• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 J7
管理番号 1314371 
審判番号 不服2016-378
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-01-08 
確定日 2016-05-02 
意匠に係る物品 プレフィラブル用の注射針付き注射器用キャップ 
事件の表示 意願2014-9865「プレフィラブル用の注射針付き注射器用キャップ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,平成26年(2014年)5月8日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「プレフィラブル用の注射針付き注射器用キャップ」とし,その形態を願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠は,本願出願前,日本国特許庁発行の意匠公報(意匠公報発行日:平成20年(2008年)6月2日)に記載された意匠登録第1331670号(意匠に係る物品,注射針先端保護具)の意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と合わせて「両意匠」という。)であって,その形態は,同公報の図面に記載されたとおりのものである。(別紙第2参照)

第3 当審の判断
1.本願意匠と引用意匠の対比
(1)両意匠の意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,「プレフィラブル用の注射針付き注射器用キャップ」であり,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,プレフィラブル用途の注射器,すなわち注射針が一体に取り付けられ,あらかじめ注射筒に薬液が充てんされた注射器の注射針を,キャップの内側に突き刺してシールするキャップである。
これに対して,引用意匠の意匠に係る物品は,「注射針先端保護具」であり,引用意匠に係る公報の記載によれば,医療従事者の針刺し事故等を防ぐために使用される,注射器の針にかぶせる保護カバーである。
そうすると,両意匠の意匠に係る物品は,注射器の針を覆うキャップ又はカバーであるから共通するものである。

(2)両意匠の形態
両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。(以下,対比のため,引用意匠も本願意匠の図面の向きに合わせることとする。すなわち,引用意匠のカバーの開口が右側を向くように,引用意匠の正面図を左に90°回転させ,引用意匠のその他の図面は,これに合わせて表されているものとする。)

<共通点>
両意匠は,基本的態様として,
(A)全体は,入口側が開口して先端が閉塞し,先端が若干細くなるテーパーの付いた略円筒状の外キャップと,外キャップ内に設けられ,注射針が刺し込まれる内キャップで構成され,外キャップの正面側及び背面側の先端部中央に,外キャップを貫通する通気孔が設けられ,外キャップの平面側及び底面側に,外キャップの表面を長手方向に面取りしたような帯状部が,先端から外キャップ全長の略2/3の長さで設けられている点,
具体的な態様として,
(B)外キャップの先端面中央に,先端面の径の約半分の径の円形凹部が設けられている点,
で共通する。

<相違点>
両意匠は,具体的態様として,
(ア)本願意匠の外キャップは,入口側から先端までテーパーが付いているのに対して,引用意匠の外キャップは,入口側から帯状部までをテーパーのない円筒部とし,円筒部よりも先端側をテーパー部としている点,
(イ)本願意匠の外キャップは透光性を有するのに対して,引用意匠の外キャップは不透明である点,
(ウ)本願意匠は,外キャップの入口側近傍の内周面に環状凹部が設けられ,内キャップの入口側近傍の外周面に,この環状凹部に収容されて,環状凹部よりも長さの短い環状凸部が設けられ,これにより外キャップと内キャップは軸方向にスライド可能に構成されているのに対して,引用意匠の外キャップと内キャップは,軸方向にスライド可能に構成されていない点,
(エ)外キャップの帯状部が,本願意匠は外キャップ表面より浅く削られているのに対して,引用意匠は平たんである点,
(オ)外キャップの通気口が,本願意匠は正面及び背面視略倒「U」字状であるのに対して,引用意匠は正面及び背面視略倒「V」字状である点,
(カ)本願意匠の内キャップは,先端側外周に,先端から内キャップ全長の略1/3の長さの帯状の凹部を周方向に等間隔に3本設けているのに対して,引用意匠の内キャップは,そのような凹部を設けているか不明な点,
(キ)本願意匠は,内キャップの入口側端部が外キャップから露出しているのに対して,引用意匠は,外キャップの入口側端部に小径の突出部を設け,内キャップの入口側端部は外キャップから露出していない点,
において相違する。

2.両意匠の類否判断
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価及び総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。
両意匠は,意匠に係る物品が共通するところ,形態については,以下のとおりである。
(1)両意匠の形態についての共通点の評価
基本的態様としてあげた共通点(A)のうち,全体を外キャップと内キャップで構成することは,注射針が刺し込まれる内側部分を柔軟な材質とし,外力の加わる外側部分を剛性の高い材質とするために,必然的に選択される形態にすぎないし,外キャップに通気孔や帯状部を設けることは,両意匠のみに見られる形態とまではいえないから,共通点(A)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,一定程度にとどまるものである。
また,共通点(B)は,注射器の針を覆うキャップの物品分野において,他にも見られる形態であるから,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きなものとはいえない。
そして,共通点全体としても見ても,これらの点が両意匠の類否判断を決定付けるとまではいうことができない。

(2)両意匠の形態についての相違点の評価
これに対して,両意匠の具体的態様に係る相違点(ア)から(カ)までは,いずれも非常に目に付き易い部位に係るものであるから,これらの相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響はそれぞれあるという他ない。
特に,相違点(ア)は,本願意匠の外キャップは,入口側から先端までテーパーが付いているのに対して,引用意匠の外キャップは,入口側から帯状部までをテーパーのない円筒部とし,円筒部よりも先端側をテーパー部としているというものであるところ,これにより,両意匠の外キャップには,円筒部の有無により,周回する形状線が表れるか否かという視覚的効果の差異が生じ,この視覚的効果は外キャップの全周にわたって生じるものであるから,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいといわざるを得ない。
また,相違点(ウ)は,本願意匠は,外キャップと内キャップは軸方向にスライド可能に構成されているのに対して,引用意匠の外キャップと内キャップは軸方向にスライド可能に構成されていないというものであり,本願意匠のキャップの機能に関わる重要な構成である上に,相違点(イ),すなわち本願意匠の外キャップが透光性を有することと相まって,本願意匠では,外キャップを透かして内キャップのスライドを視認できることから,需要者は高い関心をもってこのスライド動作を観察するといえる。したがって,相違点(イ)及び(ウ)も,両意匠の類否判断に及ぼす影響が非常に大きいといえる。
さらに,相違点(エ),(オ)及び(カ)は,比較的大きな範囲で見えるものであるから,これらの点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度あるものといえる。
最後に,相違点(キ)は,キャップの入口側の端部における形態の相違であって,気付きにくいものといえるから,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,大きなものとはいえない。
そして,相違点(ア)から(キ)までが相乗した視覚的効果を考慮すると,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕して,両意匠は,意匠全体として視覚的印象を異にするというべきである。

(3)小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品は共通するが,形態においては,共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており,意匠全体として見た場合,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕し,両意匠は,意匠全体として視覚的印象を異にするというべきであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。

第4 むすび
以上のとおりであって,原査定の引用意匠をもって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,原査定の拒絶の理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2016-04-19 
出願番号 意願2014-9865(D2014-9865) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (J7)
最終処分 成立 
前審関与審査官 前畑 さおり 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 江塚 尚弘
刈間 宏信
登録日 2016-05-27 
登録番号 意匠登録第1552665号(D1552665) 
代理人 岡田 薫 
代理人 菅野 重慶 
代理人 近藤 利英子 
代理人 竹山 圭太 
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社   サービスに関しての問い合わせ