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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 G2
管理番号 1306434 
審判番号 不服2015-3027
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-02-17 
確定日 2015-10-13 
意匠に係る物品 自動車用タイヤ 
事件の表示 意願2014- 8620「自動車用タイヤ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,平成26年(2014年)4月18日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「自動車用タイヤ」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠

原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであり,拒絶の理由に引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,本願出願前,特許庁普及支援課が2007年12月20日に受け入れた,2007年11月14日発行の中華人民共和国意匠公報07-46号に記載の,「タイヤ(公開番号CN300708316)」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH19009126号)であって,その形態は,同公報に掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照)

第3 当審の判断

1.本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「自動車用タイヤ」であり,引用意匠の意匠に係る物品は「タイヤ」であるが,いずれも自動車用のゴム製タイヤであるから,本願意匠及び引用意匠(以下,「両意匠」という。)の意匠に係る物品は共通する。

(2)形態
両意匠の形態を対比する(なお,対比のため,本願意匠の図面における正面,平面等の向きを,引用意匠にもあてはめることとする。)と,その形態には,以下のとおりの共通点及び相違点が認められる。

まず,共通点として,
(A)全体は,略横向き短円筒形状のタイヤの外周面にトレッド部を設け,左右側面部に中空円板状のサイドウォール部を形成し,サイドウォール部の中空円板内周側端部に端部が角張ったビード部を一体的に形成した構成としたものであって,
(B)トレッド部は,その中央部に,大型のブロック(以下,「中央ブロック部」という。)をタイヤ周方向に並設してブロック列(以下,「中央ブロック列」という。)を形成し,その左右に,やや小型のブロック(以下,「左右ブロック部」という。)をタイヤ周方向に並設してブロック列(以下,「左右ブロック列」という。)を中央ブロック列とその凹凸を合わせた配置で形成し,トレッド部左右端部に,ショルダーブロック(以下,「左右ショルダーブロック部」という。)をタイヤ周方向に並設してブロック列(以下,「左右ショルダーブロック列」という。)を左右ブロック列とその凹凸を合わせた配置で形成したものであって,各ブロック列の間に,略ジグザグ状の縦溝(以下,「略ジグザグ状縦溝部」という。)を4本形成している点,
(B-1)中央ブロック部は,正面視を斜状に変形した略変形六角形状とし,この中央ブロック部上下間に傾斜した直線状の横溝(以下,「中央ブロック横溝部」という。)を形成している点,
(B-2)左右ブロック部は,いずれも正面視を中央ブロック部と左右対称形でやや小型の,斜状に変形した略変形六角形状とし,各左右ブロック部上下間に中央ブロック横溝部と逆向きの傾斜で直線状の横溝(以下,「左右ブロック横溝部」という。)を形成している点,
(B-3)左右ショルダーブロック部は,そのブロック部の外側辺を直線状に,内側辺を略「く」の字状に突出した略変形五角形状とし,上下ショルダーブロック部間に横溝(以下,「左右ショルダーブロック横溝部」という。)を形成している点,
(B-4)中央ブロック部と左右ブロック部間に形成された略ジグザグ状縦溝部,中央ブロック横溝部,及び左右ブロック横溝部がほぼ同じ溝幅で形成している点,
(C)サイドウォール部は,端部が角張ったビード部からトレッド部にかけて外側に凸弧状に膨出した形状に形成している点,
が認められる。

他方,相違点として,
(ア)4本の略ジグザグ状縦溝部の態様について,本願意匠は,外側の2本の溝幅が内側の2本の溝幅よりも幅広であるのに対して,引用意匠は,内側の2本の溝幅が外側の2本の溝幅よりも僅かに幅広である点,
(イ)中央ブロック部の態様について,本願意匠は,ブロック側面部分を垂直に形成した断面視略凸状ブロックとし,その接地面に,両端部に略三角形状の切り欠き部をもつ折れ線で構成された略横S字状の細溝(以下,「中央ブロック細溝部」という。)を,やや右下がりの傾斜で1つ形成しているのに対して,引用意匠は,正面視の全体形状が本願意匠と略左右対称形で,ブロック側面部分を傾斜面とした断面視略台形状ブロックとし,その接地面に,クランク部分を斜めの段差状とした略変形クランク状のサイピング(以下,「中央ブロックサイピング部」という。)を,やや右上がりの傾斜で1つ形成している点,
(ウ)左右ブロック部の態様について,本願意匠は,ブロック側面部分を垂直に形成した断面視略凸状ブロックとし,その接地面に,両端部に略三角形状の切り欠き部をもつ折れ線で構成された略横S字状の細溝(以下,「左右ブロック細溝部」という。)を,右上がりの傾斜で1つ形成しているのに対して,引用意匠は,正面視の全体形状が本願意匠と略左右対称形で,ブロック側面部分を傾斜面とした断面視略台形状ブロックとし,その接地面に,クランク部分を斜めの段差状とした略変形クランク状のサイピング(以下,「左右ブロックサイピング部」という。)を,中央ブロックサイピング部と同様のやや右上がりの傾斜で1つ形成している点,
(エ)左右ショルダーブロック部の態様について,本願意匠は,その接地面に,外側端部に略三角形状の切り欠き部をもつ折れ線で構成された略横S字状の細溝(以下,「左右ショルダーブロック細溝部」という。)を,ほぼ水平に1つ形成しているのに対して,引用意匠は,その接地面に何も形成せず,フラットな面としている点,
(オ)略ジグザグ状縦溝部及び各横溝部の底面部分の態様について,本願意匠は,溝部はすべて同じ深さで形成しているのに対して,引用意匠は,中央ブロック横溝部を略ジグザグ状縦溝部及び左右ブロック横溝部より浅く形成し,左右ブロック横溝部外側付近から左右ショルダーブロック横溝部の内側半分までの範囲を僅かに突出させて太帯状の段差部(一段目)を形成し,左右ショルダーブロック列横溝部の外側半分から外側の範囲をもう一段突出させて太帯状の段差部(二段目)を形成している点,
(カ)サイドウォール部の最も膨出した部分から左右ショルダー部までの傾斜面の態様について,本願意匠は,サイドウォール部の傾斜面部分をなだらかな凸円弧状とし,左右ショルダー部側端縁部分に向かって裾広がりに略垂直面部分を形成し,トレッド部は左右ショルダー部から略凸状に突出して形成しているのに対して,引用意匠は,サイドウォール部から左右ショルダー部側端縁部分までの傾斜面全体をほぼ一定の傾斜で形成し,トレッド部は左右ショルダー部から略台形状に突出して形成している点,
が認められる。

2.両意匠の形態の評価
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価し,本願意匠と引用意匠が類似するか否か,すなわち両意匠の類似性について考察する。

まず,共通点(A)の全体の態様は,自動車用タイヤの意匠の骨格的な構成態様にあたるものであり,また,共通点(B)ないし(B-4)の各部の態様は,自動車用タイヤの物品分野において,本願意匠の出願前に既に見られるもの(参考意匠:特許庁普及支援課が2013年2月12日に受け入れた,米国特許商標公報(発行日:2013年2月12日)に掲載された,「自動車用タイヤ」(登録番号US D675981S)の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH25302066号),別紙第3参照)であるので,これらの共通点(A)ないし(B-4)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱であるといわざるを得ない。
また,共通点(C)の態様も,この種物品分野においてはごく普通に見られるものであるので,この共通点(C)が両意匠の類否判断に及ぼす影響も微弱なものである。
そして,これらの共通点は,全体としてみても,両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。

これに対し,相違点(ア)4本の略ジグザグ状縦溝部の態様については,外側の幅広な2本の略ジグザグ状縦溝部によって,内側の幅狭な2本の略ジグザグ状縦溝部により3列に分割された中央区画と,その外側のショルダーブロック列からなる左右2つの区画との3つの区画からなるトレッド部であるとの印象を与える本願意匠の形態と,4本の略ジグザグ状縦溝部の溝幅にさほど違いがなく,単に5列のブロック列からなるトレッド部であるとの印象を与える引用意匠の形態とは,タイヤの走行性能に直結するトレッド面の形態を特に注意して観察する看者に対して,別異な印象を与えるものであるから,この相違点(ア)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は非常に大きい。
次に,相違点(イ)中央ブロック部の態様,及び相違点(ウ)左右ブロック部の態様については,ブロック接地面に略三角形状の切り欠き部をもつ,折れ線で構成された略横S字状の特徴的な中央ブロック細溝部及び左右ブロック細溝部のうち,中央ブロック細溝部のみ傾斜を変えて配設している本願意匠の形態と,ブロック接地面に中央ブロックサイピング部と左右ブロックサイピング部をその向きを揃えて形成している引用意匠のものとは,その溝幅の相違も大きく,ブロック接地面の形態も注視する看者に対して異なる印象を与えるものであるから,この相違点(イ)及び相違点(ウ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
また,相違点(エ)左右ショルダーブロック部の態様については,細部における相違ではあるが,折れ線で構成された略横S字状の特徴的な左右ショルダーブロック細溝部の形成された本願意匠の形態と,フラットな接地面の引用意匠のものとは,看者に異なる印象を与えるものであるから,この相違点(エ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度ある。
さらに,相違点(オ)略ジグザグ状縦溝部及び各横溝部の底面部分の態様については,タイヤ全体から見た場合,通常は目立つ部位ではないものの,すべて同じ深さの溝部とした本願意匠の態様と,トレッド部の左右端部寄り部分に二段の段差を設けた引用意匠の態様とは看者に別異な印象を与えるものであるから,この相違点(オ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度ある。
最後に,相違点(カ)サイドウォール部の最も膨出した部分から左右ショルダー部までの傾斜面の態様については,両意匠いずれの形態もこの分野では既に普通に見られるものであるが,トレッド部が左右ショルダー部から略凸状に突出して形成している本願意匠の態様と,略台形状に突出して形成している引用意匠の態様とは,看者に別異な印象を与えるものであるから,この相違点(カ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響も一定程度ある。
そして,これらの相違点(ア)ないし(カ)によって生じる視覚的効果はいずれも大きく,それらが相まって生じる視覚的効果は,両意匠の類否判断を左右するほどのものである。

3.両意匠の類否判断
上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品については共通するものの,その形態においては,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱であるのに対して,相違点が類否判断に及ぼす影響はそれぞれ大きく,意匠全体として見た場合には,これらの相違点が相まって生じる視覚的効果は,共通点のそれを凌駕して看者に別異の印象を与え,両意匠に異なる美感を起こさせるものであるから,本願意匠が引用意匠に類似するということはできない。

第4 むすび

以上のとおりであるから,原査定の引用意匠をもって,本願意匠を意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,本願については,原査定の拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2015-09-24 
出願番号 意願2014-8620(D2014-8620) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (G2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 加藤 真珠 
特許庁審判長 本多 誠一
特許庁審判官 久保田 大輔
江塚 尚弘
登録日 2015-10-23 
登録番号 意匠登録第1538707号(D1538707) 
代理人 特許業務法人深見特許事務所 

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