ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 M3 |
---|---|
管理番号 | 1306427 |
審判番号 | 不服2015-10754 |
総通号数 | 191 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2015-11-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-06-08 |
確定日 | 2015-09-29 |
意匠に係る物品 | ねじ |
事件の表示 | 意願2014-15349「ねじ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1.本願意匠 本願は,平成26年(2014年)7月14日の意匠登録出願であって, その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「ねじ」とし,その形態を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照) 第2.原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,本願出願前,日本国特許庁発行の意匠公報(意匠公報発行日:平成9年(1997年)5月30日)に記載された意匠登録第981905号(意匠に係る物品,止めねじ付木ねじ)の意匠であって,その形態は,同公報の図面に記載されたとおりのものである。(別紙第2参照) 第3.当審の判断 1.本願意匠と引用意匠の対比 (1)本願意匠と引用意匠(以下,「両意匠」という。)の意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は,「ねじ」であり,引用意匠の意匠に係る物品は,「止めねじ付木ねじ」であって,表記は異なるが,本願意匠の願書及び願書に添付した図面の記載並びに引用意匠に係る公報の記載等を総合すれば,両意匠の意匠に係る物品は,木材等の構造部材に取り付け部材を固定するためのねじであるから,両意匠の意匠に係る物品は共通する。 (2)両意匠の形態 両意匠の形態を対比すると,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。 <共通点> 両意匠は,基本的態様として, 先端から順に,小径の雄ねじ部,軸部,鍔部及び大径の雄ねじ部を同軸に設けて,ねじ本体を構成している点, 具体的態様として, ねじ本体の先端を略円錐状(木ねじ状)とし,ねじ本体の後端に駆動穴を設けている点, において共通する。 <相違点> 両意匠は,具体的態様として, (ア)ねじ本体の全長に対する軸部の長さの割合が,本願意匠では,略20%であるのに対して,引用意匠では,略3%である点, (イ)ねじ本体の後端が,本願意匠では,大径の雄ねじ部のみであるのに対して,引用意匠では,大径の雄ねじ部の後部に大径の軸部を設けている点, (ウ)鍔部の外周が,本願意匠では垂直面であるのに対して,引用意匠では弧状面である点, (エ)駆動穴の形状が,本願意匠では六角形であるのに対して,引用意匠では略十字形である点, において相違する。 2.両意匠の類否判断 以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価及び総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。 (1)共通点の評価 本願意匠と引用意匠の意匠に係る物品は,木材等の構造部材に取り付け部材を固定するためのねじとして共通するところ,そのような物品であれば,木材等の構造部材にねじ込むための木ねじ部分(すなわち,小径の雄ねじ部)と,取付部材を固定するためのねじ部分(すなわち,大径の雄ねじ部)とを普通に有しているから,基本的態様としてあげた共通点のうちで,小径の雄ねじ部や大径の雄ねじ部は,この種の物品が通常,備えている部分であるといえる。そうすると,基本的態様としてあげた共通点のうちで,小径の雄ねじ部や大径の雄ねじ部を備える構成が,両意匠の類否判断に及ぼす影響は,相当低いといわざるを得ず,また,軸部や鍔部による形状の違いについても,いずれの形状も既に存在するものであって,類否判断に及ぼす影響は一定程度あるものの,これだけで両意匠の類否判断を決定付けるとまではいえない。 そして,具体的態様としてあげた共通点についても,この種の物品が通常有している程度の態様であり,この共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,微弱というほかない。 (2)相違点の評価 これに対して,上記相違点(ア)であげた,ねじ本体の全長に対する軸部の長さの割合が,本願意匠では略20%もあるのに対して,引用意匠では略3%しかない点は,非常に目に付きやすいものであるから,この相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,非常に大きいというべきである。 また,上記相違点(イ)であげた大径の軸部は,ねじ本体の後端部における態様であって,ねじ取り付け後も見ることのできる部位であり,その長さがごく短いとしても,比較的目に付きやすいものであるから,この点による類否判断への影響は,大きいといえる。 さらに,上記相違点(ウ)であげた鍔部の形態は,ねじ本体の直径方向に最も広がった部分における態様であるから,ねじ取り付け後も目に付きやすいものであり,この点による類否判断への影響も,一定程度あるものといえる。 最後に,上記相違点(エ)であげた駆動穴の形状は,ねじにおいては,いずれも,ありふれた態様であるから,この点による類否判断への影響は微弱である。 そして,これらの相違点(ア)から(エ)までが相まった視覚的効果を考慮すると,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕して,両意匠は,意匠全体として視覚的印象を異にするというべきである。 (3)小括 したがって,両意匠は,意匠に係る物品は,共通するが,形態においては,共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており,意匠全体として見た場合,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕し,両意匠は,意匠全体として視覚的印象を異にするというべきであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。 第4.むすび 以上のとおりであって,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同条同項柱書によって,本願について拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
|
審決日 | 2015-09-17 |
出願番号 | 意願2014-15349(D2014-15349) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(M3)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 住 康平 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
刈間 宏信 江塚 尚弘 |
登録日 | 2015-10-09 |
登録番号 | 意匠登録第1537302号(D1537302) |
代理人 | 杉本 丈夫 |
代理人 | 谷田 龍一 |