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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 L3 |
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管理番号 | 1315700 |
審判番号 | 不服2015-20566 |
総通号数 | 199 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2016-07-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-11-18 |
確定日 | 2016-05-10 |
意匠に係る物品 | 背泳競技用スタート補助装置 |
事件の表示 | 意願2015- 3730「背泳競技用スタート補助装置」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,平成27年(2015年)2月24日付けの意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「背泳競技用スタート補助装置」とし,形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載したとおりとしたものである。(別紙第1参照) 第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠は, 米国特許商標庁が2014年6月19日発行した 特許出願公開公報US2014/0165282号記載の Fig.5,Fig.6及び関連する記載から導きだされる「背泳スタートの補助手段」の意匠(以下,「引用意匠」といい,本願意匠と併せて「両意匠」という。) であって,その形態は,同公報に記載されたとおりのものである。(別紙第2参照) 第3 当審の判断 1.本願意匠と引用意匠との対比 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は,「背泳競技用スタート補助装置」であり,引用意匠の意匠に係る物品は,「背泳スタートの補助手段」であって,表記は異なるが,共に,競泳用の飛び込み台に設置して背泳競技のスタート時に用いられる補助器具であるから,両意匠の意匠に係る物品は,一致する。 (2)両意匠の形態 両意匠の形態を対比すると,その形態には,以下に示す主な共通点と相違点が認められる。 以下,対比のため,本願意匠の左側面図に描かれた方向を正面とし,その他の図面もこの向きに合わせて認定することとし,引用意匠についてもこれに合わせて認定する。 i)共通点 (A)基本的構成態様 本体部と,本体部の左右両端に設けられた一対のリール部と,当該リール部に巻回されて下方に垂れた平行な一対の略細幅帯状のベルト部と,ベルト部の下端部に接続された足置台を有する基本的構成態様とした点。 (B)本体部 本体部は,正面から見て横長で略丸棒状体の胴部を有し,胴部の左端寄りに胴部周面を取り巻くリング状の調節部材を有する態様である点。 (C)リール部 リール部は,扁平な円柱状のリール胴部の両端に,リール胴部の外径より大きな外径の略円盤状の鍔部を形成した態様である点。 (D)ベルト部 ベルト部は,その上端をリール胴部に巻回して繰り出し可能に取り付けられており,中間の,使用状態においてプールの縁と当接する箇所において下方に屈曲した態様である点。 (E)足置台 足置台は,左側面図中央縦断面が略くさび形の,略横長長方形板体で,その両端にベルト部を接続した態様である点。 ii)相違点 (ア)基本的構成態様 (ア-1)本願意匠は,その本体部胴部の中間部に,正面視中抜き台形状の持ち手部を設け,その持ち手部と本体胴部の接続位置から垂直方向に突設した一対の略小直方体状の固定部材を有する態様であるのに対し,引用意匠には持ち手部と固定部材がなく,また,(ア-2)引用意匠には,本体胴部と並行に本体胴部とほぼ同じ太さの丸棒状のフレーム材を設け,一対の略三角形板状の接続部によって,当該フレーム材の両端と本体胴部を接続した態様であるのに対し,本願意匠にはフレーム材と略三角形板状接続部がない点。 (イ)本体部の調節部材 本願意匠の本体部の調節部材は,その外径が本体胴部の外径の約2倍で,外径と幅の比率が約4対1であるのに対し,引用意匠の本体部の調節部材は,その外径が本体胴部の約1.5倍で,外径と幅の比率が約2対1である点。 (ウ)リール部 本願意匠のリール部は,本体部の胴部直径とリール鍔部の直径の比率が約1:3であるのに対し,引用意匠のリール部は,同比率が約1:1.5である点。 (エ)足置台 本願意匠は,足置台の前面のほぼ全面に,多数の微細な突起を施しているのに対し,引用意匠の該部表面の微細な凹凸態様は不明であって対比できない点。 2.両意匠の類否判断 以上の一致点,共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価及び総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。 両意匠は,意匠に係る物品は一致するが,形態については,以下のとおりである。 (1)共通点の評価 まず,基本的構成態様に係る共通点(A)は,両意匠の基本的構成態様の一部にすぎないから,両意匠の類否判断に与える影響は小さいものといえる。 次に,本体部に係る共通点(B)は,本体部の形態の一部にすぎず,また,形態を概括的に捉えたに過ぎないものであるから,両意匠の類否判断に与える影響は小さいものといえる。 リール部に係る共通点(C)は,ベルト体を巻回させる部材が通常有する概括的な形態であって,特徴的とはいいがたいものであるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。 そして,ベルト部に係る共通点(D)は,使用状態において,地上に設置した本体部と,垂下した足置台との間を,ありふれた形態である細幅帯状体でつないだものといえるから,特徴的とはいいがたいものであって,両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいものである。 さらに,共通点(E)については,背泳競技用スタート補助装置の物品において,足置き台の各部の大きさ及び前面の角度について,国際水泳連盟によって取り決められた規定が存在することが認められ(甲第1号証),両意匠の共通点(D)に係る態様は当該規則に一致しているから,当該規則に従ったものと認められる。そうすると,当該共通点について,上記規則を承知しているであろう需要者が観察した場合は,背泳競技用スタート補助装置が通常有する形態であると認識するものと認められるから,この態様は特徴的とはいいがたいものであって,両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいものである。 そうすると,いずれの共通点も,両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいものであり,これら共通点が相まった効果を考慮したとしても,それが相違点を圧して,両意匠全体として,需要者に共通の美感をもたらすには至らないものといえる。 (2)相違点の評価 両意匠の相違点について検討すると,相違点(ア-1)の,持ち手と固定部材の有無及び相違点(ア-2)の,フレーム材と三角形板状接続部の有無については,両意匠の形態全体に占める大きさも大きい形態の相違であって,両意匠の意匠に係る物品である,背泳競技用スタート補助装置の使用者が注目する部位に係る相違であるといえ,需要者の注意を惹くものである。したがって,相違点(ア)が両意匠の類否判断に与える影響は大きい。 次に,本体部の調節部材に係る相違点(イ)は,両意匠の意匠に係る物品である,背泳競技用スタート補助装置の使用者が,必要に応じて足置台の高さを調節するために操作する部材であることを勘案すると,当該相違点は,物品の使用者が注目する部位に係る相違であるといえ,本願意匠の調節部材の外径が大きく幅が扁平なリング状であるのに対し,引用意匠の調節部材の外径が小さな広幅のリング状である態様の相違は目立つものであるから,相違点(イ)が両意匠の類否判断に与える影響は一定程度認められる。 そして,リール部の大きさに係る相違点(ウ)は,本願意匠が,側面視において,本体部全部が隠れるほど大きい鍔部を有しているのに対し,引用意匠の鍔部は小さく,側面視において略三角形板状の接続部がはみ出て視認される程であって,その相違の程度が大きいものであり,両意匠に別異の印象を与えているものといえるから,相違点(ウ)が両意匠の類否判断に与える影響は一定程度認められる。 さらに,足置台の表面の形態に係る相違点(エ)について検討すると,本願意匠の微細な小突起は,子細に観察してはじめてわかる程度のごく微細なものであって目立つものではない。したがって,相違点(エ)が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。 そして,相違点(ア)から(エ)までを総合した視覚的効果を考慮すると,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕して,両意匠は,意匠全体として視覚的印象を異にするというべきである。 (3)小括 したがって,両意匠は,意匠に係る物品は一致するものの,形態においては,共通点が未だ相違点を圧して,意匠全体として,両意匠に共通の美感をもたらすには至らないものであるのに対して,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており,意匠全体として見た場合,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕し,両意匠は,意匠全体として視覚的印象を異にするというべきであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。 第4 むすび 以上のとおりであって,原査定の引用意匠をもって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,原査定の拒絶の理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2016-04-18 |
出願番号 | 意願2015-3730(D2015-3730) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(L3)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 中村 純典 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
清野 貴雄 渡邉 久美 |
登録日 | 2016-06-03 |
登録番号 | 意匠登録第1553017号(D1553017) |
代理人 | 三好 秀和 |