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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 L3
管理番号 1309605 
審判番号 不服2015-16039
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-08-31 
確定日 2016-01-05 
意匠に係る物品 タープ 
事件の表示 意願2014- 11275「タープ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1.本願意匠
本願は,意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとし,平成26年(2014年)5月27日に意匠登録出願されたものであって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「タープ」とし,その形態を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第2.原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,特許庁普及支援課が2011年9月28日に受け入れた米国特許商標公報2011年 8月16日11W33号のテント(登録番号US D643496S)の意匠のうち、床及び床に支柱を固定する張り綱を除いたテントの意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH23314175号)であって,その形態は,同公報に記載の図面に表されたとおりのものである。(別紙第2参照)

第3.当審の判断
1.本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「タープ」であり,引用意匠の意匠に係る物品は「テント」であって,表記は異なるが,テントもタープと同様に,雨よけや日よけなどに利用することができるものであるから,本願意匠の願書及び願書に添付した図面の記載並びに引用意匠に係る公報の記載等を総合すれば,本願意匠と引用意匠(以下,「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,共通する。

(2)両意匠の形態
両意匠の形態を対比すると,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。(以下,対比のため,本願意匠の図面における正面,平面等の向きを,引用意匠にもあてはめることとする。)

<共通点>
両意匠は,基本的構成態様として,
(A)全体は,四角形の四隅に外側に傾けるように支柱を設け,一方の対角の位置の支柱間に軸部材及び動滑車を配置し,略二等辺三角形の2枚の布部材の底辺を軸部材にそれぞれ取付け,布部材の頂点から他方の対角の位置の支柱に綱をそれぞれ張り渡し,その綱を一方の対角の位置の支柱の一つを介して動滑車に至るように架設し,軸部材に取り付けた布部材を軸部材の回転に伴って展開,収納する点,
において共通する。

<相違点>
両意匠は,具体的形態として,
(ア)布部材の頂点から張り渡される綱は,本願意匠では,他方の対角の位置の支柱の約3/5の高さから,当該支柱の上端までを経由しているのに対して,引用意匠では,他方の対角の位置の支柱の上端のみを経由している点,
(イ)略二等辺三角形の布部材の平面視の形態が,本願意匠は,等辺を内側に向けて湾曲させ,平面視で,布部材の辺と支柱間の綱が離れているのに対して,引用意匠は,等辺を外側に向けて湾曲させ,平面視で,布部材の辺と支柱間の綱がほぼ同位置である点,
(ウ)四隅に設けた支柱の形態が,本願意匠は,支柱の下端に略正円形の台座部を設けているのに対して,引用意匠は,そのような台座部がない点,
において相違する。

2.両意匠の類否判断
以上の一致点,共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価及び総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。
両意匠は,意匠に係る物品は共通するが,形態については,以下のとおりである。

(1)共通点の評価
基本的構成態様(A)で指摘した,動滑車が配置されることで,2枚の布部材を軸部材の回転に伴って展開,収納する形態は,両意匠に共通して見られる形態であるから,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,一定程度あるものといえる。

(2)相違点の評価
これに対して,相違点(ア)として挙げた本願意匠の布部材の頂点から綱を張り渡す形態は,「他方の対角の位置の支柱の約3/5の高さから,当該支柱の上端までを経由している」ものであり,一方の対角の位置の支柱間に配置された軸部材を稜線部分として,2枚の布部材の頂点が,他方の対角の位置の支柱に向けて,相当の下り勾配で傾斜して延びているので,看者に対して,山形の屋根を連想させるような美感を生じさせる。他方,引用意匠の綱を張り渡す形態は,「他方の対角の位置の支柱の上端のみを経由している」ものであるから,布部材の頂点は,他方の対角の位置の支柱に向けて,水平ないしは僅かに傾斜して延びているので,看者に対して,平坦な屋根を連想させるような美感を生じさせる。したがって,相違点(ア)によって生じる両意匠の視覚的印象は,全く異なるといわざるを得ない。
また,上記のとおり,本願意匠は,動滑車が配置されることで,2枚の布部材を軸部材の回転に伴って展開,収納する形態であって,その上で布部材に傾斜をつけるように綱を張り渡す形態となっている点で,普通にみられるものとはいえない。
そうすると,相違点(ア)として挙げた本願意匠の綱を張り渡す形態は,看者に対して引用意匠とは異なる視覚的印象を与えるものであるから,この相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は非常に大きいというべきである。
次に,相違点(イ)は,布部材,すなわち日差しや雨をよけるという機能と直接結びつく部材の形態に関するものであるから,非常に目に付きやすいものであって,この相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響も大きいといえる。
最後に,相違点(ウ)として挙げた本願意匠の略正円形の台座部の形態は,参考意匠1から3までに示すように,タープやテントの支柱の形態として,普通に見られるものであるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱なものといえる。
そして,相違点(ア)から(ウ)までを総合した視覚的効果を考慮すると,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕して,両意匠は,意匠全体として視覚的印象を異にするというべきである。

(3)小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品は共通するものの,形態においては,共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており,意匠全体として見た場合,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕し,両意匠は,意匠全体として視覚的印象を異にするというべきであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。

第4.むすび
以上のとおりであって,原査定の引用意匠をもって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,原査定の拒絶の理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2015-12-14 
出願番号 意願2014-11275(D2014-11275) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (L3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中村 純典下村 圭子 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 刈間 宏信
江塚 尚弘
登録日 2016-01-22 
登録番号 意匠登録第1544164号(D1544164) 
代理人 村瀬 一美 

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