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審決分類 審判    L2
管理番号 1304032 
審判番号 無効2014-880001
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2015-09-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-01-30 
確定日 2015-08-03 
意匠に係る物品 側溝ブロック 
事件の表示 上記当事者間の登録第1306613号「側溝ブロック」の意匠登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 手続の経緯
本件登録意匠,すなわち,本件意匠登録第1306613号の意匠は,平成18年(2006年)3月24日に意匠登録出願(意願2006-7425。以下「本願」という。)されたものであって,審査を経て平成19年(2007年)6月29日に意匠権の設定の登録がなされ,同年7月30日に意匠公報が発行され,その後,当審において,概要,以下の手続を経たものである。

・本件審判請求 平成26年1月30日
・審判事件答弁書提出 平成26年7月 4日
・口頭審理陳述要領書(請求人)提出 平成27年5月18日
・口頭審理陳述要領書(被請求人)提出 平成27年5月25日
・口頭審理 平成27年6月 8日


第2 当事者が提出した証拠
請求人は,以下の甲第1号証ないし甲第32号証を,審判請求書の添付書類として提出した。
甲第1号証 株式会社カイエーテクノが平成14年に発行した
「コンクリート二次製品総合カタログ」(審判請求書
第3頁第22行目?第26行目。以下,単に
「総合カタログ」という。)において,
「コンクリート二次製品総合カタログ」と中央上に
記載された頁,第75頁,第78頁,第160頁及び
「株式会社カイエーテクノ」と中央上に記載された頁
(当審では,甲第1号証について,提出された写しを
原本として扱う。以下,「総合カタログ」として
頁番号が記された書証についても同様に扱う。)
甲第2号証 「総合カタログ」第76頁
甲第3号証 国土交通省のNETIS (新技術情報提供システム)の
ウェブページ(登録No.KT-030048-A)
の写し
甲第4号証 意匠登録第930399号の意匠公報の写し
甲第4号証の2 特開平11-222912号の公開特許公報(抜粋)の
写し
甲第5号証 特許第2942734号の特許公報(抜粋)の写し
甲第6号証 特開2002-146896号の公開特許公報(抜粋)
の写し
甲第7号証 特開2004-52470号の公開特許公報(抜粋)の
写し
甲第8号証 意匠登録第1059379号の意匠公報の写し
甲第9号証 「株式会社ホクエツのカタログ」(審判請求書第5頁
第11行目?第12行目)とされた書証において,
「ホクエツ」と最下部に記載された頁,第90頁及び
「株式会社ホクエツ」と最上部に記載された頁(この
頁の右下に「H14.9」の記載がある。)
(当審では,甲第9号証について,提出された写しを
原本として扱う。甲第9号証の2についても同様。)
甲第9号証の2 「株式会社ホクエツのカタログ」第82頁
甲第10号証 「総合カタログ」第117頁
甲第11号証 最上部右に「EM側溝(バリアフリー対応スベリ止め付
)」と記載された書証
(当審では,甲第11号証について,提出された写し
を原本として扱う。ただし,本書証の出典及び発行日
は不明であると認められる。)
甲第12号証 「総合カタログ」第115頁
甲第13号証 「総合カタログ」第113頁
甲第14号証 「総合カタログ」第99頁
甲第15号証 「総合カタログ」第144頁
甲第16号証 国土交通省のNETIS (新技術情報提供システム)の
ウェブページ(登録No.KT-020001-A)
の写し
甲第17号証 茨城県土木部 新技術等情報提供データベース IT′S
のウェブページ(登録No.B-04001)の写し
甲第18号証 特開2002-242117号の公開特許公報(抜粋)
の写し
甲第19号証 特開2005-307500号の公開特許公報(抜粋)
の写し
甲第20号証 意匠登録第1064700号の意匠公報の写し
(なお,副本(1部)の第2頁?第5頁には,異なる
登録意匠に係る意匠公報の写しが添付されている。)
甲第21号証 特開2005-200861号の公開特許公報(抜粋)
の写し
甲第22号証 意匠登録第1232778号の意匠公報の写し
甲第23号証 特開2005-315012号の公開特許公報(抜粋)
の写し
甲第24号証 特開2002-339444号の公開特許公報(抜粋)
の写し
甲第25号証 実開平7-38286号の公開実用新案公報(抜粋)
の写し
甲第26号証 実開平5-42384号の公開実用新案公報の写し
甲第27号証 特開平7-102623号の公開特許公報(抜粋)の
写し
甲第28号証 特開2001-317115号の公開特許公報(抜粋)
の写し
甲第29号証 特開2005-105514号の公開特許公報(抜粋)
の写し
甲第30号証 特開平6-190812号の公開特許公報(抜粋)の
写し
甲第31号証 意匠登録第1226206号の意匠公報の写し
甲第32号証 特開平5-340066号の公開特許公報の写し


第3 請求人の申し立て及び理由の要点
請求人は,請求の趣旨を
「登録第1306613号意匠の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求める。」と申し立て,その理由を,要点以下のとおり主張し(平成27年5月18日付け「口頭審理陳述要領書」の内容を含む。),その主張事実を立証するため,「第2」に掲げた証拠を提出した。

1 意匠登録無効の理由の要点
(1)本件登録意匠は,本件意匠の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された意匠,具体的には,甲第1号証の第78頁に掲載された製品名「R2-KBD」の意匠(以下「甲1意匠」という。)に類似する意匠であり,意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであるので,本件意匠登録は同法第48条第1項第1号に該当し,無効とすべきである。
(2)本件登録意匠は,本件意匠の出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が公然知られた模様等に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものであるので,本件意匠登録は同法第48条第1項第1号に該当し,無効とすべきである。

2 本件意匠登録を無効とすべき理由(1)
(1)本件登録意匠
本件登録意匠は,意匠に係る物品を「側溝ブロック」とし,その形態は次のとおりである。
ア 基本的構成態様
(A)管体が横長で断面略四角形の角柱状体の内部中央に長手方向に貫通する大きな排水路を設けたものであって,
(B)その管体上面の幅方向中央より片方の面が,その全面にわたってもう一方の面(以下,天板という)より低くなった段差を有するようにして,当該管体の上方片側部分に凹所が形成されている。使用時には,管体の凹所には歩車道境界ブロック(縁石)が設置され,天板は車道の側端を形成する態様とされている。
イ 具体的態様
(C)管体の排水路の底面は,その幅方向中央に向けてゆるやかに低くなるように勾配が設けられている。
(D)また,管体の天板は,上記した凹所に向けてゆるやかに低くなるように勾配が設けられている。
(E)傾斜した天板の最も低くなった部分(段差と接する部分)には,内部の排水路まで垂直に貫通する2つの天端排水孔が形成されている。
(F)天板近くの管体側面上方部分には,2つの側面排水孔が内部の排水路に貫通するように下向き斜めに形成されている。
(G)管体の側面には,水道としてのスリットが各側面排水孔の入り口部を通過するように当該側面の全長にわたって形成されている。
(H)天板には,その全面にわたって凹凸による模様が設けられている。
(2)甲1意匠
甲1意匠の形態は,次のとおりである。
ア 基本的構成態様
(a)横長で断面略四角形の角柱状体の内部中央に長手方向に貫通する大きな排水路を設けた管体とするものであって,
(b)その管体上面の幅方向中央より片方の面が,その全面にわたってもう一方の面(以下,天板という)より低くなった段差を有するようにして,当該管体の上方片側部分に凹所が形成されている。使用時には,管体の凹所には縁石が設置され,天板は車道の側端を形成する態様とされている。
イ 具体的態様
(c)管体の排水路の底面は,その幅方向中央に向けてゆるやかに低くなるように勾配が設けられている。
(d)管体の天板は,上記凹所に向けてゆるやかに低くなるように勾配が設けられている(勾配6%)。
(e)傾斜した天板の端部分(段差に接する部分)から僅かに離れた低部に,内部の排水路まで垂直に貫通する2つのスリット(30mm,長さ145mm)が形成されている。この天板の全長は2000mmである。
(f)上記天板近くの管体側面上方部分には,4つの側面排水スリットが内部の排水路に貫通するまで下向き斜めに形成されている。
(g)また,天板近くの管体側面上方部分には,1条のスリットが各側面排水スリットの入り口開口部分を通過するように当該側面の全長にわたって形成されている。
(h)上記両側面の左右端面近傍部分には,それぞれ接続用ボルト孔を含む接続部が形成されている。この接続部を使って側溝ブロック同士が接続される。
(3)先行周辺意匠の摘示
ア 管体の天板について,本件登録意匠と同様に,凹所に向けてゆるやかに低くなるように勾配が設けられているものは,以下の例が存在し,本件登録意匠の出願日(平成18年3月24日)前から公然知られている。
(ア)甲第2号証:総合カタログの第76頁に掲載された「R2-KAD(縁石組み合わせタイプ エプロン幅「500mm 勾配2%」の意匠
(イ)甲第3号証:上記した「R2-KAD」の外観写真(タイル紋様有り)が登録された国土交通省のNETIS (新技術情報提供システム)のウェブページ(登録No.:KT-030048-A,新規登録日:2004.02.26)の意匠
(ウ)甲第4号証:意匠登録第930399号の意匠公報に掲載された意匠
(エ)甲第4号証の2:特開平11-222912号の公開特許公報に掲載された意匠
(オ)甲第5号証:特許第2942734号(特開平10-15933)の図7で公開された意匠
(カ)甲第6号証:特開2002-146896号の公開特許公報の図2?図6で公開された意匠
(キ)甲第7号証:特開2004-52470号の公開特許公報に掲載された意匠
(ク)甲第8号証:意匠登録第1059379号の意匠公報に掲載された意匠
(ケ)甲第9号証:株式会社ホクエツのカタログの90頁に掲載されたL型街渠2形の意匠
イ 管体の天板について,本件登録意匠と同様に,当該天板の最も低くなった端部分(段差に接した部分)に垂直の排水孔が形成されているのは,以下の例が存在し,本件登録意匠の出願前から公然知られている。
甲第7号証の意匠
ウ 管体の側面について,本件登録意匠と同様に,2つの側面排水孔が排水路に貫通するように下斜め方向に貫通形成されているのは,以下の例が存在し,本件登録意匠の出願前から公然知られている。
甲第6号証の意匠
エ 管体の天板について,本件登録意匠と同様に,天板に凹凸模様が加えられているのは,以下の例が存在し,本件登録意匠の出願前から公然知られている。
(ア)甲第3号証の意匠
(イ)甲第9号証の2の意匠:株式会社ホクエツのカタログの82頁に掲載されたPOINT1の意匠
(ウ)甲第10号証の意匠:総合カタログの117頁に掲載された「EM側溝 道路縦横断用門型側溝 スリップ防止付」の意匠(「スリップ防止+美観向上+バリアフリー」の写真参照)
(エ)甲第11号証の意匠:上記したEM側溝が平成15年度に川越市で施工された写真の意匠
(オ)甲第12号証の意匠:総合カタログの115頁に掲載された「ボックス側溝の施工写真」の意匠
(カ)甲第13号証の意匠:総合カタログの113頁に掲載された「B-CATフラットタイプ」の施工写真の意匠
(キ)甲第14号証の意匠:総合カタログの99頁に掲載されたR2-HV V型路側排水タイプの意匠
(ク)甲第15号証の意匠:総合カタログの144頁の意匠
(ケ)甲第16号証:NETISに新規登録された千葉窯業株式会社のスリム側溝(登録No.KT-020001-A,新規登録日時2002.04.01)の意匠(スリム側溝の使用実例写真参照)
(コ)甲第17号証:上記したNETES登録から約2年半後の2004.11.22に登録された茨城県土木部新技術等情報提供データベースIT′Sに掲載された同型のスリム側溝の意匠(ウェブページのA-5「新技術等 申請資料(5/5)(写真等)」参照)
(サ)甲第18号証:特開2002-242117号の公開特許公報で公開された意匠
(シ)甲第19号証:特開2005-307500号の公開特許公報で掲載された意匠
公開特許公報の図3?図8参照。また,明細書の段落番号【0021】,【0022】,【0024】参照。
(ス)甲第20号証:意匠登録第1064700号の意匠公報の意匠
(セ)甲第21号証:特開2005-200861号の公開特許公報で公開された意匠
(ソ)甲第22号証:意匠登録第1232778号の意匠公報の意匠
(タ)甲第23号証:特開2005-315012号の公開特許公報で公開された意匠
(チ)甲第24号証:特開2002-339444号の公開特許公報で公開された意匠
(ツ)甲第25号証:実開平7-38286号の公開実用新案公報で公開された意匠
(テ)甲第26号証:実開平5-42384号の公開公報で公開された意匠
(ト)甲第27号証:特開平7-102623号の公開公報で公開された意匠
(ナ)甲第28号証:特開2001-317115号の公開公報で公開された意匠
(ニ)甲第29号証:特開2005-105514号公報で公開公報された意匠
(ヌ)甲第30号証:特開平6-190812号の公開公報で公開された意匠
(ネ)甲第31号証:意匠登録第1226206号の意匠公報で公開された意匠
(4)本件登録意匠と甲1意匠の対比
ア 意匠に係る物品は,両意匠ともに「側溝ブロック」に関するものであり,用途・機能が共通するので同一乃至類似する。
イ その形態については,以下の共通点と差異点が認められる。
【共通点】
(ア)管体が横長で断面略四角形の角柱状体であって,その内部中央に排水路が設けられ,かつ,この管体の上方片側に縁石を組み込むための凹所が形成されているとした基本的構成態様は,両意匠ともに共通する。
(イ)管体の排水路の底面が穏やかにかつ直線的に低くなるように形成されている態様は両意匠ともに共通する。
(ウ)管体の天板が凹所に向けて低くなるように勾配がついている態様は両意匠ともに共通する。
【差異点】
一方,各部の具体的態様につき,
(エ)本件登録意匠では管体の天板の勾配が微小なのに対して,甲1意匠では若干大きめである。しかし,両意匠とも勾配が6%以内となっており,ゆるやかな傾斜具合といえる範囲内である。
ここで,例えば甲1意匠を開発した(株)カイエーテクノにおいても,平成4年当時(会社名株式会社テクノクリート)は天板の勾配は割合大きいものであったが(甲第4号証),総合カタログを発行した平成14年頃には勾配2?6%とゆるやかな傾斜となっていた。ちなみに,甲1意匠と同シリーズの甲第2号証の意匠では勾配2%となっている。
(オ)本件登録意匠では2つの天端排水孔が天板の長手方向中央に対称かつ最も低い部分(段差に接する部分)に形成されているのに対し,甲1意匠では同数の天端排水孔が上記中央に対して若干非対称かつ段差から僅かに離れた位置に形成されている。
ここで,天端排水孔が天板の最も低い部分に形成されている意匠が存在する(甲第7号証の図2?4参照)とともに,天板の長手方向中央に対して対称となるような位置に形成されている意匠(甲第4号証)が存在する。したがって,天端排水孔の形態は新規な形態ではなく,看者が注意を惹かれるところではない。
天端排水孔の形態は雨水をいかに効率的に内部の排水路に排水できるかという純粋な技術的問題であって,意匠的な問題ではない。以上を総合的に考慮すると,上記した天端排水孔の形態の差異が意匠の類比判断に与える影響は微弱であると思料する。
(カ)本件登録意匠では2つの側面排水孔(断面円形)がそれぞれ側面の長手方向中央に対して対称となるような位置に形成されているのに対し,甲1意匠では4つの側面排水孔(断面スリット形)がそれぞれ側面の長手方向中央に対して対称となるような位置に形成されている。なお,側面排水孔の入り口部分に付けられる排水フィルターは雨水以外の異物(舗装用骨材等)が流入するのを防ぐという技術的目的のみでつけられるものであるので,意匠的特徴としては考慮しないですむものである。
(キ)本件登録意匠では天板に凹凸模様が形成されているのに対し,甲1意匠では凹凸模様がない。
一般に,本件登録意匠のような管渠型の側溝(ボックス側溝)は道路(舗装道路)と歩道との間に設置され,周辺の生活排水や道路表面に降った雨水等を所定の箇所に円滑かつ速やかに排水するために設置されるものである。天板は道路の路面の延長上に配置されることになる。
凹凸模様は,天板の全域に形成されており,当該天板の基底を形成する凹部と,当該基底より僅かに出っ張った平面視多角形状で小面積の多数の凸部とからなっている。この凹部と凸部との境界は特定の色で明示されているとの記載はないので,当該凹凸模様を含む天板全体は管体の他の部分と同じ色(コンクリート色,一般には薄い灰色)をしていると思料する。
(ク)本件登録意匠では管体の両側面にブロック同士を接続するための接続用ボルト孔を含む接続部が形成されていないのに対し,甲1意匠では左右の短端面近くの側面部分に接続部(接続用ボルト孔を含む)が形成されている。
ここで,接続部の形態は機能的必然性のみに基づくものと評価できるので,意匠的特徴としては考慮しないですむものである。
(5)本件登録意匠と甲1意匠との類比
ア 両意匠の類比を検討すると,共通する基本的構成態様は,具体的態様の共通点とともに,両意匠の基調を形成しているのに対して,上記(エ)の天板の勾配の差異については微小の差であり,どちらの天板の幅寸法は小さいので,肉眼では当該両天板の傾きの度合いは同程度の範囲内にあるように見えるものである。
イ また,上記(オ)の天端排水孔の形態の差異については,設置個数が同一であること,断面形態がほぼ同一であること,その幅・長手方向長さが略同一であること,及び,孔間隔が長手方向にほぼ同一であること,を考慮すれば,類比判断に与える影響は微弱である。
ウ また,上記(カ)の側面排水孔の設置個数,配置位置及び断面形態の差異については,水道としてのスリット形成高さの側面位置に長手方向に均等に配置されていること,及び,いずれも下向き斜めに形成されることは共通している。
そして,側面排水孔は地中に滲みこんできた雨水を内部の排水路に導くという技術的解決のためだけに設置されるものであり,その形態が機能的必然性のみに基づくものであるので,意匠的特徴としては考慮する必要はないものであるので,両意匠に僅かに残った差異点も無視できるものである。
エ 側溝を屋内でじっくり観察するならば,天板の凹凸模様が看者が最も注意を惹きつけられるところであるかも知れない。
しかし,側溝は,その物品の性質上,街中で車道と歩道との間に設置される公共の構造物であるのがほとんどである。そして,本件登録意匠の意匠公報によれば,意匠に係る物品の説明の欄等にも,凹凸模様に特に着色(例えば,凹所と凸所に異なる色を施す)することは記載されていないので,天板全面が管体の他の面と同じ色(コンクリート独特の薄い灰色)である。
そうすると,看者には,肉眼で凹部と凸部との境界を明確に識別できるものではない。見る角度でも,太陽光線の当たり方でも見え方は変化する。
また,本件登録意匠に係る側溝が施工されて実際に使用される場合,最終需要者(周辺住民・歩行者,道路を使用するドライバー等)は,当該側溝を立ち止まってじっくりと観察することは交通の妨げにもなりかねない。
また,さまざまな角度(歩道を歩行中,車を運転中,周辺ビルの窓ごしに)見ることになるので,看者が美観を感得できない場合も生じる。看者が美観を感得できない形態は意匠的には存在しないも同然である。
さらに,天板に凹凸模様を施すことは全国各地で広まっていて新規な手法とはいえず,ありふれた装飾手法になっているので,看者の注意を惹きつけにくいものである。したがって,天板に加えられた凹凸模様は類比判断に与える影響は小さいと思料する。
以上から総合的に判断すると,本件登録意匠は,甲1意匠に類似するものである。
(6)小括
したがって,本件登録意匠は,意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり。その意匠登録は同法第48条第1項第1号の規定に該当し,無効とすべきである。

3 本件意匠登録を無効とすべき理由(2)
(1)仮に本件登録意匠は甲1意匠に類似していないとしても,当業者が甲第1号証と公然知られた模様等に基づいて容易に創作をすることができたものである。
(2)天板に形成された凹凸模様
ア 天板に凹凸模様を形成するのが流行
平成14年頃から街の美観向上のために側溝の表面に凹凸模様を形成することが本格的に流行し出した(甲第9号証の2のPOINT1)。
イ 本件登録意匠の天板の凹凸模様について
(ア)細長い形状の物品は,その長手方向に視線が走る傾向にある。
(イ)細長い長方形状の天板をその長手方向に眺めていくと,当該天板の全長にわたって凸部が存在することが認識できる。なお,凸部は平面視多角形(正方形等)をしている。
(ウ)天板には数多くの凸部が全域にわたって存在しているので,看者は全体的に賑やかな印象を受ける。
(エ)凸部は,ばらばらに配置されているのではなく,いくつかかが寄せ集まって小さな図柄(図柄A,B,C)を形成し,それらの図柄が天板長手方向に一定の順序で並んでいるのが認識できる。
ウ 甲第20号証の天板の凹凸模様
(ア)細長い長方形状の天板をその長手方向に眺めていくと,当該天板の全長にわたって凸部が存在することが認識できる。なお,凸部は平面視長方形(正方形を含む)をしている。
大きな正方形の凸部(p)が長手方向に一定間隔で配置されているので,当該凸部(p)が区切りになって3つの図柄があるような印象を受ける。すなわち,看者はこれらの図柄(a,b,c)が天板長手方向に順次並んでいるような印象を受ける。
(イ)なお,甲第20号証の凹凸模様では,若干目地幅が狭い印象を受けるが,目地幅が大きな甲第22号証の例もある。また,甲第19号証意匠には長方形以外の凸部(円形,こばん形,正方形)が図示されており,段落番号【0022】,【0024】には形状,その配置は任意である旨が記載されている。
(ウ)また,原図を基にして複雑なタイル紋様を作成する方法は本件登録意匠出願前から公然知られていた(甲第32号証:特開平5-340066号公報参照)。
(エ)したがって,上記した背景意匠・技術に基づけば,当業者であれば複数の図柄を順次並べて本件登録意匠のような凹凸模様を形成することは容易であったと思料する。
以上,総合して考えると,本件登録意匠は,当業者が甲第1号証と公然知られた模様等に基づいて容易に創作をすることができたものである。
(3)小括
したがって。本件登録意匠は,意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり,その意匠登録は同法第48条第1項第1号の規定に該当し,無効とすべきである。

4 平成27年5月18日付け「口頭審理陳述要領書」における主張
(1)本件登録意匠の天端部の傾きの2%と同じ勾配の側溝(総合カタログの76頁(甲第2号証)のR2-KAD参照)は,本件登録意匠の出願前から知られていた。
(2)本件登録意匠の天端部の模様部分は「GBX」を模様化した凹凸であると答弁書第12頁で主張されているが,歩道を歩く人や車道を車両等で走行する人にとっては認識できないと思料する。
(3)凹凸は雨水が天端排水孔に円滑に流れ込むように,その凹み部分が出口のない雨水溜まりになってはいけないという物理的制約のもとに創成されたものであること,加工しやすさから3種類のパターンの模様の繰り返しからなっていることは,じっくりと眺めた場合には認識できると思料するが,凹凸の境界部分に線引きされないことがほとんどである(通常は日光の明暗の差のみ)施工現場では単に繰り返された凹凸が形成されているという認識を与える。


第4 被請求人の答弁及び理由の要点
被請求人は,答弁書を提出し,答弁の趣旨を
「本件審判請求は成り立たない。
審判費用は請求人の負担とする。との審決を求める。」と答弁し,その理由を,要点以下のとおり主張した(平成27年5月25日付け「口頭審理陳述要領書」の内容を含む。)。

1 意匠法第3条第1項第3号違反について
(1)請求人は,甲1意匠を理由として本件登録意匠について意匠法第3条第1項第3号違反の無効理由を主張している。そして,先行意匠として甲第2号証乃至31号証を摘示し,差異点が与える影響は微弱であると主張している。しかし,後述するとおり,本件登録意匠と甲1意匠は,両意匠の差異点が共通点を大きく凌駕しており,類似するものではない。
ア 本件登録意匠の構成
(ア)本件登録意匠の意匠に係る物品
本件登録意匠の意匠に係る物品は「側溝ブロック」である。
(イ)本件登録意匠の構成
【基本的構成態様】
(A)内部に断面略四角形の水路を設けた長手方向に連続する暗渠型側溝ブロックであって,
(B)天端面において,略中央から長手方向片側の半分の面が連続して隆起し,段状になっていることにより,施工時には低い側の面上に歩道境界ブロックが設置される。
【具体的構成態様】
(C)水路の底面が幅方向中央に向けて低くなるように勾配が設けられている。
(D)天端面は幅方向の中央に向かって緩やかに低くなるように2%の勾配が設けられている。
(E)天端から内部の水路まで垂直に貫通する天端排水孔が,幅方向の中央部の隆起面に沿って長手方向に切り欠かれ,シンメトリーな位置に2箇所設けられている。
(F)天端隆起部の外側の側面上部には,長手方向に連続して側面排水孔に通じる溝が設けられている。
(G)天端隆起部の側面から内部の水路まで斜めに貫通する縦長楕円の側面排水孔が2箇所設けられるとともに,側面排水孔の入口部分にフィルターを挿入するための略正方形の切欠きが設けられている。
(H)長手方向の両端部には,側溝ブロック同士を接続する際に緩衝材となるパッキンを配置するためのスリットが一周に亘って設けられている。
(I)側溝ブロックの設置の際に用いるための円形の吊り金具取付孔が側面部略中央に1箇所ずつ設けられている。
(J)天端面には,隆起部外側に連続する凸部が設けられるとともに,天端排水孔以外の隆起部内側にも凸部が設けられ,これらの凸部の間に,図案化された「GBX」の文字が凸部で表されることにより,凹凸による模様が構成されている。
イ 甲1意匠の構成
(ア)甲1意匠の意匠に係る物品
甲1意匠の意匠に係る物品は「側溝ブロック」である。
(イ)甲1意匠の構成
【基本的構成態様】
(A)内部に断面略四角形の水路を設けた長手方向に連続する暗渠型側溝ブロックであって,
(B)天端面において,略中央から長手方向片側の半分の面が連続して隆起し,段状になっていることにより,施工時には低い側の面上に歩道境界ブロックが設置される。
【具体的構成態様】
(C)水路の底面が幅方向中央に向けて低くなるように勾配が設けられている。
(D)天端面は幅方向の中央に向かって低くなるように6%の勾配が設けられている。
(E)天端から内部の水路まで垂直に貫通する角丸長方形の天端排水孔が,長手方向に片側寄りに2箇所設けられている。
(F)天端隆起部の外側の側面上部には,長手方向に連続して側面排水孔に通じる溝が設けられている。
(G)天端隆起部の側面から内部の水路まで斜めに貫通する横長の角丸長方形の側面排水孔が4箇所設けられるとともに,側面排水孔の入口部分にフィルターを挿入するための長方形の切欠きが設けられている。
(H)長手方向の端部には,隣接する側溝ブロックと嵌合するための凹部がー周に亘って設けられており,他方側の端部には凸部が設けられている。
(I)側面の端部には接続用の四角形の孔が設けられているとともに,他方の端部にはT型の孔が設けられており,其々の孔内の端部側壁面には,側溝ブロック同士を接続するための接続用ボルト孔が設けられている。
ウ 本件登録意匠と甲1意匠は非類似である
(ア)共通点
上述した構成に基づいて対比すると,本件登録意匠と甲1意匠の基本的な構成態様はいずれも,
(A)内部に断面略四角形の水路を設けた長手方向に連続する暗渠型側溝ブロックであって,
(B)天端面において,略中央から長手方向片側の半分の面が連続して隆起し,段状になっていることにより,施工時には低い側の面上に歩道境界ブロックが設置される。
また,具体的構成態様において,
(C)水路の底面が幅方向中央に向けて低くなるように勾配が設けられている点,
(D)天端面は幅方向の中央に向かって低くなるように勾配が設けられている点,
(E)天端から内部の水路まで垂直に貫通する天端排水孔が,長手方向に2箇所設けられている点,
(F)天端隆起部の外側の側面上部には,長手方向に連続して側面排水孔に通じる溝が設けられている点,
(G)天端隆起部の側面から内部の水路まで斜めに貫通する側面排水孔が設けられるとともに,側面排水孔の入口部分にフィルターを挿入するための切欠きが設けられている点,
が共通している。
(イ)差異点
上述した構成に基づいて対比すると,本件登録意匠と甲1意匠の差異点は,以下のとおりである。
(A)本件登録意匠では,天端面は幅方向の中央に向かって緩やかに低くなるように2%の勾配が設けられているが,甲1意匠では,天端面は幅方向の中央に向かって低くなるように6%の勾配が設けられている。
(B)本件登録意匠では,天端から内部の水路まで垂直に貫通する天端排水孔が,幅方向の中央部の隆起面に沿って長手方向に切り欠かれ,シンメトリーな位置に2箇所設けられているのに対し,甲1意匠では,天端から内部の水路まで垂直に貫通する角丸長方形の天端排水孔が,長手方向に片側寄りに2箇所設けられている。
(C)本件登録意匠では,天端隆起部の側面から内部の水路まで斜めに貫通する縦長楕円の側面排水孔が2箇所設けられるとともに,側面排水孔の入口部分にフィルターを挿入するための略正方形の切欠きが設けられているのに対し,甲1意匠では,天端隆起部の側面から内部の水路まで斜めに貫通する横長の角丸長方形の側面排水孔が4箇所設けられるとともに,側面排水孔の入口部分にフィルターを挿入するための長方形の切欠きが設けられている。
(D)本件登録意匠では,長手方向の両端部には,側溝ブロック同士を接続する際に緩衝材となるパッキンを配置するためのスリットが一周に亘って設けられているのに対し,甲1意匠では,長手方向の端部には,隣接する側溝ブロックと嵌合するための凹部が一周に亘って設けられており,他方側の端部には凸部が設けられている。
(E)本件登録意匠では,側溝ブロックの設置の際に用いるための円形の吊り金具取付孔が側面部略中央に1箇所ずつ設けられているのに対し,甲1意匠では,円形の吊り金具取付孔は図示されていないが,側面の端部には四角形の孔が設けられているとともに,他方の端部にはT型の孔が設けられており,其々の孔内の端部側壁面には,側溝ブロック同士を接続するための接続用ボルト孔が設けられている。
(F)本件登録意匠では,天端面には,隆起部外側に連続する凸部が設けられるとともに,天端排水孔以外の隆起部内側にも凸部が設けられ,これらの凸部の間に,図案化された「GBX」の文字が凸部で表されることにより,凹凸による模様が構成されているが,甲1意匠では,天端面に特段の模様はなく,天端排水孔のみが看取される。
(ウ)本件登録意匠と甲1意匠は非類似である
本件要部は天端面の模様,天端面及び水路内の勾配,天端排水孔・側面排水孔の位置及び形状,側面排水孔の入り口に設けられる切欠きの形状,パッキン用スリットの形状の組み合わせにある。
本件登録意匠及び甲1意匠はいずれも,天端に歩道境界ブロックが載置される側溝ブロックであり,本体部は地中に埋設される暗渠型側溝ブロックである。請求人は需要者が周辺住民・歩行者,道路を使用するドライバー等である旨主張するが,この種の製品は専門業者が施工するという使用態様を考慮すれば,需要者を施工業者や流通業者まで含めてとらえるべきであり,施工方法や排水性に影響を及ぼす部位の具体的態様まで注意を惹くので,類否判断に大きな影響を与えるものである。
そして,本件物品のカタログなどには全体の形状が記載されているとともに,本体部の形状は施工時に関係するため,側溝ブロックの天端面と地中に埋設される本体部分に係る形状との組み合わせが要部として把握されるべきである。
甲1意匠は本件登録意匠とこれらの各形状において多くの差異点を有する一方,共通点は先行意匠に開示されている。したがってこれら差異点は共通点をはるかに凌駕するから,被告製品は,本件登録意匠と美感を異にするものであり,本件登録意匠に類似するものではない。

2 意匠法第3条第2項違反について
請求人は甲1意匠と甲第19号証,第20号証,第22号証に記載の公然知られた模様等に基づいて容易に創作することができる旨,主張している。特に,いくつかの小さな図柄が寄せ集まって小さな図柄を形成し,それらの図柄が天端長手方向に一定の順序で並んでいる旨,主張している。しかしながら,甲第19,20,22号証のどこにも本件登録意匠の天端部の模様は記載されていない。請求人は甲第9号証の2を引用し,天端面に凹凸模様を形成するのが流行したと主張するが,本件登録意匠の模様部分は「GBX」をブロックのような凸模様で表現したものであり,当業者が容易に創作できるような模様ではない。また,請求人は甲第32号証を引用し,原図を基にして複雑なタイル紋様を形成する方法は公然知られている旨,主張するが,本件登録意匠の模様部分の原図となる模様が知られていない以上,当業者が容易に創作できるような模様ではない。
したがって,本件登録意匠の天端面の模様は,公然と知られていないデザインであるし,上述したように,天端面以外の本体部の意匠についても甲1意匠と本件意匠は大きく異なっているので,たとえ甲1意匠と甲第19,20,22号証を組み合わせても,本件登録意匠は創作できない。したがって,請求人の主張は誤りである。

3 まとめ
以上のように,本件登録意匠と甲1意匠は非類似であり,意匠法第3条第1項第3号には該当しない。また,甲1意匠と先行意匠から容易に創作することはできないから,意匠法第3条第2項にも該当しない。したがって,本件登録意匠には無効理由は存在しないことは明らかである。

4 平成27年5月25日付け「口頭審理陳述要領書」における主張
(1)請求人は「本件登録意匠の天端部の傾きの2%と同じ勾配の側溝は,本件登録意匠の出願前から知られていた。」と反論しているが,被請求人が提出した平成26年7月4日付け答弁書第8頁の最終行で指摘し,反論を行っている。
(2)請求人は,本件登録意匠の天端部の模様部分について,「歩道を歩く人や車道を車両等で走行する人にとっては認識できない」旨反論しているが,この主張には根拠がなく,また,「GBX」を認識できるか否かが,意匠の類否判断や創作性の判断にどのような影響を与えるのかが明らかにされていないので,意味不明な主張であるといわざるを得ない。
むしろ,本件登録意匠の当該模様部分は既存のデザインでないことは明白であるから,本件登録意匠が創作容易でないことは明らかである。
(3)請求人は,凹凸が3種類のパターンの模様の繰り返しからなっていることは「施工現場では単に繰り返された凹凸が形成されているという認識を与える」旨反論しているが,この主張には根拠がなく,意匠の類否判断や創作性の判断にどのような影響を与えるのかが明らかにされていないので,意味不明な主張であるといわざるを得ない。
むしろ,本件登録意匠の当該模様部分は既存のデザインでないことは明白であるから,本件登録意匠が創作容易でないことは明らかである。


第5 口頭審理
当審は,本件審判について,平成27年(2015年)6月8日に口頭審理を行った。(平成27年6月8日付け「第1回口頭審理調書」)


第6 当審の判断
1 本件登録意匠
本件登録意匠は,意匠に係る物品を「側溝ブロック」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)を,願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり,意匠に係る物品の説明によれば,「平面図に表される本側溝ブロックの上面には,凹凸による模様が設けられている。該凹部に雨水が集水され,参考図に示す天端排水孔から側溝内部に雨水が流入する構造となっている。」としたものである。(別紙第1参照)
本件登録意匠の形態は,以下のとおりである。
ア 全体が,内部に流路が形成された横長略角筒状の管状体であって,側面視略矩形状で上部略中央に段差が設けられたものである。
イ 流路の側面視形状について
流路の側面視形状は略隅丸正方形状であり,底面が略扁平V字状に形成されている。
ウ 管状体側面の形状について
管状体側面の縦幅は横幅よりもやや大きく,流路の外側に,二重線状のパッキン受け部が表されている。
エ 管状体上面について
左側面から見て上面の略左半部は水平状であり,略右半部は内側に向けて下方にごく僅かに傾斜している。そして,平面から見て上面の略上半部は平滑面状に表されており,略下半部には,「GBX」の字体を模した凹凸模様が横方向に6回繰り返して形成されている。
また,平面視略長方形状の天端排水孔が,上面の左右対称の位置に,略下半部の上端に接して配されており,背面から見ると,天端排水孔の両端線(凹みの稜線)が段差の高さに亘って表されている。
オ 管状体正面について
正面から見て,上端寄りに,細幅スリット溝が両端に亘って形成されており,その細幅スリット溝とほぼ同じ高さ位置に,略縦長楕円形状の側面排水孔が2個配されている。その側面排水孔の周囲には,略正方形状の凹みが形成されている。
カ 管状体の構成について
正面から見て,管状体の横幅は,縦幅の約4倍である。

2 無効理由の要点
請求人が主張する本件意匠登録の無効事由は,本件登録意匠が,意匠登録出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された意匠(以下「甲1意匠」という。)に類似する意匠であり,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するので,同項柱書の規定により,意匠登録を受けることができないものであるから,本件意匠登録は,同法第48条第1項第1号に該当し,同項柱書の規定によって,無効とされるべきであるとするもの(以下,これを「無効理由1」という。),及び,本件登録意匠が,意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形態に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものであり,意匠法第3条第2項の規定により,意匠登録を受けることができないものであるから,本件意匠登録は,同法第48条第1項第1号に該当し,同項柱書の規定によって,無効とされるべきであるとするもの(以下,これを「無効理由2」という。)である。

3 無効理由1の判断
本件登録意匠が,甲1意匠と類似する意匠であるか否かについて検討する。
(1)甲1意匠
甲第1号証(別紙第2参照)によれば,甲1意匠は,意匠に係る物品が「側溝ブロック」であり,その形態は,以下のとおりである。
ア 全体が,内部に流路が形成された横長略角筒状の管状体であって,側面視略矩形状で上部略中央に段差が設けられたものである。
イ 流路の側面視形状について
流路の側面視形状は略隅丸正方形状であり,底面が略扁平V字状に形成されている。
ウ 管状体側面の形状について
管状体側面の縦幅と横幅はほぼ同じであり,側部がやや肉厚である。左側面側の流路の外側に,テーパー面が二重線状に表れる凹部が形成され,右側面側の流路の外側には(その凹部と組み合わされる)横向き扁平台形状の凸部が形成されている。
エ 管状体上面について
左側面から見て上面の略左半部は水平状であり,略右半部は内側に向けて下方に僅かに傾斜している。そして,平面から見て上面の略上半部は平滑面状に表されており,略下半部も平滑面状に表されている。
また,平面視略扁平トラック形状の天端排水孔が,上面の左寄り及び中央やや右の位置に,略下半部の上端寄りに配されており,上端に接して配されてはいないため,背面から見て段差面には天端排水孔の両端線が表れないと推認される。
オ 管状体正面について
正面から見て,上端寄りに,細幅スリット溝が両端に亘って形成されており,その細幅スリット溝とほぼ同じ高さ位置に,略扁平トラック形状の側面排水孔が4個配されている。その側面排水孔の周囲には,略横長長方形状の凹みが形成されている。
また,正面左端寄りには縦長長方形状の接続用ボルト孔が形成されており,正面右端寄りには略横向きT字状の接続用ボルト孔が形成されている。
(2)本件登録意匠と甲1意匠の対比
本件登録意匠と甲1意匠(以下「両意匠」という。)は,共に「側溝ブロック」であるから意匠に係る物品が共通し,形態については,以下の共通点と差異点が認められる。
ア 共通点
(A)全体が,内部に流路が形成された横長略角筒状の管状体であって,側面視略矩形状で上部略中央に段差が設けられたものである。
(B)流路の側面視形状について
流路の側面視形状は略隅丸正方形状であり,底面が略扁平V字状に形成されている。
(C)管状体上面の態様について
左側面から見て上面の略左半部は水平状であり,略右半部は内側に向けて下方に傾斜している。また,平面から見て略上半部は平滑面状に表されており,略下半部の上端付近に横長の天端排水孔が二つ形成されている。
(D)管状体正面の態様について
(D-1)正面から見て,上端寄りに,細幅スリット溝が両端に亘って形成されており,その細幅スリット溝とほぼ同じ高さ位置で左右対称の位置に,側面排水孔が複数個配されている。
(D-2)側面排水孔の周囲には,矩形状の凹みが形成されている。
(E)管状体の構成比について
正面から見て,管状体の横幅は,縦幅の約4倍である。
イ 差異点
(a)管状体側面の形状について
本件登録意匠の管状体側面の縦幅は横幅よりもやや大きいが,甲1意匠では,縦幅と横幅はほぼ同じである。また,本件登録意匠には,流路の外側に,二重線状のパッキン受け部が表されているが,甲1意匠では,左側面側の流路の外側に,テーパー面が二重線状に表れる凹部が形成され,右側面側の流路の外側には(その凹部と組み合わされる)横向き扁平台形状の凸部が形成されている。
(b)管状体上面の形状について
(b-1)上面の凹凸模様の有無
平面から見た上面略下半部の形状について,本件登録意匠では,「GBX」の字体を模した凹凸模様が横方向に6回繰り返して形成されているが,甲1意匠では,凹凸模様は形成されていない。
(b-2)天端排水孔の位置と形状
本件登録意匠の天端排水孔は平面視略長方形状であって,上面の左右対称の位置に,略下半部の上端に接して配されているため,背面から見て天端排水孔の両端線(凹みの稜線)が段差の高さに亘って表されている。これに対して,甲1意匠の天端排水孔は平面視略扁平トラック形状であって,上面の左寄り及び中央やや右の位置に,略下半部の上端寄りに配されており,上端に接して配されてはいないため,背面から見て段差面には天端排水孔の両端線が表れないと推認される。
(b-3)左側面から見た上面略右半部の傾斜の程度
左側面から見た上面略右半部の傾斜の程度は,甲1意匠の方が本件登録意匠に比べて大きい。
(c)管状体正面の形状について
(c-1)側面排水孔とその周囲の形状
正面から見て,本件登録意匠の側面排水孔は略縦長楕円形状で2個配されており,周囲の凹みは略正方形状であるが,甲1意匠の側面排水孔は略扁平トラック形状で4個配されており,周囲の凹みは略横長長方形状である。
(c-2)接続用ボルト孔の有無
甲1意匠の正面左端寄りには縦長長方形状の接続用ボルト孔が形成されており,正面右端寄りには略横向きT字状の接続用ボルト孔が形成されているが,本件登録意匠には,そのような接続用ボルト孔はない。
(3)両意匠の類否判断
ア 意匠に係る物品
前記認定したとおり,両意匠の意匠に係る物品は共に「側溝ブロック」であるので,両意匠の意匠に係る物品は同一である。
イ 側溝ブロックの物品分野の意匠の類否判断
側溝ブロックの使用状態(設置状態)においては,その大部分が地中に埋められて一部のみが露出するので,その点では看者はその露出した一部について側溝ブロックを観察することとなるといえるが,側溝ブロックの取引者は,側溝ブロックの全体形状を全方向から観察し,設置やメンテナンスの観点から,各部の構成態様についてくまなく注意を払うことになる。したがって,側溝ブロックの物品分野の意匠の類否判断においては,露出する一部についての構成態様のみではなく,全体形状や各部の構成態様の全てを評価し,かつそれらを総合して意匠全体として形態を評価する。
ウ 形態の共通点の評価
両意匠の共通点(A)ないし(E)で指摘した構成態様については,側溝ブロックの物品分野の意匠において,本願の出願前に普通に見受けられることから,看者の注意を惹くものとはいえない。具体的には,共通点(A)ないし(C),(D-2)及び(E)の構成態様は,特開平11-222912号に表された「排水性舗装用暗渠ブロック」の意匠(甲第4号証の2。別紙第3参照。)に見られるものであり,共通点(D-1)の構成態様も,特開2004-52470号の【図1】(a)に表された側溝用ブロックの意匠(甲第7号証。別紙第4参照。)に見られるものである。したがって,共通点(A)ないし(E)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいといえる。
エ 形態の差異点の評価
一方,両意匠の形態の差異点については,以下のとおり評価され,差異点を総合すると,上記共通点の影響を圧して,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。
まず,差異点(b-1)については,使用状態において露出する側溝ブロックの態様に関する差異であり,本件登録意匠の「GBX」の字体を模した凹凸模様の存在は看者が一見して気が付くものであり,看者に一定の美感を与えているというべきであるから,そのような凹凸模様のない甲1意匠との差異は顕著であり,差異点(b-1)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
請求人は,本件登録意匠の凹凸模様について,「看者には,肉眼で凹部と凸部との境界を明確に識別できるものではない。見る角度でも,太陽光線の当たり方でも見え方は変化する。」「最終需要者(周辺住民・歩行者,道路を使用するドライバー等)は,当該側溝を立ち止まってじっくりと観察することは交通の妨げにもなりかねない。」「また,さまざまな角度(歩道を歩行中,車を運転中,周辺ビルの窓ごしに)見ることになるので,看者が美観を感得できない場合も生じる。看者が美観を感得できない形態は意匠的には存在しないも同然である。」と指摘する。
しかし,本件登録意匠の凹凸模様は,願書に添付された図面中の「平面図」において明瞭に表されているので,たとえ様々な角度から観察されたとしても,また,気象条件や観察者の種別が何であるにせよ,本件登録意匠の管状体上面に,横方向に6回繰り返して形成された「GBX」の字体を模した凹凸模様があることを看者が気付くことは明らかであるというべきであるから,見え方が変化する,じっくりと観察しない,美観を感得できないとの請求人の指摘を首肯することはできない。
次に,天端排水孔の位置と形状に関する差異点(b-2)については,背面から見て天端排水孔の両端線(凹みの稜線)が段差の高さに亘って表されている本件登録意匠と,背面から見て段差面には天端排水孔の両端線が表れない甲1意匠とでは,看者に与える視覚的印象を大きく異にしており,雨水を流入させる天端排水孔の位置と形状が側溝ブロックにおいて特に重要なものであることを踏まえると,看者はこの差異に大いに注目するというべきであるから,天端排水孔が左右対称の位置にあるか否か,平面視略長方形状か略扁平トラック形状かの差異とあいまって,差異点(b-2)両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
そして,側面排水孔とその周囲の形状に関する差異点(c-1)についても,側面排水孔が2個であるか4個であるかの個数の差異と,略縦長楕円形状であるか略扁平トラック形状であるかの形状の差異は,その周囲の凹みの形状の差異とあいまって,看者に異なる美感を与えているというべきであるから,差異点(c-1)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
請求人は,「側面排水孔は地中に滲みこんできた雨水を内部の排水路に導くという技術的解決のためだけに設置されるものであり,その形態が機能的必然性のみに基づくものであるので,意匠的特徴としては考慮する必要はないものである」と指摘するが,仮に側面排水孔が機能的必然性を高く考慮して設計されるものであるとしても,側溝ブロックの物品分野の意匠においては,様々な位置及び形状の側面排水孔が存在していることから,看者は側面排水孔の位置と形状に一切着目しないとはいい難いので,請求人の指摘を首肯することはできない。
他方,差異点(a)で指摘した,管状体側面の縦幅と横幅の差異や,パッキン受け部か凹部の形成かの差異は,側溝ブロックの物品分野の意匠においては,様々な縦横比の管状体があること,及びまたパッキン受け部と凹部形成のどちらもありふれていることから,看者がその差異を特に注目することはないので,差異点(a)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。また,差異点(b-3)及び(c-2)についても,左側面から見た上面略右半部の傾斜の程度には様々なものがあり,また接続用ボルト孔の形成もありふれていることから,看者がその差異を特に注目することはないので,差異点(b-3)及び(c-2)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
そうすると,(b-1),(b-2)及び(c-1)の差異点は,いずれも両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものであり,その余の差異点の影響が小さいものであるとしても,両意匠の差異点を総合すると,両意匠を別異のものと印象付けるものであるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きく,両意匠の共通点を凌ぐものであるということができる。
オ 小括
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が同一であるが,両意匠の形態においては,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さく,これに対して,両意匠の形態の差異点を総合すると,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きく,共通点が看者に与える美感を覆して両意匠を別異のものと印象付けるものであるから,本件登録意匠は,甲1意匠に類似するということはできない。
したがって,本件登録意匠は,甲1意匠に類似する意匠ではないので,請求人が主張する無効理由1には,理由がない。

4 無効理由2の判断
本件登録意匠が,意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」ともいう。)が日本国内において公然知られた形態に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものであるか否かについて検討する。
(1)請求人の主張
請求人の主張は,概略以下のとおりである。
ア 甲第20号証の天板の凹凸模様では,大きな正方形の凸部(p)が長手方向に一定間隔で配置されているので,当該凸部(p)が区切りになって3つの図柄があるような印象を受ける。すなわち,看者はこれらの図柄(a,b,c)が天板長手方向に順次並んでいるような印象を受ける。
イ 目地幅が大きな甲第22号証の例もあり,甲第19号証意匠には長方形以外の凸部(円形,こばん形,正方形)が図示されている。
ウ 原図を基にして複雑なタイル紋様を作成する方法は本件登録意匠出願前から公然知られていた(甲第32号証)。
エ したがって,上記した背景意匠・技術に基づけば,当業者であれば複数の図柄を順次並べて本件登録意匠のような凹凸模様を形成することは容易であったと思料する。
以上,総合して考えると,本件登録意匠は,当業者が甲第1号証と公然知られた模様等に基づいて容易に創作をすることができたものである。
(2)甲第20号証の意匠の管状体上面について
請求人が提出した甲第20号証の副本(1部)の第2頁?第5頁には,異なる登録意匠に係る意匠公報の写しが添付されているが,甲第20号証の正本の第2頁?第6頁には意匠登録第1064700号の意匠公報の写しが添付されているので,この甲第20号証の正本(別紙第5参照)に基づいて甲第20号証の意匠の管状体上面を認定する。
左側面から見て上面の左側略2/5は中央に向けて下方に傾斜しており,右側略3/5も中央に向けて下方にごく僅かに傾斜している。そして,平面から見ると,11個の小さい長方形状凸部に囲われた中央寄りの正方形状凸部(以下「中央正方形状凸部」という。)が左から右に4個千鳥状に配されている。左から2番目と一番右の中央正方形状凸部の中央には,略扁平トラック形状の天端排水孔が設けられている。中央正方形状凸部の間には二つの横長長方形凸部が横に並んで配されており,その上方及び下方には正方形状凸部が上下対称に配されている。
(3)本件登録意匠の創作容易性について
本件登録意匠の形態は前記1で,甲1意匠の形態は前記3(1)で,それぞれ認定したとおりのものである。
そこで,本件登録意匠の特徴と認められる形態,すなわち,管状体上面の略下半部に「GBX」の字体を模した凹凸模様を横方向に6回繰り返して形成した点について検討すれば,このような形態は,甲第20号証には存在しない形態であり,また,甲第22号証及び甲第19号証の意匠並びに甲1意匠にも存在しない形態であるから,当業者が,これらの意匠に基づいて本件登録意匠の管状体上面の凹凸模様を容易に創作できたということはできない。
また,本件登録意匠のように,略長方形状の天端排水孔を,平面から見て左右対称の位置に,略下半部の上端に接して配して,背面から見て天端排水孔の両端線(凹みの稜線)を段差の高さに亘って表した形態も,上記の意匠に存在しない形態であるから,同様に,当業者が容易に創作できたということはできない。
さらに,原図を基にして複雑なタイル模様を作成する方法が本件登録意匠出願前から公然知られていたとしても,その方法は,単にタイル模様を作成する技術的方法をいうにすぎず,本件登録意匠に見られる「GBX」の字体を模した凹凸模様の創作容易性を証するものではないから,そのような背景技術に基づいて本件登録意匠が創作容易であるということはできない。
(4)小括
そうすると,本件登録意匠は,甲1意匠及び請求人が提出した証拠に基づいて,当業者が容易に創作することができたものとすることはできない。
したがって,本件登録意匠は,その意匠登録出願前に,その意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形態に基づいて容易に創作することができた意匠とは認められず,無効理由2には,理由がない。


第7 むすび
以上のとおりであるから,請求人の主張及び証拠方法によっては,無効理由1及び無効理由2いずれにも理由はなく,本件登録意匠を無効とすることはできない。

審判に関する費用については,意匠法第52条で準用する特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人が負担すべきものとする。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2015-06-22 
出願番号 意願2006-7425(D2006-7425) 
審決分類 D 1 113・ 113- Y (L2)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 樫本 光司 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 正田 毅
小林 裕和
登録日 2007-06-29 
登録番号 意匠登録第1306613号(D1306613) 
代理人 岡野 正義 
代理人 中村 希望 
代理人 羽鳥 亘 
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