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審決分類 審判 判定  同一・類似 属する(申立成立) B9
管理番号 1306439 
判定請求番号 判定2013-600003
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2015-11-27 
種別 判定 
判定請求日 2013-01-08 
確定日 2015-10-08 
意匠に係る物品 バックル 
事件の表示 上記当事者間の登録第1233398号の判定請求事件について,次のとおり判定する。 
結論 イ号写真及び判定請求書のイ号意匠の説明により示された「バックル」の意匠は,登録第1233398号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
理由 第1 請求の趣旨及び理由
本件判定請求人(以下,「請求人」という。)は,イ号意匠(イ号意匠の写真及び判定請求書のイ号意匠の説明により示された意匠)は,登録第1233398号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する,との判定を求める,と申し立て,その理由として,要旨以下のとおりの主張をし,証拠方法として,甲第1ないし第3号証及び添付書類として,本件登録意匠の意匠公報の写し及び原簿謄本及び,イ号意匠の写真を提出した。

1.判定請求の必要性
請求人は登録第1233398号意匠の意匠権者であるところ,別紙記載のイ号意匠が,バッグに使用された状態で輸入されたので,請求人として本件意匠権侵害の成立の有無を検討し,対処する必要が生じている。

2.本件登録意匠の手続きの経緯
出願 平成16年4月28日 意願2004-12927
登録 平成17年2月 4日 登録第1233398号
関連意匠 本件登録意匠には意匠登録第1233839号(甲第1号証)及び意匠登録第1233840号(甲第2号証)の2件の関連意匠がある。

3.両意匠の対比
なお,イ号意匠は,対比のために被請求人意匠の写真を撮り,本件登録意匠と同様な方向に揃えたものとした。
A.両意匠の共通点
両意匠は,意匠に係る物品を「バックル」とするものであり,その態様については,以下のとおりである。
(1)基本的構成態様
a.全体が雌体と雄体により構成され,両者が結合した状態で中くびれの縦長板状のものであって,雌体は,奥行きの浅い扁平な筒状をした本体部及びその上方に形成されたベルト挿通部からなるものとし,雄体は,雌体本体内側に収納される一対の係止脚及びその下方に形成された略横長四角枠状のベルト挿通部からなるものであって,
b.雌体本体部の左右側面部には,縦長の開口部が形成され,内側に収納された雄体の係止脚が露出しているものである。
(2)各部の具体的構成態様
c.雌体のベルト挿通部の態様
ア 雌体のベルト挿通部は,下方に向かってつぼまった隅丸の略逆三角形状であって,内側の挿通口は細い弦月状とするものである。
d.雌体本体部の態様
イ 正面及び背面は,幅方向に緩やかな凸弧状面を形成する完全に同形のものとし,全体がベルト挿通部の厚みより一段隆起した態様のものであって,
ウ 雌体本体の正面視は,ベルト挿通口の下辺に沿った凹弧状とする上辺と,この左右に続く隅丸コーナー部を経てベルト挿通部の逆三角状のつぼまりの輪郭に沿って下降する左右辺によって囲まれた略逆台形状の上半部分,及び上半部分から連続する凹弧状のくびれ部から下方部に向かって広がる左右辺と,緩やかな凸弧状の下辺によって囲まれた略台形状の下半部分からなるものであって,本体全体の構成比は,高さ及び下辺横幅を1とした場合,上辺横幅が略4分の3,中央くびれ部の幅を略3分の1とするものであり,
エ 上記隅丸コーナー部内側には,斜め上方に向かって尖った角部を有する変形四角形の透孔部が,コーナー部の内側に沿うようにして形成され,その孔に雄体係止脚先端部の正背面側に形成された突起部が係止できるようにしたものであり,
オ 本体筒状部の内側中央には,筒状部を左右に分離する薄い隔壁が形成されたものである。
e.雄体係止脚の態様
カ 一対の脚部は,外側を上方に向かってつぼまるように緩やかな凸弧状に湾曲した弾性脚であって,脚部上半分を変形楕円板状とし,その中央に縦長の透孔部を形成し,先端部分に略四角形の突起部を形成したものであり,脚部根元の内側には脚部の高さ略3分の1程度の中央が細く割れた略M宇状の支持片を形成したものである。
また,雄体脚部は雌体に収納された状態で,雌体側面の孔から,変形楕円板状部やそこに形成された透孔部が表われ,また,雌体上方に形成された変形四角形の孔からは周囲に余地部を形成して脚先端の突起が表われるものである。
f.雄体ベルト挿通部の態様
キ 枠体について,左右の縦枠は,根元部分が雌体の奥行きの厚みと略同様のものとし,極緩やかに弧状に湾曲し,その先端部を尖らせたものであって,下方の横枠は,縦断面をくの字状に折り曲げた板状とし,下辺側をなだらかな山状に形成して,山状の先端を枠体の四角状輪郭から突出させた態様とし,枠体の高さ中央には正面側か枠体表面と略面一となる横桟を設けたものである。
B.両意匠の差異点
これに対し,両意匠には以下のような差異点がみられる。
すなわち,雄体のベルト挿通部の横桟の背面側態様について,イ号意匠が複数の断面略V字状の窪み部を等間隔に形成しているのに対し,本件登録意匠にはこのような窪み部に相当するものがない点。
C.両意匠の類否判断
(1)共通点の評価
両意匠が共通するとした態様は,雄体ベルト挿通部の横桟の背面側の態様を除く殆ど全ての態様である。
とりわけ,本件登録意匠においては,雌体上部コーナー部の内側に沿うようにして形成された変形四角形の透孔部を有し,この透孔部に雄体脚部先端の突起部が周囲に余地部を形成して係止されているところから,あたかもこの部分が動物の眼あるいは瞳のように見えること,また,二つの台形を上下につき合わせたような形状をした雌体の本体形状は,これら全体が相俟って本件登録意匠の最も大きな形態的特徴を形成しているものである。
更に,雄体脚部に形成された縦長の透孔部が雌雄が結合した状態においても観察できることから,雌体の上方や左右部分に上記した透孔部が一種の透かし状態として散点状に表れる点も本件登録意匠の特徴の一つといえる。
加えて,本件登録意匠に付帯した2つの関連意匠は,雌体ベルト挿通部あるいは雄体ベルト挿通部の態様が本件登録意匠の態様と異なっているものであるが,上記の特徴的態様は皆共通しているものであることから,これら関連意匠として登録されている際にも,このような特徴点が類否判断において重要視されたものと考えられる。
したがって,これら特徴点を包含する両意匠の共通する基本的構成態様及び具体的態様は,両意匠の類否判断において最も重視されるべき点といわざるを得ない。
なお,上記特徴点の抽出に際しては,日本デザイン保護協会が発行した調査報告書(甲第3号証)等を参考としている。
(2)差異点の評価
一方,両意匠の差異点は,雄体ベルト挿通部横桟の背面側の態様に過ぎず,イ号意匠にみられる切り欠き部は,単なる技術的理由による形状変形に過ぎず,特別な意識が無い限りは注意を払わない部分の差異というべきであって,両意匠の類否判断において殆どあるいは全く影響を与えるようなものとはいえない。
(3)類否判断
以上の点から,両意匠は,共通点が差異点を凌駕し,実質的に同じ意匠とも言いうるものであることから,イ号意匠は本件登録意匠に類似する意匠といわざるを得ない。

4.むすび
よって,請求の趣旨のとおり,イ号意匠は,登録第1233398号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する,との判定に与るよう希求する。

5.添付書類の目録
(1)本件登録意匠 登録第1233398号意匠公報(写)
(2)本件登録意匠 登録原簿謄本
(3)イ号意匠の写真
(4)甲第1号証 登録第1233839号意匠公報(写)
(5)甲第2号証 登録第1233840号意匠公報(写)
(6)甲第3号証 社団法人日本デザイン保護協会発行の調査報告書(写)


第2 被請求人の答弁の趣旨及び理由
特許庁より,被請求人に判定請求書を送付し,期間を指定して答弁書の提出を求めたが,請求人の申立及び理由に対して,被請求人からの応答はなかった。


第3 当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠(意匠登録第1233398号の意匠)は,平成16年(2004年)4月28日に意匠登録出願され,平成17年(2005年)2月4日に意匠権の設定の登録がなされたものであり,その願書の記載及び願書に添付された図面の記載によれば,意匠に係る物品を「バックル」とし,その形態は,願書及び願書に添付された図面に記載されたとおりのものである。(別紙第1参照)
すなわち,本件登録意匠は,意匠に係る物品が,バッグなどの帯状のベルト部の長さ調節などのために使用される「バックル」であって,その形態は,全体を正面図上方側の偏平で縦長の雌体(以下,「雌体」という。)と正面図下方側の嵌合凸部(以下,「嵌合凸部」という。)を有する雄体(以下,「雄体」という。)が結合した状態とし,雌体の上方と雄体の下方にベルト挿通孔部(以下,「ベルト挿通孔部」という。)を設けたものである。雌体は,上端部に略逆隅丸三角形状のベルト挿通孔部を設けたもので,その下方に厚みを設け下端をスカート状に拡げて嵌合凹部(以下,「嵌合凹部」という。)とした雌体の本体部(以下,「本体部」という。)を設け,本体部は,中央の左右を略凹円弧状に括れさせたもの(以下,「括れ部」という。)で,正面視上方に略隅丸倒台形状の小開口部(以下,「小開口部」という。)を左右対称状に配したものである。雄体は,上方側にウサギの耳状の長い嵌合凸部を左右対称状に設け,その内側寄りの上端部に小型略台形状の突起部(以下,「小台形状突起部」という。)を設け,中央に嵌合凸部より短い略角柱状の嵌合突起部(以下,「嵌合突起部」という。)を2本設け,下方にベルト挿通孔部を設けたもので,ベルト挿通孔部は,その上下中央にバーを設け上下に略横長長方形状の孔部を配して略「日」の字状とし,下端部に厚みの薄い逆隅丸凸字状の板状部を突出させた逆隅丸凸字状部(以下,「逆隅丸凸字状部」という。)を設け,その背面側の下端部分の厚みを薄く形成し,正面側に浅い横長円弧状面を形成したものである。雌体の本体部の括れ部の左右には,雄体の嵌合凸部が凸円弧状に左右対称状に見え,その下端部には側面視略小型縦長長方形状の小突起部を設け,側面視の縦断面において,嵌合突起部を左右対称状に設けたもので,本体部上方の小開口部の内側にも嵌合凸部の上端が見えるものである。

2.イ号意匠
イ号意匠は,判定請求書に添付されたイ号意匠の写真(請求人が提出した添付書類:別紙第2参照)に現されたとおりのものである。
なお,両意匠を同じ方向から観察するため,イ号意匠の向きを本件登録意匠の図面の向きに合わせたものとして,以下,検討する。
イ号意匠は,意匠に係る物品が,バッグなどの帯状のベルト部の長さ調節などのために使用される「バックル」であって,すなわち,その形態は,全体を正面図上方側の偏平で縦長の雌体と正面図下方側の嵌合凸部を有する雄体が結合した状態とし,雌体の上方と雄体の下方にベルト挿通孔部を設けたものである。雌体は,上端部に略逆隅丸三角形状のベルト挿通孔部を設けたもので,その下方に厚みを設け下端をスカート状に拡げて嵌合凹部とした雌体の本体部を設け,本体部は,中央の左右を略凹円弧状に括れさせた括れ部を有し,正面視上方に略隅丸倒台形状の小開口部を左右対称状に配したものである。雄体は,上方側にウサギの耳状の長い嵌合凸部を左右対称状に設け,その内側寄りの上端部に小台形状突起部を設け,中央に嵌合凸部より短い略角柱状の嵌合突起部を2本設け,下方にベルト挿通孔部を設けたもので,ベルト挿通孔部は,その上下中央にバーを設け上下に略横長長方形状の孔部を配して略「日」の字状とし,雄体の背面側においてベルト挿通孔部の上下中央のバーの内側に滑り止め用の凹凸部を設け,下端部に逆隅丸凸字状部を設け,その背面側の下端部分の厚みを薄く形成し,浅い大きな横長円弧状面と,さらにその下方には小さな略三日月状の面を形成したものである。雌体の本体部の括れ部の左右には,雄体の嵌合凸部が凸円弧状に左右対称状に見え,その下端部には側面視略小型縦長長方形状の小突起部を設け,雄体を外した態様において,嵌合突起部の正面側に略逆L字状の縁部を設けて左右対称状に設けたもので,本体部上方の小開口部の内側にも嵌合凸部の上端の小台形状突起部が見えるもので,全体を黒色の単色としたものである。

3.両意匠の対比
両意匠を対比すると,いずれも「バックル」に係るものであり,意匠に係る物品が一致し,そして,その形態については,主として以下の共通点と差異点が認められる。
(1)共通点
(a)全体を正面図上方側の偏平で縦長の雌体と正面図下方側の嵌合凸部を有する雄体が結合した状態とし,雌体の上方と雄体の下方にベルト挿通孔部を設けた点,(b)雌体は,上端部に略逆隅丸三角形状のベルト挿通孔部を設けたもので,その下方に厚みを設け下端をスカート状に拡げて嵌合凹部とした雌体の本体部を設け,本体部は,中央の左右を略凹円弧状に括れさせた括れ部を有し,正面視上方に略隅丸倒台形状の小開口部を左右対称状に配したものである点,(c)雄体は,上方側にウサギの耳状の長い嵌合凸部を左右対称状に設け,その内側寄りの上端部に小台形状突起部を設け,上端部の嵌合凸部の間の中央に嵌合凸部より短い略角柱状の嵌合突起部を2本設け,下方にベルト挿通孔部を設けたものである点,(d)雄体のベルト挿通孔部は,上下に略横長長方形状の孔部を配し,その上下中央にバーを設けて略「日」の字状とし,下端に逆隅丸凸字状部を設け,その背面側の中央下端部分の厚みを薄く形成したものである。(e)雌体の本体部の括れ部の左右には,雄体の嵌合凸部が凸円弧状に左右対称状に見え,その下端部には側面視略小型縦長長方形状の小突起部を設け,本体部上方の小開口部の内側にも嵌合凸部の上端の小台形状突起部が見えている点,(f)側面視の縦断面において,嵌合突起部を左右対称状に設けたものである点,において主に共通する。

(2)差異点
(ア)雄体の背面側の下方において,本件登録意匠は,ベルト挿通孔部の上下中央のバーの内側に滑り止め用の凹凸部を設けていないのに対して,イ号意匠は,ベルト挿通孔部の上下中央のバーの内側に滑り止め用の凹凸部を設けている点,(イ)雄体の下端の逆隅丸凸字状部について,本件登録意匠は,正面側に浅い横長円弧状面があるのに対して,イ号意匠は,背面側に浅い横長円弧状面があり,さらにその下方に略三日月状の面を形成している点,(ウ)雄体の嵌合突起部の正面側の態様について,本件登録意匠は,断面視のみで明確でないのに対して,イ号意匠は,略逆L字状の縁部を設けた態様である点,(エ)色彩について,本件登録意匠は,形状のみの意匠であって,色彩を請求していないのに対して,イ号意匠は,黒色の単色である点,に主な差異がある。

4.類否判断
そこで,イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するか否かについて,本件登録意匠の出願前に存する公知意匠等を参酌し,新規な態様や需要者の注意を最も惹き易い部分を考慮した上で,共通点と差異点が意匠全体として両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価し,検討する。
(1)共通点の評価
まず,共通点が類否判断に及ぼす影響について比較して検討する。
共通点(a)については,全体を正面図上方側の偏平で縦長の雌体と正面図下方側の嵌合凸部を有する雄体が結合した状態とし,雌体の上方と雄体の下方にベルト挿通孔部を設けたものは,この種のバックルの分野において本件登録意匠の出願前に既に見受けられるもので,格別の特徴とはいえず,両意匠のみに共通する新規の構成態様とはいえないものであるが,共通点(b)については,雌体が,上端部に略逆隅丸三角形状のベルト挿通孔部を設けたもので,その下方に厚みを設け下端をスカート状に拡げて嵌合凹部とした雌体の本体部を設け,本体部は,中央の左右を略凹円弧状に括れさせた括れ部を有し,正面視上方に略隅丸倒台形状の小開口部を左右対称状に配したものである点は,両意匠に顕著に共通する態様であるが,本件登録意匠の関連意匠(参考意匠1(甲第1号証),意匠登録第1233839号の意匠,別紙第3参照,及び参考意匠2(甲第2号証),意匠登録第1233840号,別紙第4参照)よりも,イ号意匠の雌体の全体形状の方が本件登録意匠に近似しているものといえるもので,共通点(b)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいものというほかない。共通点(c)は,雄体が,上方側にウサギの耳状の長い嵌合凸部を左右対称状に設け,その内側寄りの上端部に小台形状突起部を設け,上端部の嵌合凸部の間の中央に嵌合凸部より短い略角柱状の嵌合突起部を2本設け,下方にベルト挿通孔部を設けた態様であるが,雄体の態様についても,本件登録意匠の関連意匠(前記参考意匠1,別紙第3参照,及び前記参考意匠2,別紙第4参照)より,イ号意匠の態様の方が近似しているものといえ,正面視の態様における両意匠の共通点は,共通する印象を需要者に与える顕著な共通点といえるものであるから,この共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。共通点(d)については,雄体のベルト挿通孔部において,上下に略横長長方形状の孔部を配し,その上下中央にバーを設けて略「日」の字状とし,下端に逆隅丸凸字状部を設け,その背面側の中央下端部分の厚みを薄く形成した態様も,本件登録意匠の出願前には,他に見られない態様であって特徴的なものといえ,両意匠の共通する印象を醸成するもので,両意匠の類否判断に及ぼす影響は無視することができない。共通点(e)及び(f)については,この種の物品分野においては,従来より普通に行われているところであり,また,細部の共通点といえるものではあるが,使用時には,需要者の手にふれる部位であることから,その共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度ある。
そうすると,前記共通点(a)ないし(f)に係る態様は,それらが相乗して生じる視覚的な効果をも考慮すれば,需要者に共通の美感を強く起こさせ,両意匠の類否判断を決定付けるものである。

(2)差異点の評価
次に,差異点が類否判断に及ぼす影響について具体的に検討する。
まず,差異点(ア)について,雄体の背面側の下方において,ベルト挿通孔部の上下中央のバーの内側に滑り止め用の凹凸部を設けているか否かについて,この種のバックルの物品分野において,ベルト挿通孔部の上下中央のバーの内側に滑り止め用の凹凸部を設けることは,イ号意匠のみならず,本件登録意匠の出願前より普通に見られる態様(例えば,参考意匠3,実用新案公開平5-51110号の【図1】ないし【図3】の意匠,別紙第5参照)といえるもので,新規な特徴とはいえず,細部における部分的な改変といえる程度の差異であるから,この差異点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,ほとんどないというほかない。次に,差異点(イ)の雄体の下端の逆隅丸凸字状部について,浅い横長円弧状面が正面側に現れるか,背面側に現れるかについては,共通する態様における僅かな差異といえるものであって,両意匠を比較した場合,顕著な共通性により,その差異が目立つものとはいえず,また,さらに下方に略三日月状の面を形成しているか否かについても,細部における軽微な差異といえるものであるから,その差異が両意匠の視覚的効果に影響を与えるものではない。また,差異点(ウ)の雄体の嵌合突起部の正面側の態様について,本件登録意匠の嵌合突起部の態様については,B-B断面図に表されている部分のみしか明らかではないが,断面視した外側寄りが矢尻状に尖った角柱状に表されており,イ号意匠の略逆L字状の縁部を設けた態様とは異なるものではあるが,嵌合した状態では,外側からは見えない部位に係る差異であり,また,この程度の差異は,部分的で軽微なものであって,両意匠に格別異なる印象を与える程のものとはいえず,その差異が両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものとはいえない。さらに,差異点(エ)の色彩については,この種の物品分野においては,樹脂やプラスチックによって,様々な色彩のものを製造することが可能であり,バッグの色彩に合わせて,バックルの色彩も様々なものが想定されるものであり,全体を黒色の単色としたイ号意匠に格別の特徴は認められないものであるから,色彩を請求しないものとの違いが大きなものとはいえず,その差異が両意匠の類否判断に与える影響は,微弱なものに過ぎない。
そうすると,差異点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱であって,両意匠の共通する美感を変更するまでのものとはいえない。
(3)小括
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通し,両意匠の形態においても,前記差異点を総合しても,その視覚に訴える意匠的効果としては,共通点が生じさせる効果の方が差異点のそれを凌駕し,両意匠は,意匠全体として需要者に共通の美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似する。

5.むすび
以上のとおりであるから,イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。

よって,結論のとおり判定する。
別掲

判定日 2014-09-24 
出願番号 意願2004-12927(D2004-12927) 
審決分類 D 1 2・ 1- YA (B9)
最終処分 成立 
前審関与審査官 正田 毅 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 江塚 尚弘
中田 博康
登録日 2005-02-04 
登録番号 意匠登録第1233398号(D1233398) 
代理人 川越 弘 
代理人 松原 美代子 
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