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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 F4
管理番号 1310765 
審判番号 不服2015-12256
総通号数 195 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2016-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-29 
確定日 2016-01-05 
意匠に係る物品 化粧品容器 
事件の表示 意願2013- 23589「化粧品容器」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,平成25年(2013年)10月8日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「化粧品容器」とし,その形態は,願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりのものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであり,具体的には,本願意匠に係る包装用容器の分野に於いて,表面の種々の位置に,斜状の切り欠き部や窪み等を形成することは,例えば,意匠登録第389909号意匠(以下,当審では「意匠4」という。),意匠1,意匠2のように本願出願前より極く一般的に行われていることであり,そうすると,本願の意匠は,公然知られた形状である球体状をした容器(例えば,意匠3)の前掲意匠2に観られるような位置に,前掲意匠4に観られるような形状の切り欠き部を形成したに過ぎないので,本願の意匠は,当業者であれば容易に創作をすることができたものと認められる,というものである。

【意匠1】(別紙第2参照)
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2009年 8月17日
受入日 特許庁意匠課受入2009年 8月21日
掲載者 Rite Aid Corp.
表題 eos - Lip Balm Sphere Summer Fruit - 1 ea
掲載ページのアドレス
http://www.riteaidonlinestore.com/popups/largerphoto/default.asp?pid=214633&catid=45531&size=300&trx=29888&trxp1=214633&trxp2=1
に掲載された「包装用容器」の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HJ21020934号)

【意匠2】(別紙第3参照)
独立行政法人工業所有権情報・研修館が2012年 6月27日に受け入れたB.I.CO.LTD発行の『B.I.PACKAGING 2012』第35頁所載,包装用容器の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HC24013954号)

【意匠3】(別紙第4参照)
独立行政法人工業所有権情報・研修館が2011年 6月 3日に受け入れた株式会社シー・エム・エル発行のカタログ『輝きを纏う 贅沢な一滴。 ザ・セラム』第1頁所載,包装用容器の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HC23006106号)

【意匠4】(別紙第5参照)
特許庁が昭和49年12月14日に発行した意匠公報記載
意匠登録第389909号(意匠に係る物品,包装用容器)の意匠

第3 請求人の主張の要点
これに対し,請求人は,審判を請求し,要旨以下のとおり主張した。

拒絶理由通知において,「本願の意匠は,公然知られた形状である球体状をした容器(例えば,意匠3)の意匠2に観られるような位置に,意匠4に観られるような形状の切り欠き部を形成したに過ぎないので,本願の意匠は,当業者であれば容易に創作をすることができたものと認められる。 」と認定された。
しかし,意匠2は,球体の下端部以外の位置には斜状の切り欠き部や窪み等は形成されていない意匠と把握すべきものである。「前掲意匠2に観られるような位置」とは,「容器本体とキャップとの分割線に対して略平行をなす球体の下端部の位置」にすぎない。
したがって,半球状のキャップとともに球体をなす半球状の容器本体に球体をカットしてなる斜状の切り欠き部が円形平面として形成され,容器本体とキャップとの分割線に対して切り欠き部の法線が約45度の角度をなすような位置に切り欠き部を形成する本願意匠の態様は,先行意匠には見られない本願意匠独自のものである。よって,本願意匠は,公知の形態に基づいて容易に創作できたものということはできない。
本願意匠は,容器本体とキャップとの分割線がほぼ水平となるように本物品を載置する形態のほかに,分割線が水平線と約45度の角度をなす斜線となるように本物品を載置する形態も採用することを意図し,このような想定の下に,分割線に対して切り欠き部の法線が約45度の角度をなすような位置に,球体の直径の約2分の1の大きさの直径の円形平面をなす切り欠き部を形成したものである。本願意匠の切り欠き部の形成位置や形状は,切り欠き部を容器本体の底面となるように使用して載置することもできるというバリエーションを持たせたものであり,このような発想はそれぞれの引用意匠には存在していない。
また,切り欠き部を容器本体の底面となるように使用したときには,分割線は水平線と約45度の角度をなす物品直径大の斜線となる。それぞれの引用意匠は,本願意匠のような上記想定がされていないため,本願意匠のような機能を有することがない。これより,それぞれの引用意匠は,本願意匠と同様の分割線を有する意匠ではない。
また,拒絶査定の理由において「横最大径部に分割線を形成することも,下半分に斜状の切り欠き部や窪み等を形成することも,本願出願前より極く一般的に行われていた」との指摘があるが,そもそも,分割線および切り欠き部を設けることが一般的であると言えたとしても,それら分割線および切り欠き部の配置関係や形状に至る細部までが一般的であるということにはならない。
以上のことから,本願意匠が各引用意匠および包装用容器の分野において当業者にとってありふれた手法から創作容易であるとは判断できないものと思料する。
本願意匠は,意匠法第3条第2項の規定に該当しないものである。

第4 当審の判断
意匠が容易に創作することができたか否かについての判断は,当該意匠の構成態様について,(ア)それらの基礎となる構成,具体的態様などが本願出願前に公知・周知であり,そして,(イ)それらの構成要素を,ほとんどそのままか,あるいは,当該分野においてよく見られるところの多少の改変を加えた程度で,(ウ)当該物品分野において周知の創作手法であるところの,単なる組合せ,構成要素の全部又は一部の単なる置換えなどがされたにすぎないものであるか否かによって行うことが必要である。
以下,本願意匠が容易に創作できたか否かについて,請求人の主張を踏まえ,これらの観点により検討する。

1.本願意匠の形態
本願意匠の形態は,第1で述べたとおりである。すなわち,
(A)全体は,本体とキャップからなる開閉自在の略円球体の容器で,本体とキャップは,略円球体を上下に二等分した,どちらの外形も略同形同大の略半円球体をなす形態であり,
(B)本体側の半円球体表面の1カ所を切り欠き状としており(以下,この部分を「本願意匠の切り欠き部」という。),本願意匠の切り欠き部は,
(B-1)形状が,円形の平坦面で,
(B-2)大きさは,円形面の直径が全体の略円球体の直径の半分弱の大きさとした形態で,
(B-3)その位置は,略円球体の中心から下方向約45度に伸ばした線と円形面の中心が直交する位置として,本体側面の中間位置としたものである。

2.原審が拒絶理由で例示した意匠
(1)意匠1
意匠1は,包装用容器の分野において,表面の種々の位置に,斜状の切り欠き部や窪み等を形成することが,本願出願前より極く一般的に行われていることを例示したものである。
意匠1が掲載されたページの写真版は,キャップを開けた状態の斜視状態のものであり,この写真版に現れた意匠1の形態は,
(あ)全体が,本体とキャップからなる開閉自在の略縦長楕円球形の容器で,掲載ページでは,キャップと本体の傾きが異なっているため,キャップと本体の具体的な構成比率等は不明確であり,
(い)球体表面の下面と側面にそれぞれ切り欠き状の部分があり(以下,それぞれ「意匠1の下面切り欠き部」「意匠1の側面切り欠き部」という。),
(う)意匠1の下面切り欠き部は,
(う-1)形状は,円形であるが,平坦かどうかは不明であり,
(う-2)大きさは,不明確であり,
(う-3)位置は,本体の最下端であり,

(え)意匠1の側面切り欠き部は,
(え-1)形状が,変形略長円形の浅い曲面状凹面で,
(え-2)大きさは,この変形略長円形の長径が,全体の開口部の直径の半分程度とした形態で,
(え-3)位置は,本体とキャップに跨がる位置である。

(2)意匠2
意匠2は,包装用容器の分野において,表面の種々の位置に,斜状の切り欠き部や窪み等を形成することが,本願出願前よりごく一般的に行われていること,及び,本願意匠の切り欠き部の位置が本願出願前に公然知られていたことの例として,原審が示したものである。
意匠2が掲載されたページの写真版はキャップを閉じた斜視状態のものであり,この写真版に現れた意匠2の形態は,
(か)全体は,本体とキャップからなる開閉自在の,略円球体の下方約5分の1程度を切除したような形状の容器で,キャップは,全体が略円球体であるとしたとき,その上方の約5分の2程度の高さを占める不透明材質の略半円球体状のものであり,本体は,やはり全体が略円球体であるとしたとき,キャップの高さと略同高で,キャップの略円半球体状に連続し,略円球体の赤道位置を含む,側面の膨らんだ略逆円錐台形状の透明材質からなる容器であり,
(き)円球体表面における切り欠き状の部分は,前記の本体底面の切除部分1カ所であり(以下,「意匠2の切り欠き部」という。),
(き-1)形状は,円形で,この円形の表面形状は不明確で,
(き-2)大きさは,この円形の直径が,全体の開口部の直径の半分強程度の形態で,
(き-3)位置は,本体の最下端である。

(3)意匠3
意匠3は,球体状をした容器が本願出願前に公然知られていることの例として,原審が示したものである。
意匠3が掲載されたページの写真版はキャップを閉じた斜視状態のもの及び次頁の略立方体状の容器に入った状態の正面写真版で,後者の写真版は,外側容器の下方部に暗調子の模様があるため,中にある意匠3の下方は視認できない。これらの写真版に現れた意匠3の形態は,
(さ)全体が,中間調子の本体と明調子のキャップからなる開閉自在の略円球体の容器で,本体とキャップは,どちらもその外形が略半円球体状で,その本体下方の具体的な形態は不明確だが,本体の高さより,キャップの高さが僅かに高い形態である。

(4)意匠4
意匠4は,包装用容器の分野において,表面の種々の位置に,斜状の切り欠き部や窪み等を形成することが,本願出願前より極く一般的に行われていること,及び,本願意匠の切り欠き部の形状が本願出願前に公然知られていたことの例として,原審が示したものである。
意匠4の形態は,
(た)全体は,本体とキャップからなる開閉自在の,円球体の下方約10分の1弱程度を切除したような形状の容器で,キャップは,全体が円球体であるとしたとき,その上方の5分の3弱程度の高さの,円球体の赤道位置を含む略半円球体状であり,本体は,やはり全体が円球体であるとしたとき,最下方の切除部の上に位置する,下方5分の2弱程度の高さの,キャップの略半円球体状に連続し,側面の膨らんだ略逆円錐台形状の容器であり,
(ち)円球体表面には,下面,側面,及び上面の3カ所にそれぞれ形態の異なる切り欠きあるいは凹状の部分があり(以下,「意匠4の下面切り欠き部」,「意匠4の側面切り欠き部」「意匠4の上面凹部」という。),

(つ)意匠4の下面切り欠き部は,
(つ-1)形状は,円形で,周囲の球体表面からごく僅かに陥没した平坦な面であり,
(つ-2)大きさは,この円形の直径が,全体の最大口径部(全体が円球体としたときの直径)の半分弱のもので,
(つ-3)位置は,本体の最下端であり,

(て)意匠4の側面切り欠き部は,
(て-1)形状が,円形の平坦面で,その周縁に極細円環部を残して,その内部には明暗調子の幾何学的な模様が設けられ
(て-2)大きさは,この円形の直径が,全体を円球体としたときの直径の半分強のもので,
(て-3)位置は,略円球体の中心から上方向約50度に伸ばした線と円形面の中心が直交する位置として,キャップの側面やや上方寄りとしたもので,

(と)意匠4の上面凹部は,
(と-1)形状が,球体表面から円球体の中心に向かって垂直に設けられた,略三角柱形の凹陥状の孔であり,
(と-2)大きさは,開口部の三角形の一辺が,全体の最大口径部(全体が円球体としたときの直径)の5分の1強程度とした形態で,
(と-3)位置は,キャップの最上端である。

3.本願意匠の創作容易性について
本願意匠の(A)の態様,全体を,本体とキャップからなる開閉自在の円球体の容器とし,本体とキャップは,円球体を上下に二等分してどちらの外形も同形同大の半球体をなす形態は,容易に想起しうるものである。
すなわち,容器全体の形状が表している円球体は周知形状であり,化粧品容器の分野においても,全体が本体とキャップとで構成されている開閉自在の略円球体の化粧品容器は,意匠3(さ)に見られるように,本願出願前に公然知られている。意匠3(さ)は,本体の高さより,キャップの高さが僅かに高いものであるが,この種化粧品容器の分野において,本体とキャップの高さを同じ高さとすることは,例示するまでも無くごくありふれていることに鑑みれば,本願意匠(A)の形態は,意匠3(さ)の形態に基づいて容易に想起しうるものであるといえる。

次に,(B)の円球面の1カ所を切り欠き状とした点については,意匠2(き)に見られるように本願出願前より包装用容器の分野において採用されていたありふれた手法であり,また,本願意匠の切り欠き部の(B-1)形状が平坦な円形面で,(B-2)大きさが円形面の直径が全体の円球体の直径の半分弱の大きさとした点は,意匠4に(て-1)形状が平坦な円形面で,その周縁に極細円環部を残して,その内部には明暗調子の幾何学的な模様があり,(て-2)大きさは,この平坦面の円形の直径が,全体を円球体としたときの直径の半分強のものとした態様が見られるから,この態様から模様を除くとともに,全体における平坦な円形面の大きさを僅かに変更することは,包装用容器の分野の通常の知識を有する者なら,容易に想起しうるといえる。

一方,本願意匠の(B-3)の態様については,容易に想起しうるとはいえないものである。
すなわち,平坦な円形切り欠き部の位置が,略円球体の中心から下方向約45度に伸ばした線と円形面の中心が直交する位置として,本体側面の中間位置とした点は,原審が例示した意匠2には現れていない。意匠2の切り欠き部は,側面ではなく本体底面の一ヶ所のみであり,側面に位置する略楕円形部は,この本体底面の切り欠き部の円形面が透明材質の本体側面から透過して視認されているにすぎない。また,意匠1についてみると,その側面切り欠き部の位置は,(え-3)本体とキャップに跨がる位置であり,意匠3についても,その側面に切り欠き部は無い。一方,意匠4においては側面切り欠き部があるものの,(て-3)位置が,略円球体の中心から上方向約50度に伸ばした線と円形面の中心が直交する位置として,キャップの側面やや上方寄りであるから,本願意匠の(B-3)の態様とは異なっている。
本願意匠の切り欠き部の位置等は,切り欠き部を容器本体の底面となるように使用して載置できることとも関係しており,この位置は,例示された意匠のいずれにも見られない本願意匠の特徴的な着想によるものであるといえる。よって,円球体を上下に二等分してどちらの外形も同形同大の半円球体をなす本体とキャップからなる開閉自在の円球体容器に,平坦な円形面の切り欠き部を1箇所だけ,本体側面の中間に配置した本願意匠の形態は,存在する公知の態様に基づき,多少の改変を加えた程度であるということはできない。

したがって,本願意匠の態様は,公知形状及び周知の手法の存在を前提として,容易に導き出せるものではないから,本願意匠は,当業者であれば,容易に創作することができたということはできない。

第5.むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第3条第2項が規定する,意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものに該当しないので,原査定の拒絶の理由によって本願の登録を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲

審決日 2015-12-15 
出願番号 意願2013-23589(D2013-23589) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (F4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木本 直美 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 久保田 大輔
本多 誠一
登録日 2016-02-05 
登録番号 意匠登録第1545145号(D1545145) 
代理人 八田国際特許業務法人 

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