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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H7 |
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管理番号 | 1310771 |
審判番号 | 不服2015-12884 |
総通号数 | 195 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2016-03-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-07-06 |
確定日 | 2016-01-19 |
意匠に係る物品 | スマートフォン用ケース |
事件の表示 | 意願2014- 14874「スマートフォン用ケース」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
1.本願意匠 本願は,意匠法第13条第1項の規定による原出願を特願2014-138068号とする(出願日:平成26年(2014年)2月10日),平成26年(2014年)7月7日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「スマートフォン用ケース」とし,その形態を願書の記載及び願書に添付された図面に表されたとおりとしたものである。(別紙第1参照) 2.原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定において,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとして,拒絶の理由に引用された意匠(以下,「引用意匠」という。)は,特許庁が平成25年(2013年)7月1日に発行した意匠公報掲載の意匠登録第1473797号「携帯電話機用カバー」の意匠(以下,「引用意匠」という。)であって,その形態は,同公報に掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照) 3.両意匠の対比 両意匠を対比すると,まず,意匠に係る物品については,本願意匠は,「スマートフォン用ケース」で,引用意匠は,「携帯電話機用カバー」であるが,両意匠は,いずれも携帯用の小型の情報通信端末機器を保護するためのケースであるから,両意匠の意匠に係る物品は共通する。 両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び差異点がある。 (1)共通点 (A)全体を,正面側を開放した偏平な略箱状とし,正面視隅丸縦長長方形状とする背面パネル側の周囲に,背面パネルと垂直に側面視等幅の帯状である周側面部(以下,「周側面部」という。)を設け,背面視左上にカメラ用開口部として略横長長円形状の孔を設けている点, (B)周側面部の正面側には内側に折り返した細幅の縁部を設けている点, (C)周側面部底面の左寄りに逆倒U字状の蓋部を,中央寄りに左寄りの蓋部より横幅をやや長くした倒U字状の蓋部を設け,両蓋部の内面側に円形状と長円形状の突起部を有し,両蓋部の間にマイク用開口部を,右寄りにスピーカ用開口部を設け,両開口部は複数の極小円孔で構成されている点, (D)周側面部の右側面下方寄りに縦長長円形凸部(以下,「右側面長円形凸部」という。)を設け,その内側に2個の小型円形孔を縦に配した点, (E)周側面部の左側面上方寄りに縦長長方形状の孔部(以下,「長方形孔部」という。)を配し,その下に縦長長円形部(以下,「左側面長円形部」という。)を設けた点, (F)周側面部の上面右寄りに長円形部(以下,「上面長円形部」という。)を設けている点, において主に共通する。 (2)差異点 (ア)本願意匠は,周側面部の上面及び左右側面を外側に僅かに膨出する断面視凸弧状に形成し,正面側の縁部の内側に,ごく細い傾斜部を設けているのに対して,引用意匠は,周側面部の全ての面を平坦面とし,正面側の縁部の内側に傾斜部は設けていない点, (イ)底面に設けられた逆倒U字状の蓋部と倒U字状の蓋部について,本願意匠は,両蓋部の付け根近くに縦線状のヒンジ部が形成されているのに対して,引用意匠は,ヒンジ部が形成されていない点, (ウ)底面に設けられたマイク用及びスピーカ用開口部の態様について,本願意匠のマイク用開口部は,4個の小型円形孔を2段に配し,スピーカ用開口部は,7個の小型円形孔を2段に配し,それぞれ長方形状の枠線内に設けているのに対して,引用意匠のマイク用開口部は,上から4個,3個,4個,3個,4個の小型円形孔を5段に千鳥状に配し,スピーカ用開口部は,上から6個,5個,6個,5個,6個の小型円形孔を5段に千鳥状に配し,スピーカ用開口部の左端の縦3個を中央寄りの蓋部の付け根部分に配している点, (エ)上面長円形部について,本願意匠は,横長長円形状の凹状部の内側中央に細い横長長円形状の凸状部を設けているのに対して,引用意匠は,横長長円形状の凸状部のみを設けている点, (オ)左側面長円形部について,本願意匠は,縦長長円形状の凹状部の内側上下に浅い円形の小型凸状部を設けているのに対して,引用意匠は,縦長長円形状の凸状部を設けている点, において主な差異が認められる。 4.類否判断 そこで検討するに,共通点(A)については,全体の基本構成の共通点ではあるが,全体を,正面側を開放した偏平な略箱状とし,正面視隅丸縦長長方形状とする背面パネル側の周囲に,背面パネルと垂直に側面視等幅の帯状である周側面部を設け,背面視左上にカメラ用開口部として略横長長円形状の孔を設けた態様は,本物品が収納する小型の情報通信機器の大きさや形状等に依存するものであり,この種の物品分野においては両意匠以外にも既に普通に見られるもので,両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず,この点が両意匠の類否判断に与える影響は一定程度に留まるものである。 次に,共通点(B)についても,周側面部の正面側には内側に折り返した細幅の縁部を設けた態様が共通している点については,小型の情報通信機器とカバーを固定するために用いられる常套的な手法であって,この種の物品分野においては両意匠以外にも普通に見られるもので,ありふれた態様といえるもので,さほど特徴のない態様といえるものであり,両意匠のみに共通する態様とはいえず,この点が両意匠の類否判断に与える影響は微弱である。 また,共通点(C)について,周側面部底面の左寄りに逆倒U字状の蓋部を,中央寄りに左寄りの蓋部より横幅をやや長くした倒U字状の蓋部を設け,両蓋部の内面側に円形状と長円形状の突起部を有し,両蓋部の間にマイク用開口部を,右寄りにスピーカ用開口部を設け,両開口部が複数の極小円孔で構成された態様は,周側面部底面に蓋部を設けることや複数の極小円孔で構成された開口部の位置については,小型の情報通信機器の電源コネクタやイヤホン,スピーカ及びマイクの位置に依存することから,両意匠以外にも既に見受けられ,また,その蓋部を逆倒U字状と倒U字状とした点については,両意匠以外にも既に見受けられ,両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず,これらの点が両意匠の類否判断に与える影響は微弱である。 そして,共通点(D)ないし(F)について,周側面部右側面視下方寄りに縦長長円形凸部を設け,その内側に2個の小型円形孔を縦に配した点や,周側面部左側面視上方寄りに長方形孔部と左側面長円形部を設けることや,周側面部平面視右寄りに上面長円形部を設けること等は,いずれも,この種の小型の情報通信端末機器のケースにおいては,機器の操作部の凹凸に合わせた態様とすることは,ありふれた常套的手段といえるものであり,その態様は機器自体の形状に合わせたものといえることから,この共通点が,両意匠の類否判断に与える影響は微弱なものといえる。 そして,共通点全体が両意匠の類否判断に与える影響を考慮しても,両意匠の類否判断を決定付けるに至るということはできない。 これに対して,差異点に係る態様が相俟って生じる視覚的な効果は,両意匠の類否判断を決定付けるものである。 すなわち,まず,差異点(ア)の態様については,周側面部の上面部と左右側面部を凸弧状に形成し,正面側の縁部の内側に,ごく細い傾斜部を設けている本願意匠と,周側面部の全ての面を平坦面とし,正面側の縁部の内側に傾斜部を設けていない引用意匠とでは,全体の立体形状が異なる上に,使用者が手に触れる周側面全体にわたる差異であることから,別異の印象を起こさせるものであり,その差異は,両意匠の類否判断に影響を与えるものといえる。 次に,差異点(イ)の底面に設けられた逆倒U字状の蓋部と倒U字状の蓋部の態様については,蓋部の付け根近くに縦線状のヒンジ部が形成されている本願意匠の態様は,他には見られない特徴的なものといえ,ヒンジ部を有さない引用意匠とは,その印象が明確に異なるもので,その差異は無視することができず,両意匠の類否判断に影響を与えるものといえる。 そして,差異点(ウ)の底面に設けられたマイク用及びスピーカ用開口部の態様については,マイク用開口部に4個の小型円形孔を2段に配し,スピーカ用開口部に7個の小型円形孔を2段に配し,それぞれ長方形状の枠線内に設けている本願意匠は整然とした印象を与えるもので,マイク用開口部に上から4個,3個,4個,3個,4個の小型円形孔を5段に千鳥状に配し,スピーカ用開口部に上から6個,5個,6個,5個,6個の小型円形孔を5段に千鳥状に配している引用意匠とは,使用者が受ける印象が明らかに異なり,その差異は,両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものといえる。 また,差異点(エ)の上面長円形部について,凹状部の内側中央に細い横長長円形状の凸状部を設けている本願意匠と横長長円形状の凸状部のみを設けている引用意匠とでは,その凹凸態様が異なり,両者は区別できるものであるから,部分的な細部の差異ではあるが,その差異は,両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものといえる。 さらに,差異点(オ)の左側面長円形部について,縦長長円形状の凹状部の内側上下に浅い円形の小型凸状部を設けている本願意匠は,より機器に沿った形状であって,特徴的とはいえないものではあるが,縦長長円形状の凸状部を設けている引用意匠とは,その凹凸態様が異なり,両者は異なるものであるから,細部の相違ではあるが,その差異は,両意匠の類否判断に僅かながら影響を与えるものといえる。 以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通するが,その形態において,差異点が看者に与える印象が共通点のそれを凌駕し,それが両意匠の意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。 5.むすび したがって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当せず,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2016-01-06 |
出願番号 | 意願2014-14874(D2014-14874) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(H7)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 木村 智加 |
特許庁審判長 |
本多 誠一 |
特許庁審判官 |
久保田 大輔 斉藤 孝恵 |
登録日 | 2016-02-05 |
登録番号 | 意匠登録第1544982号(D1544982) |
代理人 | 正林 真之 |
代理人 | 林 一好 |
代理人 | 岡野 智子 |