• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服  意10条1号類似意匠 取り消して登録 G2
管理番号 1315696 
審判番号 不服2015-18846
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-19 
確定日 2016-05-13 
意匠に係る物品 自動車用フロントコンビネーションランプ 
事件の表示 意願2014- 16481「自動車用フロントコンビネーションランプ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,平成26年(2014年)7月29日に出願された意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「自動車用フロントコンビネーションランプ」とし,その形状,模様若しくは色彩又はそれらの結合(以下,「形態」という。)を,願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第2 原審の拒絶の理由

原審における拒絶の理由は,本願意匠が,出願当初の願書に記載された本意匠(本願と同日の平成26年7月29日に出願され(意願2014-16480号),平成27年2月13日に意匠権の設定の登録がなされ,同年3月16日に意匠公報が発行された,意匠登録第1519223号(意匠に係る物品,「自動車用フロントコンビネーションランプ」)の意匠(以下,「本意匠」という。)であって,その形態は,同公報に掲載されたとおりのものである(別紙第2参照)。)に類似する意匠と認められないので,意匠法第10条第1項の規定に該当しないとしたものであって,具体的には以下のとおりである。

本願意匠と本意匠(以下,「両意匠」という。)とは,ランプカバーの全体形状と背面機構部は共通している。
しかし,カバー内部灯具の態様については,発光器及びその周囲に配置された装飾体の形状全てに差異を有する構成となっており,この部位は両意匠の属する自動車用照明という物品において需要者に最もよく観察される主要部であることから,この部位における差異は両意匠に各々別異の美感をもたらすものである。
したがって,意匠全体として観察する場合においては,両意匠は類似しないものである。

第3 手続きの経緯

原審の拒絶の理由に対して,出願人は,平成27年2月17日に意見書を提出し,本願意匠は本意匠に類似するものであって,その関連意匠として意匠登録を受けることができるものであると主張したが,平成27年7月17日付けで拒絶査定がなされた。これに対し,請求人は,平成27年10月19日に審判請求書を提出し,両意匠を全体的に観察した場合,共通点が差異点を圧倒的に凌駕し,需要者の視覚を通じて共通の美感を与えており,両意匠は互いに類似しているというべきであるから,本願意匠は意願2014-16480号を本意匠とする関連意匠として登録されるべきものであるとの審決を求めたが,審判合議体との電話応対後の平成28年3月10日に手続補正書を提出し,願書に記載の「本意匠の表示」を削除し,本願を関連意匠の意匠登録出願ではないものに変更している。

第4 当審の判断

以下,本願意匠が本意匠とは類似せず,意匠法第10条第1項の規定に該当しないものであるか否かについて検討する。

1.両意匠の対比
(1)意匠に係る物品について
両意匠の意匠に係る物品は,いずれも「自動車用フロントコンビネーションランプ」であるから一致する。

(2)形態について
まず,共通点として,
(A)全体は,車体取付後に車体外側に表れる観察可能なフロントコンビネーションランプの本体部分(以下,「コンビネーションランプ本体部」という。)と,その本体部の下部及び背面側に形成され,車体取付後に埋設され観察できない車体取付部分(以下,「コンビネーションランプ取付部」という。)から構成され,
(B)コンビネーションランプ本体部は,その前面に膨出して形成された透明なカバーが取り付けられた,正面視を下辺部分が2つの略円弧状を横に連結した形態とした略隅丸直角三角形状とし,左側面視を横披針形状とし,平面視を略三日月形状とした形態であって,コンビネーションランプ本体部内側には,正面視左側に略円筒形状の前照灯(以下,「略円筒形前照灯」という。)と,その略円筒形前照灯を囲む周壁部(以下,「略円筒形前照灯周壁部」という。)を形成している点,
(B-1)略円筒形前照灯は,その先端側を円錐状に絞り込んで形成し,略円筒形前照灯周壁部によって一部が隠されて略斜切円筒形状としたものであって,その前面側先端部分を擂り鉢状に形成し,その中央部分に略半球状のレンズを一つ配設している点,
(B-2)略円筒形前照灯周壁部には,その前面側先端部分に明調子で表された枠体部(以下,「周壁枠体部」という。)を形成している点,
(C)コンビネーションランプ取付部は,背面側上端部から略クランク状に形成された板状の取付ステー及び背面側左端部やや内側から後方に水平に突出した板状の取付ステーを形成している点,
が認められる。

他方,相違点として,
(ア)コンビネーションランプ本体部内側の各ランプの態様について,本願意匠は,正面左側に略円筒形前照灯を配し,その右側に正面視略変形5角形状のリフレクターを配した走行用の前照灯(以下,「リフレクター前照灯」という。)を設け,正面視右端部に正面視略扇形状のサブランプを配設しているのに対して,本意匠は,正面やや左寄りの位置に,略円筒形前照灯を一つ配し,正面視右端部に正面視略矢尻状のサブランプをコンビネーションランプ本体部外枠部分に沿って配設している点,
(アー1)略円筒形前照灯の明調子部分の態様について,本願意匠は,略円筒形前照灯前面中央部のレンズ周りの部分に,明調子で表された円形部分を形成しているのに対して,本意匠は,略円筒形前照灯の円錐状に絞り込んだ先端部分及び擂り鉢状に形成した前面外周部分を明調子にしている点,
(イ)前照灯周壁部及び周壁枠体部の態様について,本願意匠は,略円筒形前照灯周壁部を,正面視逆コの字状で左側面視を上方に向かって後方に傾斜した形態とし,リフレクター前照灯及びサブランプの周囲に,正面視略隅丸直角台形状で左側面視を上方に向かって後方に傾斜した形態とする別の周壁部を,略円筒形前照灯周壁部と並設したものであって,それらの周壁部の先端部分に,正面視逆コの字状の右側に正面視略横釣り針状が組み合わさった形態の周壁枠体部を形成しているのに対して,本意匠は,略円筒形前照灯周壁部を,正面視略釣り針状で左側面視を上方に向かって後方に傾斜した形態とし,その先端部分に,正面視を略釣り針状とし,その左側上端部からフロントコンビネーションランプ本体後端部までを水平な直線状とした形態の周壁枠体部を形成している点,
が認められる。

2.両意匠の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は一致するものであるから,これを踏まえた上で,以下,両意匠の形態の共通点及び形態の相違点について評価し,両意匠の類否を総合的に判断する。

(1)形態の共通点の評価
まず,共通点(A)の全体の構成態様については,フロントコンビネーションランプの分野において,極普通に見られる特段の特徴のない構成態様であるから,この共通点(A)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
次に,共通点(B)ないし(B-2)のフロントコンビネーションランプ本体部及び本体部内側の形態については,フロントコンビネーションランプ本体部の態様及び略円筒形前照灯の形態として既に見られるものであり(参考意匠1:日本国特許庁発行の意匠公報(登録秘密解除公報発行日:平成25年(2013年)1月7日)に掲載された,意匠登録第1431649号(意匠に係る物品,自動車用ヘッドランプ)の意匠,別紙第3参照),取り立てて特徴的な態様とはいえず,請求人が特に主張するフロントコンビネーションランプ本体部の下辺部分を2つの略円弧状を並べた形態とした点も,本願意匠の出願前に既に見られるものであるから(参考意匠2:日本国特許庁発行の意匠公報(登録秘密解除公報発行日:平成21年(2009年)2月16日)に掲載された,意匠登録第1331208号(意匠に係る物品,自動車用フロントライト)の意匠,別紙第4参照),本願意匠及び本意匠のみがもつ特徴的な態様でもないから,これらの共通点(B)ないし(B-2)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいものである。
また,共通点(C)のフロントコンビネーションランプ取付部の形態についても,使用時には車体に埋設され,見ることができない部位であり,特に目を惹く部位でもないため,この共通点(C)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱なものである。
そして,これらの共通点は,全体としてみても,両意匠の類似性についての判断を決定付けるまでには至らないものである。

(2)形態の相違点の評価
相違点(ア)コンビネーションランプ本体部内側の各ランプの態様,及び相違点(ア-1)略円筒形前照灯の明調子部分の態様については,ヘッドランプが2灯式か4灯式かの違いやサブランプの形態が特徴的なものかどうかを,需要者は特に注目することから,特段特徴のない略扇形状のサブランプを単に配した旧来のフロントコンビネーションランプであるとの印象を与える本願意匠の態様と,略矢尻状の大きなサブランプをフロントコンビネーションランプ本体部右端部に外枠に沿って配した斬新なものであるとの印象を与える本意匠のものとは,略円筒形前照灯の明調子部分の形態の相違と相まって別異な印象を与えるものであるから,この相違点(ア)及び相違点(ア-1)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいといえる。
次に,相違点(イ)前照灯周壁部及び周壁枠体部の態様については,長方形状の前照灯周壁部の中央部分から略円筒形前照灯が僅かに突出したとの印象を与える本願意匠の態様と,略円筒形前照灯を下から包み込んだような印象を与える本意匠のものとは,その周壁枠体部部分の形態の相違と相まって全く別異な印象を与えるものであるから,この相違点(イ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響も大きいものである。
そして,これらの相違点(ア)ないし(イ)による視覚的効果は,意匠全体として見た場合,上記共通点の影響を凌ぎ,需要者に別異の美感を起こさせるものであるということができる。

(3)小括
上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品については一致するものの,形態については,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱であるのに対して,相違点が類否判断に及ぼす影響は非常に大きく,共通点及び相違点を総合的に評価すると,相違点が相まって生じる視覚的効果は,共通点のそれを凌駕して,意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせているものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。

第5 むすび

以上のとおりであって,本願意匠は,本意匠に類似せず,意匠法第10条第1項の規定に該当しないものであるから,本意匠の関連意匠として意匠登録を受けることができないものであるが,前記第3に記載のとおり,請求人が平成28年3月10日に提出した手続補正書によって,本願の本意匠の表示を削除する補正がなされ,原審の拒絶の理由は解消しているので,当該拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。

別掲
審決日 2016-04-26 
出願番号 意願2014-16481(D2014-16481) 
審決分類 D 1 8・ 3- WY (G2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 神谷 由紀 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 橘 崇生
江塚 尚弘
登録日 2016-06-03 
登録番号 意匠登録第1553074号(D1553074) 
代理人 恩田 誠 
代理人 恩田 博宣 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ