両意匠部分は,部分意匠全体として視覚的印象を異にするというべきである。

(4)小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品が共通し,また,部分意匠としての用途及び機能並びに位置及び大きさも,一致ないし共通するものの,部分意匠としての範囲が明らかに相違しており,形態においては,共通点が未だ両意匠部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており,両意匠部分全体として見た場合,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕し,両意匠部分全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は,意匠全体として視覚的印象を異にするというべきであり,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。

第4.むすび
以上のとおりであって,原査定の引用意匠をもって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,原査定の拒絶の理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2015-06-26 
出願番号 意願2014-4485(D2014-4485) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (L2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木村 恭子 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 江塚 尚弘
刈間 宏信
登録日 2015-08-14 
登録番号 意匠登録第1533476号(D1533476) 
代理人 特許業務法人R&C 
代理人 特許業務法人R&C 
代理人 特許業務法人R&C 
代理人 特許業務法人R&C 

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