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審決分類 審判 査定不服  意7条一意匠一出願 取り消して登録 B4
管理番号 1310773 
審判番号 不服2015-15005
総通号数 195 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2016-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-08-10 
確定日 2016-01-25 
意匠に係る物品 キャリー付バッグ 
事件の表示 意願2014- 2804「キャリー付バッグ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,平成26年(2014年)2月12日に出願された意匠登録出願であり,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「キャリー付きバッグ」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)を願書に添付された図面代用写真に現されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)


第2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,本願は,経済産業省令で定める物品の区分又はそれと同程度の区分により意匠ごとにされているものとは認められないので,意匠法第7条に規定する要件を満たしていない,としたものであり,具体的には,本願は,2つの意匠(バッグの意匠とキャリーカートの意匠)を包含しているものと認められる,としたものである。


第3 請求人の主張の要旨
請求人は,要旨以下のとおり理由を述べ,本願は登録をすべきものである,と主張している。

(1)一意匠の要件
意匠法第7条は,「意匠登録出願は,経済産業省令で定める物品の区分により意匠ごとにしなければならない。」とし,意匠登録出願は「一意匠」ごとにしなければならないことを規定しているが,ここでいう「一意匠」とは,必ずしも物理的に分離していない形態のみを指すのではなく,意匠を構成する各部が分離しているものであっても,一体として同時に取引・使用され,形態としても一つのまとまりを有するものであれば,「一意匠」の要件を満たすものと思料する。
つまり,意匠法に規定する「意匠」とは,「物品の形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合」であり,意匠の「実施」とは,「意匠に係る物品を製造し,使用し,譲渡し,貸し渡し,輸出し,若しくは輸入し,又はその譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡又は貸渡しのための展示を含む。)をする行為」をいい(意匠法第2条第1項及び第3項),さらに,「物品」とは,一般的に有体物(物理的に空間の一部を占め有形的存在を有する物)たる動産であって,市場において流通し独立して取引の対象となりうるものである。
したがって,意匠法における「物品」は,「製造し,使用し,譲渡し,貸し渡し,輸出し,若しくは輸入し,又はその譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡又は貸渡しのための展示を含む。)をする行為」の対象となる有体物たる動産であること,及び,「意匠」とは,「物品の形状等」であることを考え合わせれば,意匠登録出願に係る意匠が「一意匠」と認められるためには,意匠に係る物品が,その実施において,一つのまとまった対象として扱われるものであること(一物品性),及び意匠が,その実施において,一つのまとまった形態を有するものであることを満たしていれば,「一意匠」の要件を満たすものと考える。
意匠法施行規則第7条別表1には,物品の区分が規定され,一物品の範囲が明示されているが,これらは例示であり,別表1に記載された物品以外の物品を記載することを妨げるものではない(同別表1備考2)。また,別表1には,「背広服」「ツーピース」「コーヒーわん及び受け皿」などが例示され,各部を分離することが可能な物品であっても「一物品」と認められているので,「一物品」とは,必ずしも物理的に分離していないもののみを指すのではないことは明らかである。

上記に示した要件を考慮すれば,本願意匠が,意匠法第7条に規定する「一意匠」の要件を満たすものであることは明白であるので,以下に説明する。

(2)本願意匠の一意匠性
ア 本願意匠の一物品性
本願意匠に係る「キャリー付きバッグ」は,「バッグ」と「キャリーカート」に分離することが可能であるが,一体として市場で流通する動産であって,本願意匠のような物品は,一般的に「ショッピングカート」といったような名称で取引されるものである。また,「ショッピングカート」は,それ自体で一つのジャンルを形成し,一体として販売・使用することを前提にしており,現在,多種多様なものが取引されている。
このような事情を考慮すれば,本願意匠は,「一物品」と認められるものであると思料する。

イ 一つのまとまった形態
本願意匠を構成する「バッグ」は,略直方体状の袋体であって,上部がバッグの高さの2/3のところで,正面から背面に向かって円弧状に湾曲した曲面になっている。また,正面上部に「コ」の字状のファスナーが設けられ,「キャリーカート」と接するバッグ背面には,幅が異なる帯状のキャリーバー通しが上下に間隔を開けて配されている。一方,「キャリーカート」は,側面視において,「h」型を基調とするフレームに,タイヤを設け,フレームの上端にはハンドルが設けられている。
「バッグ」と「キャリーカート」は,バッグ背面に設けた帯状のキャリーバー通しに,キャリーカートのキャリーバーを通して固定し,「バッグ」と「キャリーカート」が一体となり,さらに,バッグの高さ,横幅,奥行きを,「キャリーカート」に一致させることによって,全体として一つのまとまりある形態を醸成している。

上記アとイより,本願意匠は,一つの物品に係る一つの形態的なまとまりをもった「一意匠」であると思料する。


第4 当審の判断

以下,本願が経済産業省令(意匠法施行規則別表第一。以下,「別表第一」という。)で定める物品の区分又はそれと同程度の区分により意匠ごとにされているものであるか否かについて検討する。

本願の願書に添付された図面代用写真に現された意匠は,物理的に分離可能な,バッグ(以下,「本件バッグ」という。)及びキャリーカート(以下,「本件キャリーカート」という。)の2つの構成要素から成るものである。
そこで,まず,物理的に分離可能なものが,それを理由に直ちに別表第一で定める物品の区分又はそれと同程度の区分によらないものとなるか否かについて検討すると,別表第一には,例えば「背広服」や「コーヒーわん及び受け皿」のように,2つの物理的に分離可能なもので構成されているものが一つの物品の区分として定められており,別表第一は,必ずしも物理的に分離不可能なものの単位で物品の区分を定めているものではないと解することが相当であることから,図面代用写真に現された意匠は,物理的に分離可能な構成要素から成ることのみを理由に,別表第一で定める物品の区分又はそれと同程度の区分により意匠ごとにされていないものであると判断されるべきではない。
したがって,本願が別表第一で定める物品の区分又はそれと同程度の区分により意匠ごとにされているものであるか否かについては,本願の願書の記載及び願書に添付された図面代用写真に基づいて,本願に現されたものについて,その用途,機能,使用方法,及び使用状態等の観点から総合的に判断することが妥当である。

本願の願書の記載によれば,本件バッグと本件キャリーカートは,必要に応じて取外すことが出来るが,通常は一体として販売及び使用されるものである。他方,本件バッグが,本件キャリーカートから取り外して単体で使用することも意図したものであるかどうかについては記載が無い。
しかし,仮に,縦長である本件バッグの単体使用を想定しているのであれば,運搬の容易性を考慮し,例えばリュックサックのように肩ベルト等を設けるか,別体の肩ベルトを設けること等が可能な構造とすることが考えられるが,本件バッグにはそのような構造が見られない。そうすると,背面側上端部に設けられた短い帯状の把手部だけでは縦長の本件バッグを快適に運搬することは困難であるから,本件バッグは通常はキャリーカートから取り外して単体で使用することを意図したものではなく,専ら本件キャリーカートと一体として使用するものであると推認できる。
よって,本件バッグと本件キャリーカートを合わせた本願キャリー付きバッグは,完成した一物品,すなわち,別表第一に定める物品の区分と同程度の物品であると認められる。


第5 むすび

したがって,本願意匠は,意匠法第7条に規定する要件を満たすものであり,同条の規定により拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2016-01-04 
出願番号 意願2014-2804(D2014-2804) 
審決分類 D 1 8・ 52- WY (B4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山永 滋正田 毅 
特許庁審判長 本多 誠一
特許庁審判官 斉藤 孝恵
久保田 大輔
登録日 2016-02-12 
登録番号 意匠登録第1545377号(D1545377) 
代理人 加藤 恒久 

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