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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 B7
管理番号 1315697 
審判番号 不服2015-22180
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-16 
確定日 2016-05-12 
意匠に係る物品 耳鼻用トリマー 
事件の表示 意願2014- 24645「耳鼻用トリマー」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は,域内市場における調和のための官庁(商標及び意匠)への2014年5月6日の出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う,平成26年(2014年)11月5日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「耳鼻用トリマー」とし,その形態を願書及び願書に添付された図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

2.原査定における拒絶の理由および引用意匠
原査定において,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとして,拒絶の理由に引用された意匠(以下,「引用意匠」という。)は,特許庁普及支援課が平成20年(2008年)6月12日に受け入れた,下記の「鼻毛トリマー」の意匠であって,その形態は,同頁に掲載された図面に表されたとおりのものである。(別紙第2参照)

引用意匠
特許庁普及支援課が2008年6月12日に受け入れたアメリカ合衆国特許庁発行の米国特許商標公報 2008年5月20日08W21号の
鼻毛トリマー(登録番号US D569552S)の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH20313137号)

3.両意匠の対比
両意匠を対比すると,まず,意匠に係る物品については,本願意匠は,「耳鼻用トリマー」であり,引用意匠は,「鼻毛トリマー」であるが,いずれも鼻毛等を整えるために用いられる小型の電気カッターであって,両意匠の意匠に係る物品は共通する。
両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び差異点がある。
(1)共通点
(A)全体を,上部を略丸棒状に窄め,細長いカッター部(以下,「カッター部」という。)を有する略円錐状のトリマー部(以下,「トリマー部」という。)とし,その下方を略円柱状の胴部(以下,「胴部」という。)としたもので,胴部をその略中央において水平線で上下に分割した点,
(B)トリマー部は,基部をドーム状とし,棒状部分の上端部を円弧状とした正面視略凸字状で,上部の略丸棒状部分を「かわいるか」のくちばし様に側面視後方寄りに傾け,正面側の上部中央にカッター部を配し,カッター部の周囲を僅かに凹状部としている点,
(C)胴部の上方側は,その外周形状を平面視隅丸三角形状で下方に行くにしたがって円形状となり,胴部の下方側は,下方を徐々に窄めた略逆円錐台状である点,
において主に共通する。
(2)差異点
(ア)トリマー部と胴部の接続態様について,本願意匠は,トリマー部の下端が胴部の上端と同形同大の平面視隅丸三角形状で,胴部と滑らかに連続したラインで接続されているのに対して,引用意匠は,トリマー部の下端が胴部の上端より一回り小さい平面視円形状で,胴部と段差を設けて接続されている点,
(イ)胴部の形状について,本願意匠は,胴部の中央付近の分割した水平線に向かって緩やかに膨出し,下端に向かって徐々にほぼ直線状に縮径して窄まった外形状であるのに対して,引用意匠は,上側の胴部はその略中央付近で膨出し,胴部の中央付近の分割した水平線に向かって緩やかに縮径して窄まり,下側の胴部は下方寄りで下端部に向かって緩やかに円弧状に窄まっている点,
(ウ)胴部の上方側について,本願意匠は,正面側を略逆凸字状とする二重線模様を周側面に設けているのに対して,引用意匠は,そのような二重線模様を設けていない点,
(エ)トリマー部のカッター部の周囲の態様について,本願意匠は,カッター部の周囲に下側に余地部を設けた縦長長円形状の枠状部を設けているのに対して,引用意匠は,略隅丸長方形状の枠状部を設けている点,
において主な差異が認められる。

4.類否判断
そこで検討するに,共通点(A)については,全体の基本構成ではあるが,全体を,上部を略丸棒状に窄め,細長いカッター部を有する略円錐状のトリマー部とし,その下方を略円柱状の胴部としたもので,胴部をその略中央において水平線で上下に分割した態様は,全体の構成が共通するものではあるが,この種の物品分野においては両意匠以外にも既に見られるもので,両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず,また,両意匠の各部位には差異点が多数見受けられ,全体の基本構成が共通している点のみでは両意匠を類似と判断するまでには至らないものであるから,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度に留まるものである。
次に,共通点(B)についても,トリマー部が,基部をドーム状とし,棒状部分の上端部を円弧状とした正面視略凸字状で,上部の略丸棒状部分を「かわいるか」のくちばし様に側面視後方寄りに傾け,正面側の上部中央にカッター部を配し,カッター部の周囲を僅かに凹状部としている態様が共通しているが,両意匠と同様の正面視略凸字状のトリマー部は,他にも見られる,さほど特徴のない態様といえるものであり,両意匠のみに共通する態様とはいえず,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
また,共通点(C)についても,胴部の上方側は,その外周形状が平面視隅丸三角形状で下方に行くにしたがって円形状となり,胴部の下方側は,下方を徐々に窄めた略逆円錐台状である態様が共通しているが,両意匠のように胴部の上方側の外周形状を平面視隅丸三角形状とすることも,胴部の下方をやや窄めた略逆円錐台状とすることも,この種の物品分野においては,いずれも既に見られるありふれた態様といえるものであって,さほど特徴のないものといえ,両意匠のみに共通する態様とはいえず,これらの点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
そして,共通点全体として両意匠の類否判断に与える影響を考慮しても,両意匠の類否判断を決定付けるに至るということはできない。

これに対して,差異点に係る態様が相俟って生じる視覚的な効果は,両意匠の類否判断を決定付けるものである。
すなわち,まず,差異点(ア)のトリマー部と胴部の接続態様について,トリマー部の下端が平面視隅丸三角形状か平面視円形状かについては,いずれもありふれた態様といえるものであるので,類否判断にさほど大きな影響を与えるものとはいえないが,本願意匠は,トリマー部の下端が胴部の上端と同形同大で,胴部と滑らかに連続したラインで接続されており,トリマー部の下端が胴部の上端より一回り小さく,胴部と段差を設けて接続されている引用意匠とは,明らかに異なっており,本願意匠の接続態様は,引用意匠とは,視覚的な印象を異ならせるものといえ,トリマー部と胴部の両方にわたって需要者の注意を強く惹く部分であるから,その差異は,両意匠の類否判断に相当程度の影響を与えるものといえる。
次に,差異点(イ)の胴部の形状については,部分的な差異ではあるが,胴部の中央付近の分割した水平線に向かって緩やかに膨出し,下端に向かって正面視逆台形状に徐々にほぼ直線状に縮径して窄まった外形状である本願意匠はすっきりした印象を与えるもので,上側の胴部はその略中央付近で膨出し,胴部の中央付近の分割した水平線に向かって緩やかに縮径して窄まり,下側の胴部は下方寄りで下端部に向かって緩やかに円弧状に窄まっている引用意匠は,複雑な印象を与えるもので,見た目の印象が明確に異なるものであり,その差異は,両意匠の類否判断に影響を与えるものといえる。
そして,上記差異点(ア)及び差異点(イ)は,トリマー部と胴部の両方にわたって両意匠の全体形状の基調をなす差異点であるから,これらの差異点を総合してみると,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものといえる。
また,差異点(ウ)の胴部の上方側の二重線模様の有無について,部分的な特徴ではあるが,本願意匠と同様の部分に二重線模様を設けた態様が他に見当たらず,本願意匠のみに見られる特徴といえるものであるから,両意匠の周側面の印象が異なるもので,その差異は,両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものといえる。
さらに,差異点(エ)のトリマー部のカッター部の周囲の枠状部の態様について,細部に係る態様ではあるが,本願意匠は,枠状部に余地部があることから,カッター部が長い印象を与えるものといえ,その差異を全く無視することができず,その差異は,両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものといえる。

以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通するが,その形態において,差異点が共通点を凌駕し,それが両意匠の意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。

5.むすび
したがって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当せず,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2016-04-26 
出願番号 意願2014-24645(D2014-24645) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (B7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木本 直美 
特許庁審判長 本多 誠一
特許庁審判官 斉藤 孝恵
正田 毅
登録日 2016-06-10 
登録番号 意匠登録第1553699号(D1553699) 
代理人 津軽 進 
代理人 笛田 秀仙 

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