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審決分類 審判 査定不服  1項柱書物品 取り消して登録 F2
管理番号 1317036 
審判番号 不服2015-17774
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2016-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-09-30 
確定日 2016-06-14 
意匠に係る物品 入力ペン 
事件の表示 意願2014- 1950「入力ペン」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,2013年(平成25年)8月27日の大韓民国への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成26年1月31日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,本願意匠という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品をタッチパネルを有する携帯情報端末などの電子機器において,当該タッチパネル上の入力操作に使用される「入力ペン」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」ともいう。)を願書及び願書に添付した図面に記載したとおりとし,「実線で示した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである。(以下,本願について意匠登録を受けようとする部分の意匠を「本願意匠部分」という。)(別紙参照)

第2 手続の経緯
本願については,平成27年1月14日付けで,意匠登録を受けようとする部分の範囲に,他の意匠と対比する際に対比の対象となり得る意匠の創作の単位が表されておらず,A部分の部分拡大図の拡大の仕方が不適切で,また,正面図に意匠を構成しない線が含まれていることから具体的な意匠を表したものとはいえず,意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当しない旨の拒絶理由が通知された。これに対して,請求人は,平成27年4月20日付けで,意見書及び手続補正書を提出し,意匠に係る物品の説明の欄及び図面を変更する補正をしたが,その後,平成27年6月24日付けで,平成27年1月14日付けで通知した拒絶理由により,「添付図面において意匠登録を受けようとする部分は,本願意匠に係る入力ペンのペン尻側から4分の1程度を占める,周状の細い凸条が当該凸条と同幅程度の間隔を空け複数形成された部分の一部が不定形に表されたものであり,依然として,意匠登録を受けようとする部分の範囲に,他の意匠と対比する際に対比の対象となり得る意匠の創作の単位が表されていない」として,拒絶査定がなされ,請求人は,これを不服として平成27年9月30日に審判請求をしたものである。また,その後,請求人は,添付図面を補正対象とする,平成27年11月12日付けの手続補正書により,「全体を実線で示す参考図」を追加する手続補正を行った。

第3 請求人の主張
請求人は,審判請求書において,原査定が,本願は,意匠が不定形に表されたものであり,意匠登録を受けようとする部分の範囲に,他の意匠と対比する際に対比の対象となり得る意匠の創作の単位が表されていないとした点について,概ね次の主張をした。
出願人は,平成27年4月20日付けの意見書及び手続補正書において「部分意匠として意匠登録を受けようとする部分は,入力ペンの柄の部分の凹凸模様である。」ことを明らかにしており,この凹凸模様部分は,審査官が指摘するように,「入力ペンのペン尻側から4分の1程度を占める,周状の細い凸条が当該凸条と同幅程度の間隔を空け複数形成された部分の一部」を占めているが,「不定形に表された」ものではない。その部分意匠として意匠登録を受けようとする部分は,水平方向にペンの周囲を囲むように描かれた凹凸の溝条であり,かつ波線で区切られた部分のみを限定的に意匠登録を受けようとするものである。そして,その上下の境界部分は,なだらかに周囲を一周する波線により区切られ,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分として実線で表された部分の輪郭は,水平方向にペンの周囲をなだらかに周囲を一周する波線により他の部分と区切られており,その境界は明らかであって,不定形ではない。したがって,入力ペンの柄の部分に反復的に形成された凹凸模様の一部であっても,パターン模様として他の意匠と明確に識別が可能であり,かつ創作の単位であると判断されるべきである。

第4 当審の判断
そこで,請求人の主張を踏まえ,本願意匠が工業上利用することができる意匠であるかについて検討する。

本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする出願であって,原審における拒絶理由において,本願意匠は,意匠登録を受けようとする部分の範囲に,他の意匠と対比する際に対比の対象となり得る意匠の創作の単位が表されていないために,工業上利用することができる意匠に該当しないとされたものである。
そして,物品の部分について意匠登録を受けようとするとして出願されたものが工業上利用することができる意匠に該当するためには,
(1)意匠を構成するものであること
(2)意匠が具体的なものであること
(3)工業上利用(反復生産)することができるものであること
の要件を満たす必要がある。
さらに,その(1)意匠を構成するものであることを満たす要件として,他の意匠と対比する際に対比の対象となり得る意匠の創作の単位が表されていなければならない。
本願意匠部分は,「実線で示した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」との「意匠の説明」の記載から願書に添付した図面中実線で記載された部分であると認められ,添付された図面中の記載には,「入力ペン」の柄のペン尻側から4分の1程度のグリップ部の波状破線に挟まれた範囲内が実線で表されており,当該実線で記載された部分が本願意匠部分であると認められる。
とすると,願書に添付した図面の記載において,本願意匠部分として「入力ペン」の柄のグリップ部の凸条部について十分にその凹凸態様が認定できる単位のものが表されているといえるから,出願当初の願書の記載及び願書に添付された図面に本願意匠部分について対比の対象となり得る意匠の創作の単位が表されていないものとして,本願意匠が工業上利用することができないとすることはできない。

また,他の工業上利用することができる意匠に該当するための要件についても,本願意匠の「意匠に係る物品」は,前記「第1」のとおり,タッチパネルを有する携帯情報端末などの電子機器において,当該タッチパネル上の入力操作に使用される「入力ペン」であって,同一物を反復して多量に生産し得る工業製品の一つであると認められ,
本願意匠部分は,視覚を通じて観察できる「入力ペン」の物品自体の外観におけるペンの柄のペン尻側から4分の1程度のグリップ部の波状破線に挟まれた範囲内に表された凹凸部分の形態と認められ,意匠を構成するものであり,
本願意匠部分の「用途及び機能」,「位置,大きさ及び範囲」とその「形態」について,出願当初の願書の記載及び願書に添付した図面から具体的な一の意匠の内容が直接導き出すことができるものと認められる。
以上のとおりであるから,
(1)意匠を構成するものであること,
(2)意匠が具体的なものであること
(3)工業上利用することができるものであること
の各要件を,本願意匠部分は満たしているものといえるので,本願意匠は,工業上利用できる意匠に該当するものである。

なお,前記「第2」で示した,平成27年4月20日付け手続補正書による,本願意匠の正面図,「A部分の部分拡大図」について変更する補正及び「部分拡大図部分Aを示す参考図」を追加する補正と意匠の説明について変更する補正並びに,平成27年11月12日付け手続補正書による「全体を実線で示す参考図」を追加する補正に基づいた補正後の意匠は,当業者であれば,出願当初の願書の記載及び願書に添付した図面から当然に導き出せる範囲のものであるから出願当初の願書の記載及び願書に添付した図面の要旨を変更するものではない。

第5 結び
以上のとおり,本願意匠は,意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当し,原査定の拒絶理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2016-06-02 
出願番号 意願2014-1950(D2014-1950) 
審決分類 D 1 8・ 13- WY (F2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 重坂 舞 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 渡邉 久美
清野 貴雄
登録日 2016-07-22 
登録番号 意匠登録第1556667号(D1556667) 
代理人 アイ・ピー・ディー国際特許業務法人 

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