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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H2
管理番号 1311904 
審判番号 不服2015-16187
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-09-02 
確定日 2016-03-01 
意匠に係る物品 配線用ボックス 
事件の表示 意願2014-12175「配線用ボックス」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成26年(2014年)6月5日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「配線用ボックス」とし,その形態を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって,「実線で示した部分が部分意匠として登録を受けようとする部分である。A-A断面図,B-B断面図及びC-C断面図を含めて部分意匠として登録を受けようとする部分を特定している。」としたものである(以下,本願について意匠登録を受けようとする部分を「本願実線部分」という。)。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠は,特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1358603号(意匠に係る物品,スイッチボックス)の意匠(以下,「引用意匠」といい,本願意匠と合わせて「両意匠」という。)における,本願実線部分に相当する鍔状縁部の四隅の突出した部分であって,その形態は,同公報の図面に記載されたとおりのものである(以下,引用意匠における本願実線部分に相当する部分を「引用相当部分」といい,本願実線部分と合わせて「両意匠部分」という。)。(別紙第2参照)

第3 当審の判断
1.両意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,「配線用ボックス」であり,引用意匠の意匠に係る物品は,「スイッチボックス」であって,表記は異なるが,本願意匠の願書及び願書に添付した図面の記載並びに引用意匠に係る公報の記載等を総合すれば,いずれも建築物の壁面等にスイッチやコンセント等を取り付けるためのボックスであるから,両意匠の意匠に係る物品は一致する。

(2)部分意匠としての用途,機能,並びに位置,大きさ及び範囲
両意匠部分は,建築物の壁面等の裏面に配線用ボックスを当接するためのフランジ部の正面部分及び段差面部分であって,配線用ボックスの四隅に設けられているから,部分意匠としての用途,機能並びに位置,大きさ及び範囲は共通する。

(3)両意匠部分の形態
両意匠部分の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。
<共通点>
基本的態様として,
(A)全体は,正面視横長略長方形の配線用ボックスの四隅に,このボックスから突出するように設けた正面視略L字状の平たんなフランジである点,

具体的態様として,
(B)フランジの両端縁がボックスの内側を向くように,略同方向に傾斜している点
で,両意匠部分は共通する。

<相違点>
具体的態様として,
(ア)フランジの両端縁の傾斜が,本願実線部分は緩やかに湾曲しているのに対して,引用相当部分は直線である点,

(イ)略L字状のフランジの外側及び内側の隅が,本願実線部分は隅丸であるのに対して,引用相当部分は直角である点,

(ウ)配線用ボックスからのフランジの突出高さが,本願実線部分は低いものであるのに対して,引用相当部分は高いものである点,
で,両意匠部分は相違する。

2.両意匠の類否判断
以上の一致点,共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価及び総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。

(1)両意匠の意匠に係る物品,部分意匠としての用途,機能並びに位置,大きさ及び範囲の評価
両意匠は,意匠に係る物品が一致し,部分意匠としての用途,機能並びに位置,大きさ及び範囲が共通するところ,配線用ボックスという物品や,その四隅に設けられたフランジは,いずれもありふれているから,これらが一致することだけでは,両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。

(2)形態についての共通点の評価
基本的態様として示した共通点(A)は,この種物品においてありふれた態様であって,両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱というほかない。
また,具体的態様として示した共通点(B)は,両意匠部分の形態を概括的に捉えた場合の共通点にすぎないものであるから,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を大きいということはできない。
そして,共通点全体としても,両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。

(3)形態についての相違点の評価
配線用ボックスは,建築物の壁面等の裏面に設けられるものであって,建築物が完成した後には,全く目に触れることはないから,配線用ボックスの主たる需要者は,その施工に関わる者であるというのが相当である。
そこで,配線用ボックスの施工という観点で,両意匠部分の形態の相違を検討する。
配線用ボックスを建築物の壁の裏面に取り付けるためには,まず,壁面に配線等が貫通する穴を設け,その穴に位置を合わせて配線用ボックスを取り付ける必要があるところ,壁面に穴を設ける手法として,例えば以下のものが知られている。
ア.ジグソーを用いて矩形の穴を設ける手法。
イ.正円形穴を貫通できるホルソーを用いて,略だるま状又は四つ葉状の穴を設ける手法。
ウ.トラック状(小判状)の穴を貫通できるホルソーを用いて,トラック状の穴を設ける手法。
相違点(ア)に示すように,本願実線部分は,略L字状のフランジの両端縁の傾斜が緩やかに湾曲しているところ,この湾曲が,略トラック形状に沿ったものであることは明らかであるから,本願実線部分のフランジの両端縁の傾斜は,上記ウ.に示す手法により設けたトラック状の穴に擬態したものであるといえる。そして,配線用ボックスの施工に関わる需要者は,本願実線部分のフランジの両端縁の緩やかに湾曲した傾斜が,壁面のトラック状の穴に擬態していることから,その穴に対する位置合わせを容易に行うことができるという機能的な印象を受けるものであり,この相違点(ア)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は非常に大きいということができる。
また,相違点(イ)及び(ウ)は,それぞれ需要者の目に付きやすいものであるから,両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は一定程度あるものといえる。
そして,相違点(ア)から(ウ)が相乗した視覚的効果を考慮すると,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕して,両意匠部分は,視覚的印象を異にするというべきである。

(4)小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品が一致し,部分意匠としての用途,機能並びに位置,大きさ及び範囲は共通するが,形態においては,共通点が未だ両意匠部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており,意匠全体として見た場合,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕し,両意匠は,意匠全体として視覚的印象を異にするというべきであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。

第4 むすび
以上のとおりであって,原査定の引用意匠をもって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,原査定の拒絶の理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2016-02-18 
出願番号 意願2014-12175(D2014-12175) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 上島 靖範 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 江塚 尚弘
刈間 宏信
登録日 2016-03-11 
登録番号 意匠登録第1547449号(D1547449) 
代理人 特許業務法人 Vesta国際特許事務所 

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