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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 J6
管理番号 1314372 
審判番号 不服2016-109
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-01-05 
確定日 2016-04-27 
意匠に係る物品 墜落防止安全帯用ロープ 
事件の表示 意願2014-19271「墜落防止安全帯用ロープ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成26年(2014年)9月2日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠という。」)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「墜落防止安全帯用ロープ」とし,その形態を願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって,「点線で表されたリング部及びフック部以外のロープ部が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(以下,本願について意匠登録を受けようとする部分を「本願実線部分」という。)。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠は,特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1505688号(意匠に係る物品,ランヤード)の意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と合わせて「両意匠」という。)における本願実線部分に相当する部分であり,その形態は,同公報の図面に記載されたとおりのものである(以下,引用意匠において,本願実線部分に相当する部分を「引用相当部分」といい,本願実線部分と合わせて「両意匠部分」という。)。(別紙第2参照)

第3 当審の判断
1.本願意匠と引用意匠の対比
(1)両意匠の意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「墜落防止安全帯用ロープ」であり,引用意匠の意匠に係る物品は「ランヤード」であって,表記は異なるが,本願の願書及び願書に添付した図面の記載並びに引用意匠に係る公報の記載を総合すれば,いずれも高所作業者の墜落を防止するロープ状の部材であるから,両意匠の意匠に係る物品は共通する。

(2)両意匠部分の用途,機能並びに位置,大きさ及び範囲
両意匠部分は,高所作業者が装着する安全帯に結合されるリングと,所定の部材に結合されるフックを連結するロープの用途及び機能を有するから,両意匠部分の用途及び機能は一致する。また,両意匠部分は,リングやフックを除いたロープの全体であるから,両意匠部分の位置,大きさ及び範囲も一致する。

(3)両意匠部分の形態
両意匠部分の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。(以下,対比のため,引用意匠も本願意匠の図面の向きに合わせて認定する。すなわち,引用意匠の正面図に表された形態を180°回転した形態(フックが右側の位置にある形態)を正面の形態として認定し,引用意匠の他の図面に表された形態の向きをその正面の形態の向きに合わせて認定する。)

<共通点>
両意匠部分は,基本的態様として,
(A)全体は,両端寄りに非伸縮部である剛性部,略中央に蛇腹状の伸縮部を設けた,正面視長尺略矩形状の帯状のロープ部であって,左端にリング連結部,右端にフック連結部を設けた点,
具体的態様として,
(B)リング連結部及びフック連結部につながるロープ部の両端近傍が,正面視略倒「ハ」字状にすぼまって構成されている点,
で共通する。

<相違点>
両意匠部分は,具体的態様として,
(ア)伸縮部が,本願実線部分は正面視左寄りに位置し,剛性部:伸縮部:剛性部の比率が,左から約1:6.5:3.5であるのに対して,引用相当部分は中央に位置し,剛性部:伸縮部:剛性部の比率が,左から約1:1.5:1である点,
(イ)正面視全体の縦横比が,本願実線部分は,約1:30であるのに対して,引用相当部分は,約1:16である点,
(ウ)本願実線部分のロープ部の両端部は,ロープを折り返して平面視ループ状のリング連結部又はフック連結部を構成しているのに対して,引用相当部分のロープ部の両端部は,ロープを平面視略へら状に広げて,その端部に略倒U字状のリング連結部又はフック連結部を設けている点,
で相違する。

2.両意匠の類否判断
以上の一致点,共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価及び総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。
両意匠は,意匠に係る物品が共通し,両意匠部分の用途,機能並びに位置,大きさ及び範囲が一致するが,形態については,以下のとおりである。

(1)両意匠部分の形態についての共通点の評価
基本的態様としてあげた共通点(A)は,両意匠部分の形態を概括的に捉えた場合の共通点にすぎないものであるから,この点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響を大きいということはできない。
また,具体的態様としてあげた共通点(B)は,ロープ部の両端近傍が,正面視ですぼまるように構成されるというものであるところ,墜落防止用ロープの物品分野において,ロープ幅をすぼめることは,あまり見られる態様ではないことから,共通点(B)は,両意匠部分の類否判断に一定程度の影響を与えるといえる。

(2)両意匠部分の形態についての相違点の評価
これに対して,両意匠部分の具体的態様に係る相違点(ア)及び相違点(イ)は,正面視の全体にわたって表れるものであり,非常に目に付き易いから,これらの相違点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は非常に大きいという他ない。特に,墜落防止用ロープの使用の態様及びロープの構造,すなわち,フックについては,作業者の移動に伴って所定の部材との連結や解除を頻繁に繰り返す必要があるのに対して,リングについては,作業者が装着する安全帯との連結を解除しないこと,及び,伸縮部の蛇腹形状がこすれやすい構造であることを合わせて考慮すると,相違点(ア)のように,本願実線部分では伸縮部が正面視左寄り(リング連結部寄り)に位置することは,こすれやすい伸縮部を,動きの少ないリング連結部側に寄せたことによるものと理解でき,需要者に異なる視覚的印象を与えるものである。また,引用相当部分の伸縮部の長さはロープ全体の長さの半分以下であるのに対して,本願実線部分の伸縮部の長さはロープ全体の長さの半分以上を占めることから,需要者は伸縮部の長さに着目することとなり,伸縮部が長いことから,本願実線部分を使用する際に移動可能な範囲も広くなるであろうと想起するということができる。
さらに,相違点(ウ)は,リング連結部及びフック連結部という,墜落防止用ロープにおける重要な部分における形態の相違であるから,両意匠部分の類否判断に一定程度の影響を与えるといえる。
そして,相違点(ア)から(ウ)までを相乗した視覚的効果を考慮すると,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕して,両意匠部分は,意匠全体として視覚的印象を異にするというべきである。

(3)小括
したがって,両意匠部分は,意匠に係る物品が共通し,両意匠部分の用途,機能並びに位置,大きさ及び範囲が一致するが,形態においては,共通点が未だ両意匠部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており,意匠全体として見た場合,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕し,両意匠部分は,意匠全体として視覚的印象を異にするというべきであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。

第4 むすび
以上のとおりであって,原査定の引用意匠をもって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,原査定の拒絶の理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2016-04-12 
出願番号 意願2014-19271(D2014-19271) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (J6)
最終処分 成立  
前審関与審査官 市村 節子 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 刈間 宏信
江塚 尚弘
登録日 2016-05-27 
登録番号 意匠登録第1552831号(D1552831) 
代理人 特許業務法人みのり特許事務所 

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